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最近、「オウンドメディアリクルーティング」が注目されています。採用難の時代における新しい採用手法の一つです。この記事では、採用担当者向けにオウンドメディアリクルーティングのメリット、デメリット、そして失敗しないオウンドメディアリクルーティングの始め方について詳しく解説します。
オウンドメディアとは、自社が保有しているメディアのことを指し、WEBサイトや自社ブログのほか、インスタグラム、X(Twitter)、TikTokなどのSNSが該当します。
オウンドメディアリクルーティングは、これらの自社メディアを活用して行う人材採用手法です。自社メディアを通じ、求職者に対して企業情報や魅力を積極的に発信し、自社の価値観に共感する人材を採用することを目指します。
求人サイトは、複数の企業の求人広告が掲載されているサイトです。掲載内容のレイアウトやデザインには制約があり、他社の求人情報と共に表示されることが一般的です。
一方、オウンドメディアリクルーティングは、自社が独自に運用するWebサイトを使用します。企業が伝えたい内容に合わせてメディアを自由に選択し、文字数やレイアウト、デザイン、コンテンツに制限はありません。
オウンドメディアリクルーティングが注目を浴びている背景には、IT技術の進歩や多様な価値観が尊重される時代の変化が大きく関係しています。企業の採用活動についても時代の変化に合わせる必要があります。その3つの理由を、わかりやすくご紹介します。
スマートフォンの普及と機能の進化により、情報へのアクセスが容易になりました。インターネット上の膨大な情報から必要なものを選別する情報収集リテラシーが向上しており、日常生活でもWEBでの情報収集が当たり前になっています。紹介や口コミで興味をもった商品やサービスの選定においても、自分で納得する情報が得られなければ購入に至ることはありません。
求職活動も同様で、求人情報を見て興味を持った企業について、企業WebサイトやSNSを通じて詳細な情報を収集し、応募の判断材料としています。欲しい情報が提供されていなければその時点で対象外です。求職者が求める情報発信の対応策として、オウンドメディアリクルーティングが有効と考えられています。
少子高齢化が進み、若手の労働人口が確実に減少を続けています。特に新卒や若い世代では売り手市場の傾向が強く、求職者が企業を選びやすい環境にあるため、大手志向が高まっています。
一方で価値観が多様化し、優秀な人材の中には海外企業を目指したり、大手よりベンチャー企業で力を発揮したいと考える人材もいます。
企業選びの際には、自身の将来ビジョンや価値観と企業の合致度を重視する傾向が強まっています。企業情報を正確に提供することが、優秀な人材の確保に不可欠です。
求人サイトは、掲載できる項目に制限があり独自性が出せないため、求職者の検索にヒットしない限り見つけてもらえない可能性があります。一方オウンドメディアリクルーティングは、自社のWebサイトなどを利用し、制限なく自社のコンテンツを発信できるため、求職者に攻めのアプローチができます。
近年、オウンドメディアのみならずInstagramなどのSNSを自社のブランディングや他社との差別化に活用する企業も増えています。SNSは、企業Webサイトでは発信が難しい非公式な社内シーンや働く様子を写真や動画を使って発信できるため、特に若い世代に訴求力があります。情報収集の手段が多様化する中で、いかに自社の魅力を伝えられるかが、優れた人材を惹きつけるための鍵です。
求める人材を探し出す攻めの採用手法
応募を待つだけの受け身の姿勢から「攻めの採用」に転換するには、オウンドメディアによるコンテンツ発信のほか、求める人材を企業から探しにいくという手法も有効です。
マンパワーグループでは、ヘッドハンティングに特化した関連企業「プロハント」によるヘッドハンティングサービスを提供しています。
オウンドメディアリクルーティングは、積極的な採用手法ですが、実際に使うにはメリットもデメリットを考慮しなければなりません。
オウンドメディアリクルーティングの主なメリットを3つ紹介します。
オウンドメディアリクルーティングでは、今必要な人材採用のための情報発信ではなく、日常的に自社の理念や価値観をWebサイトやSNSを通じて発信します。
求人サイトに比べて文字数制限がなく、写真や動画など複数のコンテンツを組み合わせることで、文字だけでは伝えられない幅広い情報を展開できます。特に動画などは求職者が知りたいと思っている職場の雰囲気、社風といった文字だけでは語れない「生の情報」を求職者に伝えることが可能です。
その結果、ターゲット層からの応募増やミスマッチの回避、入社後の定着など、多くのメリットを得ることができます。
▽コンテンツの一例
オウンドメディアリクルーティングを進めていくと、中長期的に求人媒体や人材紹介サービスに依存することが少なくなり、直接的な採用コストを削減できます。また、求人サイトと異なり、複数の部門の求人でも自社メディアの場合は費用がかかりません。
また、前述したようにターゲット層からの応募増加は、早期離職の防止や再募集コスト、育成費用といったコストの削減につながります。
ただし、オウンドメディアリクルーティングは即効性には欠けるため、初期段階では求人サイトなど従来の採用手法との併用が必須です。どんなにコンテンツをしっかり作りこんだとしても求職者に見てもらわなければ意味はありません。求人サイトやSNSなどから自社のページや専用LPへ誘導する必要があることは覚えておきましょう。
自社メディアを充実させ、そこからの直接応募が増えることにより、コスト抑制が実現できます。
オウンドメディアリクルーティングは、他社と差別化を図るための有効な方法です。
前述したように求人サイト等と比較して、コンテンツ作成の自由度が高く、企業の魅力や独自性をより詳細かつクリエイティブに伝えることが可能です。求職者に訴求したいポイントを的確に伝えることで、他社にはない情報や視点を提供し、興味を引くことができます。
また、求人広告では制限のある中で目を引く必要があり、また条件面の比較となりやすいですが、オウンドメディアの場合、条件以外の自社の特長や魅力を強く訴求することができます。
オウンドメディアは、今や企業の顔とも言えるものです。戦略的に取り組むことで、他社に負けない求職者へのイメージ戦略やブランディングに貢献することができます。
このように、オウンドメディアリクルーティングにはさまざまなメリットがありますが、同時に以下のようなデメリットもあります。
オウンドメディアリクルーティングの効果を実感するには、中長期的な計画と取り組みが必要です。採用ページやSNSを作成するには時間がかかるため、即時の効果を期待するのは難しく、急いで求人を満たす場合や短期的な募集には向いていません。
最初は求人サイトと組み合わせて運用し、徐々に自社メディアのコンテンツを充実させていく戦略が求められます。採用サイトやSNSを作ってもコンテンツが充実していなければ、求職者から興味をひくことはできません。
認知度をアップし、信頼を得てファンを増やすためには、コツコツと役に立つコンテンツを継続的に発信することに加え、SNSをきっかけとした自社メディアへの導線を作ることが肝心です。
SNSの広告プランも活用し、SNSから採用ページへのエントリーやセミナーなどのイベント参加のリストを集めることや、自社メディアへの流入経路を確認し、より効果のある方法へ改善し続ける長期、継続的な運用が必要です。
オウンドメディアリクルーティングには、採用の知識だけでなく、ウェブサイト運営やWebマーケティングのスキルが不可欠です。求職者の興味を引き、応募につなげるためのコンテンツ戦略や導線設計などのオウンドメディアサイト構築やコーディングの運用スキルが必要です。
サイトを構築した後も、コンテンツを充実させるため求職者のニーズ調査や競合分析、さらにコンテンツ制作まで、専門知識と工数がかかります。
運用後も、アクセス解析を通じてサイトの効果を測定し、改善するためのスキルが求められます。
オウンドメディアリクルーティングを導入する際には、最初に全体的な設計が必要です。自社サイトや採用サイトの構築、SNSの選定と運用、広報活動などを計画的に進める必要があります。外部コンサルタントを活用することも検討しましょう。
初期コストは以下のコストが想定されます。
初期投資が必要ですが、長期的に高品質なコンテンツを提供し続けることで、自社の魅力に共感する応募者を増やし、人材紹介会社や求人サイトのコストを削減できるため、全体的なコスト削減につながります。
オウンドメディアリクルーティングは、自社メディアをフル活用し、全社で取り組むことが求められます。人事部だけで採用に関わる部分だけをいじくってもうまくはいきません。ここでは、失敗しないオウンドメディアリクルーティングの始め方を解説します。
最初に、オウンドメディアの運用計画を策定します。大きく以下の5つについて検討を進めてください。
オウンドメディアで得たい効果や達成したい時期などを決定します。これまでお伝えしたようにオウンドメディアリクルーティングは、即効性がなく時間がかかるものです。関係者だけではなく、経営層の理解も必要となることでしょう。 導入した理由や目標の認識を揃えておかないと、結果がまだ出にくい時期に「効果がない」と施策が頓挫しかねません。
目標例
オウンドメディアリクルーティングの根幹となるものは、コンテンツです。そのコンテンツは、「誰に届けたいか」が重要になってきます。相手のいないメッセージは、誰にも刺さらず、時間とコストをかけたのに全く効果がないといった事態に陥る危険性があります。
どんな人に入社してほしいのかをしっかりと言語化しておきましょう。
オウンドメディアの立ち上げやSNSの開始時期など全体的なスケジュールを決定します。
オウンドメディアの立ち上げは、コンテンツ作成との兼ね合いも考えながら策定しましょう。
提供するコンテンツの種類と内容を計画します。従業員インタビューやプロジェクト紹介、企業文化など、ターゲット層に関心をもってもらえるコンテンツはどんなものかを検討しましょう。
また、月間コンテンツ数や運用人員や予算なども併せて計画してください。コンテンツの種類や月間に公開するコンテンツ数は、目標から逆算し計画しましょう。
また、コンテンツ制作には他部署の協力が必ず必要です。事前に協力の依頼を出しておくとスムーズに進みやすくなります。
オウンドメディアリクルーティングは、それ単体では時間がかかる、または知名度に依存する手法になるため、初期段階では求人広告等と組み合わせて利用する必要があります。
また、SNSはターゲットとの相性を鑑み、選択するようにしましょう。
自社の魅力をターゲットの求職者に伝わるように発信することは、競争激しい採用市場での成功の鍵です。会社の理念や独自性、社風・文化の全体的な魅力に加えて、人材採用戦略を元にターゲットとする求職者にとって、何が魅力になるのか明確に発信できるようにしましょう。
人事だけで考えるのではなく、採用部署の担当者と一緒に認識合わせを行い、ミスマッチを防ぎます。
採用サイトやSNSを通して、外から見えにくい教育や福利厚生、行事の様子などを紹介し、会社の魅力を伝えることで、どのような環境で働くのかをイメージすることができます。
外部の製作会社にコンテンツ制作を依頼するのも一つの手段ですが、継続的な情報発信とコンテンツの独自性、ランニングコストを考えた場合、内製化を視野に計画を立てることをおすすめします。まず、採用サイトやSNSの立ち上げを外部専門家に依頼し、その後の運用を自社でできるように、人材育成を進めていきます。
外注のメリットは、質の高いコンテンツを定期的に納品してもらうことができ、また担当者が不足している場合でもオウンドメディアリクルーティングに取り組めることです。一方で、外注費がかさんでしまうことは、デメリットと言えます。また社外の人材が制作することにより、事実に相違が出やすくなるため、ターゲット層や伝えたいことの認識合わせが重要です。
内製化のメリットは、社内をよく知る担当者が制作にあたるため、言葉選び一つにしても、よりターゲット層に訴求できるコンテンツをつくることが可能です。またコストメリットや最新情報や変更等にも迅速に対応することができます。一方で、担当者の負担や専門的な知識の習得が必要とはなります。
少子高齢化が進み、働き手が減っていくこれからの時代、残念ながら採用難はこれからますます厳しくなっていきます。 今回ご紹介したオウンドメディアリクルーティングは、結果として求める人材を獲得するための採用活動ですが、そのベースにあるのは、企業が社会においてどのような価値提供を行うのか、どんな理念で経営が行われているのかを伝える企業広報です。
広報は、企業と社会の接点であり、社内外のあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションのベースになるものです。採用情報だけでなく、IR情報、営業活動も企業のあり方や今後のビジョンを理解した上で企業広報として、適切に発信していく必要があります。また、社内外に対して企業広報を継続的に行うことで、自社の価値観や他社との違いをより一層社員が理解し、自社のブランディングが確立するという好循環もうまれます。
これまで企業広報は、フォーマルな情報発信として企業Webサイトや株主総会、企業活動を通して発信されてきましたが、スマホおよびSNSの普及により、社内行事や組織内のインフォーマルな情報発信も増えてきました。
多様な価値観の時代では、人と人のつながりや組織のあり方を重視する求職者が増えています。これからのオウンドメディアリクルーティングでは、企業広報のフォーマルな情報発信に加えて、SNSを活用した親しみやすい日々の情報を発信することで、自社に共感する仲間を増やすといった活動も不可欠になります。
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