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マンパワーグループでは、インターンシップ・オープンカンパニー支援サービスを提供しています。
サービス内容や事例などをまとめた資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
多くの企業がSociety 5.0に向けたイノベーションやグローバル化に向けて多様な人材を求めています。若手にも自己成長に向けた自律的なキャリア形成を求めるようになりました。
それに伴い、インターンシップの名のもとにキャリアに関するイベントを開催する企業が増加。インターンシップが普及により、産学協議会において本質的なインターンシップの在り方が問い直され、インターンシップを含めた学生のキャリア形成支援活動について、新たな区分が25年卒より設定されました。
本記事ではその区分のひとつである「オープンカンパニー」を題材に、学生の満足度を高め、応募意欲を高める方法を解説します。
オープンカンパニーができた背景には、従来型のインターンシップに問題が生じたためです。
インターンシップとは、「社会に出る前に仕事を体験してみること」を指します。企業で仕事をしている人の話を直接聞き、実際の仕事を体験することで、業界や職種、企業別の仕事内容の理解を深め、かつ、企業の実際の職場の雰囲気を感じ取る機会です。
従来型のインターンシップで何が問題になったかというと、「インターンシップ」という枠組みで、実務体験のない会社説明会のような様々なイベントが開催されていたことです。政府主導の「就職・採用活動に関する要請」いわゆる就活ルール上の情報解禁前の広報活動と受け取られかねないイベントの横行が目についていました。
また、本質的なインターンシップではないイベントも選考に大きく関わるものとして学生が認識することになった結果、就職活動の前倒しや学業の阻害につながるという批判もあり、これを是正する必要が生じたのです。
オープンカンパニーとは、業界や会社の情報提供やPRを目的とした説明会やイベントのことで、学生のキャリア形成の支援プログラムです。一言でいうと「オープンキャンパスの業界・企業・仕事版」です。
業界や企業の特徴、企業の事業や経営理念、組織文化、働き方やキャリアについての解説や職場見学/オフィスツアー、社員による講演会・座談会などの交流の場を設け、業界や企業への理解をネット上やパンフレットなどの文字情報だけでなく、交流を通してより深く理解してもらうものです。
学年不問、短日開催、採用活動には直接繋げないことがルールであり、多くの学生が安心して参加できるため、学生に対し良い自社のPRの場となります。
なので、オープンカンパニーは職場業務体験が含まれず、学生に直接採用でアプローチしたり、得た情報を活用したりすることはできません。オープンカンパニーは従来の1dayインターンシップのような位置づけで、あくまで企業や業界の情報収集やPRの場に留まる位置づけになります。したがって、参加学生の年次が不問であることと間口が広いのが特徴です。
オープンカンパニーは幅広い学生に向けた広報的な位置づけです。学生が業界や企業の業務内容を具体的に知り、理解を深めることが目的。職場見学/オフィスツアーや社員との交流会を通して、ネットや記事等の文字情報にない生の情報を仕入れられることが学生にとってのメリットです。キャリア形成は仕入れた情報の量と質で選択肢の幅が広がることもあり、学生自身でキャリア形成を考える良い機会になります。
企業側の視点では、多くの学生に自社をPRすることで、応募意欲を高められることがメリットです。誰もが知っている有名・大企業やベンチャーでなくても、オープンカンパニーの参加を通して自社をアピールすることで、応募候補として学生の記憶や心に刻むことが可能です。
では、従来型のインターンシップはどのように区分され位置づけが決まったのか。
一般社団法人日本経済団体連合会と大学関係団体等の代表者により構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が「学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組み」を以下の4つの類型に整理しました。
タイプ1 | オープンカンパニー(業界や企業による短期の説明会やイベント) |
タイプ2 | キャリア教育(大学などの授業・講義や企業による教育プログラム) |
タイプ3 | 汎用的能力・専門活用型インターンシップ(職場における実務体験) |
タイプ4 | 高度専門型インターンシップ(特に高度な専門性を要求される実務を職場で体験 |
出典:厚生労働省「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」
この4類型のうち、タイプ1とタイプ2がオープンカンパニー、タイプ3とタイプ4がインターンシップと区別されるようになりました。インターンシップは職場での業務体験が必須となり採用活動への繋がりが強いことが特徴です。
関連記事:インターンシップの導入前に知っておきたいポイントを徹底解説
オープンカンパニー・インターンシップの企画・運営を支援します
マンパワーグループでは、導入が進んでいるオープンカンパニーやインターンシップの企画・運営を支援するサービスを提供しています。人手の問題で取り組めないなど課題がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
オープンカンパニーで得られる効果はほかにもあります。それぞれ解説します。
オープンカンパニーは学年を問わず参加可能です。そのため、就活生だけではなく、近い将来の候補者となり得る学生に対しても自社を知ってもらうことができます。
人が類似する情報を複数回聞いた場合、最も印象に残っているのは最初に聞いた情報だとされています。これから多くの企業説明会に参加するであろう学生に対し、早期のうちに自社をアピールし、キャリアに関する情報提供をインプットすることで潜在層を含めた広範囲の採用候補者に、自社を印象付ける効果が期待できます。
オープンカンパニーでは、職場見学/オフィスツアーなど社員自ら自社の事業やサービスについて語る場を設けます。文章では伝わらない企業の文化や良さを知ってもらえるため、企業ブランドイメージの向上に繋がる可能性があります。
職場見学/オフィスツアーや社員との交流を通し、自社のビジョンやバリューが、どのように事業や組織文化、働く意味に繋がり活かされているかに触れることで、ビジョンやバリューのへの共感度がアップし、応募意欲を高められるでしょう。
企業側の視点でみると、職場見学/オフィスツアーや社員交流を通して、ターゲットとなる学生の興味関心や何を重要視してキャリアや企業を選択するのか、体温が伝わる本音をつかむことができます。
その本音をオープンカンパニーやほかの採用活動にフィードバックすることで、より効果が高い採用活動に繋げることができるようになります。
苦戦が続く新卒採用では、さまざまな手法を試していく必要がでてきます。 新卒採用の基本が知りたいかたは、「はじめての新卒採用スタートガイド」をご覧ください。
オープンカンパニーで一方的に自社の良いところを正しくPRしても、社会人経験がない学生に響くとは限りません。また、オープンカンパニーでは位置づけとしては採用活動ではないため、注意点があります。ここではその注意点について解説します。
オープンカンパニーは、学生に自社への興味や関心を持ってもらい、選んでいただくことが目的です。企業が、自社の良さや特徴をわかりやすく解説したとしても、学生が就活時に知りたいニーズでなければ学生の心に響くことは残念ながらありません。社会人経験がある社会人と就活時の学生では、知りたいニーズの優先度も判断基準も異なるので注意が必要です。
就活時における学生のニーズを把握し、オープンカンパニーでPRすべき事項の優先度や内容を決めていくことが肝心です。また、今の社会人が学生だった頃と今の学生では「企業選定に重視するもの」の優先度や判断基準は違うことも多いため、思い込みで判断しないように注意しましょう。
例えば、「企業の知名度」「経営者の魅力」「キャリアルートが明確であること」や「社会貢献活動の実績」を今の学生は優先するだろうと判断しオープンキャンパスを設計したとします。「大卒者等のインターネットを通じた就職活動に関する調査」 の、学生の就活時に「企業選定の際に重視するもの」を見ると、「経営者の魅力:12.5%」「企業の知名度:14.7%」と実はそこまで高くないことがわかります。
オープンカンパニーは学生に幅広くPRできる大事な場です。参加する学生のニーズを、客観的なデータなども参考にして、多くの学生に興味を持ってもらえるように設計することが重要です。
オープンカンパニーでは、取得した学生情報を採用活動に活用できません。参加した学生の適性をその場で判断したり、採用選考に進んで欲しい学生が参加していたとしても、直接的に採用選考プロセスに誘導することはできません。
オープンカンパニーの企画・運営の支援サービス
オープンカンパニーは、参加した学生を直接採用へ繋げることができないため、学生に興味を持ってもらい自ら応募してもらうための導線やシナリオ作成、アピールの方法など、従来よりも工夫が必要と言えるでしょう。具体的に7つのステップに分けて解説します。
オープンカンパニーを設計するにあたり、最初に行うことは開催目的を明確にすることです。オープンカンパニーは直接採用活動に繋げられませんが、ゆくゆくは学生がインターンシップや就職活動などを行う時に、その候補として優先度を高くしてもらうための目的であることには変わりありません。
今の採用は売り手市場であるため、ほかの会社と同じ採用活動や学生への認知向上施策を行うだけでは、有名企業や大手企業との採用戦争で勝つことができません。通常のインターンシップや採用活動に加えオープンカンパニーを活用し、学生に「将来働きたい」と強く印象づけることが重要です。
<一例>
オープンカンパニーの目的がハッキリすることで、ほかの採用施策との位置づけや連携の仕方が見えてくるので、より確度の高い採用戦略策定にも繋がります。
オープンカンパニーは、直接採用に繋げる活動ではありませんが、どんな学生をターゲットにするかを明確にすることが重要です。同じ学生であっても、ベンチャー志向が強い、大企業で安定的な仕事に興味がある、グローバルに活躍したいなど、興味関心の広さや深さが違います。
今の学生は失敗することを避ける傾向が強いため、情報収集に熱心です。ターゲットが曖昧なままオープンカンパニーを企画・実行をすると、どうしても網羅的な内容になり、学生の心に刺さらないだけでなく、「あの会社のオープンカンパニーは意味がない」とネットや口コミで広がり、逆効果になるリスクもあります。
オープンカンパニーの目的やターゲットが明確になったら、そのターゲットにダイレクトに刺さる自社の魅力を明確にしましょう。注意点は、自分達が「わが社のここがいい」と思っていることと、ターゲットが魅力を感じることが一致するとは限らないことです。
<一例>
「働き甲斐や成長」を求めているターゲットに「残業がなく、有給消化も確実」とアピール
ターゲットの興味関心にそって優先度を整理し、どんな基準で働きたいか、どんな判断基準を持っているかなど、採用したい人物像を詳細化したペルソナを明確にした上で、そのペルソナ像に響くように自社の魅力の解像度を上げることが重要です。
強みの発見、打ち出し方は、マーケティングの手法であるUSP(ユニークセールスプロポジション:自社独自の強み)の考え方を取り入れるのも有効です。
人は絶対値ではなく、ほかのものと比べた相対的な視点で判断する傾向があります。自社が「社員の仲がいい」と示しても、ほかの会社も同じように「社員の仲がいい」と言えば、当社独自の強みでなくなり、差別化できなくなります。
競合他社がどんな魅力をアピールしているかをリサーチし、他社と同じにならないように自社の魅力を掘り下げて具体化していくことが重要です。
自社の魅力を伝える時、他社のオープンカンパニーと差別化することは重要ですが、そこを意識しすぎると空振りするリスクが高まります。なぜなら、他社比較に意識が行きすぎるとターゲットとなる学生が置き去りになりやすくなるからです。
伝える内容を検討する順番は、以下のとおりです。
重要なのは、魅力を「訴える」ことではなく「感じ取ってもらえる」ことを意識し、シナリオの構成と伝える言葉を慎重に選択することです。
「訴え」ようとすると「他社より自社がいいです」と他社を下げるような言い方になってしまったり、「こんなにスゴイです」と説得するような表現になってしまいがちです。学生がオープンカンパニーに参加する段階では、他社との違いに興味が沸く前段階です。響かないだけでなく、説得され良くない印象を持たれ兼ねないため注意が必要です。
オープンカンパニーを成功させるには、「この会社で働いてみたい」と具体的なイメージを持ってもらうことが重要です。業界や企業説明、職場見学に加え、先輩の体験談等を通して、「自分が楽しく働くイメージ」をつかんでもらえるような視点で魅力を組み上げ、伝えるべき内容を明確にしましょう。
この視点で表現することができれば、事業の展望やキャリアパス、メリット、体験談も、他社を引き合いに出さなくても、より鮮明かつ前向きな印象で魅力を伝えられるようになります。
次に開催する形式を決定します。
開催のコンテンツの種類
などが一般的です。どのコンテンツがターゲットの興味関心に刺さるかを想定し、シナリオにあわせ、このコンテンツの種類を選び、順番を決めていきましょう。
オープンカンパニーは、学内でおこなう企業説明会や学外(合同説明会系)で行うものもあります。どちらのケースもイベントでの持ち時間によりコンテンツの構成や時間に合わせた形に調整する必要がありますが、コンテンツの中身を別立てにする必要はありません。
上記ステップ1~4まで内容がきちんと決まり、ターゲットに刺さるシナリオと表現で魅力が伝わり、ポジティブに働くイメージできるようにするゴールは一緒だからです。合同説明会等では、参加する学生の視点に絞った内容でまとめあげることが一番の差別化に繋がります。
次に開催する時期や回数を決定します。オープンカンパニーは、学業との両立できるように短期間で行われます。学生がゆとりをもって学業との調整をしやすい時期や時間に配慮します。また、複数回開催するとより調整がつきやすくなります。
<学生が参加しやすい時期・時間帯>
オープンカンパニーは学年不問で多くの学生が参加しやすいため、基本同じ内容で開催することが一般的ですが、開催期間が長く回数も多い場合は、回を重ねる毎にPDCAを回し、シナリオやコンテンツの改善を図り、より効果を高めていくと良いでしょう。
最後にオープンカンパニー実施を告知する媒体を選択します。媒体が適切でないとオープンカンパニーを実施する情報が、そもそも学生に届きません。
主要ナビサイトなど、大手の求人媒体は、多くの学生に届く代わりに他社のオープンカンパニーの情報も同時に大量に届きます。会社の知名度が低く学生に選んでもらいにくい場合は、オファー型の採用媒体を活用することも検討しましょう。
また、今の学生は、宣伝や広告よりも生の声を重視する傾向が高いのも特徴です。働くイメージを持ってもらうためにも、自社HPやSNS等も活用することをおすすめします。
オープンカンパニーは、学生が業界や企業に関する知見を広げることで、自身のキャリアをよく考えるきっかけになるものです。採用を直接とした目的としていないため、学生側が気負わず参加できるのが大きな特徴ですが、自社の魅力がきちんと伝わり、前向きに働くイメージを持ってもらえれば、学生自ら手をあげて、次のインターンシップや通常の採用プロセスへのエントリーに応募する確度が高まります。
学年不問で就活に入る前の学生も参加可能であることもあり、オープンカンパニーの学生の満足度が高いと、潜在的な候補者を増やすだけでなく、採用マーケットに良い印象を広めることも期待できます。
選考活動と違い個別にアプローチするプッシュができない分、「前向きに働く」イメージを持ち、学生自ら次の採用ステップに進みたいと感じてもらえるプル戦略を意識してストーリーや構成を描くことで、学生の満足度を上げることができるでしょう。
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