目次
2022年に改正、施行される法律の中で、人事担当者が知っておきたい法律を7つピックアップし、簡単に解説します。
施行日:2022年4月1日と10月1日
ポイント:男性の育児休暇取得を促進するための改正
今回の改正では、男女ともに育児と仕事両立ができるよう育児休業を取りやすい環境を整備すること、妊娠・出産申出をした労働者に対する個別対応が義務付けられました。
以下の4つの措置(または複数)を講ずるのが望ましいとされています。
社員または配偶者が妊娠・出産を申し出た場合、育児休業制度に関する周知と休業取得の意向確認を行う必要があります。
■周知事項
■周知・意向確認の方法
以下のいずれかの方法で行います。ただし、取得を控えさせるような周知・意向確認は認められていません。
※3と4は本人が望んだ場合に限りOK
これまで、有期雇用労働者の育児休業と介護休業の取得要件は、「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」でしたが、今回この要件が廃止されました。
「事業主に引き続き雇用された期間が1年未満」である労働者については、労使協定を締結した場合において対象から除外することは可能としています。
今回の改正の注目施策です。子どもが生まれた後、8週間以内に、最大4週間まで休業を取得できる制度です。(育児休業とは別として取得できる)
また、労働者の意に反しないよう労使協定を締結している限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、事前に調整したうえで休業中に就業することを可能としています。
これまでの育児休業は、子供一人当たり1回まででした(特別な事情を除き)。この改正により、育児休業を2回まで分割することができます。
常時雇用の労働者数が1000人を超える大企業には、男性労働者の育児休業取得を含む「育児休業など」の取得状況を、毎年1回公表することが義務づけられます。
参照:
厚生労働省 令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A (令和3年 11 月 30 時点)※PDF
育児・介護休業法について(厚生労働省)
施行日:2022年4月1日
ポイント:法律が適用される企業の従業員数が引き下げへ
女性活躍推進法では、「行動計画の策定・届出」と「女性活躍状況の情報公表」が義務付けられています。適用される企業規模が下記のとおり変更されました。
2022年3月31日まで | 2022年4月1日から | |
---|---|---|
義務 | 301人以上の企業 | 101人以上の企業 |
努力義務 | 300人以下の企業 | 100人以下の企業 |
常時雇用する労働者が101名以上の場合、下記の取り組みを実施することが求められます。常時雇用とは雇用期間に定めがない正社員等だけではありません。雇用契約が1年以上のパート・アルバイト、契約社員も含まれます。
参照:
厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ
厚生労働省 令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出、情報公表が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます(PDF)
施行日:2022年4月1日
ポイント:パワハラ防止法の適用拡大。中小企業も対象に
2020年に「改正 労働施策総合推進法」が施行され、パワハラの防止策を講じることが大企業において義務化されました。努力義務のであった中小企業も2022年4月からは、義務化されています。
パワハラ防止法では、以下ついて対策を講じる必要があると定められています。
相談窓口と担当者を設置し、相談内容に適切に対応できる体制を整える。また、そのことを従業員に周知する
パワハラの相談があった場合、事実確認を行い被害者に配慮した対処を実施。行為者に対しても措置を講じること。また、再発防止に向けた施策も実施。
施行日:2022年5月1日
ポイント:高度外国人材の受け入れ促進と技術流出の防止
外為法では、軍事転用可能な機微技術の流出防止として、下記の2つを管理しています。
規制対象外である「居住者」であっても、外国からの影響を強く受ける立場である場合、技術を提供する際に許可が必要となりました。
従業員が下記に該当しないかどうかを確認する必要があります。該当する場合、技術提供するに場合、外為法第25条第1項に基づき、経産省に対して事前の許可が必要です。
具体例:外国企業(外資系企業ではない)と兼業して日本企業に就業する者
具体例:外国政府から資金提供を受けて就業する者(外国人に限らない)
具体例:日本における行動に関し外国政府等の指示や依頼を受けている者
施行日:2022年6月1日
ポイント:企業の不祥事に対する早期の是正および被害拡散の防止
近年、社会問題化する事業者の不祥事が相次いでいることから、早期是正により被害の防止を図るべく公益通報者保護法が改正されました。保護対象を拡大するともに、事業者に内部通報の整備義務を課し、行政による履行確保制度を設けるなど、公益通報者の保護の拡充がはかられています。これにより、外部人材である派遣社員も適用範囲になります。
内部の公益通報に適切に対応し、通報者を保護するための体制整備が義務付けられました。通報を受ける担当者や適切な調査、是正を行う担当者を指定する必要があります。
内部通報体制が実効力を発揮するべく、体制の不備や従事者の指定が十分でない場合、指導や是正勧告、勧告に従わなかった場合の社名公表など行政措置が行われます。
通報者に対する守秘義務を破った場合、従事者個人に対して刑事罰が科せられます。企業ではなく、内部通報に対応する従事者個人が対象になることがポイントです。
現行法では、通報者の対象は「労働者」となっています。改正後は、1年以内に退職したもの、役員も対象となります。
また労働者とは、労働基準法第9条に規定する労働者のことをいい、正社員のみならず派遣労働者、請負労働者、パートタイマーなどの非正規雇用労働者も含まれます。そのため、この退職者の中には、1年以内に就業していた派遣社員やパート・アルバイトなども含まれることになります。
施行日:2022年7月中を予定
ポイント:男女間の賃金格差の開示が義務に
従業員301名以上を常時雇用する事業主は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合について、ホームページなどでの公表することが義務になります。101名以上300名以下の企業についても、施策実行に伴う企業負担を鑑み、対象とするか検討する方針です。
日本は先進国の中でも、賃金の男女格差が大きく、女性役員の登用率も高くありません。情報開示の義務化により、格差の是正や意識改革を促したい狙いがあります。求職者にとっても企業を判断するひとつの指標となり得るため、企業としても取り組みが求められます。
参照:厚生労働省:男女間の賃金格差解消のためのガイドライン(PDF)
施行日:2022年10月1日
ポイント:社会保険の適用範囲が拡大
年金制度に関する大規模な法改正が行われ、大きな変更点のひとつが、社会保険の対象範囲が広がることです。これまで社員数500人超の大企業に適用されていたものが、中小企業へも段階的に適用されます。これにより、要件を満たすパート・アルバイト社員が社会保険適用の対象となります。
社会保険適用の対象は、次の要件をすべて満たすパート・アルバイト社員です。
従業員501人以上の企業は、2016年の法改正によりすでにこのルールが適用されています。2022年10月から適用になるのは、従業員101名以上の企業で、2024年10月以降には、従業員51名以上の企業へも適用が広がります。従業員50名以下の企業は、適用対象外です。
参照:厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
施行日:2021年4月1日
ポイント:70歳まで定年引上げ等の就業機会確保
2021年に努力義務で施行されましたが、高年齢雇用安定法は、努力義務が義務になる、という流れを繰り返しています。早めに対策をしておきたいところです。
これまで企業は65歳まで雇用を確保する措置が求められていたこと加え、今回の法改正により70歳までの者の就業機会を確保する措置を講ずる努力をするよう求められました。ポイントは、65-70歳までは雇用確保ではなく「就業機会の確保」になっていることです。これにより、業務委託契約や雇用主が実施する社会貢献事業(有償ボランティアなど)にまで就業機会を拡大し、より柔軟に対応が可能になっています。
※下記のいずれかを講ずること
「継続雇用制度」とは、定年後も本人が継続して働くことを希望した場合、引き続き雇用される「再雇用制度」のことです。この制度には現在、経過措置があり対象者を限定することができます。
この経過措置が終了することにより、2025年4月より希望者全員を65歳まで雇用する義務が発生します。
参照:
厚生労働省:高年齢者の雇用
厚生労働省:改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました(PDF)
人事業務に携わる場合、業務と法律は密接です。毎年のようにある法律の改正・施行があり、内容によっては、体制の大きな変更や他部署を巻き込んだ対策が必要となります。対応漏れが起きないよう、しっかりとキャッチアップしていきましょう。
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