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派遣社員にさせてはいけない業務は?契約違反を防ぐポイントを解説

掲載日2022年8月16日

最終更新日2023年3月20日

派遣社員にさせてはいけない業務は?契約違反を防ぐポイントを解説

目次

さまざまな働き方が普及し、業務形態が多様化していることにともなって、人材派遣サービスの市場も拡大しています。即戦力の人材として期待できる派遣社員ですが、人材派遣サービスを活用する際には業務範囲の定めなど、直接雇用とは異なるルールに注意する必要があります。

本記事では、派遣社員および人材派遣サービスの概要から、具体的な禁止業務や契約規定まで、契約違反や法令違反などのトラブルを避けるために知っておきたいポイントを解説します。

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派遣社員とは

派遣社員は、派遣元の会社と雇用契約を交わしている状態で、ほかの会社に派遣されて働く労働者のことを指します。雇用契約を交わす会社と、具体的な仕事の指示を受ける会社が異なる点に特徴があります。

「派遣社員」という言葉は一般的にもよく知られていますが、これから解説する内容の前提知識として、まずは基本的な内容をおさらいします。

人材派遣の種類

人材派遣の種類には、「有期雇用派遣」「無期雇用派遣」「紹介予定派遣」の3つがあります。

有期雇用派遣とは、登録型派遣ともいい、あらかじめ派遣元で登録しておいた労働者が、派遣先が決まった際に派遣元と雇用契約をする形態のことです。派遣期間が終了すれば契約終了となりますが、派遣元・派遣先・派遣社員の3者間の同意があれば原則、最長3年まで延長することができます。

無期雇用派遣とは、派遣元である会社との雇用契約が、派遣先で就労していない期間も継続する形態のことです。有期雇用派遣の場合、同一の部署で働ける期間は原則最長3年です。無期雇用派遣は、同一部署であっても3年を超えても働き続けてもらうことが可能です。

紹介予定派遣とは、派遣元と雇用契約を交わした派遣社員が、派遣先の会社にいずれ直接雇用されることを前提とした状態で働く形式の派遣形態をいいます。派遣期間は最長6か月と定められています。派遣期間後に直接雇用するかどうかは、派遣期間中の働きぶりなど総合的に判断した上で、派遣先・派遣社員の合意をもって決定します。

派遣社員の立ち位置

労働者派遣は前述のとおり、派遣元企業と雇用関係にある労働者(派遣社員)が、別の会社へ派遣され、その派遣先で働く形態です。

直接雇用であれば、会社と社員との二者間が雇用契約を交わし、その社員が契約を交わした会社で働くことになります。一方で派遣の場合は「派遣元、派遣先、派遣社員」の三者間で契約が交わされるという特殊な形態が取られています。

派遣社員と雇用契約を交わしているのは実際に働いている派遣先会社ではなく派遣元会社となるため、派遣社員への給与の支払いや各種保険料の徴収、有給休暇の付与などは派遣元から行われます。

企業が人材派遣サービスを利用するメリット

企業が人材派遣サービスを活用するメリットには、まず人件費削減が挙げられます。

仮に正社員を雇った場合、基本給や各種手当などの給与支払いに加え、労働保険料や社会保険料、福利厚生費などの費用がかかります。

一方、人材派遣サービスを活用する場合は、派遣契約による月々の給与を支払う必要はあるものの、保険料や福利厚生費などの負担は派遣元の会社が行うため、直接雇用の場合に比べコストを削減できます。

また、時間コストを削減することも可能です。例えば、勤怠管理は派遣先が行うものの、派遣社員の給与計算や有給休暇の管理などは派遣元の会社が行うため、人事労務にかかる時間を削減できます。

さらに、派遣元はあらかじめ派遣先と相談し、派遣先が必要としているスキルを持つ派遣社員を選定し、派遣します。そのため、ゼロから教育しなければならない人材に比べて、育成コストも削減可能です。

人材派遣サービスの活用例

派遣会社によって得意分野が異なるものの、人材派遣サービスには様々なスキルや経験を持つ人材が登録しています。そのため、派遣社員は企業においてさまざまな業務を受け持つことが可能です。

期間の定めのない正社員の雇用契約とは異なり、人材派遣契約は有期契約であることから、人手不足になりやすい期間にあわせて導入するという活用方法も有効です。

例えば、年間の中で繁忙期を迎える期間がある程度決まっている企業の場合は、忙しくなる時期にあわせ人材派遣サービスを利用することで、ほかの社員の長時間労働による疲労の抑制や時間外労働の割増賃金(残業代)の削減を図れます。

また、社員が育児休業や介護休業を取得する際にも、休業期間と引き継ぎ期間に人材派遣サービスを活用することで周囲の負担も少なく、業務を進められます。

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人材派遣サービスには禁止業務や契約規定がある

本章からは、派遣社員に従事してもらうにあたり、守らなければならないルールについて解説します。

派遣社員に関する法律

派遣社員を守るための法律には、「労働者派遣法」というものがあります。この法律は、人材派遣事業が法律のもとで正しく行われるために制定されています。

本来、派遣労働は労働者供給事業とみなされ禁止扱いにされていましたが、労働者派遣法が施行されたことで一部の専門業務に限り解禁されたといういきさつがあります。労働者派遣法の内容はそのときの時代に合わせて改正され続けており、現在でもさまざまな禁止事項が設けられています。

違反した場合はどうなる?

労働者派遣法に違反した場合、さまざまな罰則が科せられる恐れがあります。例えば、派遣先の企業から別の企業へ派遣社員を派遣した場合、「二重派遣」の扱いとなり、派遣先の企業に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。派遣法の罰則規定は派遣元企業に対する内容がほとんどですが、派遣先にも講ずべき事項や禁止されていることがあります。派遣社員が安全して派遣先企業で働けるようにするためにも、法令の順守を心がけましょう。

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派遣社員にさせてはいけない業務

派遣社員は、すべての業務に就業可能ではなく、法律により禁止されている「派遣禁止業務」が存在します。

1986年に施行された初期の労働者派遣法では、「専門性の高い限られた業務に対して派遣業務を認める」という形式を取っていました。その後時代を経て、数回の改正が行われる中で徐々に対象業務が拡大され、1999年には許可された業種を記載するポジティブリスト方式から、禁止する業種を記載するネガティブリスト方式に変更されました。つまり、「禁止されている業種以外は業務を定める」という形式に変更されたのです。これが現在の派遣禁止業務の成り立ちです。

本項では、派遣が禁止されている業務の内容を順に解説します。

警備業務

警備業務とは、会社や住宅、ショッピングモールなどの駐車場、遊園地などで盗難や負傷などの事故を防ぐための業務です。レジ待ちの客を誘導したり、受付業務者が周辺を徘徊する人に声をかけたりするような業務も警備業務に含まれます。

これらの業務は請負形態での実施が通例となるため、派遣社員が従事するのは業務遂行上問題があるとして禁止されています。

建設業務

建設業務とは、建築現場で資材の運搬や組み立て、土木や建築物の建設やリフォーム、保存や修理、破壊や解体などの準備を含めた業務です。これらの業務は閑散期と繁忙期の差が激しいことから建設業務に特化した派遣制度がすでに設けられており、一般の派遣社員が就くことは禁止されています。

港湾運送業務

港湾運送業務とは、貨物の積み込みなどの運搬や貨物の検量などの業務を指します。この業務も建設業務と同様、閑散期・繁忙期の差が大きいことによる派遣制度が別に制定されているため、一般の派遣社員が就くことは禁止されています。

病院・診療所などにおける医療関連業務

医療関連業務は、医師や看護師、臨床検査技師、放射線技師などの専門職の者が連携し、チームとなって行っています。人材派遣サービスにおいては、労働者に通常期間の定めがあるほか、勤務先との直接雇用ではないなど、医療関連業務に重要な「チーム内での意思疎通」を十分に行えない懸念があることから、医療関連業務への人材派遣は禁止されています。ただし、産前産後休業や育児休業、介護休業を取得した者の代替としての派遣や、僻地のため医療関係に携わる者が少なく派遣の必要性がある場合などは、例外として認められています。

士業

税理士や弁護士、社会保険労務士、司法書士などの士業の場合、それぞれの専門資格を保有した者が、それぞれ委託を受けて業務を行います。業務において指揮命令を他社から受けないことから、労働者派遣の仕組みにそぐわないため、対象から除外されています。また、建築士事務所の管理建築士の業務は、専任であることが建築士法で定められていることから、労働者派遣の対象になりません。

その他

派遣先で、団体交渉や労働基準法に規定する協定締結を行う場合に、使用者側の直接当事者として派遣社員に人事労務管理関係の業務を行わせることは禁止されています。

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派遣禁止業務以外に派遣社員にさせてはいけないこと

法的な派遣禁止業務ではない場合でも、派遣社員に契約の範囲外の業務を行わせることは禁止されています。本章では、具体的な内容を順に解説します。

契約書に記載のない業務

派遣元会社と派遣先会社との間で交わされる派遣契約書の中には、労働者派遣法に従い、「派遣社員が担当する業務内容」を盛り込む必要があります。つまり、派遣社員にはこの契約書の中で定められている業務以外の内容に従事させてはいけません。なお、派遣社員の業務内容が契約書を遵守しているかは、派遣元会社・派遣先会社がともに見守る必要があることも覚えておきましょう。

所属部署以外での業務、部署移動

契約当初に定められた部署以外で従事することは、派遣契約違反と扱われるため、所属部署以外で業務を行うことや、部署異動を実施することは認められません。

契約書に記載のない出張・残業・接待など

派遣契約に出張の可能性が定められていない状態で派遣社員に出張業務をさせることは、前述までのケースと同様に契約違反と扱われるため、禁止されています。同様に、契約書に記載されていない残業やサービス残業、会社の飲み会や接待に同行させることも原則として認められません。

なお、業務の都合上やむを得ず派遣社員の業務内容を変更しなければならない場合は、派遣元・派遣先・派遣社員の三者間で契約の内容を見直し、全員が合意した場合に変更が可能です。

二重派遣や偽装請負

二重派遣とは、派遣元より派遣された派遣社員を、別の会社へ派遣することです。これは派遣社員の安全を保証できない行為として、職業安定法により固く禁止されています。

一方、偽装派遣とは、指揮命令権のない業務請負という契約を交わしておきながらも、発注者が受注者を指揮命令下に置いた上で働かせている行為で、一時期横行したことで社会問題にも発展した経緯があります。この偽装請負も労働者派遣法により禁止されている行為のため、派遣先は注意しなければなりません。

日雇い派遣

派遣社員の雇用期間を一日ごと、または30日以内の短期間とする「日雇い派遣」は禁止されています。これは、かつて日雇い派遣という不安定な雇用形態で働く労働者が、派遣切りのあおりを受けて職を失うケースが相次いだことから、同様のケースから派遣社員を守るために設けられた法律です。

ただし、60歳以上の者や雇用保険の対象外となる学生、副業として派遣登録をしている者などは、例外として日雇い派遣が認められています。

また、ソフトウェア開発や研究開発、通訳や翻訳、受付業務や事業の企画立案、金融商品の営業などに携わる場合については、いずれも専門性が高く、市場ニーズの高い業務とされていることから日雇い派遣が認められています。

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派遣社員との関係を上手に構築するポイント

派遣社員は、人手が足りず困っている部署に配属される「即戦力」というイメージが強い人材です。しかし、企業によって社内風土や雰囲気、社員の世代分布、仕事のやり方などは大きく異なることから、スムーズに業務に慣れ、職場になじむためには派遣先企業のサポートが必要です。

仕事の流れやルールなどを適切に伝えられるよう、あらかじめ仕事内容の洗い出しを行い、業務手順を明確にしておきましょう。

また、派遣社員と他の社員との間に隔たりが生まれないよう、業務に必要な社内ミーティングや社内研修にも参加してもらい、他の社員と同様に扱うことも重要です。人間関係が円滑であれば、業務上の問題も起こりにくくなるでしょう。

まとめ

過去には限られた業務のみが対象とされていた人材派遣ですが、現在では一部の業務を除いた多くの業務で活用ができるようになりました。

とはいえ、禁止業務があること、業務は契約の範囲内に限定されていることなど、すべてが正社員への業務指示と同じようにできるわけではありません。発注時の業務範囲の事前確認はもちろんのこと、派遣社員の就業前にも禁止業務や契約外の業務を依頼してはいけないことを社内に周知し、適切な管理を行いましょう。

著者プロフィール

加藤 知美(社会保険労務士)

加藤 知美(社会保険労務士)

愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。 総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

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