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派遣法改正後の人材派遣、同一労働同一賃金を踏まえた利用法

掲載日2020年12月 3日

最終更新日2024年4月16日

派遣法改正後の人材派遣、同一労働同一賃金を踏まえた利用法

目次

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2020年4月1日に「同一労働同一賃金」を中心とした改正労働者派遣法が施行されました。今回の法改正により、派遣スタッフの待遇の見直しと改善がより一層求められています。とはいえ、待遇改善にはコストの増大が見込まれ、どの程度改善すべきか疑問点も多いと思います。ここでは、派遣先企業が注意すべき点を、改正法を踏まえて解説します。

改正の目的~同一労働同一賃金とは

「同一労働同一賃金」とは、文字通り「同じ業務を行う者には、正規・非正規の身分にかかわらず、同一の賃金を支払うべき」という考え方です。同じ条件下で同じ業務を行う正社員と非正規労働者との間に生じる不合理な賃金格差の適正化を図るものです。


近年は、少子高齢化に伴い労働力人口が減少する一方、派遣スタッフをはじめとした非正規労働者は増加しています。それに伴い、業務の内容や責任度合いが正社員と変わらない非正規労働者も増えています。ところが、正社員に保障される給与や福利厚生、キャリアアップの機会等が非正規労働者には保障されないことが多く、非正規労働者の不公平感の要因となってきました。

今回の派遣法改正は「働き方改革」の一環として、こうした不合理な格差の解消を目的として行われました。派遣スタッフの待遇の具体的な法制化により、派遣スタッフのモチベーションアップによる人材確保、ひいては国レベルでの生産性の向上を目指しています。「同一労働同一賃金」は、こういった格差解消の要であり、改正派遣法では、特に踏み込んだ内容となっています。

しかしながら、自社内に派遣スタッフと同じ業務の担当者がいないケース、同じ業務でも責任度合いが違うために同一労働とはいえないケース等、「同一労働同一賃金」がなじまない場合も多いでしょう。その場合でも、国が公表する賃金水準により適正な賃金が確保されるよう定められています。

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派遣スタッフの待遇決定方法

派遣スタッフについては、雇用関係は派遣元、指揮命令権は派遣先にあるという特殊性から、派遣元と派遣先との間で認識が食い違うことがあります。そのため、派遣元と派遣先との情報共有により、双方の認識を同じくすることが必要です。

こうした状況を踏まえ、今回の法改正では、派遣元に対し、派遣スタッフの待遇を『派遣先均等・均衡方式』または『労使協定方式』のいずれかにより決定することが義務付けられました。

『派遣先均等・均衡方式』とは、派遣先の労働者に合わせて、派遣スタッフの待遇を決定する方式です。
この方式では、派遣スタッフのすべての待遇(賃金、福利厚生、教育訓練、安全管理等)において、比較対象となる派遣先の通常の労働者(以下「比較対象労働者」)の待遇と「均等」「均衡」を図る必要があります。

「均等待遇」とは、派遣スタッフと比較対象労働者の「職務の内容」「配置転換の範囲」が同じ場合は差別的取扱いを禁止する、というものです。
「均衡待遇」とは、先の2点に加え、「その他の事情の相違」を考慮の上、不合理な待遇差を禁止するものです。

なお「職務の内容」とは、業務内容に責任の程度を加味したものをいいます。業務の種類だけで単純に判断せず、個々の待遇ごとにその性質や目的に照らして判断します。

一方、『労使協定方式』とは、派遣元において締結された労使協定に基づき、派遣労働者の待遇を決定する方式です。ここで対象となる待遇は、「賃金(基本給・賞与・手当・退職金)」と「賃金以外の待遇」です。

「賃金」については、派遣スタッフの担当業務に対する賃金が、厚生労働省が公表する職種別・地域別の賃金水準と同等以上であること、派遣スタッフのスキルアップにより改善されることの二点を満たす必要があります。

「賃金以外の待遇」については、派遣元の通常の労働者と比べて、不合理な待遇差が生じないようにすることが求められます。ただし、「教育訓練」および「給食施設」「休憩室」「更衣室」については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る必要があるため、労使協定方式からは除かれます。

出典元:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」

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派遣先に求められること

(1)派遣先から派遣元への情報提供

『派遣先均等・均衡方式』と『労使協定方式』のどちらも、派遣先は、派遣元に対して、比較対象労働者の待遇に関する情報を提供する必要があります。この情報提供は、労働者派遣契約の締結前に行う必要があり、情報提供がなければ派遣契約を締結してはいけません。

比較対象労働者の待遇情報のうち、提供が必要とされるものは下記の通りです。

派遣先均等・均衡方式の場合

  1. 職務の内容、配置転換の範囲、雇用形態
  2. 選定理由
  3. 各待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合はその旨)
  4. 各待遇のそれぞれの性質とその待遇を行う目的
  5. 各待遇のそれぞれの決定にあたり考慮した事項

労使協定方式の場合

  1. 派遣スタッフと同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して実施する、業務の遂行に関する教育訓練(法第40条第2項の教育訓練)
  2. 給食施設、休憩室、更衣室(法第40条第3項の福利厚生施設)

出典元:厚生労働省「平成30年労働者派遣法改正の概要」

(2)教育訓練、福利厚生施設に関する派遣スタッフへの配慮

派遣スタッフの教育訓練や福利厚生施設の利用については、次のように定められています。

教育訓練

派遣先が業務の遂行に関する教育訓練を実施する場合、派遣先の労働者と同じく、派遣先の労働者と同種の業務を行う派遣スタッフに対しても実施することが義務付けられています。

福利厚生施設

派遣先の労働者が利用する「給食施設」「休憩室」「更衣室」については、派遣スタッフも利用できるようにすることが義務付けられています。加えて、派遣先が自社で運営し、自社の労働者が利用している売店、診療所や保育所、図書館、保養施設等「給食施設」「休憩室」「更衣室」以外の施設も派遣スタッフが利用できるよう配慮が必要です。

【Tips】派遣法で派遣先企業に求められる措置とは?

派遣社員の雇用主は派遣会社ですが、実際の就業場所は派遣先企業という雇 用と使用が分離した形態になっています。
このため労働者派遣法では、派遣社員が安心して就業できるように派遣先企業にも「派遣先の講ずべき措置」を定め、派遣先企業が遵守できるよういくつかの指針を公示しています。
「派遣先の講ずべき措置に関する指針」について詳しく知りたい方は下記をダウンロードください。

cover_tempguide-intermediate04.png  

派遣料金に含まれる費用

派遣料金に含まれる費用のうち、多くを占めるのは派遣スタッフの人件費です。派遣スタッフの賃金のほか、派遣元が負担する社会保険料(労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金保険)、年次有給休暇取得時の賃金相当分があります。派遣元や職種にもよりますが、これら派遣スタッフの人件費が、派遣料金の概ね80%以上を占めています。

その他、派遣スタッフへの教育訓練費、相談窓口等の運営費、派遣スタッフのサポート担当者の人件費、オフィス等の賃借料、派遣スタッフの募集費用等、労働者派遣業の運営にかかる様々な経費があります。これらを差し引いた残りの額が派遣元の営業利益となるわけです。

また、派遣先には、派遣元が『派遣先均等・均衡方式』又は『労使協定方式』による同一労働同一賃金を遵守できるよう、派遣料金についての配慮義務があります(改正労働者派遣法26条11項)。この配慮は、労働者派遣契約の締結・更新時のみならず、締結・更新後にも求められます。

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まとめ

ここまで見てきた通り、今回の法改正は、少々厳しいものになっています。しかしながら、派遣法を遵守することで派遣スタッフのモチベーションも上がり、より優秀な人材確保にもつながるでしょう。そのためにも、派遣先と派遣元が協力して派遣スタッフの待遇向上を図ることが必要です。

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著者プロフィール

小川直子(社会保険労務士)

小川直子(社会保険労務士)

大手電機メーカー人事部勤務、社労士事務所勤務を経て2005年より社会保険労務士法人アクティブイノベーション(現社会保険労務士法人キャストグローバル)に所属、2009年パートナー就任。人事労務に関する相談業務、就業規則コンサルティング業務、セミナー・研修業務等に従事。著書に「図解よくわかる人材派遣」(共著)、「就業規則実務マニュアル・書式集」など。

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