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選考結果の連絡手段は、電話やメールなどによる通知が一般的ですが、最終的な採用を決定した旨を通知する場合、「採用通知書」や「内定通知書」などの書面を発行するケースもあります。
この記事では、採用通知書とは何のためにあるのか、盛り込むべき内容や文例、内定通知書との違い、同封すべき書類などについて紹介します。
採用通知書とは、採用の決定を応募者に伝える書類のことです。最終面接を終え、企業が採用を決定したことを通知するものであり、応募者の入社意思などは関係ありません。また、採用通知書は企業に発行する義務はありません。
義務ではないため、採用から出社までの期間が短い中途採用では、省略されることも多くあります。
採用を見送った場合の、選考の結果を通知する書類が不採用通知書です。
不採用通知書は、求職者の就職活動の妨げにならないよう、結果は速やかに通知しましょう。採用の段階にも寄りますが、「連絡がなければ不採用」というのは、求職者の心証がいいものではありません。
面接まで実施したのであれば、書面やメール、電話などで連絡を入れる方が望ましい対応です。現在は、さまざまの情報が即座にシェアされます。企業の評判に影響することにもなるため、自社に応募してきた求職者に対しては丁寧な対応を心がけましょう。
「採用通知書」とよく比較されるものに「内定通知書」がありますが、どのように違うのでしょうか。そもそも本当に違うものなのでしょうか?
内定通知書とは、応募者の入社意思の確認がとれ、入社が決定したことを通知する書類です。内定通知書も企業に発行義務はありません。ただし、発行した場合、安易に内定取り消しができないなどの法的な拘束力が発生します。
企業によって、意味合いや取り扱い方が異なります。
字面どおり解釈すれば、採用通知書は採用が決定したことを応募者に通知する書面、内定通知書は内定が決定したことを応募者に通知する書面です。そこから考えると、両者の違いは知らせる内容が「採用決定」か「内定決定」かということになります。
しかし、一般的に採用の場での「内定」は、公にはしないものの社内で採用が決定したことを意味します。そのため、採用通知書と内定通知書は名称は異なるものの、企業として採用の意思を示したという点において、同じ意味合いのものと考えるのが妥当です。
実際、内定が決定した際、「内定通知書」という名称の通知書を出す企業もあれば「採用通知書」を出す企業もあります。あるいは、「採用内定通知書」として出す企業もあります。
一方で企業によっては、採用試験に合格したことを応募者にいち早く知らせる意味合いで「採用通知書」を出し、応募者の入社意思が確認できたところで、改めて「内定通知書」を出すというところもあるようです。
採用活動に係る書類として、労働条件通知書があります。労働条件通知書とは、労働契約にあたり企業が労働者に対して通知する書類です。
発行義務のない採用通知書や内定通知書と違い、労働基準法の第15条によって賃金や労働時間など労働条件を書面などで明示する義務が企業に課せられています。
なお、法改正により2019年4月から書面だけでなくFAXやe-メール、SNS等の出力すれば書面が作成可能なツールの利用での明示もできるようになっています。とはいえ、原則は書面の交付が必要であることに変わりはなく、それらのツールの利用は労働者が希望した場合に限られるので注意が必要です。
明示しなければならない事項は以下のとおりです。
採用通知書と内定通知書に絶対的な違いがあるとははっきり言い切れませんが、「内定通知書には法的効力があるが、採用通知書には法的効力はない」といった大きな違いを指摘する情報も見られます。
実際のところ、内定通知書には法的効力があり採用通知書にはないといった規定が、法律にあるわけではありません。
ただ、「内定」を「労働契約成立」と見なす社会一般的な見解があります。そのため、「内定」を知らせる「内定通知書」をもって労働契約が成立し、そこから法的効力が及ぶということは確かに言えるでしょう。
しかし、そこから採用通知書には法的効力がないといったことは言い切れません。
「採用通知書」を出した段階ではまだ応募者の入社意思を確認していないから労働契約は成り立たないと考える企業もあるかもしれません。しかし、求職者が応募すること自体が労働契約の申込みにあたり、企業が採用の決定を通知することは契約の承諾にあたるとされるのが一般的な見解です。
重要なのは、採用通知書や内定通知書という呼び名の違いではありません。書面上に「採用が内定いたしました」「入社していただくことに決定いたしました」などの記載があると、内定、つまり「労働契約成立」と見なされる可能性があるという事実を知っておくことです。
労働契約が成立しているということは、法的な効力が発生します。労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由がない限り、企業側は一方的に労働者を解雇することはできません。簡単には内定を取り消すことができないのです。
なお、法的な効力は応募者側にも発生しますが、労働者側から労働契約の解除をする自由が民法で保障されています。法の力だけで「内定辞退」を止めることはできません。
採用通知書は、義務ではないため記載事項にも決まりはありません。ただ、一般的に大きく3パートに分かれており、各パートの項目は次のとおりです。
記載事項 | 内容 |
---|---|
日付 | 右に寄せて記載 |
宛名 | 通知書を送る応募者の氏名を記載 |
差出人 | 社名、会社所在地、担当の部署などを記載 |
記載事項 | 内容 |
---|---|
件名 | 採用通知書であることを明記 |
あいさつ | 「拝啓」の頭語、あいさつ、応募に対するお礼を記載 |
本題 | 採用が決定した旨の内容を明記 |
結語 | 右詰で「敬具」と記載して締める |
記載事項 | 内容 |
---|---|
同封書類 | 同封している書類があれば名称を記載 |
スケジュール | 返送を希望する書類の締め切りや入社日など |
問い合わせ先 | 担当者の連絡先などを記載 |
※クリックするとすぐにWordがダウンロードされます。個人情報等の入力は不要です。
採用通知書に同封することが多いのが「入社承諾書(内定承諾書・入社誓約書)」と「労働契約書(雇用契約書)」です。
入社承諾書は、採用内定者に「入社の承諾」の意思表示をしてもらうための書類で、内定承諾書や入社誓約書も同じ意味合いの書類になります。以下のように入社に当たって順守すべき事項や内定取消の理由となる事項などが記載されているのが一般的です。
例)
✔ 順守すべき事項
✔ 内定取消の理由となる事項
上記のような事項を明記することは、企業と採用が決定した応募者との間のトラブル回避対策にはなりますが、法的な効力はありません。
労働契約書あるいは雇用契約書とは、「労務の提供」や「報酬の支払い」など、企業と労働者との間で交わされる契約内容を記した書類です。お互いの合意を表すもので、2部作成してお互いが署名・押印したあと、それぞれ1部ずつ保管するのが一般的です。
契約書というと、発行が法で義務付けられている印象を受ける人がいるかもしれませんが、特にそのような定めはありません。ただし、後々のトラブルを回避するためにほとんどの企業が発行しています。
一方、労働基準法により、採用に際して書面で明示しなければならない労働条件が規定されています。明示すべき労働条件は下記で確認できます。
参照:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
なお、明示すべき労働条件を記載した書類を一般的に「労働条件通知書」といい、この労働条件通知書により「労働条件の明示」の義務を遂行する企業が多いようです。労働契約書に明示すべき労働条件を記載していれば、あらためて労働条件通知書を発行する必要はありません。
入社承諾書(内定承諾書・入社誓約書)や労働契約書(雇用契約書)に署名・押印をし、返送してもらう際に利用してもらう封筒です。必ずしも同封する必要はありませんが、宛名や住所をあらかじめ記載している封筒があると、受け取った応募者の心証が一層良くなるでしょう。
また、大切な書類が宛名の記載ミスで異なる住所や部署へ届いてしまうことを避ける効果もあります。
採用通知書は、郵送のためダイレクトメールなど他の郵送物などに紛れてしまうなどのリスクがあります。
そのようなリスクを回避するには、受領印かサインが必要な簡易書留などを使用する、郵送したあと電話やメールでその旨を伝えるといった対応が必要です。なお、採用通知・合格通知・不合格通知のいずれも信書にあたるため、郵送以外の手段を使用する場合には、信書を送付できるサービスを利用してください。
電話やメールで通知する場合もそうですが、最終面接の日からできる限り早いタイミングで応募者に知らせることが大切です。採否までの期間が長引くと、応募者の入社意欲へ影響します。
合否連絡が遅れてしまうと、他社への就業を決める、転職を思いとどまるなどの事態にも繋がりかねません。特に書面での通知は応募者に結果が届くまでに時間がかかるため、電話との併用が望ましいでしょう。
採用通知書は必ずしも発行する必要のない書類ですが、お互いの認識の齟齬を回避する、応募者に採用が決まったことを実感してもらうなどの利点があります。書式に定めはありませんが、今回紹介した例文などを参考にして自社に合ったテンプレートを用意しておくと、必要なときにスムーズに発行することができます。
参考:
大学におけるキャリア形成支援とキャリア教育(PDF)|厚生労働省
労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
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