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2018年6月13日に、政府官邸で「第9回 人生100年時代構想会議」が開催されました。
政府の掲げる「一億総活躍社会」「人づくり革命」のなかで、高齢者の就労促進は大きなテーマです。
「少子高齢社会への対応」「高齢者の就労促進」は耳慣れた言葉ですが、数字を基に考えると、その必要性や課題が改めて認識できます。
今回は、各種統計による数値を交えながらシニア人材の活用について考察します。
日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、6.6%でした。
(2015年時点。世界平均は8.3%、2位はイタリアの22.4%。アメリカは14.8%)
この数字は年々上昇を続け、2040年には35.3%、2060年には38.1%と、国民の3人に1人以上が65歳以上になると予測されています。
高齢者が生産や経済の担い手になる必要性は、世界で日本が最も高いと言えます。
日本の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)で、74.9歳でした。
(2015年時点。世界平均は63.1歳、2位はシンガポールの73.9歳)
高齢者が、健康でかつ自立して活動できる期間は、世界で日本が最も長いと言えます。
生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口層)は、日本のピーク時である1997年の8,699万人と比較すると、2060年は4793万人で45%にあたる3,906万人の減少が予測されています。
(2015年の生産年齢人口は7,728万人、2030年は6,875万人)
経済活動を支える人材を生産年齢人口の中だけで充足していくことは、年々困難になるでしょう。
定年または継続雇用期間は、65歳までがまだ大多数です。
66歳以上を希望者全員再雇用または定年延長・廃止している企業は、全体で4.7%、大企業では0.8%と少数派です。
高齢者が活躍するには、現在の雇用慣行や制度の検討が必要です。
65歳以上で再就職先を自分から辞退した理由として、「通勤が遠かった」を挙げた方が半数以上を占めました。
また、65歳以上で適当な仕事が見つからなかったと回答した方のうち、フルタイム勤務を希望する方が16.4%なのに対し、短時間勤務を希望する方は42.1%、近所の人や会社などに頼まれるなどして任意に行う仕事を希望する方は20.9%と、フルタイム以外での働き方に対するニーズの高さが見て取れます。
高齢者の就職では、仕事のやりがいや収入より、通勤時間と勤務時間を重視する傾向にあります。
企業は将来的な人口構成を元に、中長期の企業経営・人事戦略を考える必要があります。遠い未来の物語ではなく、12年後の2030年にはピーク時1997年と比べ2,000万人近い生産年齢人口の減少が想定されています。
冒頭で言及した「第9回 人生100年時代構想会議」でも、国の様々な対策(65歳超雇用推進助成金の拡充、シルバー人材センターの業務拡大、生涯現役促進地域連携事業など)が報告されていますが、行政施策以上に大事なことは、実際に働く高齢者および働く場所である企業の意識変容であると実感しています。
とはいえ、ポジティブな材料もあります。
昨今の働き方改革の推進に伴い、テレワークや在宅での勤務形態も普及しており、高齢者が望む「通勤時間」「短時間勤務」を満たしながら、企業が懸念する「安全や健康面のリスク(通勤や運転など)」を減らしながら働いてもらう環境整備を進めて行くことが必要になります。
まずは高齢者本人が、"安近短"な働き方に安住せず、年齢に関わらず、自分にしか出せない価値を、真剣に棚卸しして発揮することが重要です。
企業側も、テレワーク等の環境整備と並行して、「60歳を越えたら、あまり責任の重くない仕事」と考えず、本人の経験やネットワークを最大限活かせる職務・処遇・支援を検討することが重要です。
このように双方が真摯に向き合い、お互いに出来る仕事を検討していくことが、課題解決に繋がります。
マンパワーグループでは、様々なシニア向け事業(人材派遣・人材紹介・再就職支援・キャリア研修・キャリアカウンセリング・制度設計)を行っていますが、最近は「覚悟をもって、自分のキャリアを選ぶ」ことを、中高年の方には推奨しています。
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