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スマートフォンなどで気軽に確認できることから、ついついSNS(ソーシャルネットワークサービス)を1日に何度も見てしまうという人も少なくないのではないでしょうか。SNSが日常に広く浸透し、採用手法のひとつとして存在感を増しています。SNSを利用する採用手法を、「ソーシャルリクルーティング」といいます。今回は、うまく利用すれば低コストで希望の人材確保が期待できる、ソーシャルリクルーティングの特徴や成功するためのコツなどを紹介します。
「ソーシャルリクルーティング」とは、SNSを活用した採用手法のことで、最近では多くの企業が取り入れています。
SNSでは、従来の採用サイトなどと比べて自社の魅力や社風などをよりリアルに、スピーディーに発信することが可能です。それにより「企業理解が深まる」「親しみを感じてもらう」「イメージアップにつながる」などといった求職者への企業イメージの浸透が期待されています。
ソーシャルリクルーティングが広く利用されるようになった背景には、SNSの急速な普及があげられます。総務省の「平成30年版 情報通信白書」によると、インターネットで利用した機能・サービスのうち「SNSの利用」を挙げた率は、13歳~19歳、20代、30代、40代の幅広い層で60%を超えています。
なお、ソーシャルリクルーティングと似た言葉に「ダイレクトリクルーティング」があります。ダイレクトリクルーティングは、求職者からの応募を待つのではなく企業側から直接求職者へアプローチをする採用手法全般を指す言葉です。企業が求職者へ積極的に働きかけるという観点から、ソーシャルリクルーティングはダイレクトリクルーティングの1つといえます。
ダイレクトリクルーティングに関して、より全体的に理解したいという方はこちらの記事をご覧ください。
前述の総務省の「平成30年版 情報通信白書」による、代表的なSNSの利用率は、LINEは58.1%、Facebookは41.2%、Twitterは40.4%、Instagramは28.1%でした。
日本における利用割合が多いこれらのSNSのそれぞれの基本的な特徴を紹介します。
家族や身近な友人などリアルな対人関係における連絡手段として日常的に利用されています。チャット機能はメールや電話と比較すると気軽に返信ができることから、日程調整などの連絡手段や問い合わせ対応に向いています。
幅広い世代が活用していますが、面識のないアカウントとつながりを持つことは少ないため、幅広い認知や無関心層へのアピール・意識醸成のために使用するのは難易度が高いでしょう。
面識のある友人や知人間、あるいはビジネス上の情報発信や連絡手段として利用されています。実名登録が基本で、結婚や転職など大きなライフイベントの変化について報告する場として活用している人も多く、他のSNSと比較するとややかしこまった投稿がされる傾向がみられます。30~50代の利用者が多いため、中途採用に利用したいSNSです。
「いいね」「フォロー」や、気に入ったツイートを自分のアカウントに流せる「リツイート」などの機能があり、情報の拡散力が強いのが特徴です。情報発信だけでなく情報収集ツールとして活用する人も多く見られます。10~40代と利用者の幅は広く、特に若年層から支持されています。企業ブランドの構築やイメージアップに向いているといえそうです。
写真や動画で構成されるSNS。10代~30代あたりの利用者が多く、以前は女性が主流でしたが、最近では男性の利用者も増えています。視覚に直接訴えることができるため、企業ブランドの構築やイメージアップに適しているといえそうです。
ほかに、アメリカ発祥で実名登録が基本の「LinkedIn」や、求職者の企業探しや選考エントリーにも活用できる日本発祥の「Wantedly」など、ビジネスや採用に特化したSNSもあります。
ソーシャルリクルーティングには、次のようなメリットがあります。
SNSの基本機能は通常無料であるため、導入・運用のコストが低く、結果的に採用コストを抑えられる可能性が高くなります。
企業の情報発信によって求職者はより企業を理解しやすくなります。また、企業側も身近な連絡ツールであるSNSを通して求職者とのコミュニケーションを図ることで、その人物像が見えやすくなります。相互理解が促進され、雇用のミスマッチの回避が期待できます。
SNSで自社の魅力を発信すれば、求職者だけでなく広く世間に情報が届きます。また、多くのSNSではシェア機能があり、おもしろい情報を発信すれば、それを拡散してもらえる可能性もあります。発信を継続することで、広く企業の認知度向上やイメージアップにつながることが期待できます。
紹介したようにさまざまなメリットがあるソーシャルリクルーティングですが、次のようなデメリットもあります。
ソーシャルリクルーティングを始めても、すぐに成果が出るものではないことを、あらかじめ理解しておくことが大切です。ファンやフォロワー獲得など、まずは見てもらうまでにも時間がかかります。また、情報も根気よく定期的に更新していく必要があります。
大きなデメリットとして、「炎上リスク」があげられます。SNSへの投稿内容が意図しない伝わり方をし、結果的に「偏った考え方」だと炎上してしまうことがあります。さまざまな価値観やとらえ方の人がいることを意識して、慎重に発信しなければなりません。また、炎上リスクは可能性を減らすことはできても完全にコントロールすることは困難です。万が一炎上が起こった場合に迅速に動ける体制を整えておくことも大切です。
既述のように、SNSにもさまざまな種類があります。ソーシャルリクルーティングを始める際は、各SNSの特徴を理解してターゲットや目的に合ったSNSを選ぶことが大切です。
そのためには、まずソーシャルリクルーティングを導入する目的を明確にする必要があります。例えば、「短期間で退職する社員が多いので入社前に会社への理解度を深めるツールとして」「採用活動の途中でフェードアウトする求職者が多いので、求職者との連絡手段として」などと、具体的に掘り下げていきます。また、目的が明確になったのなら、どのような内容で展開していくか、トーン&マナーはどうするかなど、それに応じたコンテンツテーマを決めていきます。
以上に加えて、安定して継続するために、更新頻度や返信のタイミング、担当者など、運用方針を打ち立てておく必要もあります。
ソーシャルリクルーティングは即効性を期待することはできず、継続こそが重要です。また、一方的な情報発信で終わっては、効果が半減してしまいます。地道に情報発信や求職者とのコミュニケーションを積み重ねていくことが求められます。
また、ソーシャルリクルーティングが有効な採用手法だからといって、いきなりこれだけに採用手法を絞ってしまうことは危険です。前述のとおり結果が出るまでに時間がかかりますし、必ずしも運用がうまくいくとも限りません。あくまでも一つの手法として、他の採用手法とうまく併用していくことが大切です。
例えばSNSは現場のリアルな雰囲気を伝えるツールとして、ホームページは企業の基本情報や応募方法などの公式情報を掲載する場として、などと使い分けていくのもいいでしょう。
SNSで自社の雰囲気に興味を持ってくれた求職者を自社のページへ誘導し、そこで募集職種や報酬などを確認し、エントリーしてもらう。逆に、自社のホームページに訪問して仕事内容や休暇制度などに興味を持ってくれた求職者をSNSへ導き、現場の雰囲気を見てもらう。このような相互補完的な戦略が現実的です。
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