目次
企業が優秀な人材を採用しようと考えるならば投資は必要になります。ただ、できる限り費用は抑えたいところでしょう。そんなときに活用したいのが「助成金」です。助成金とは、国や地方自治体などから支給される、返済が不要なお金のことです。今回は、採用・雇用に関する助成金について解説します。
雇用関係助成金とは雇用に関するさまざま助成金のことを指します。新規採用に関するものや、雇用環境の整備に関するものなど、数多くの助成金が用意されています。要件に該当すれば基本的に支給されますが、予算が決まっている場合が多く、申請期限内でも募集が終了となる場合もあるため注意が必要です。
また、原則としていったん申請書類を提出すると、その後の訂正が認められない場合も多いため、申請の前には必ず再確認を行いましょう。
国(厚生労働省)から支給される助成金の場合、各助成金の要件に該当するほかに、下記の要件をすべて満たしている必要があります。
雇用関係助成金は、国や自治体などの支給元にもよりますが、労働基準法などの労働法を順守していることが前提です。法違反がある場合や、過去に助成金を不正に受給したことがある場合、労働保険料を納入していない場合は受給できない可能性があります。
採用や雇用に関係する採用や雇用に関係する8つの助成金(コース)をピックアップして紹介します。
特定求職者雇用開発助成金は、特に就職が困難な方について、ハローワークなどからの紹介により継続して労働者として採用する事業主に対して支給されます。そのうち、60歳以上の高年齢者や障がい者などの雇い入れを対象としたものが「特定就職困難者コース」です。
主な支給要件は下記のとおりです。
支給は、対象となる労働者の状況や企業規模に応じて、一人あたり下の表の額となります。
対象労働者(中小企業) | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者 以外の者 |
[1]高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 60万円 | 1年 | 30万円 ×2期 |
[2]重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円 | 2年 | 30万円 ×4期 |
|
[3]重度障害者等 (重度の身体・知的障害者、 45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者) |
240万円 | 3年 | 40万円 ×6期 |
|
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
[4] 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 40万円 | 1年 | 20万円 ×2期 |
[5]重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 80万円 | 2年 | 20万円 ×4期 |
対象労働者(大企業) | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者 以外の者 |
[1]高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 50万円 | 1年 | 25万円 ×2期 |
[2]重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 50万円 | 1年 | 25万円 ×2期 |
|
[3]重度障害者等 (重度の身体・知的障害者、 45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者) |
100万円 | 1年6カ月 | 33万円 ×3期 ※第3期は 34万円 |
|
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
[4] 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 30万円 | 1年 | 15万円 ×2期 |
[5]重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 30万円 | 1年 | 15万円 ×2期 |
出典:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)│厚生労働省 表を編集して作成
なお、特定求職者雇用開発助成金の支給対象が「有期雇用契約」の労働者の場合、対象労働者が望む限り更新できる「自動更新」であることが必要とされていますが、例外的な取扱いとして「疎明書」の提出により実態が自動更新であれば認められる場合もありました。
しかし2023(令和5)年10月1日以降に採用した労働者については、雇用契約書に「自動更新」である旨が「明記されている場合のみ」対象とされることになりましたので、申請を行う場合は注意しましょう。
特定求職者開発助成金の中で、生活保護受給者や生活困窮者を雇い入れる場合、「生活保護受給者等雇用開発コース」の助成金が該当します。
主な支給要件は下記となります。
支給は、対象となる労働者の状況や企業規模に応じて、一人あたり下の表の額となります。
対象労働者(中小企業) | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外の者 | 60万円 | 1年 | 30万円 ×2期 |
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
40万円 | 1年 | 20万円 ×2期 |
対象労働者(大企業) | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外の者 | 50万円 | 1年 | 25万円 ×2期 |
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
30万円 | 1年 | 15万円 ×2期 |
出典:特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)│厚生労働省 表を編集して作成
就職氷河期に十分なキャリア形成ができずに正規雇用としての就業が困難な方を雇い入れる場合、「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の助成金が該当します。
対象となる労働者は以下のいずれにも当てはまる方となります。
支給は、対象となる労働者の状況や企業規模に応じて、一人あたり下の表の額となります。
対象労働者(中小企業) | 支給額 | 助成金対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
正規雇用労働者 | 60万円 | 1年 | 30万円 ×2期 |
対象労働者(大企業) | 支給額 | 助成金対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
正規雇用労働者 | 50万円 | 1年 | 25万円 ×2期 |
出典:特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)│厚生労働省 表を編集して作成
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)は、「成長分野」と「人材育成」の2つのメニューに分かれています。
特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースなどの他のコースの支給要件を満たした場合で、かつ、成長分野(情報処理・通信技術者などの「デジタル分野」や、脱炭素・低炭素化などに関する研究・技術の職業などの「グリーン分野」)に従事する場合に、他のコースより高額の助成金が支給されます。
主な支給要件は下記となります。
特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースなどの他のコースの支給要件を満たした場合で、かつ、未経験職種への就職を希望する就職困難者を「採用」し「訓練」を行い「賃金引上げ」を行なった場合に、他のコースより高額の助成金が支給されます。
支給は、対象となる労働者の状況や企業規模に応じて、一人あたり下の表の額となります。
対象労働者(中小企業) | 支給額 | 助成金対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者 |
高年年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、就職氷河期世代の者、生活保護受給者等 | 90万円 | 1年 | 45万円 ×2期 |
重度障害者等を除く 身体・知的障害者、発達障がい者、難治性疾患患者 |
180万円 | 2年 | 45万円 ×4期 |
|
重度障害者等 (重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者) |
360万円 | 3年 | 60万円 ×6期 |
|
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 60万円 | 1年 | 30万円 ×2期 |
重度障害者を含む 身体・知的・精神障害者 |
120万円 | 2年 | 30万円 ×4期 |
対象労働者(大企業) | 支給額 | 助成金対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者 |
高年年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、就職氷河期世代の者、生活保護受給者等 | 75万円 | 1年 | 37.5万円 ×2期 |
重度障害者等を除く 身体・知的障害者、発達障がい者、難治性疾患患者 |
75万円 | 1年 | 37.5万円 ×2期 |
|
重度障害者等 (重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者) |
150万円 | 1年6カ月 | 50万円 ×3期 |
|
短時間労働者 (週所定20時間以上30時間未満) |
高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 45万円 | 1年 | 22.5万円 ×2期 |
重度障害者を含む 身体・知的・精神障害者 |
45万円 | 2年 | 22.5万円 ×2期 |
出典:特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)│厚生労働省 表を編集して作成
地域雇用開発助成金とは、求人が特に少ない地域で会社を新しく設立したり、事業所を設置したりして、求職している地域の住民を雇い入れた場合に支給される助成金です。
そのうち、求人が著しく少ない地域や、働き盛りの年代の流出が多い地域、離島などを対象としたものが「地域雇用開発コース」です。
地域雇用開発コースの助成金を受給するためには以下の要件・手続きが必要です。
その後、対象となる労働者数を維持することにより、最大3回まで受給することができます。
支給は、事業所の設置に要した費用と、雇い入れにより増加した労働者数に応じて、下記の表の金額が支給されます。
設置・整備費用 | 対象労働者の増加人数 | |||
3(2※創業)~4人 | 5~9人 | 10~19人 | 20人~ | |
---|---|---|---|---|
300万円以上 | 50万円 | 80万円 | 150万円 | 300万円 |
1000万円以上 | 60万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
3000万円以上 | 90万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
5000万円以上 | 120万円 | 200万円 | 400万円 | 800万円 |
※1 中小企業事業主の場合は、1回目の支給において上表の支給額の1.5倍が支給されます。
※2 中小企業事業主の場合であって、かつ創業と認められる場合は、1回目の支給において上表の支給額の2倍が支給されます。
出典:地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)│厚生労働省 表を編集して筆者作成
地域雇用開発助成金には「沖縄若年者雇用促進コース」もあります。
支給要件などは「地域雇用開発コース」と大きくは変わりませんが、「沖縄若年者雇用促進コース」は、対象労働者に対して一定期間中に支払われた賃金の1/4(中小企業は1/3)が支給される「賃金助成」である点が大きな違いです。
また、対象となる労働者は、求人に応募した時点で沖縄県に住んでいる必要があることにも注意が必要です。
「地域雇用開発コース」と「沖縄若年者雇用促進コース」はどちらも受給することが可能なので、沖縄で事業を開始する場合にはぜひとも利用したい助成金といえます。
なお、この「沖縄若年者雇用促進コース」は「国(厚生労働省)」が支給する助成金ですが、各地域で独自の助成金(補助金・奨励金など)を支給している地方自治体も数多く存在します。
特に創業や新しい事業を開始する場合は、下記サイトなども参考に地方自治体から受給できる助成金を探してみてください。
独立行政法人中小企業基盤整備機構 │支援情報ヘッドライン│補助金・助成金・融資
採用に関する助成金は数多くありますが、その多くは原則として長期雇用を行うことを前提として支給されます。ただ、新規採用を行う場合、その労働者の適性や能力などを把握できないまま採用することになるので、ミスマッチが生じる恐れもあります。そうした不安がある場合に利用を検討したいのが「トライアル雇用助成金」です。
トライアル雇用は、事業主が就職困難な求職者を原則3ヵ月間の期間を試しに雇用して、適正やスキルを見極めたうえで正式な雇用へ移行できる制度です。
支給額は、対象者一人あたり月額最大4万円(母子家庭の母など、または父子家庭の父の場合5万円)が雇い入れの日から1カ月単位で最長3カ月間支給されます。
トライアル雇用助成金は、事前にトライアル雇用求人をハローワークなどに提出し、その求人に応募してきた方についてハローワークの紹介によりトライアル雇用する必要があります。そのため、まずはハローワークなどにトライアル雇用求人を提出するところから開始しましょう。
やむを得ず離職となる労働者に対して、再就職支援を職業紹介事業者に委託する場合や、求職活動のための休暇を与えた場合、再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施した場合に、「離職者を出す企業」に支給される労働移動支援助成金(再就職支援コース)があります。
その一方で今回ご紹介する労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)は、その援助対象となっている離職者について、「その離職者を受け入れる企業」に支給される助成金です。
主な支給要件は下記となります。
支給は、対象となる労働者の状況やあらたに雇い入れる企業の状況に応じて、一人あたり下の表の額となります。
通常 | 優遇助成 ※1 |
30万円 | 40万円 |
賃金上昇(雇い入れ前賃金比5%以上)加算 +20万円 ※2 |
早期雇い入れ助成の対象者に対して、雇い入れ日から6か月以内に訓練を開始した場合に上乗せされます。
通常 | 優遇助成 ※1 |
||
OFF-JT | 賃金助成 | 900円/時 | 1,000円/時 (1,100円/時※3) |
訓練経費助成 (実費相当額) |
実費相当額 (上限30万円) |
上限40万円 (上限50万円※3) |
|
OJT | 訓練実施助成 | 800円/時 | 900円/時 (1,000円/時※3) |
※1 優遇助成は、一定の成長性が認められる事業所の事業主が、「再就職援助計画対象労働者証明書」に「特例対象者」として記載された方を雇い入れた場合に適用されます
※2 賃金上昇加算は、2022(令和4)年12月2日以降に提出された再就職援助計画の対象労働者で、雇い入れ前の賃金から雇い入れ後6カ月間の各月の賃金を5%以上上昇させた場合に適用されます
※3 優遇助成に該当する場合であって、かつ、賃金上昇加算に該当する場合に適用されます
出典:労働移動支援助成金(早期雇入れコース)│厚生労働省 表を編集して作成
採用に関する助成金は、多くの場合ハローワークなどを経由して採用することが要件になっています。ただし、その要件がない助成金もあるので、ここでは3つピックアップして紹介します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は多くの会社で利用されています。
一般的に、有期雇用などの非正規で雇い入れていた労働者について、正規雇用に転換した場合に支給されます。派遣社員として受け入れていた方を直接雇用する場合も対象となります。
※制度改正により、「正社員化コース」において有期雇用を無期雇用に転換する場合の助成は、2022年4月以降は対象となりませんのでご注意ください
支給額は、企業規模や雇用形態によって変動しますが、派遣元で有期雇用であった労働者が、派遣先の中小企業で正社員として雇用された場合は一人あたり85万5000円 が支給されます。
なお、キャリアップ助成金における「正社員」や「非正規雇用労働者」の定義について、2022年10月以降は変更されます。就業規則の適用など要件が厳しくなりますので必ずチェックしておきましょう。
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用の拡大を図る事業主に対して、中途採用計画期間中に支給対象者を2人以上雇い入れた場合に支給される助成金です。
2022(令和4)年12月2日以降は、「過去3年間の中途採用率が60%未満」という要件がなくなり、対象となる事業主の範囲が拡大されました。
支給は、45歳以上の中途採用の拡大割合に応じて下の表の額になります。
助成概要 | 助成額 | |
(A)中途採用率の拡大 | 中途採用率を20ポイント以上 上昇させた事業主に助成 | 50万円 |
(B)45歳以上の 中途採用率の拡大 |
以下のすべてを満たす事業主に対する助成
|
100万円 |
出典:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)│厚生労働省 表を編集して筆者作成
中途採用等支援助成金(UIJターンコース)は、東京圏から移住者を雇い入れた会社に対して、その採用活動に必要とされた経費の一部に対して支給される助成金です。
東京圏からの移住者のうち移動支援金の受給者であるなどの要件に該当する労働者を、採用計画期間内に1人以上雇い入れた会社に対して支給されます。
対象となる経費は、募集・採用パンフレットなどの作成・印刷経費や自社ホームページ・自社PR動画の作成・改修経費、就職説明会の実施経費や外部専門家によるコンサルティング費用など多岐にわたります。
支給は、対象となる経費の合計額に対して、下の表の額となります。
助成率 | 上限額 | |
中小企業 | 1/2 | 100万円 |
中小企業以外 | 1/3 | 100万円 |
出典:中途採用等支援助成金(UIJターンコース)│厚生労働省 表を編集して作成
助成金の主な目的のひとつが「雇用を促進する」ことです。十分な能力や意欲がありながら、正社員など一般的に安定した雇用として採用されることが難しい障がい者の雇用について、多くの助成金が用意されています。
トライアル雇用助成金に「障害者トライアルコース」というものが用意されています。
「障害者トライアルコース」には、対象となる労働者が精神障がい者の場合は助成金の支給月額が8万円になるなど優遇措置もあります。
また、精神障がい者や発達障がい者の場合は、雇用保険の加入対象とならない週20時間未満の雇用でも対象となる「障害者短時間トライアルコース」も用意されていますので、まずは短時間からの雇用も検討できます。
なお2021(令和3)年度からは新型コロナウイルス感染症への対応として、テレワーク勤務を行う場合は、トライアル雇用期間を最長「6ヵ月間」まで延長できるように拡充されています。通勤が困難な労働者や職場の整備が難しい事業主など、双方にとってさらに障がい者雇用に取り組みやすくなっています。
先述のキャリアアップ助成金には「障害者正社員化コース」が用意されています。一般的な「正社員化コース」では対象にならない「有期雇用から無期雇用への転換」についても「障害者正社員化コース」では対象とされています。
出典:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)│厚生労働省
前述の特定求職者雇用開発助成金にも、障がい者を対象とした「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」があります。このコースは、障害者手帳を所持していない方で発達障がいまたは難病のある方が対象です。
支給は、対象となる労働者の状況や企業規模に応じて、一人あたり下の表の額となります。
対象労働者 | 企業規模 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者 以外の者 |
中小企業 | 120万円 | 2年間 | 第1期 30万円 |
第2期 30万円 | ||||
第3期 30万円 | ||||
第4期 30万円 | ||||
中小企業以外 | 50万円 | 1年間 | 第1期 25万円 | |
第2期 25万円 | ||||
短時間労働者(※) | 中小企業 | 80万円 | 2年間 | 第1期 20万円 |
第2期 20万円 | ||||
第3期 20万円 | ||||
第4期 20万円 | ||||
中小企業以外 | 30万円 | 1年間 | 第1期 15万円 | |
第2期 15万円 |
※短時間労働者とは、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者をいう
出典:特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)│厚生労働省 表を編集して作成
障がい者を雇用する際、オフィスの整備などが必要になる場合があります。特に重度の障がいがある方などを採用する場合は、会社の施設や設備そのものを新しく設置・整備しなければならない場合もあるかもしれません。そんなときはこの助成金を利用しましょう。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、対象となる障がい者を10人以上雇用している、労働者数に占める対象障害者の割合が20%以上などの要件を満たすことで、施設の設置などに要した費用の2/3、最大5,000万円(第3セクターなどの特例の場合、3/4、最大1億円)まで助成金が支給されます。
この助成金は、新規の採用に関して助成するものではありませんが、障がい者を多数雇用している場合などには、ぜひ利用したい助成金です。
産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース)は、新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に事業を縮小せざるを得ない場合に、従業員の解雇などを行わず、在籍型の出向により雇用を維持する場合に支給される助成金です。
産業雇用安定助成金は新たに採用する場合の助成金ではなく、雇用を維持するための助成金という意味では「雇用調整助成金」に近いものといえます。しかし、「出向先」が負担する賃金部分や教育訓練などの経費も助成対象となることから、出向先での雇用を支える助成金といえるかもしれません。
「出向運営経費」として出向中に必要となる経費(賃金、教育訓練費、労務管理費など)の一部を、出向元の雇用状況や企業規模に応じて一人1日あたり下の表の額が支給されます。
中小企業 | 中小企業以外 | |
出向元が労働者の解雇などを行っていない場合 | 9/10 | 3/4 |
出向元が労働者の解雇などを行っている場合 | 4/5 | 2/3 |
企業グループ内出向の場合 | 2/3 | 1/2 |
上限額(出向元・出向先の合計) | 12,000円/1人1日あたり |
また上記とは別に「出向初期経費」として、出向前に、出向の成立に必要な措置(就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向者を受け入れるための機器や備品の整備(出向先のみ)など)を行った場合に下記の助成があります。
出向元 | 出向先 | |
助成額 | 各10万円/一人当たり(定額) |
※企業グループ内出向の場合は支給されません
さらに、要件に該当すれば以下の加算もあります。
出向元 | 出向先 | |
加算額 | 雇用過剰業種または売上悪化 | 出向元とは異業種 |
各5万円/一人あたり(定額) | 各5万円/一人あたり(定額) |
※「雇用過剰業種」とは①生活関連サービス業・娯楽業②宿泊業・飲食サービス業③運輸業・郵便業の3業種が該当する
そして、2022(令和4)年10月1日からは、新たに「出向復帰後訓練助成」も支給されることになりました。出向から復帰した労働者に対して、出向で新たに得たスキル・経験をブラッシュアップさせる訓練(off-JT)を行った際に、訓練に要する経費と訓練期間中の賃金の一部について、「出向元」に対して支給されます。
経費助成 | 賃金助成 | |
助成内容 | 実費(上限30万円) | 1人1時間あたり900円(上限600時間) |
出典:産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース)│厚生労働省 表を編集して筆者作成
なお、この助成金は出向元と出向先それぞれに助成金が支給されますが、手続きは「出向元」がまとめて行います。
今回紹介した助成金以外にも雇用関係助成金は数多くあります。新型コロナウイルスの影響で「雇用調整助成金」などの雇用維持のための助成金が広く利用されたように、助成金はそのときの雇用情勢によりさまざまなかたちで支給されます。助成金を受給するために雇用することは本末転倒ですが、雇用のさまざまな場面においてプラスアルファとしての助成金の活用は検討するとよいでしょう。
こちらの資料もおすすめです