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母集団形成は、採用成功の可否に大きく影響します。ほしい人材を、必要な時期までに採用できるかは、良い母集団が形成できているかにかかっていると言っても過言ではありません。
一方で、採用活動は事務工数が大きく、工数がかかる業務でもあります。
このような事務業務をアウトソーシングし、よい採用チャネルの選定や施策の実行、面接などコア業務に集中できる環境を整えている企業が増えています。事例集を用意していますので、ぜひご覧ください。
企業が必要な人材を確保するには採用戦略が求められます。
やみくもに募集をかけても、「コストや労力がかかるわりに採用できない」「採用しても早期退職してしまう」といった事態を招きかねません。採用戦略のなかでも(その冒頭に位置する)「母集団形成」は、採用の初期段階における重要なポイントであり、採用成功の可否に直結します。
この記事では、採用における母集団形成の基礎知識、実施のポイントと母集団形成の種類、留意すべきポイントについて解説します。
「母集団」という言葉は、もともと統計学で使われていた用語です。統計処理を行う際に、調査のために集めたサンプルのことを「標本」と呼びます。それに対して、調査対象となる全体像のことを「母集団」と呼びます。
採用活動における母集団とは、「採用候補者の集団」のことを指します。ここで注意すべきポイントは、実際に応募してきた人材だけでなく、自社の求人・仕事内容に興味を持ち、今後、選考に参加する可能性のある人材も「採用候補者の集団」=「母集団」に含まれることです。
母集団形成は、単なる人集めという意味ではありません。将来、社員として活躍してくれそうな一定水準以上の人材であることが大切です。そのためにも、集団を形成する際に「採用ニーズにできる限りマッチした人材の集団をつくること」であることを意識しておく必要があります。
要件を満たし必要な人数を採用するためには、母集団形成への対策が欠かせません。
応募数が増えても要件にマッチする人材からの応募が少なければ採用は難航しますし、質の高い応募者が集まったとしても少なすぎると必要数が採用できません。候補者からの辞退も踏まえた計画的な母集団形成を行うことが重要です。
ただ応募者を募るのではなく、採用したい人材のターゲットを想定し、計画・戦略を立てた上での母集団形成は大きなメリットを生みます。
計画を持たず「いつもと同じように」「とりあえず求人広告」といったような成り行きで採用活動をスタートさせた場合、状況の進捗を適切に判断することが難しくなります。
応募者数が想定した期日までに集まっているのか、集まった応募者はどのくらい次の選考に進むことができたのか(ターゲットが集められているかどうか)など事前立てた予測があれば、早期段階で進捗をチェックすることができます。
採用初期の重要ポイントである母集団形成がうまく進まない場合、当然ながら採用に影響がでてきます。この段階で戦略の見直しや追加施策を講じることができれば、採用の成功率は上がります。
見直しを行う中で、求人要件や選考基準など母集団形成以外の問題も見えてくるかもしれません。早期に募集をかけている部門と状況を共有することで、長期空席やビジネス機会の損失を防ぐことも可能になります。
母集団形成は、採用活動の中でもコスト割合が高く、変動が大きなところです。
求人サイトや人材紹介会社などのエージェントなどを活用するケースが多く、掲載料や紹介手数料といった採用コストが発生します。
それぞれのサービスや提供企業によって、料金発生の条件や費用は異なります。 無計画で進めてしまうと、広告の掲載延長による追加費用や不必要な従量課金の発生、エージェント頼みによる手数料費用の増大など採用コストが増えてしまいます。
チャネルごとで得たい応募数とその想定費用を算出、実績との比較を行うことで、応募単価・採用単価などの傾向が情報として蓄積されます。そうして適切な採用コストを見込むことができ、市況の変化があった場合でも採用コストの変動を関係者に説明することができます。
母集団形成は、職種や雇用形態、市況などさまざまな要因を踏まえて計画を立てることが重要です。適切にチャネルを選ぶことができれば求める要件に合う人材からの応募が見込まれます。
一方で、サービスの特徴や求人内容との相性を想定しないで母集団形成を進めた場合、要件からかけ離れた応募者との対応工数が増大してしまう、あるいは応募が全くこないといった問題も引き起こしてしまいます。
また、採用チャネル毎の成果を見ていくことも大切で、状況に応じた組み合わせを考えながら進めていくことで確度の高い母集団を作っていくことができます。
母集団形成の方法について、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
厚生労働省が設置している公的機関であるため、掲載は無料です。最もメジャーともいえる求人の募集方法であり、幅広い年代や職歴の人に見てもらえる媒体と言えます。
人材紹介会社へ依頼し、登録者の中から人材要件に適した候補者を紹介してもらう方法です。採用が決定した際に、採用決定者の理論年収のうち30~40%程度の紹介手数料が発生します。
さまざまな企業の求人が掲載されるサイトを利用した母集団形成です。求職者は、多くの企業の中から自身の希望に合う案件を見つけたいと考えるため、多くの就職・転職希望者はサイトへ登録します。
求人サイトの特徴もさまざまで、新卒者向け、幅広い転職希望者向け、特定の業界や職種に特化した特化型サイトなどがあります。
一般的な人材紹介は「求職者」向けに行われますが、ヘッドハンティングは転職を希望していない層もターゲットとした人材紹介を行います。
タレントプールだけではなく、さまざまな方法を使って人材要件に沿った人を探してきます。詳しくは、「どのようにしてヘッドハンティング会社は候補者を探し出すのか」で解説しています。
合同説明会とは、就職のイベントみたいなもので、複数の企業が出展し、訪れた求職者に直接自社をアピールすることができます。最近では、オンラインでも開催されています。
コンビニなどに設置されていたり、ポストに入っている紙の求人媒体です。求職者は無料で手にすることが多く、地域性とターゲット層を想定して配布されています。
ソーシャルリクルーティングとも呼ばれる、SNSの圧倒的な拡散力を活用する採用手法です。SNSで求人情報を発信し、応募を促します。採用候補者との交流を深め、志向を探ることで効果を高めていきます。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が自ら、人材データベースやSNSの中から必要な人材にピンポイントにアプローチする手法です。スカウトメールを送り、自社に興味を持ってもらい、応募を促します。
アプローチする人材を探すこと自体が容易でないため、ヘッドハンティングや人材紹介事業者、採用代行サービス(スカウト代行サービス)などを利用するのが一般的です。
自社のホームページに採用ページを設置、採用専用のWebサイトを立ち上げ、サイトからの応募を待つ方法です。自社の魅力が伝わる優れたサイトであれば、興味をもった人材からの応募が期待できます。
最近ではインターネットの活用術として自社サイト内、あるいはYouTubeなどのSNS型動画サイトを利用した採用動画が効果を上げています。もちろん、応募を決定づける要素が十分に盛り込まれたサイトでなければ、母集団形成への役割を果たしてくれません。
リファラル採用とは、ダイレクトリクルーティングのひとつで、自社社員の友人・知人などを紹介してもらう手法です。縁故入社との違いは、候補者としての紹介なので選考は実施し、合否は面接官が決定します。
アルムナイ制度とは、自社の離職者・退職者を再雇用する制度です。転職や子育てなどの理由で、会社を離れた元同僚に戻ってきてもらうという取り組みです。
自社を離れた人材を再雇用するにあたって、既存社員の感情に配慮しておく必要もあります。
新卒採用では、よく利用される母集団形成です。最近だとオンラインで開催されることも多く、一度で多くの求職者に自社をアピールすることができます。
一度に多数の人材を採用する場合などでも用いられる手法です。
こちらも新卒採用でよく利用される母集団形成です。実際に業務を体験してもらうことで、適性を判断でき、またなかなか社外に伝わりにくい自社の魅力をアピールすることができます。
新卒採用限定の母集団形成です。大学や高校などに赴き、会社説明会を実施します。
ミートアップとは、興味や目的が同じ人たちが交流する場のことです。交流会ですので、堅苦しいものではなく比較的カジュアルな雰囲気で行われます。
このミートアップを利用した採用が出てき始めています。例えば、テーマのあるイベントを開催し、その場で採用情報をお知らせる、といったような流れです。
続いては、母集団形成の基本について解説します。
母集団形成は「人数が多いほど良い」というものではありませんが、採用目標に近づけるためには、一定数以上の人数で母集団を形成する必要があります。あらかじめ自社の採用規模を把握し、「どの採用方法を使えば理想的な人数を集められそうか」を検討します。
母集団の大きさは、採用希望人数から割り出した適正人数で決まります。母集団が小さすぎると、やむを得ず意図にそぐわない人材を採用しなければならなくなる、応募者の辞退によって入社人数が目標に満たないなどの問題が発生する恐れがあります。 逆に、候補者が多すぎると、絞り込みや候補者・エージェントとの対応に時間がかかり、採用に遅れが生じます。
ターゲットによってチャネルの選択やボリューム・コストの配分などを決めていきます。職種や雇用形態、年齢、経験によってターゲットとなる人材にリーチできるチャネルは変わります。
例えば、新卒と中途採用では、当然ながらリクルーティングの方法も異なります。新卒の場合、学校訪問による説明会の開催やインターンシップなども母集団形成の方法のひとつです。
また、求人媒体企業や人材紹介会社には、それぞれ得意とする分野(職種や雇用形態など)があるため、発注時に精査が必要です。むやみに求人媒体や人材紹介の取引企業を増やしてしまうと、情報連携などにかかる業務工数の増大や、ターゲットから外れた応募者の増加などの問題が起こりやすくなってしまいます。
ターゲットに応じて採用活動の期間も変化します。新卒採用の場合、各社が同じ時期にほぼ一斉に採用活動をスタートするという特徴があるため、遅れを取ると応募者数が少ない、志望順位が下がって内定辞退率が上がるなどの問題が起きます。
事前にどのように母集団形成を行うか、いつから活動を始めるかなど綿密な採用計画を立てておきましょう。
中途採用の場合はいつでも採用活動を始められますが、即戦力を求めるケースが多いため、長くても数か月スパンにおさまるのが一般的です。
ただ中途採用の目的は、欠員補充以外にも業績向上による組織拡大、プロジェクト始動のための経験者採用など、採用の可否が会社の業績に直結するケースがほとんどです。募集部門が望むスケジュールを確認した上で、母集団形成の方法を選択します。
また、求職者の動きが鈍くなるゴールデンウイークやお盆前、年末年始などもスケジュールに考慮するようにしましょう。
母集団形成の質を上げていくためのポイントをご紹介します。
募集しているポジションの要件を明確化し、人事・当該部門などの採用関係者と認識をすり合わせることを重視しながら、母集団形成に臨みます。
認識がズレてしまっていると、ターゲット外からの応募割合が増え、不必要な工数・採用単価がかかってしまう、人材紹介会社から的外れな紹介が来るなどの問題が起きます。
関係者間の認識のズレを防ぐ目的で、「人材要件チェックシート」をご用意しています。Excelですのでカスタマイズも簡単です。ぜひご利用ください。
母集団形成に「絶対にうまくいく手法」というものはありませんが、数多くの手法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
それを理解し、互いに補完しあえる、メリットのある方法を同時並行で実施することで確実性を高められます。
採用のスケジュール感や募集規模によってチャネルのポートフォリオを組み、サービスを提供する企業の選定も行います。
SNSを利用する場合は、年代や属性などターゲット層に合わせて、どのメディアを活用すれば効果的なのか、露出方法やタイミングを考慮して選ぶ必要があります。
「候補者に対して何をアピールすべきか」という問題は、「誰に対して響く内容か」という観点で決めていきます。
自社のターゲットにとって「魅力あるベネフィットは何か」を考え、採用される側の視点で俯瞰(ふかん)してみます。ターゲット層に向けた緻密なリサーチがアイデアを生み出します。
また、どんなに良いメッセージ・内容を掲載していても、見づらい、使いづらいサイト・構成では求職者はすぐにページ・紙面から離れてしてしまいます。
PCやスマホ、タブレットなど、どの端末からでもユーザビリティに配慮した画面設計にしなければなりません。操作性に優れ、見やすく、わかりやすい画面は、「問い合わせ」や「応募」の増加に結びつく重要なポイントです。
自社の視点だけに凝り固まってしまわないように、採用市場、応募者側のニーズ、競合状況の確認などを随時実施していく必要があります。
求人・求職の状況は刻々と変化していきます。従来の手法がまったく通じない、ということも十分にあり得る話です。応募者側の意識の変化、競合する企業の採用活動について情報を分析し、それらを参考にしながら自社に有利な方向性を探っていきます。
情報収集は付き合いのある人材サービス系企業と定期的に情報交換をしてみるのもよいでしょう。他社や他業界の動きを含め、情報に敏感になっておくことをお勧めします。
意外とできていないのが、データの取得・整理・分析です。
それぞれのチャネルの成果やサービス提供企業ごとの成果などを整理しておくことで、分析が可能となります。具体的には応募人数・各工程での合格数・辞退数・内定者数・コストなどを時系列で把握しておきます。
データ分析し採用活動をブラッシュアップしていくことで、母集団形成の質は向上していきますし、採用コストも適正化されます。また、データという指標を持つことで「前年と同じ手法なのに動きが見えない」「応募者からの反応が芳しくない」といった問題を早期に気づくことができます。
その場合、母集団形成の手法を追加する、思い切って中断し、他のやり方に切り替えるなど、新しい施策や追加施策を実施できます。分析を進める中では、求人要件の認識が一致していないや面接官によって判断基準が異なるなど、母集団形成以外の課題も見えてくることもあります。
「どこが問題なのか」を知るためにもデータ収集と分析は欠かせないのです。
マンパワーグループでは、採用コンサルティング・採用代行サービスを通して、多くの企業の採用活動改善に取り組んできました。ここでは、母集団形成を改善したことによる採用成功事例を簡単にご紹介します。
多数の専門職種を採用するエンタテインメント関連企業では、多くの求人広告を出稿していましたが、転職マーケットにそもそも求職者が少なく、人材紹介会社を利用しての母集団形成も大きな割合を占めていました。
募集ポジションが多いことから、取引する人材紹介会社がどんどん増えていきましたが、面接連絡などの業務に時間を取られ、新規求人の依頼や求人要件の変更がタイムリーに伝えられず、母集団形成がうまくいかない状況に陥っていました。
そこで、人材紹介会社ごとの特徴や、紹介数・採用数などの成果を可視化したレポートを提出し、エージェント対応への優先順位づけを提案。
また、人材紹介会社に対しては、候補者へ表面的な情報だけではなく熱量も伝えられるようなコミュニケーションを実施してもらえるよう、企業や職種に対する理解を深める業務説明会やオフィス見学会などを実施。
対応の優先順位を付けたことで採用効率が上がり、エリアや業界に特化した新たな人材紹介会社の選定にも着手でき、順調に採用できるポジションが増加しています。
全国でパート・アルバイトの採用を行っているアパレル小売企業では、大手求人広告媒体のアルバイト系求人広告サイトや求人情報誌をメインに母集団形成をしており、採用単価が増加傾向でした。
そこで、地方の求人については地域に根差した媒体を活用する、分散する店舗の求人はひとつのエリアに纏めてしまい掲載順位の高いプランに投資するなど、チャネルの精度を上げる方向で提案を実施しました。アルバイト採用であるため、面接回数が少なく採用タームは短い傾向ではあるものの、コストがかからないハローワークへの求人掲載も追加で依頼。
また、顧客向けのメルマガ、店舗ポスターなどで採用活動の告知を実施し、自社ブランドに対する認知・理解がある層を、新たな求人媒体を使わずとも採用母集団として取り込むことに成功しました。
結果、求人難の状況においても採用コストの上昇は抑えられ、横ばい傾向へと変化しています。(エリアによっては改善)
新規大型店舗のオープニングスタッフ採用を短期にて実施する検討をしていたビル運営会社へは、正社員、契約社員、パートタイム主婦層、学生アルバイトと雇用形態が様々であったため、それぞれ採用方法を分けた広告媒体を活用することを提案しました。
それぞれの雇用形態での広告選定、求人票の確認を実施するほか、中でも学生アルバイトの採用を大量に希望していたため、沿線での求人広告の実施や、大学へのアルバイト紹介などの施策を追加しました。また、オープニングスタッフ以降の追加募集については、社員の声などを集めメッセージ・キャッチに反映し、訴求力を高め安定した母集団形成に繋がっています。
採用目標が未達である焦りから、戦略のないまま採用活動を進めると、採用の長期化・不適正なコスト、不要な労力がかかる恐れがあります。
母集団形成は「企業のニーズに沿ったターゲット像」を明確にし、採用候補者の集団に反映させる意識が大切です。
思うように募集が進まないときは、アプローチの方向性に誤りがないかを逐一見直しながら、成果を出せる方法を模索していきます。母集団形成を開始する際に、「状況に合わせた修正点」も考慮しておくとスムーズに展開できます。
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