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企業の義務・ストレスチェック制度の流れや注意点を社労士が解説

掲載日2021年10月19日

最終更新日2024年4月16日

企業の義務・ストレスチェック制度の流れや注意点を社労士が解説

目次

テレワークの普及にともなって、メンタルヘルス不調者が増加傾向にある中、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性がより一層論じられています。企業が従業員に対して行うメンタルヘルス対策にはさまざまな施策がありますが、その中の一つに「ストレスチェック制度の活用」が挙げられます。今回は、ストレスチェック制度について、目的や流れ、活かし方について解説します。

ストレスチェック制度とは何?

「ストレスチェック制度」とは、労働者に対して、自分のストレス状況について気づきを与え、自身でストレス対処を行うことです(このことを「セルフケア」といいます)。これはメンタルヘルス不調のリスクを低減させるための一次予防を目的とした検査であり、うつ病など心の病や症状を診断することが目的とはされていません。

また、事業者には、ストレスチェックで得られた調査結果をもとに集団分析を行い、メンタルヘルス不調者を出さない職場環境にするための改善が奨励されています。

ストレスチェックではどんな調査が必要?

ストレスチェックに使われる調査票の内容は、次の3種類の項目によって構成されています。

仕事のストレス要因......職場において労働者が受ける心理的な負担の原因に関する項目

心身のストレス反応......心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目

周囲のサポート  ......周囲や職場における他の労働者からの支援に関する項目

調査票は上記の項目が含まれている内容であれば企業などが独自に作成してもよく、特に国などで定められた形式はありません。独自に作成をしない場合は、国が奨励する57項目もしくは23項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」を使用することが可能です。

ストレスチェック導入マニュアル│厚生労働省(PDF) 外部リンク

ストレスチェック制度が義務化

「労働安全衛生法」の改正により、2015年12月より毎年1回労働者に対してストレスチェックを行うことが企業の義務になりました。しかし、現状はすべての企業が義務化されているわけではありません。ここではストレスチェックが義務化された背景と、義務化の対象企業などを説明します。

ストレスチェックが義務化された背景

ストレスチェックが制度化された背景には、職場が原因で強いストレスを感じている労働者の割合が増加していることや、それにともなってメンタルヘルス不調が原因の労災請求・認定件数の増加があげられます。

2020年度の厚生労働省「過労死等の労災補償状況」調査によると、ストレスなどによる精神障害の労災請求件数は2,051件で、前年から9件減少したものの、認定件数は608件と前年より99件増加、調査開始以来過去最高となっています。

出典:令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します│厚生労働省外部リンク

また、同年度の労働安全衛生調査では、仕事や職業生活で強い不安やストレスを感じることがある労働者は54.2%となっています。企業がこの問題に対処しなかった場合、やがては生産性の低下、人材の流失等の損失につながります。

出典:令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要【個人調査】│厚生労働省(PDF) 外部リンク

そのリスクを未然に防止すること、また労働安全衛生の観点からも労働者のこころの健康を守るための施策が必要であることから、ストレスチェック制度が創設されました。

義務化の対象となる企業は?

ストレスチェックは、常時労働者が50人以上いる事業場(働く場所のこと)が対象になります。労働者には正社員だけではなく、契約社員、パート、アルバイトなどの非正規社員や派遣先の派遣社員も含まれます。

常時労働者50名以上の「常時」とは、常態として使用しているか否かで判断します。例えば週1日のアルバイトでも継続して雇用し勤務していれば常時労働者としてカウントされます。

また、企業の総労働者数が50名以上でも、例えば本社40名、支社15名のように常時労働者50名以上の事業場がない場合は、ストレスチェックの適用は義務ではなく任意になります。

50人未満の場合は?

常時50人未満の労働者を使用する事業場の場合は、ストレスチェックの実施は当面の間努力義務とされています。しかし、職場のメンタルヘルス対策の一環として制度の導入は望ましいことと言えます。

ストレスチェックの対象となる従業員は?

ストレスチェックの対象となる労働者は、正社員、非正規社員(契約社員、パート、アルバイト、派遣社員)など、事業場で勤務している全労働者が対象となります。ただし、次の労働者に関しては義務の対象外であり、適用は任意となります。

  • 契約期間が1年未満の労働者
  • 労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者
  • ストレスチェックの実施期間に休職している労働者

また、使用者(社長)や会社役員は原則労働者扱いではないため、ストレスチェックの対象者ではありません。

どのくらいの頻度で実施?

ストレスチェックは最低1年に1回実施する義務があります。実施時期や実施頻度は事業者側で決定します。ストレスチェック制度は毎年継続されるので、毎年同じ時期に行うようにすると実施計画も立てやすいでしょう。

一般的に企業の繁忙期や決算時期、従業員間の異動が多い時期は、一時的にストレスを抱えた労働者が増えることで正しい調査結果が得られなかったり、業務の都合などでストレスチェックを受検しない労働者がいたりするので、そうした時期はなるべく避けたほうがよいでしょう。

「実施者」と「実施事務従事者」が必要

事業者がストレスチェックを実施するには、「実施者」と「実施事務従事者」を決めることが必要です。

「実施者」とは、ストレスチェックの実施内容について専門的立場からの提案や助言、確認を行ったり、ストレスチェック結果の評価を実施したりする人をいいます。実施者になれる人は医師、保健師、厚生労働省令で定める研修を修了した看護師、精神保健福祉士、公認心理士です。

「実施事務従事者」とは、実施者の指示によって補助業務を行う人のことで、一般的には社内の衛生管理者やメンタルヘルス対策担当者、事務職員などが担当します。

なお、労働者に対して直接の人事権(解雇・昇進・異動)をもつ者は、実施者や実施事務従事者になれません。その理由はストレスチェックの結果によって、労働者本人が望まない部署への配置転換や降格など、人事上の不利益な取り扱いを防止するためです。

ただし、人事権を持たない人事担当者であれば、実施者・実施事務従事者になることは可能です。

義務なのにストレスチェックをしない。罰則はある?

ストレスチェックを行う義務がある事業者が、ストレスチェックを実施しなかった場合、法違反としての罰則はありません。

しかし、ストレスチェック実施後は労働基準監督署へ報告する義務があるので、報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、最大50万円の罰金が課される場合があります。

ストレスチェック実施の注意点

ストレスチェック実施の際に注意することは次のとおりです。

安全配慮義務

安全配慮義務とは、労働者が職場で健康・安全に労働ができるよう使用者が必要な配慮をすることをいい、その施策の一つにストレスチェックを行うことも挙げられます。

ストレスチェックは受検後、労働者がセルフケアを通じて自身の心の健康を守ることにつながります。しかし、労働者がストレスチェックを受検することは強制ではないため、中には受検を断られることもありますが、それでよしとせず、特別な理由がない限りは次年度以降も受検をすすめることが大切です。

プライバシーの保護

ストレスチェック結果や面接指導結果の個人情報は、健康診断の結果や労働者のマイナンバーと同様、厳重な管理が必要です。あらかじめ管理担当者を決めて適切に管理しましょう。また、個人情報を扱った実施者や実施事務従事者には、法律上守秘義務が課されるので、守秘義務に違反した場合は刑罰が課される対象になります。

不利益な取り扱いの禁止

労働者の以下のような行為に対して、事業者が不利益な行為を行うことを禁止しています。

  • 医師による面接指導を希望すること
  • 医師による面接指導の申出をしないこと
  • ストレスチェックを受けないこと
  • ストレスチェック結果を事業者(所属会社)へ提供することに同意しないこと

また、労働者の面接指導の結果を理由に以下の行為を行うことも禁止されています。

  • 解雇
  • 雇い止め
  • 退職勧奨
  • 不当な動機、目的による配置転換、職位の変更  など

ストレスチェック実施の流れ

ストレスチェックの実施について、時系列順に説明します。

事前準備

ストレスチェックを行うに当たり、事前準備を行います。

1. 労働者に対してメンタルヘルス不調の一次予防としてストレスチェックを行う方針を示します。

2. 社内(事業所)で、ストレスチェック実施について主に以下の内容を決めます。

    • いつ実施するか
    • 計画立案や進捗確認をする担当者を誰にするか
    • 実施者と実施事務従事者を誰にするか(実施者は、社内に医師や保健師がいない場合は産業医に依頼することが多い)

なお、実施者・実施事務従事者の手配、ストレスチェックの実施、集団分析、高ストレス者が面接を希望する場合の医師の手配など、ストレスチェックに関する業務は外部企業に委託することもできます。

3. ストレスチェックの実施者と話し合い、主に以下の内容を決めます。

    • 使用する調査票はどのようなものにするか
    • 高ストレス者の選定基準をどうするか
    • 面接指導を担当する医師は誰にするか
    • 集団分析を行う場合はどのような方法をとるか
    • ストレスチェックの結果データは誰がどのように保存するか

4. 2と3でストレスチェックの実施要項が決まったら規程やマニュアルを作成するとともに、労働者にも実施内容を周知します。

ストレスチェックの実施

5. 質問票を労働者に配布、記入してもらいます。

6. 記入が終わった調査票は、実施者または実施事務従事者が回収します。

第三者や人事権を持つ者は、調査票を配布することは問題ないですが、記入済みの調査票の内容を見てはいけません。

7. 調査票を回収後、実施者がストレス状況の評価と、医師による面接指導が必要かどうかの判定を行います。

8. 個人の結果を部署別、チーム別など一定の集団ごとに集計・分析を行い、職場環境の改善に役立てます。

これを「集団分析」といい、努力義務とされています。ただし、集団の構成人員が少なく、データから個人情報が特定される場合は、集団分析を行うことはできません。

受験者に結果通知

9. ストレスチェックの結果は後日、労働者ごとに個別に通知します。

10. 検査結果で高ストレス者と判断され、本人からの希望があった場合は医師による面接指導を行います。

11. 事業者(会社)は面接指導を行った医師から、就業上で対応が必要か、必要な場合はその内容をどうするかの意見を聴きます。

12. 11にもとづいて必要な場合、時短労働や配置転換などの就業上の措置を行います。

労働基準監督署に報告書を提出

ストレスチェックと面接指導の実施状況は毎年、所轄の労働基準監督署に所定様式の報告書を提出します。

なお、常時50人未満の労働者を使用する事業場が任意でストレスチェックを行った場合は労働基準監督署への報告義務はありません。

ストレスチェックを活用して期待できるメリット

ストレスチェックを活用して期待できるメリットは次のことがあげられます。

労働者のメリット

ストレスチェックを受検することにより、労働者自身が心の健康状態を把握することで自身の心の健康を守ることにつながります。身体の健康に比べると心の健康に気を配る人の割合は少ないので、日々充実した生活をおくるためには、身体と心の両方が健康であることの重要性を認識する機会になります。

会社のメリット

ストレスチェックの集団分析データを活用することにより職場環境の改善を行った場合、生産性の向上、メンタルヘルス不調が原因での離職者や休職者が減少するなどの効果が期待できます。

ストレスチェックに関係する助成金

ストレスチェック制度を導入したり、集団分析を活用したりする際に申請可能な助成金を紹介します。申請前には必ず最新の情報を確認するようにしてください。

「ストレスチェック」実施促進のための助成金

従業員数50人未満の事業場が、医師・保健師などによるストレスチェックを実施し、医師による面接指導などを実施した場合に、事業主が受け取れる助成金です。ストレスチェックの実施費用として従業員1人につき500円(実施人数分)と、ストレスチェックに携わった医師の活動費用として21,500円(1回の活動につき/上限3回)が受け取れます。

申請条件などの詳細は以下をご確認ください。

出典:令和3年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引│独立行政法人労働者健康安全機構(PDF) 外部リンク

職場環境改善計画助成金(事業場コース)

専門家の指導の下、ストレスチェックの集団分析結果から職場環境改善計画書を作成・改善実施した場合に専門家の指導費用の助成金を事業主が受けとれる制度です。(上限10万円/1回限り)

受給要件などの詳細は以下をご確認ください。

出典:令和3年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引│独立行政法人労働者健康安全機構(PDF) 外部リンク

自らのストレスをコントロールするスキルを学ぶ「ストレスマネジメント研修」

マンパワーグループでは、良いパフォーマンスを発揮するために必要なメンタルヘルスのセルフマネジメントを学ぶ「ストレスマネジメント研修」をはじめ、課題や状況に応じたさまざまなタイプの研修メニューをご用意しております。ご興味のある方は下記の資料をダウンロードください。

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まとめ

令和2年労働安全衛生調査によると、50名以上の義務対象の事業所において、ストレスチェックの実施事業場は約90%以上となっています。ただし、集団分析に関しては努力義務のため、手間がかかるなどの理由で分析そのものを行っていなかったり、分析をしても職場の環境改善にまで結びつかなかったりするケースが多く見受けられます。

1年に1回のストレスチェック制度の導入は事業者にとって手間や、場合によっては外部委託などの費用がともないます。だからこそ、労働者への安全配慮義務の観点からだけではなく、職場環境の改善からさらなる企業の発展につながるよう、制度を上手に活用していきましょう。

出典:令和2年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況│厚生労働省(PDF)外部リンク

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著者プロフィール

木村政美(社会保険労務士・行政書士)

木村政美(社会保険労務士・行政書士)

2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所きむらオフィス開業。 企業の労務管理アドバイスを得意分野とし、顧問先や各種相談会での相談業務、セミナー講師、執筆活動などを幅広く行っている。2020年度より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

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