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テレワークマネジメントの課題と具体的な解決策

掲載日2021年11月16日

最終更新日2024年4月16日

テレワークマネジメントの課題と具体的な解決策

目次

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テレワークを導入したものの、生産性があがらない、コミュニケーションがうまくいかないといった悩みを抱える企業は少なくありません。筆者も「マイナス面が多いのでテレワークの廃止を検討している」などの声を聞くことがあります。

たしかに、テレワーク環境でのマネジメントは簡単ではありませんが、より働き方が多様化していく今後は乗り越えていくべき課題です。ここでは、テレワークにおけるマネジメントの課題と、その克服のためのヒントを解説します。

テレワークにおけるマネジメントとは

テレワークにおけるマネジメントとは、テレワークを行う上でチーム運営に必要な業務進捗の確認や評価、育成などを意図的に行うことです。テレワークが定着し、機能している会社では、このテレワークにおけるマネジメントを上手に行っています。

テレワークにおける具体的なマネジメント業務の内容は、以下のようなものが挙げられます。

具体的なマネジメント業務

  • メンバーにチームの役割、目的、目標を共有する
  • チーム目標と個人目標を設定する
  • 進捗状況を共有する
  • 目標達成のための課題解決をする
  • 勤務状況を確認して過重労働を防止する
  • メンバーからの相談に対応する
  • チームを鼓舞して士気を高める
  • メンバーの育成をする
  • 人事評価を行う

これらは、オフィスで仕事をしていたときと大きく変わるものではありません。しかし、テレワークにおいては、メンバーの働きぶりを直接確認することや、雑談を通じて情報交換などを行うことが難しいため、オフィスで働いていたときのやり方のままではうまくいきにくい側面があります。

そのため、テレワーク時には、業務を可視化することで働きぶりを理解したり、計画的にコミュニケーションを取ることでメンバーの変化に気付いたりするなどのテレワーク特有のマネジメントが必要となります。

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テレワークマネジメントの課題

マンパワーグループが、2020年5月にオフィスワーカーとして働く20代~50代の正社員を対象に実施した「テレワークで感じたメリット・デメリット」についての調査では、自由な時間ができた、自分の仕事に専念できるなどの理由により約8割がメリットを実感していました。

あなたが実際にテレワークを行った印象はいかがでしたか

メリットも多いテレワークですが、オフィスワークとは異なり、管理職の立場からは主に以下の4つの課題が挙げられます。

1. 勤務状況の管理

タイムカードをどうするか、勤務時間中の中抜けや勤務時間の虚偽申告にどう対応するか、など勤務管理に関する課題が挙げられます。姿が見えないと業務の進捗状況も把握しづらく、人によってはプライベートの時間と勤務時間の境界があいまいになり、長時間労働に陥る懸念もあるので、部下の勤務状況には丁寧な管理が必要になります。

2. 評価方法

テレワークでは部下の仕事をしている様子がわからないので、評価基準もオフィスワーク時のものをそのまま適用できないケースがあります。テレワーク下での評価基準が定まっていないと、部下を適切に評価できないので、課題を感じている企業も多く見受けられます。

3. コミュニケーション量の減少

オフィスというリアルの共有空間であれば、自然と会話が生まれていたかもしれませんが、テレワークでは会話によるコミュニケーションが大幅に減り、相手の表情が見えないことから部下の様子の変化も読み取りづらくなりました。そのため、適切な指示をタイムリーに出すことや、目標や方針の浸透を図ることが難しく感じた管理職も多いようです。

マンパワーグループが、2020年5月に企業の管理職を対象に実施した調査では、テレワークで部下の管理をする際のコミュニケーションへの影響について、「仕事の進捗管理」「メンタル管理」「勤怠管理」などの面で不安を抱えているとの声が多くあがりました。

4. 生産性が上がらない

周囲からの邪魔が入らず生産性の向上が見込めるという人がいる一方で、仕事をしている姿をほかの人に見られていないことから、勤務中にスマホやゲームに手を出してしまい、ダラダラと仕事をしてしまう人もいます。

また、一日中部屋の中にいるせいで気分転換がうまくできない、孤独感からモチベーションが上がらないというケースも珍しくありません。

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テレワークマネジメントを成功に導く4つの解決策

こうした課題に対して、どのように対処していけばよいのでしょうか。その具体的な方法を以下に解説します。

ITツールの導入

課題1の「勤務状況の管理」に関しては、ITツールを活用することが一つの方法です。オンラインミーティング、ビジネスチャット、クラウド型ストレージ、クラウド型勤怠管理ツールの導入は円滑なテレワークの実施には必須アイテムです。ただし、これらのツールを導入すれば大丈夫ということではなく、基本的な使い方、便利な使い方については社内研修を行うなどして習熟度を上げていくことも重要です。そうすることで、適切な勤務状況を管理できるだけでなく、業務改善にもつながっていきます。

因果関係の明確化

課題2の「評価方法」について考える際には、「本質的な問題が何なのか」をあわせて考える必要があります。オフィスワークのときから評価制度に問題を抱えていた場合に、評価制度が適切に機能していない原因をテレワークの運用に求めても良い解決策は得られません。

大切なポイントは、問題・課題とテレワークの間にある因果関係を明らかにすることです。このプロセスでは、顕在化した問題・課題をできる限り具体的に関係者で共有することで、最善の解決策を見出すことができます。評価制度の場合、テレワークにより部下の仕事ぶりが見えづらくなくなったことが問題・課題なのであれば、可視化するプロセスを構築することも選択肢として検討する価値があるでしょう。

可視化するプロセスの一例として、日報提出による活動の言語化が挙げられます。日報に記載する項目や内容をマネージャーが適切に定め、部下に報告してもらうのです。そこから読み取れないことは、1on1で補っていくこともできます。これらのプロセスを通じて得られた情報を評価に用い、テレワーク以前と比較しても遜色のない評価を目指しましょう。

成果主義による評価

テレワークへの移行に伴い、成果主義による評価制度の導入を検討する企業もあります。一般的に成果主義の評価は、数ヵ月から1年程度の短期的な時間軸があてはまる業種や、客観的に測定可能な目標を設定できる職種に向いています。一方で、数年に及ぶプロジェクトが多い業種や定量的な評価が難しい職種には不向きです。

これらの特色を踏まえた上で、自社の経営理念やビジョンとの整合性も意識しながら評価方法の検討を行うことが必要です。

意図的にコミュニケーション量を増やす

課題3の「コミュニケーション量の減少」については、意図的・計画的にコミュニケーション量を増やす努力をしていくべきです。

例えば、テレワークを導入してから朝礼を始めた会社もあります。オフィスワークのときに存在した、出社してから業務開始までの雑談の時間をテレワークの環境でも意図的に作り出すことで、仲間意識を醸成することや重要事項の共有に役立てることを意図しています。表情やジェスチャーなど非言語コミュニケーションを通じて得られていたことがテレワークでは得にくくなります。それを補うために、意識してコミュニケーションを増やす仕掛けを作っている事例です。朝礼でなくても、1on1の機会を設けてもよいでしょう。

ただし、コミュニケーション量の増加が、部下の行動を細かく管理する方向へ向かうと、部下の自律性を損ないかねません。また、マイクロマネジメントは、管理職自身が本来行うべき業務に割く工数も失われるため、避けたほうが賢明です。

自律性をはぐくむ

課題4の「生産性が上がらない」という課題に対しては、さぼることを防ぐために、常時Webカメラをオンにしておくことや、一定時間動きがないとアラートが発生するシステムを導入している会社もあるようですが、自律性のある社員にはそうした管理は不要です。

そこで、マネージャーの役割を「部下を管理する」から「部下を信頼して支援する」というスタンスへ変化させていくことが重要になります。これは、サーバントリーダーシップと呼ばれるマネジメントスタイルのひとつです。

新入社員など、まだ自律性に不安がある社員に対しては、具体的に欠けている点や身に着けていくステップを理解してもらう必要がありますが、何かできなかった場合に、できなかった結果を責めるのではなく、できるようにするために何をすればよいかを共に考え、ステップを明示してサポートしていくのです。

テレワークとは一見関係ないように思われるかもしれませんが、部下に自律性を促す観点は組織力の強化に高い効果があります。

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テレワークマネジメント業務で成功した企業事例

実際に、テレワークマネジメント業務で成功した企業の事例を3つの課題ごとに紹介します。

1. コミュニケーション

A社(情報通信/ソフトウェア開発)

マネージャーが相談にのれる時間をあらかじめ確保しチームメンバーに公開することで、相談するハードルを下げる取り組みをしています。また、オンライン会議を活用した1on1も行っています。この1on1は、業務報告や進捗報告がメインではなく、雑談も含めてメンバーそれぞれが話したいこと話す場にしています。評価に直結しないコミュニケーションを一定程度以上に確保することで、マネージャーとメンバーの相互理解が促進され、テレワーク環境での円滑なコミュニケーションに役立っています。

B社(卸売・小売/化粧品販売)

従来は全部門の責任者が出席する全体会議を月1回開催していましたが、テレワーク実施後はオンライン会議へ移行して場所の制約がなくなったため、一般社員もこの全体会議へ自由に参加できるようにしました。会議をオープンにしたことで、メンバーが他部門の動向を理解しやすくなり、部門間にまたがる課題を迅速に解決できるようになりました。

2. 可視化と評価

C社(製造/電気機器)

働き方可視化ツールを導入しました。このツールは、メールやスケジュール、文書タイトル、PCの利用状況データなどをAIで解析し、業務内容や各業務に費やした時間などを可視化するものです。 可視化されたデータを基にして、マネージャーとメンバーが働き方の課題を共有し、改善策を話し合う機会を設けることができました。

D社(情報通信/ソフトウェア開発)

年度の最初にメンバーが自身の目標を設定します。この時に、客観的に成果を測定できる定量的な目標と、自身の成長に関連する定性的な目標を立てることにしています。年度の終わりに、定量的な目標達成と定性的な成長度合いについて話し合いを行い、マネージャーがフィードバックしています。 こうした目標設定とフィードバックにより、メンバーはテレワークで働いていても、自身の働きをマネージャーに見てもらえている安心感があります。また、客観的な成果と目に見えない評価のバランスをとることで、評価者に対するメンバーからの信頼も高まっています。

3. 長時間労働と勤怠管理

E社(製造/電気機器)

テレワーク時にも勤務開始と終了時にPCやスマートフォンから打刻することでスムーズに勤怠管理ができるようになりました。これに加えて、PCログを確認して、長時間労働の場合やPC起動時間と打刻時間に乖離がある場合には、上司に速やかに是正指示の連絡が届く仕組みを整えました。その結果、テレワーク本格導入前の2016年の年間平均残業時間が29.5時間/月であったのに対して、2020年は27.5時間/月となり、残業時間の減少につながっています。

F社(卸売・小売/OA機器販売)

テレワークを導入する際に、「人時生産性」を評価指標として導入しました。「人時生産性」とは、成果を労働時間で割ることで算出される独自の生産性指標です。この評価制度では、生産性が上がると賞与が増える仕組みになっているため、各社員が生産性の高い働き方への意識が高まりました。

G社(サービス/マーケティング支援)

パートタイムを含む全社員にテレワークとスーパーフレックスタイム制を導入し、私用による複数回の中抜けも可能とする人事制度を導入しました。これにより、働く時間を個人の体調や家庭の事情などに合わせ柔軟に選択できるようにしました。その結果、社員の離職率の低下だけでなく、企業イメージが向上して求人応募数の増加にもつながっています。

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まとめ

技術の進歩とともに、テレワークの浸透はより加速しています。そうした中で自社の価値観にふさわしいテレワークの形を作り上げるために、自社の問題・課題を理解して、適切なマネジメントを模索していきましょう。

派遣社員の在宅勤務 注意すべきポイント

自社従業員のテレワークと派遣社員の在宅勤務ではリスクに大きな違いはありません。自社従業員のテレワークと同様の環境整備・リスク対策を行う必要があります。ただし、就業中の派遣社員の勤務形態をテレワークに切り替える場合、契約内容や業務の運用ルールなどを確認し、必要な取り決めの設定や各種対策を行う必要があります。 詳細については、下記の資料でご案内しています。

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【動画セミナー】障がい者のテレワーク術

マンパワーグループの特例子会社 マンパワーグループ プラス株式会社では、10年以上にわたり障がい者の在宅勤務に取り組んできました。本セミナーでは、在宅勤務を実現するための業務の切り出し方やその管理、セキュリティ対策、評価などについて解説します。

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著者プロフィール

三角 達郎(特定社会保険労務士)

三角 達郎(特定社会保険労務士)

三角社会保険労務士事務所 代表。 1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。 現在は約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、企業の人事課題の達成サポートを行っている 。総務省のテレワークエキスパートとしても活動している。

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