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SNSが日常に広く浸透し、採用手法のひとつとして存在感を増しています。
SNSを利用する採用手法を、「ソーシャルリクルーティング」といいます。今回は、うまく利用すれば低コストで希望の人材確保が期待できる、ソーシャルリクルーティングの特徴や成功するためのコツなどを紹介します。
「ソーシャルリクルーティング」とは、SNSを活用した採用手法のことで、「SNS採用」とも呼ばれており、最近では多くの企業が取り入れています。
SNSは従来の採用サイトなどと比べて自社の魅力や社風などを、よりリアルにスピーディーに発信することが可能です。それにより「企業理解が深まる」「親しみを感じてもらう」「イメージアップにつながる」などといった求職者への企業イメージの浸透が期待されています。
ソーシャルリクルーティングが広く利用されるようになった背景には、SNSの急速な普及があげられます。総務省の「平成30年版 情報通信白書」によると、インターネットで利用した機能・サービスのうち「SNSの利用」を挙げた率は、13歳~19歳、20代、30代、40代の幅広い層で60%を超えています。
ダイレクトリクルーティングは、求職者からの応募を待つのではなく企業側から直接求職者へアプローチをする採用手法全般を指す言葉です。企業が求職者へ積極的に働きかけるという観点から、ソーシャルリクルーティングはダイレクトリクルーティングの1つといえます。
ダイレクトリクルーティングに関して、より全体的に理解したいという方はダイレクトリクルーティングとは?他サービスとの違いを比較をご覧ください。
ソーシャルリクルーティングには、次のようなメリットがあります。
広告配信などの追加機能については有料である場合がほとんどですが、SNSの基本機能は通常無料であるため、導入・運用のコストが低く、結果的に採用コストを抑えられる可能性が高くなります。
企業の情報発信によって求職者はより企業を理解しやすくなります。また、企業側も身近な連絡ツールであるSNSを通して求職者とのコミュニケーションを図ることで、その人物像が見えやすくなります。相互理解が促進され、雇用のミスマッチの回避が期待できます。
SNSで自社の魅力を発信すれば、求職者だけでなく広く世間に情報が届きます。
多くのSNSではシェア機能があり、役に立つ情報やおもしろい切り口、企業の信念が伝わるを発信すれば、それを拡散してもらえる可能性もあります。
発信を継続することで、広く企業の認知度向上やイメージアップにつながることが期待できます。
紹介したようにさまざまなメリットがあるソーシャルリクルーティングですが、次のようなデメリットもあります。
ソーシャルリクルーティングを始めても、すぐに成果が出るものではないことを、あらかじめ理解しておくことが大切です。
ファンやフォロワー獲得など、まずは見てもらうまでにも時間がかかります。また、ひたすら情報を流すのではなく、ターゲット層の興味関心を分析しながら、情報も根気よく定期的に更新していく必要があります。
大きなデメリットとして、「炎上リスク」があげられます。SNSへの投稿内容が意図しない伝わり方をし、結果的に「偏った考え方」だと炎上してしまうことがあります。
さまざまな価値観やとらえ方の人がいることを意識して、慎重に発信しなければなりません。また、炎上リスクは可能性を減らすことはできても完全にコントロールすることは困難です。万が一炎上が起こった場合に迅速に動ける体制を整えておくことも大切です。
SNSを採用に取り入れる方法を4つご紹介します。
SNSを用い母集団形成を行います。ダイレクトリクルーティングの一種としての活用であり、気になるSNSユーザーに直接コンタクトを取り、質の高い母集団形成を図ります。
採用の案内や説明会、カジュアル面談の打診など、ユーザーの関心度に合わせてアプローチを行います。
1対1のコミュニケーションとなるため、怪しまれないことが重要です。SNSの企業プロフィールやコンテンツを充実させるなど、信頼感を得られるよう心がけましょう。
関連記事:母集団形成とは?15の方法と質を上げるポイントを解説|事例付
SNSでのアプローチは、比較的カジュアルになりやすい側面もあります。SNSでの発言や言葉遣い、コミュニケーションを仕方やレスポンスの速さなど人柄や関心度を知ることができます。
採用広報の一環としても活用ができます。採用情報だけではなく、社内の様子やキャリアパス、福利厚生など求人情報だけでは得られない情報を求職者に提供することが可能です。
また、企業理念に基づいた活動や発信は、ブランディングを高めるだけでなく、Z世代など「企業の社会的貢献」を評価する層にも訴求することが可能です。
SNS内での検索やハッシュタグなどを利用し、自社の評価や評判などの情報収集をすることができます。
採用イベントや会社説明会など、参加者のリアルな声を拾うことで、改善できる点が見つかりますし、自社では思いつかなかった意外な魅力や評価されているポイントも発見できます。
総務省 情報通信政策研究所の「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」による、日本における代表的なSNSの利用率は、LINEが92.5%、Facebookが32.6%、X(旧:Twitter)が46.2%、Instagramは48.5%でした。
日本における利用割合が多いこれらのSNSを中心に、それぞれの基本的な特徴を紹介します。
家族や身近な友人などリアルな対人関係における連絡手段として日常的に利用されています。チャット機能はメールや電話と比較すると気軽に返信ができることから、日程調整などの連絡手段や問い合わせ対応に向いています。
国内9,500万ユーザー(※2023年3月時点)に向け、性別や年齢、居住エリアなどターゲティングを絞っての広告配信が可能です。
幅広い世代が活用していますが、面識のないアカウントとつながりを持つことは少ないため、幅広い認知や無関心層へのアピール・意識醸成のために使用するのは難易度が高いでしょう。
採用に関する機能として、スポットワークに特化したマッチングサービスを提供しています。
応募者選考なし、勤怠管理はサービス内のシステムを利用、給与の立替支払いをLINE社が行うなど、採用から給与支払いまでをすべてサービス内で完結させることで事務工数を削減しています(応募者選考あり、給与自社払いが可能なプランの提供もあり)。
空いている数時間ですぐ働きたいというニーズに特化したサービスのため、初めての人でも覚えやすい、業務手順の説明の時間や手間のかからない業務(軽作業やマニュアル化された簡単な接客など)の募集に向いています。
もうひとつは、LINE公式アカウントで友達登録を増やし、採用情報を提供する方法もあります。仕事情報や社内の様子がわかるコンテンツを配信することで、自社への理解を深め、興味関心を高めていく施策とします。
面識のある友人や知人間、あるいはビジネス上の情報発信や連絡手段として利用されています。実名登録が基本で、結婚や転職など大きなライフイベントの変化について報告する場として活用している人も多く、他のSNSと比較するとややかしこまった投稿がされる傾向がみられます。
グループ機能を使った共通の話題について交流するコミュニティの作成ができ、ビジネス関連のコミュニティも多く作られています。30~50代の利用者が多いため、中途採用に活用しやすいSNSです。
Facebookビジネスアカウント(企業アカウント)を作成するには、Facebook個人用アカウントが必要です。Facebookは、1名につき1アカウントを原則としており、個人用アカウントをプライベート利用と業務利用で分けて所有するのはコミュニティ違反となるため、注意が必要です。
Facebookには30日間無料で求人情報を投稿できる「求人情報 on Facebook」という機能がありましたが、2023年2月22日に提供が終了しています。そのため、主な活用シーンはビジネスアカウントでの情報発信や交流のほか、広告掲載になります。
「いいね」「フォロー」や、気に入ったツイートを自分のアカウントに流せる「リツイート」などの機能があり、情報の拡散力が強いのが特徴です。情報発信だけでなく情報収集ツールとして活用する人も多く見られます。
日本での月間利用者数は4,500万人(2017年10月時点)とされており、10~30代では半数以上が利用しています。企業ブランドの構築やイメージアップに向いているといえそうです。
2023年7月現在、ツイートの閲覧数制限などをはじめとしたシステム改修やルール変更をはじめ、様々な変更が運営会社によってなされているため、最新の状況を注視して運用する必要があります。
地域、言語、端末、年齢、性別などでターゲティングを絞った広告運用が可能なため、求人広告をターゲット向けに配信することなどが、活用法としてあげられます。
また、採用情報や社内文化を表現できるようなコンテンツを配信することで、認知の拡大が期待できます。
写真や動画で構成されるSNS。以前は10代~30代の女性が主流でしたが、最近では男性の利用者も増え、10代~40代の半数以上が利用しています。視覚に直接訴えることができるため、企業ブランドの構築やイメージアップに適しているといえそうです。
Facebookと運営会社が同じであることから、Facebook広告のアカウントでInstagramの広告を出稿することができます。
YouTubeは10台から40代で90%を超える利用率があり、幅広い年齢層に情報をリーチすることができます。YouTubeに動画コンテンツをアップし、YouTube内で広告配信をすることも可能ですが、企業サイトやナビサイト、その他のSNSなどを活用して情報拡散する方法もあります。
動画配信・共有サービスを活用することで、オフィスの雰囲気や実際の仕事風景など、テキスト・静止画だけでは伝わりづらい空気感を伝えられます。動画コンテンツは、仕事内容の紹介や、社員インタビューなど、よりリアルな情報を届けたいコンテンツに向いています。
アメリカ発祥で実名登録が基本のビジネス特化型SNSが「LinkedIn」です。ビジネス特化型のため、プライベートユースが中心の他のSNSと比較して利用率は低めではありますが、日本の登録ユーザー数は300万人超といわれています。
求職者の企業探しや選考エントリーにも活用できるビジネスや採用に特化したSNSには、日本発祥の「Wantedly」などがあります。
欧米諸国では仕事さがしの方法として標準的に利用されていることから、グローバル志向の高い人材やキャリアに対する意識のある人材多く登録されている傾向にあります。
オプション機能では、求人広告掲載以外にも、企業が会員データベースに直接アクセスでき、転職希望者に対して直接スカウトメールが送信できるリクルーター機能があるのが特徴的です。
ソーシャルリクルーティングを導入する場合のポイント4つご紹介します。
既述のように、SNSにもさまざまな種類があります。ソーシャルリクルーティングを始める際は、各SNSの特徴を理解してターゲットや目的に合ったSNSを選ぶことが大切です。
そのためには、まずソーシャルリクルーティングを導入する目的を明確にする必要があります。例えば、「短期間で退職する社員が多いので入社前に会社への理解度を深めるツールとして」「採用活動の途中でフェードアウトする求職者が多いので、求職者との連絡手段として」などと、具体的に掘り下げていきます。
また、目的が明確になったのなら、どのような内容で展開していくか、トーン&マナーはどうするかなど、それに応じたコンテンツテーマを決めていきます。
以上に加えて、安定して継続するために、更新頻度や返信のタイミング、担当者など、運用方針を打ち立てておく必要もあります。
ソーシャルリクルーティングは即効性を期待することはできず、継続こそが重要です。また、一方的な情報発信で終わっては、効果が半減してしまいます。地道に情報発信や求職者とのコミュニケーションを積み重ねていくことが求められます。
ソーシャルリクルーティングが有効な採用手法だからといって、いきなりこれだけに採用手法を絞ってしまうことは危険です。前述のとおり結果が出るまでに時間がかかりますし、必ずしも運用がうまくいくとも限りません。あくまでも一つの手法として、他の採用手法とうまく併用していくことが大切です。
例えばSNSは現場のリアルな雰囲気を伝えるツールとして、ホームページは企業の基本情報や応募方法などの公式情報を掲載する場として、などと使い分けていくのもいいでしょう。
SNSで自社の雰囲気に興味を持ってくれた求職者を自社のページへ誘導し、そこで募集職種や報酬などを確認し、エントリーしてもらう。逆に、自社のホームページに訪問して仕事内容や休暇制度などに興味を持ってくれた求職者をSNSへ導き、現場の雰囲気を見てもらう。このような相互補完的な戦略が現実的です。
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