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「採用広報、何から始めれば?」に答える|費用をかけずに今日からできる5つの施策

掲載日2026年10月19日

最終更新日2026年10月19日

「採用広報、何から始めれば?」に答える|費用をかけずに今日からできる5つの施策

目次

「採用広報を始めたいが、何から手をつければいいのかわからない」。採用支援の現場で、最も多くいただくご相談のひとつです。多くの会社では、ホームページに採用情報を載せることはしています。しかし、社員インタビューのような一歩踏み込んだ発信までは手が回っていない企業も少なくありません。

本稿では、採用広報に取り組みたいと考えているものの、どこから着手すべきか悩んでいる企業に向けて、「採用広報のはじめの一歩」を整理しました。

候補者は応募の意思決定をする前に、検索エンジンで、口コミサイトで、あなたの会社を徹底的に調べています。さらに近年では、そこに生成AIという新しい経路が加わりました。ある民間調査によれば、転職活動者の26.0%がすでに生成AIへの質問で企業情報を収集しており、これは口コミサイトの約2倍にあたります。検索結果上部のAI要約まで含めれば、実に3人に1人がAI経由で企業情報に触れています。AIの利用層と利用シーンが今後さらに広がっていくことは間違いなく、この割合は増える一方でしょう。

つまり現代の採用活動では、AIにどう説明されるかまで含めて、「調べられること」への対応が求められるのです。候補者が企業を調べた際に、十分な情報が見つからなかったり、情報の信頼性を判断できなかったりすると、不安や疑問が解消されません。広告に投資をして接点をつくれたとしても、その段階で応募や選考を見送られてしまう可能性があります。

だからこそ、応募獲得に投資する前に、まずは候補者とのコミュニケーションの土台を整えることから始める必要があります。本稿では、候補者の心が動く「4つの段階」を物差しに、自社の現状を把握する方法と、土台づくりのために今日から着手できる5つの施策を解説します。

人事・採用に関する情報を発信中

本記事は、Sherpa Partners株式会社 代表取締役の坂本宙彌氏による寄稿です。
マンパワーグループでは、人材採用や組織づくりに役立つコラムやセミナーを随時公開しています。

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第1章 そもそも採用広報とは何か

第一章 そもそも採用広報とは何か

定義——採用「広告」との違いから理解する

筆者は採用広報を、「候補者や転職潜在層に向けて、自社の事業・仕事・人・条件に関する確からしい情報を、継続的・戦略的に発信していく活動」と捉えています。

言い換えれば、採用広報とは、候補者とのコミュニケーションの「土台」をつくる活動です。候補者は応募に至るまでに、会社を知り、理解し、信頼し、働きたいと感じる、という段階を順に経ていきます。その一つひとつの段階で、企業側から確からしい情報が届いているかどうかが土台の中身であり、それを整えることが採用広報の担う役割です。

ここでよく混同されるのが、採用「広告」との違いです。両者は、そもそも目的が違います。広告は、求人サイトの掲載枠やSNS・検索エンジンの広告枠などに費用を払って露出を得て、期間内に応募を獲得するための手段です。一方の広報は、いま述べた土台そのものを整える活動です。

そして、対応すべき順番は必ず土台が先です。どれだけ広告に費用をかけて候補者を集めても、土台が整っていなければ応募にはつながりません。仮に応募につながったとしても、調べるほどに情報が出てこない、発信と実態が食い違っている——そうした違和感から、候補者は選考の途中で離脱していきます。広告にかける費用を無駄にしないためにも、つまり採用の費用対効果を最大化するためにも、先に整えるべきは土台のほうなのです。しかも広告と違い、広報で積み上げた情報は掲載期間が終わっても資産として自社に残り続けます。

では、その土台を具体的にどう捉えればよいのでしょうか。次節では、候補者が応募に至るまでに経験する4つの段階「認知・理解・信頼・意欲」に沿って、土台の中身を見ていきます(採用広報の網羅的な解説は、本サイトの「採用広報とは?目的と進め方を徹底解説」もご参照ください)。

採用広報が動かすもの——候補者の中で進む「4つの段階」

採用広報が働きかけるのは、候補者の中で順に進んでいく4つの段階です。

  • 第一段階:認知(知名度の向上)——会社の存在を知ってもらう
  • 第二段階:理解(解像度の向上)——事業や仕事を具体的にイメージしてもらう
  • 第三段階:信頼(安心感の向上)——発信内容と実態が一致していると信じてもらう
  • 第四段階:意欲(志望度の向上)——「ここで働きたい」と感じてもらう

この順番が重要です。知られていない会社は選ばれようがなく、理解が浅いままでは魅力は伝わらず、信頼がなければ魅力を語っても疑われてしまいます。認知→理解→信頼→意欲と、階段を一段ずつ上がっていくイメージです。

本稿では、この4つの段階を記事全体を貫く物差しとして使います。次章の現状把握は「自社がどの段階でつまずいているか」を特定する診断であり、第3章で紹介する5つの施策には、それぞれ主に効かせたい段階があります。診断と施策がこの物差しでつながっている、という前提で読み進めてください。

なぜ今、採用広報に取り組むべきなのか——「理解」と「信頼」が他人の手に渡る時代

採用広報の重要性が増している背景には、候補者を取り巻く情報環境の変化があります。転職サービスの多様化で候補者の選択肢が増える一方、SNS、口コミサイト、匿名掲示板と、ネット上のあらゆる場所で真偽不明の企業情報が手に入るようになりました。

マイナビの調査によれば、2024年に転職した人の51.3%が、退職後に前職企業についてSNSや口コミサイトへ投稿しており、20代では6割を超えます。企業の情報は「元社員たちの声」としてネット上に蓄積され続けているのです。

さらにここ数年で、もうひとつの変化が加わりました。リードでも触れた通り、いまや転職活動者の3人に1人がAI経由で企業情報に触れています。しかも、AIで調べた内容の最多は「企業の事業内容・評判」(59.2%)でした。候補者が検索エンジンで調べるより先に、生成AIに「この会社はどんな会社か」と尋ねる時代が、中途採用の現場でも始まっているのです。生成AIの回答は、ネット上に存在する情報から生成されます。つまり、自社の発信が乏しければ、AIは古い口コミや断片的な情報をもとに自社を「説明」してしまうのです。

4つの段階に引きつけて言えば、企業が発信を怠ると、候補者の「認知」と「理解」の入口は検索結果とAIに、「信頼」の判断材料は他人の書いた口コミに、それぞれ委ねられてしまうということです。自社発信で情報を戦略的に届けることは、この段階形成の主導権を自社に取り戻す営みにほかなりません。

発信前には、採用要件の確認を

候補者に何を伝えるべきかを考えるには、まず自社がどのような人材を求めているかを整理する必要があります。採用要件の棚卸しに活用可能なチェックシートをダウンロードいただけます。

>「人材要件チェックシート」をダウンロードする

4つの段階が進むと、何が変わるのか

採用広報の効果も、4つの段階に対応させると整理しやすくなります。認知が高まれば、応募数と母集団の質が変わります。理解が深まれば、「イメージと違った」という選考途中の離脱や入社後のミスマッチが減ります。信頼が高まれば、選考辞退・内定辞退率が下がります。そして意欲が高まれば、内定承諾と入社後の定着につながっていきます。

加えて見逃されがちなのが、周囲の推薦のしやすさの向上です。人材紹介エージェントも、リファラルで友人を誘う社員も、その会社を第三者に説明する材料を必要としています。発信された記事やインタビューは、そのまま推薦者の説明資料になるのです。

第2章 現状把握——自社は「どの段階」でつまずいているのか

第二章 現状把握——自社は「どの段階」でつまずいているのか

施策の話に入る前に、強調しておきたいことがあります。採用広報でやるべきことは、自社の現状次第でまったく変わるということです。言い換えれば、現状把握とは「4つの段階のどこでつまずいているか」を特定する診断作業です。確認すべきは「自社の見られ方」と「採用活動の現状」の2つです。

(1)自社の「見られ方」を確認する

候補者になったつもりで、次の4つの経路から自社を見てみましょう。

①HP

採用ページが独立して存在するか、募集中の求人が掲載されているか、そのまま応募できる導線があるか。見やすさと情報の充実度が問われます。

②検索キーワードの予測候補

検索エンジンに社名を入れたとき、「社名 やばい」「社名 ブラック」といったネガティブな予測キーワード(サジェスト)が表示されないか。

③生成AIの説明

自身が候補者になったつもりで「採用選考を受ける候補者として、●●社について知っておくべき悪い情報や懸念材料を整理して」とChatGPT、ClaudeやGeminiなどの生成AIに指示し、どのような回答が返ってくるかを把握します。

④口コミ

OpenWorkのような転職口コミサイトや、Googleビジネスプロフィールに、自社についてどのような情報が書かれているかを確認します。

そのうえで、自社の発信状況を棚卸しする際は、次の4つの切り口で見ていくと抜け漏れなく整理できます。

  • 会社理解——事業状況、産業構造、制度、ルール
  • 仕事理解——職務内容、1日の流れ、キャリアパス
  • 人・文化理解——どんな人が、どんな雰囲気で働いているか
  • 条件・環境理解——処遇、働き方、勤務地、オフィス環境

確認した結果は、4つの段階に対応づけて読み解きます。

検索しても自社の情報がほとんど出てこないなら「認知」の段階に課題があると考えられます。

情報は出てくるが古い・薄い・断片的なら「理解・信頼」の段階に影響します。

自社の発信内容と、口コミやAIの説明が食い違っている場合は、「信頼」の段階でつまずいている可能性があります。

そして、こうした不足は最終的には「ここで働きたい」と感じてもらうための「意欲」の形成に影響を与えてしまいます。

具体的なチェック項目を図1にまとめました。まずはこの20項目のセルフチェックから始めてみてください。

確認先 セルフチェック項目
①HP
  • □ 採用ページが独立したページとして存在するか
  • □ 募集中の求人が漏れなく掲載され、情報が最新か
  • □ ページからそのまま応募できる導線があるか
  • □ 仕事内容・待遇・働き方が具体的に書かれているか
  • □ 社員の顔や職場の様子が見えるコンテンツがあるか
②検索候補
  • □ 社名で検索し、公式サイトが上位に表示されるか
  • □ 「社名+採用」で自社の採用ページが上位に出るか
  • □ サジェストにネガティブな語が表示されないか
  • □ ネガティブな語が出る場合、検索結果の中身まで確認したか
  • □ 複数の検索エンジンで同様の確認をしたか
③生成AI
  • □ 「●●社について教えて」への回答に事実誤認がないか
  • □ 「候補者として知るべき懸念材料は」への回答を把握したか
  • □ AIがどのサイト・情報源を参照しているかを確認したか
  • □ 競合と比較させた際の自社の描かれ方を確認したか
  • □ 複数のAIサービスで同様の確認をしたか
④口コミ
  • □ 主要な転職口コミサイトの自社ページを確認したか
  • □ 評点だけでなく、書き込みの内容と投稿時期まで読んだか
  • □ Googleビジネスプロフィールの口コミを確認したか
  • □ 指摘が「現在も事実か」「改善済みか」を仕分けたか
  • □ 定期的に確認する担当者と頻度を決めたか

図1:自社の「見られ方」セルフチェック20項目

(2)採用活動の現状を把握する

もうひとつの確認対象は、採用活動そのものの数字と、関係者の声です。定量面では、職種別の応募数、選考通過率、選考辞退率・内定辞退率に偏りや異常がないかを確認します。数字もまた、段階に対応しています。応募が少ないのは「認知」「理解」に、選考途中や内定段階の辞退が多いのは「信頼」「意欲」に課題があるサインです。

定性面では、辞退した候補者へのアンケートや、人材紹介エージェントからのフィードバックを回収し、「候補者に届いていない情報」「誤解されている点」を特定します。

この2つを突き合わせると、採用広報で埋められるギャップが見えてきます。たとえば、口コミサイトに数年前の労働環境に関する悪評が残っており、どうやらそれを見た候補者の選考辞退が一定数発生しているらしい、という仮説が立ったとします。これは「信頼」の段階でのつまずきです。

ここで、見つかった悪い情報への基本方針を整理しておきます。検索候補や口コミサイトの投稿は、企業が直接コントロールできる領域ではありません。削除申請という手段もありますが、認められる要件は限られており、確実な対策とは言えません。企業側で確実に打てる手は、候補者が次に目にする情報を自社で用意しておくこと、すなわち「消す」のではなく「応答する」ことです。

応答するといっても、実態より良く見せるという意味ではありません。ポイントは、課題の状況に応じて発信の中身を変えることです。課題は、次の3つに分けて考えます。

すでに解決した過去の課題:
当時の事実を認めたうえで、現在どう変わったのかを自社の言葉で発信します(例:口コミサイトに「残業が多い」という数年前の投稿が残っているなら、業務改善の経緯と現在の平均残業時間を、当時を知る社員の言葉も交えつつ記事にします)。
いままさに改善の途上にある課題:
課題があること自体を認め、取り組みの現在地と方向性を率直に伝えます(例:評価基準の不透明さへの不満が挙がっているなら、「課題と認識しており、今年度から評価制度の改定に着手した。来期から新制度へ移行予定」と、進捗と時期も含めて示します)。
すぐには変えられない課題:
給与水準や勤務地、事業構造のように、努力だけでは短期に動かせない条件もあります。この場合も、取り繕ったり無かったことにしたりするのではなく、事実として開示したうえで、その条件を補って余りある自社の価値をあわせて伝えます(例:「給与水準は業界大手には届きません。その分、20代から事業の中核を担える裁量があります」のように、誠実に正しく実態を伝えつつ、アピールできることで補います)。

第三段階の「信頼」とは、発信内容と実態が一致していると信じてもらうことでした。実態と一致している限り、課題の開示そのものが信頼を損なうことはありません。むしろ、課題を承知したうえで応募してくれた候補者は、選考途中の辞退や入社後の早期離職に至りにくくなります。

この応答の具体的なやり方が、次章の5つの施策、とりわけ施策1(求人票での正直な開示)と施策4(記事での発信)にあたります。

辞退理由を可視化する
選考辞退や内定辞退の背景には、企業側が把握できていない不安や誤解が隠れていることがあります。候補者の声を収集する仕組みづくりも、採用広報改善のヒントになります。

>「内定辞退者インタビュー・アンケートサービス案内」をダウンロードする

第3章 今日からできる5つの施策——つまずいた段階を乗り越える

第三章 今日からできる5つの施策——つまずいた段階を乗り越える

ここからは具体的な施策です。

5つの施策は、「受け皿を整える(施策1・2)→接点を広げ、理解を深める(施策3・4)→AIに備える(施策5)」の順に並べています。発信を頑張って接点を増やしても、たどり着いた先の求人票やHPが整っていなければ、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものだからです。また、各施策の見出しには主に効く段階を添えました。第2章の診断結果と突き合わせて、自社の優先順位をつけてください。

施策1:求人票の見直し【主に効く段階:理解・信頼】

採用広報の一部に求人票が含まれるという考え方は意外かもしれませんが、求人票は候補者とのコミュニケーションの入り口であり、選考中に都度参照されうる重要な情報発信チャネルです。

掲載情報が古いままになっていないか、仕事内容が「入社後の1日」を想像できる具体度で書かれているか。この2点だけでも、候補者への伝わり方は大きく変わります。書き方の詳細は、本サイトの「応募が来ない求人票」「いい人が集まる求人票」、および筆者執筆の「綺麗な求人票ほど信頼されない時代」もあわせてご覧ください。

【今日やる3アクション】

  • □ 全求人の掲載情報が最新かを確認する(募集終了・条件変更の反映)
  • □ 仕事内容を「入社1年目の1日」が想像できる具体度まで書き直す
  • □ 仕事の大変な面・自社の弱みも一行入れる(口コミで指摘されがちな点ほど、先に自社から書くのが効果的です)

施策2:HP採用ページの整理【主に効く段階:理解・信頼】

候補者との最大の接点は、やはり自社HPです。応募を迷っている候補者のほぼ全員が、応募前にHPを訪れると考えてよいでしょう。

ただし、サイトの作り替えには費用も技術も時間もかかりますので、全面リニューアルは不要です。まずは「いま直せる範囲」に絞り、募集要項の鮮度と具体性、応募までの導線、社員の顔が見えるコンテンツ、の順で手を入れていきます。凝ったデザインより、情報が新しく、詳しく、探しやすく、充実していることのほうがずっと重要です。

【今日やる3アクション】

  • □ 採用ページの情報の鮮度と具体性を確認し、古い記載を更新する
  • □ トップページから応募完了までのクリック数を候補者目線で数え、導線を短くする
  • □ 社員の顔が見える写真やコメントを、1点でもよいので追加する

施策3:SNSでの情報発信【主に効く段階:認知】

受け皿が整ったら、接点を広げる番です。会社アカウントでのSNS発信は、プレスリリースの紹介、社内イベントの様子、メンバー紹介など、身近な話題で構いません。なお、無理に個人を前面に出す必要はありませんが、顔が見える発信ができるなら、そのほうが信頼性は増します。

ここで大切な心構えがひとつあります。ウケやバズを狙わないことです。採用広報におけるSNSの目的は、拡散ではなく、継続的な発信による信頼の担保です。「この会社は定期的に、飾らない情報を出し続けている」という事実そのものが、候補者にとっての信頼の礎になります。週1回でも、続けられる頻度を先に決めて、淡々と積み上げましょう。

また会社で運用している会社全体の広報SNSがあるのであれば、そこに採用情報を散りばめていくのも一つのやり方としては有効なのですが、やはり目的を分けて採用目的だけでSNS運用を行うほうが効果的になるケースが多いです。

【今日やる3アクション】

  • □ 発信するテーマを3つ決める(例:リリース/イベント/人)
  • □ 続けられる頻度を先に決める(週1回など)
  • □ 「バズより継続」をチームで合意しておく

施策4:note・自社サイトでの記事発信【主に効く段階:理解・意欲】

SNSが「見つけてもらう」ためのフロー型の発信だとすれば、記事は「深く知ってもらう」ためのストック型の発信です。その内容には、社員インタビュー、自社の人事制度の解説、主要な職種ごとの仕事の1日の流れ、オフィス紹介といった、じっくり読ませるコンテンツが向いています。SNSで接点を持った候補者が、記事で理解を深め、HPの求人票にたどり着く——この2層構造を意識して役割分担させると、それぞれの発信が活きてきます。

記事の掲載場所には、noteのような外部プラットフォームと、自社サイト(オウンドメディア)の2つの選択肢があります。

noteの強みは、始めやすさです。無料で今日から開設でき、デザインを考える必要がなく、プラットフォーム内の回遊によって読者が流入してくることもあります。一方、自社サイトの強みは資産性です。記事が自社ドメインに蓄積され、検索エンジンやAIからの評価も自社サイトへ直接に積み上がっていきます。

社内にページを更新できる環境と体制があるなら、自社サイトでの発信でまったく問題ありません。本稿の想定読者のように「まず始める」段階であれば、開設のハードルが低いnoteで発信の型をつくり、軌道に乗ったら自社サイトへの併載や移植を検討する、という順番が現実的です。

テーマとしては、まずは社員インタビューをおすすめします。30分〜1時間、社員に入社理由と仕事のやりがいや大変さを聞くだけで、1記事分の素材が集まります。文章の巧拙より、現場の言葉がそのまま載っていることに価値があります。

また、第2章で触れた「悪い口コミへの応答」についても、こうした記事発信は有効です。例えば、口コミサイトで指摘されている過去の課題に正面から触れ、当時の背景と現在の変化を説明する記事は、候補者の不安に先回りして答える強力なコンテンツになります。

【今日やる3アクション】

  • □ 記事の置き場所を決める(迷ったら、まずnoteから)
  • □ 最初の記事テーマを1本決める(おすすめは社員インタビュー)
  • □ 30分のインタビューをカレンダーに入れ、素材を録る

施策5:AEOへの着手【主に効く段階:認知・理解(AI経由)】

最後に、第1章で触れた生成AIへの対応です。AEO(Answer Engine Optimization)とは、生成AIが自社について回答する際に、正確で好ましい説明がなされるよう情報環境を整える取り組みを指します(LLMO、GEOなど、呼び方はまだ定まっていません)。本稿では概要にとどめますが、押さえるべきポイントはシンプルです。AIに正しく読まれるためには、構造化された一次情報を、自社がコントロールできる場所(主には自社ドメインのサイト)で発信し続けましょう。会社概要、事業内容、採用情報が、画像ではなくテキストとして自社サイトに明記されていることが重要です。これはAIが情報を参照する際に画像よりテキストの方が認識されやすいという理由があります。

そしてお気づきでしょうか。施策①〜④で積み上げてきた求人票、HP、SNS、記事の発信は、それ自体がAIの参照する情報源になります。厳密にはSNSやnoteは自社ドメインではありませんが、自社の管理下で発信する一次情報という意味では同じ側にあります。つまり、ここまでの4つの施策を誠実に続けることが、そのまま最良のAEO対策になるのです。

【今日やる3アクション】

  • □ 生成AIに自社について尋ね、現在の回答を記録する(定点観測の起点にする)
  • □ 会社概要・事業・採用情報がHP上にテキストで明記されているか確認する
  • □ 施策1〜4の発信を続ける

最後に、5つの施策と4つの段階の対応をまとめておきます。受け皿(施策1・2)が「理解」と「信頼」の土台をつくり、SNS(施策3)が「認知」を広げ、記事(施策4)が「理解」と「意欲」を深め、AEO(施策5)がAI時代の「認知」と「理解」を守ります。5つの施策はバラバラの打ち手ではなく、4つの段階を順に進めていくための道具立てなのです。

中途採用 採用手法大全 12の手法を解説

応募経路ごとの特徴にあわせた施策を整理したい場合は、中途採用で使われる代表的な採用手法の特徴をまとめた資料をご用意しておりますので、ご参照ください。

【中途採用】採用手法大全12の手法を解説

終わりに——実態と認識のズレを、発信で埋める

最後に、ここまで述べてきた打ち手を実際に講じた企業の話をさせてください。第2章で挙げた「古い悪評が候補者を遠ざける」状況に、発信の力で向き合った実例です。その会社は一時期、経営不振から希望退職を募った時期がありました。当時の施策に関する厳しい報道が出回り、口コミサイトの評価も悪化していました。その後、経営陣の努力で各種の改革が実を結び、業績は売上にも顕著に表れるほど回復しました。ところが、世の中の認識がそこに追いついていない状況でした。候補者が目にするのは数年前の報道と古い口コミばかりで、応募の低迷が続いていたのです。

そこで人事チームは、HPやnote上にて、社員インタビュー、経営陣インタビュー、産業動向レポートといった発信を重層的に行いました(本稿でいう施策2と施策4にあたる打ち手です)。会社の現在地と、そこに至る変化の物語を自分たちの言葉で積み上げていったのです。結果、まずエージェントの紹介姿勢が変わり、候補者の面談での反応が変わり、母集団形成と辞退率の改善という数字にまで表れました。

この過程で起きていたことは、まさに4つの段階の立て直しです。数年前で止まっていた「理解」が更新され、実態と発信の一致が「信頼」を取り戻し、それが「意欲」の変化として表れたのです。

この事例が示すのは、実態がどれだけ良くなっても、発信しなければ世の中の認識は昨日のままだという、シンプルな事実です。そして採用広報とは、自社を実態以上に「盛る」ことではなく、確からしい情報を出し続けて、実態と認識のズレを埋めていく営みだということです。

費用をかけた派手な施策は、その後からでも間に合います。まずは自社の「見られ方」を知り、求人票とHPを整え、状況・環境に応じた身の丈に合った発信を今日から始めることが重要です。本稿がその最初の一歩の後押しになれば幸いです。

出典・参考データ

● 株式会社マイナビ キャリアリサーチLab「SNS・口コミサイトが転職市場に与える影響」(2025年5月公表)——2024年転職者の51.3%が退職後に前職について投稿(20代は6割超)、中途採用担当者の4割超が投稿を日常的に確認

https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250528_99882/ 外部リンク(アクセス日:2026/09/24)

● 株式会社Itera「転職活動における企業情報の収集方法に関する調査」(2026年8月公表、全国の会社員5,000名のうち過去1年以内に転職活動を行った880名を分析)——企業情報の収集方法として「生成AIに質問した」26.0%(口コミサイト12.5%の約2倍)、AI要約を含めAI経由で企業情報に触れた転職活動者35.7%、AIで調べた内容の最多は「企業の事業内容・評判」59.2%

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000177930.html 外部リンク(アクセス日:2026/09/25)

著者プロフィール

坂本宙彌 (Sherpa Partners株式会社 代表取締役)

坂本宙彌 (Sherpa Partners株式会社 代表取締役)

早稲田大学政治経済学部卒業後、採用・人事領域にて13年にわたり経験を積み、2025年にSherpa Partners株式会社を創業。

社員数名規模のスタートアップから、日系上場企業、従業員数万人規模の外資系企業まで、幅広い規模・産業における採用支援に携わる。転職エージェント、採用ツール開発、事業会社人事、RPOなど、採用に関わる多様な立場での経験を活かし、採用戦略の設計から実務実行までを一貫してサポートしている。