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ジョブローテーションのメリットデメリットからみる導入の適不適

掲載日2021年8月 3日

最終更新日2021年9月27日

目次

    「ジョブローテーション」は、通常の人事異動とは異なり、定期的に部署や職務の変更を行うことです。特に従来型の日本企業で多く用いられてきました。また昨今は、終身雇用制度の崩壊など雇用環境の変化によって、制度のとらえ方が徐々に変わってきています。ここでは、ジョブローテーションの概要、メリットとデメリット、実施にあたっての注意点などを解説します。

    ジョブローテーションとは?

    ジョブローテーションとは、定期的な部署異動・職務の変更を通じて、社員にさまざまな業務を経験させながら能力開発を行う制度です。社員は、一定期間で部署や職務を次々と異動していくことで、社内で行われている多様な業務を理解し、幅広い知識と経験を身につけていきます。

    通常の人事異動は、部署強化や活性化、欠員補充など、企業運営上の短期的な戦略の一環として行われます。対してジョブローテーションは、中長期を見据えた人事戦略や人材育成、能力開発といった目的がある、中長期的な戦略で行う人事異動です。

    ジョブローテーションの背景

    ジョブローテーションは、特に従来型の日本企業で一般的に取り入れられてきた制度ですが、その広がりの背景には終身雇用制度があります。多くの社員が新卒で入社した企業で定年まで働くことを前提としている終身雇用制度では、長期的、計画的な人材育成が可能でした。また、社内事情を隅々まで理解し、広く人脈を築いているようなゼネラリスト人材が良しとされており、社内でさまざまな部署の業務を経験するジョブローテーション制度が、人材育成のために最適な方法だったのです。

    海外企業の場合だと、業務やポストに応じて人材を採用する「ジョブ型雇用」が一般的であるため、ジョブローテーションはほとんど行われていません。

    さらに、日本でも終身雇用制度が現在は徐々に崩れており、ジョブ型雇用の考え方が普及しつつあることから考えると、今後ジョブローテーションの活用方法も少しずつ変化していくでしょう。

    ジョブローテーションの目的

    ジョブローテーションを行う主な目的として、次の2つが挙げられます。

    社員が会社全体を深く理解する

    最も大きな目的は、さまざまな部署を経験することで、社員に自社の事業全体の理解を深めてもらうことです。

    ひとつの部署だけの経験では、ほかの部署が何をしているのか、会社全体がどのように動いて事業が行われているのかは分かりづらいものです。複数の部署を経験していると、事業全体の理解も深まり、会社全体を俯瞰して見ることができるようになります。ジョブローテーションによる経験から、社員は幅広い視野を身に着けていくことができます。

    幹部となり得るゼネラリスト人材の育成

    ジョブローテーションは、幹部候補となり得る人材の育成という目的で行われることもあります。社内のさまざまな部署と職務を経験することで、企業経営の中核を担うために必要な幅広い知識や、広い立場で物事を見る視野、社内外の折衝や調整に必要とされるバランス感覚など、幹部に必要なゼネラリストとしての能力を身につけることができます。

    納得感のある幹部選抜を。アセスメントツールで第三者視点を取り入る

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    ジョブローテーションの期間・頻度

    ジョブローテーションを行う期間・頻度は、短くて半年ほど、一般的には3~5年程度で考えられることが多いです。

    しかし、ジョブローテーションの期間と頻度に対する考え方に明確な基準はなく、社員にジョブローテーションを行う目的によって変わります。

    例えば、新入社員や経験の浅い若手社員であれば、適性の見極めという目的が中心となるため、比較的短期間に多くの業務を経験させる形式が多くなります。

    一方で、目的が幹部社員の育成であれば、各部署での業務理解の深さや他部署との関係性の把握、人脈形成が重要 になるので、期間は長めに、頻度は少なめになります。

    ジョブローテーションの目的は、社員それぞれの成長段階やキャリアプランによって変化していくため、社員ごとの目的に合わせて期間や頻度を設定しましょう。

    ジョブローテーションの4つのメリット

    ジョブローテーションのメリットは、主に次の4つです。

    実務を通じて社員の適性が判断できる

    企業の生産性や利益向上のためには人材配置を適材適所に行うことが重要ですが、人材の適性を事前に見極めることは難しいものです。ジョブローテーションをして、実際にいくつかの業務を経験することで、その人材の強みや弱みが明確になり、業務適性を判断する材料を得られます。

    社員にとっても、さまざまな職務を経験することで、自分の適性に気づいたり新たな興味を発見したりと、自身のキャリア形成のための良い機会になるでしょう。

    このように、企業側には社員の適性を把握できる、社員側にはキャリア形成に役立つという点は、双方にとって大きなメリットだと言えます。

    人材のパフォーマンスを正確に精確に見極めるためには

    人材のパフォーマンスを正確に精確に見極めるためには、"広い視点に立ち、より多くの情報を集め、分析する"ことが重要です。
    実務を通じた適性の判断以外のパフォーマンスの見極めに有効な施策として、人材アセスメントの導入が挙げられます。
    客観的な視点による分析が可能な人材アセスメントに関する資料をダウンロードいただけます。

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    複数の業務経験によって視野が広がる

    特定部署の業務経験しかない場合、他部署がどのような仕事をしているかを知る機会は少なく、業務に対する視野は狭くなりがちです。実際に経験しなければわからないことも多いでしょう。

    ジョブローテーションで複数の業務を経験することで、業務全体への理解が深まり、部署ごとで対応している業務の関係性も把握できるようになります。知識の偏りが少なくなることで、経営改善のための問題発見や、事業の新しいアイデアにつながることもあるでしょう。

    部門間の交流が生まれて業務連携がスムーズになる

    同じ部署だけで仕事をし続けていると、接するのは限定されたメンバーになりがちです。ジョブローテーションを行うことで、部署異動や職務変更により、ほかの社員との新たなネットワークが生まれるきっかけになります。

    また、ジョブローテーションの対象でない社員にとっても、異動した人材を介することで部署間の交流がしやすくなり、他部門との業務上の連携が必要になる場合にも仕事がスムーズに進められるというような効果があるでしょう。

    業務が属人化してしまうことを防げる

    特定の社員が同じ業務を長く担当し続けていると、その社員しか業務を遂行できなくなる「属人化」が起こり、業務負荷が分散しにくいほか、該当社員の退職後に業務遂行が困難になるといった問題が生まれます。

    ジョブローテーションが実施されれば、業務の引き継ぎや共有、マニュアル化などが行われ、ほかの社員でも業務に対応できるようになります。特定個人への業務集中も避けられ、業務内容がオープンになることでブラックボックス化も防げます。

    ジョブローテーションの3つのデメリット

    一方で、ジョブローテーションにはメリットばかりでなく、以下のようなデメリットもあります。

    スペシャリストの育成には不向き

    ジョブローテーションでは一定期間で業務内容が変わってしまうので、特定業務を専門的に深く理解することや、スキルを蓄積することはやや困難です 。

    自身の専門性を高めたいスペシャリスト志向の社員にとっては、ジョブローテーションは決して好ましいものではなく、不満を生むきっかけになることもあります。

    異動時に生産性が低下する

    ジョブローテーションによって、社員は定期的に部署や職務が変更され、新たな業務に取り組むことになります。しかし、社員が新しい業務に慣れるまでには必ず一定の時間がかかりますし、業務指導や引き継ぎなどにも時間を取られます。異動後は一時的に業務の生産性が低下することを念頭に置いて、異動した人材の指導やサポート体制を整えておくといった取り組みが必要でしょう。

    社員の退職を助長してしまう懸念

    ジョブローションを実施する際に、対象者のキャリア志向をしっかり把握していないと、希望に反した仕事や、適性に合わない仕事を担当させることになりかねません。それが対象社員の不満につながって退職につながる懸念もあります。中長期の人材育成のために行うジョブローテーションであるはずが、その本人が退職してしまっては意味がありません。

    これを防ぐには、定期的な面談や日頃の業務への取り組みを通じて本人の様子を確認し、認識の齟齬があれば溝を埋めていくことが必要です。ジョブローテーションを行う際には、社員本人に会社からの期待を伝えることや、状況によっては本人の希望しない部署への異動は避けるような配慮を行います。

    ジョブローテーションが社員のモチベーション低下や退職などにつながらないように、対象者とのコミュニケーションは密に行いましょう。

    ジョブローテーション向きの企業の4つの特徴

    ジョブローテーションを効果的に活用できる企業には、以下のような特徴があります。

    中長期的な人材育成に取り組める体制がある

    社員のキャリア形成や人材育成を中長期的な視野で行えるかは、ジョブローテーションの導入にあたって最も重要なポイントです。例えば新卒の一括採用を実施している企業であれば、未経験者を中長期に渡って育成する体制と、個々の適性を見きわめてきた実績があります。

    社員の定着率の高さ、育成期間や費用面での余力も、中長期の人材育成を考えるうえでは重要な要素と言えるでしょう。

    社内に多様な部署、職務が存在している

    ジョブローテーションを機能させるうえでは、社内に多様な業務経験を積める環境が必要です。幅広い事業展開をしていて、社内に多種多様な部署や職務があるとジョブローテーションに向いています。

    一定以上の社員数を有する中規模以上の企業のほうが、多様な環境が用意しやすいこと、異動による業務上の支障が少ないことから、ジョブローテーションには適していると言えるでしょう。

    幅広い業務知識、経験が必要である

    自社の業界や事業の特性として、幅広い知識や経験が求められる場合、ジョブローテーションによってさまざまな経験を積むことは、社員本人と企業の双方にとって意味がある取り組みと言えます。

    組織風土に統一性や一体感がある

    部署や職務内容が多様であっても、企業文化や組織風土に統一性・一体感がある企業は、基本的な業務の流れに共通点が多 い、他部署とのコミュニケーションもスムーズなどの特徴があります。そうした企業は、異動による生産性の低下が起こりづらく 、ジョブローテーションに向いているでしょう。

    ジョブローテーションに不向きな企業の4つの特徴

    一方で、以下のようにジョブローテーションに不向きな企業の特徴もあるので、要注意です。

    それぞれの業務の専門性が高い

    ジョブローテーションでは一定期間で所属する部署や職務が変わるため、社員は多くの経験ができる反面、業務の専門性の向上や、スキルの蓄積などは困難です。高い専門性が求められる業務や、長期間携わることで得られる熟練を要する業務が中心の企業では、ジョブローテーションによって専門性の習得が阻害されてしまいます。

    中長期での人材育成が難しい

    ジョブローテーションは、社員にさまざまな業務を経験させて中長期の人材育成を行うことが目的のひとつですが、中途の即戦力採用が中心の企業、人材の出入りが多い企業では、中長期視点での人材育成を行うことは困難です。

    ジョブローテーションを効果的に行うには一定以上の育成期間が必要なため、人員構成や定着率の点で中長期の人材育成が難しい企業は不向きだと言えるでしょう。

    異動・転換できる職種が少ない

    企業規模とも関係しますが、比較的少人数の企業や、ジョブローテーションによって異動・転換できる部署や職種が少ない企業では、異動しても業務経験の幅が広がらず、ただ生産性が下がるだけになりかねず、デメリットばかりが目立ってしまいます。

    職種や部署によって処遇や勤務体系の差が大きい

    ジョブローテーションの実施により、社員の基本的な処遇条件や勤務体系まで変わってしまうと、場合によっては不利益変更にあたります。特に、職種や部署によって処遇や勤務体系の差が大きい企業では法的な問題に発展するリスクがあり、ジョブローテーションを実施する場合には賃金制度の整備など、周辺規則等への取り組みも必要です。

    ジョブローテーションを導入する際の3つの注意点

    ジョブローテーションを導入する際に、注意を要するポイントは次のとおりです。

    社員のキャリア形成に役立つものであること

    ジョブローテーションを行ううえで重要なのは、その異動が本人のキャリア形成において役に立つことです。会社都合を優先した一方的な異動では、本人のモチベーションに悪影響を及ぼし、目的とする人材育成の効果が得られなくなってしまいます。社員自身のキャリア形成に有意義であることを本人が理解すれば、仕事に前向きに取り組むことが期待できます。

    会社側が対象者の希望や志向をよく理解し、それに役立つよう配慮することが必要です。

    総合的キャリアマネジメントの必要性

    経営環境・就業環境の変化が常態となった現代、企業には従業員の自己成長とキャリア形成を支援する責任、キャリア開発の機会の提供などが求められています。
    これから企業に求められる総合的なキャリアマネジメントのアプローチについて解説した資料をダウンロードいただけます。

    >「総合的キャリアマネジメントの必要性」をダウンロードする

    実施目的を明確にすること

    ジョブローテーションの実施目的があいまいでは、本人のキャリア形成や育成に意義がある異動はできません。また、会社と本人の間で実施目的の認識がずれているような場合も、ジョブローテーションの効果は見込めません。実施目的をはっきりとさせて、それを会社と本人で共有することが大切です。

    対象者が納得できること

    社員の志向によっては、特定の職種や現部署の仕事を続けたいと考える人もいるでしょう。そのような社員を無理に異動させても、不満につながるだけです。モチベーションが低下するだけでなく、状況によっては退職につながってしまう恐れもあります。

    ジョブローテーションを行う際には、対象者の希望や考えを必ず確認し、社員の理解を十分に得られたうえで実施するようにしましょう。

    ジョブローテーションを導入する流れ

    ジョブローテーションを導入する際の基本的な4つのステップを紹介します。

    1.対象者の選定

    過去の事例などから、ジョブローテーションで効果が得られそうな人材の特性を分析し、社内でその特性に合致する人材の職務経歴・キャリア志向を確認しながら対象者を選びます。

    2.配属先の決定

    対象者の志向や性格、各部署の要望などを考慮しながら、対象者に合った配属先を決めます。特に、本人の志向には十分な配慮をしながら進めていきましょう。

    3.対象者への十分な説明と納得

    対象者にはジョブローテーションの実施を伝えます。その際には実施の意図をしっかり伝え、納得してもらうことが重要です。実施理由や、会社が対象者に期待していることを十分に説明し、不安があれば解消できるよう会社側が努めましょう。

    4.ジョブローテーション実施後のフォロー

    ジョブローテーションの実施後も、面談などによって、業務状況やモチベーションの定期的な確認やフォローをします。特に異動直後は、本人が問題を感じても周囲に相談できずに抱え込んでしまうことも多いため、きめ細やかなサポートを心掛けましょう。

    まとめ

    ジョブ型雇用をはじめとした職務主義的な雇用環境へ変化している昨今の状況や、個々の社員のキャリア意識の変化などから、特に会社都合を優先したジョブローテーションは今後さらに難しくなっていくことが予想されます。会社と社員の双方に意義がある形でジョブローテーションを実施することが重要なポイントとなることを認識しておきましょう。

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    著者プロフィール

    小笠原 隆夫(人事コンサルタント)

    IT企業でエンジニア職、人事部門長として関連業務に携わる。2007年より「ユニティ・サポート」代表として人事・組織コンサルティングに従事。著書に『リーダーは空気を作れ!』(アルファポリス)。ほかウェブのコラム執筆多数

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