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【派遣先責任者向け】派遣法の基礎知識 知っておきたい12項目
派遣法は、派遣会社だけでなく派遣先企業にも責任や努力義務などを課しています。
さまざまなことが派遣法で規定されていますが、派遣先責任者が知っておくべき項目を12つピックアップし、わかりやすく解説した資料をご用意しています。
この記事では、派遣先の直接雇用に関するルールをはじめ、派遣社員を直接雇用に切り替えるメリットや注意点、タイミング、手順について解説します。また利用できる助成金制度についても見ていきましょう。
派遣先が派遣社員を直接雇用したい場合、法律ではどんなことが定められているのでしょうか。
労働者派遣法では派遣先企業(派遣社員に就労をさせている企業)に対し、「雇入れ努力義務」と「募集情報の提供義務」の2種類について規定しています。
雇入れ努力義務とは、「一定の要件を満たす派遣社員を就労させている派遣先企業は、その労働者を雇入れるよう努めなければならない」ということです。
具体的には、次の3種類の要件すべてを満たす派遣社員を受け入れているケースが対象です。
ここで注意しなければならないのが、対象はあくまでも「有期雇用の派遣社員」のみとなる点です。無期雇用の派遣社員は、派遣元企業と期間の定めのない契約をすでに交わしており、安定した待遇が見込まれることから、雇入れ努力義務の対象にはなりません。
派遣先企業は、一定の条件に合致する派遣社員に対し、社員募集情報を提供することが義務づけられています。この義務は、派遣社員が派遣先企業で社員として働ける場を設けるという「派遣先での正社員化推進」や「雇用安定措置」のために定められている制度です。
社員募集情報の提供対象となる一定の条件とは、派遣先企業内の同一の事業所で、すでに1年以上継続して就労している派遣社員であることです。「同一の事業所」であれば、途中で所属する組織単位が変更になった場合でも、継続期間にカウントされる点に気をつけましょう。
提供する内容は、対象となる派遣社員が就労する派遣先事業所で行っている正社員募集に関する情報です。有期雇用者(契約社員やパートタイマーなど)の募集情報は除外されます。
また、新卒者を対象とした募集など、派遣社員には応募の資格がないことが明らかである情報も周知の必要はありません。
周知をするための方法としては以下が例として挙げられます。
雇用安定措置のために社員募集の情報を提供する場合、次の2種類の要件をどちらも満たす派遣社員を受け入れているケースが対象となります。
提供する内容は、対象となる派遣社員が就労する派遣先事業所で行っている直接雇用に関する募集情報で、正社員化推進のケースとは異なり、正社員に加え契約社員、パートタイマーなどの雇用形態を問いません。
具体的には、次の3種類の要件すべてを満たす派遣社員を受け入れているケースが対象です。
周知の方法については、正社員化推進のケースと同様です。
派遣社員を直接雇用することは違法ではありません。労働者派遣法第33条において、派遣会社は正当な理由なく、派遣社員が派遣会社との契約終了後に派遣先と雇用契約することを禁じてはならないとされています。
一方で契約期間中の切り替えは、派遣会社に損失が出る可能性があります。そのため、派遣契約期間中の直接雇用については、禁止する旨が契約条項に含まれていることがあります。
違反すると違約金が発生したり、場合によっては訴訟に発展したりするケースもありますので、原則として「派遣契約終了後」にするのがよいでしょう。
参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
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派遣会社から受け入れている派遣社員を直接雇用するメリットは5つです。
企業が新たに人材を雇入れる場合、求人票の作成や企業の宣伝活動、採用試験や面接の準備など、募集や採用に関するさまざまな業務が発生します。
しかし、もともと就労経験のある派遣社員ならば、仕事ぶりや性格の把握ができており、また新たに新入社員教育を実施する手間もかかりません。直接雇用を実施することで、採用費や研修工数を抑えることができます。
派遣社員の業務は派遣契約により定められており、契約外の仕事を依頼することはできません。
派遣社員は、スキルや豊富な経験をもつ人材が多く、またポテンシャルの高い人も多数います。直接雇用することで、成長や仕事ぶりを確認しながら、さらにレベルの高い仕事や範囲の広い仕事を任せることが可能です。企業にとっては人的資源の有効活用につながるでしょう。
派遣社員側の視点に立った場合、派遣社員からの直接雇用への切り替えは、一般的な就職活動と異なり、業務内容や社風、企業の状況をしっかりと理解した上で企業に雇用される流れとなります。
自社で実務を経験した人材の採用は、定着しやすいという効果があります。また、採用後に陥りがちな採用のミスマッチを回避できます。
労働者派遣法では、同じ派遣先の同一部署で働けるのは3年までとされています。(いわゆる人で3年ルール)
せっかく業務のクオリティも安定し、よいチームワークを築けていたとしても、3年以上受け入れることはできません。直接雇用は、その解決策となり得ます。
派遣法の3年ルールについては、「派遣法の3年ルールとは?メリット、デメリット、契約を延長する方法」で詳しく解説しています。
直接雇用契約により、派遣社員は安定した雇用という安心感を得ることができます。また、派遣先から必要とされた、評価されたという自信にもつながります。
それにより、会社に対する帰属意識の高まりや業務遂行に対してより高いレベルを目指そうというモチベーションのアップが見込めます。
有期雇用派遣を例に派遣社員を直接雇用する際の手順を解説します。
まずは派遣契約を交わしている派遣元企業との契約内容の見直しを行います。
派遣元企業との派遣契約の中には、「直接雇用を申し出る場合は紹介予定派遣扱いに切り替える」、もしくは「直接雇用を申し出る場合は有料職業紹介による対応に切り替える」などの内容により、派遣元企業に対して紹介手数料の支払いを含めた何らかの対応が必要となるケースがみられます。
直接雇用の可能性があれば、前もって派遣元企業と話し合いを進めておきましょう。
派遣契約については、「派遣契約とは?企業が派遣会社と結ぶ2種類の契約をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
やむを得ず派遣契約期間中に直接雇用したい、派遣社員が派遣会社の無期雇用社員であるなどの場合、派遣会社の協力・意向が重要になってきます。
何も伝えずに引き抜いてしまうと、トラブルや訴訟になりかねないだけでなく、企業の信頼も失ってしまいます。
ここで、紹介予定派遣に切り替えるのか、人材紹介として進めるのかなど、手数料の発生有無について確認しておきます。
紹介予定派遣を例にすると、年収の20~30%と言われています。
あくまでも一般論であり、派遣会社の方針や派遣就業期間によっても変動することもあるため、事前に派遣会社に確認しておきましょう。
次は、直接雇用時の雇用契約条件を定め、派遣社員へ提示する段階へと入ります。
まず、雇用形態が「正社員」なのか「契約社員」なのかを明らかにすることで、相手に定年まで働くことのできる無期契約か、期間更新の有期契約なのかを伝えます。
契約社員として直接雇用を開始する場合でも、例えば正社員への登用制度がある場合は、その旨も伝えると相手により安心感を与えられます。実際に正社員へ転換した社員の実績もあればあわせて伝えましょう。
その他、勤務時間や休日、残業の有無、仕事内容、福利厚生の内容も提示していきます。派遣労働者として就労していたケースと比較して説明すると理解が進みます。
派遣社員を直接雇用する場合、当然ながら保険や税金の扱いはほかの雇入れ社員と同様の扱いになります。
例えば、労災保険や雇用保険から成る労働保険、健康保険や介護保険、厚生年金保険などの社会保険は、ほかの社員と同じ割合で企業が負担します。加入手続き書類も通常の新入社員と同じく必要になるので、資格取得届の準備をしておきましょう。
また、税金についても同様です。通例としては以前の職場である派遣元企業より源泉徴収票を入手し、年末調整の際に金額を加える作業を取ります。経理担当者や労務担当者にその旨を周知し、申告漏れがないよう気をつけましょう。
労働者派遣法は、過去に何度も改正が行われています。
その中には、派遣社員を受け入れる派遣先に関する事項もありました。
派遣先が知っておきたい12項目について、わかりやすく解説した資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
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直接雇用のメリットについてひととおり理解をしたところで、ここからの項目では、派遣社員を直接雇用した際に生じやすい懸念点について述べていきます。
直接雇用をすることは、企業で新たに雇入れる労働者が増加することを意味します。したがって、労働者を受け入れる際に必要となる給与や福利厚生面のコストが増加する点を忘れてはなりません。
これまで、派遣契約を交わしていた際にかかっていた費用からどのように変化するのかを、あらかじめ社内でシミュレーションしておきましょう。
尚、直接雇用をする場合は、自社社員同様に各種税金や保険料の算出・負担や手続きが必要です。そのため人事労務担当者は手続きの内容を見直しておかなければなりません。
直接雇用されて働くことは、待遇が安定するなど、派遣社員にとっても一見メリットばかりだと思われるかもしれませんが、派遣社員の中には、「自身のプライベートと両立したい」「柔軟性の高い生活をしたい」という思いで、働いている人も一定数います。
安定した職場での生活を送る一方で、これまでのような働き方とは異なる生活が続き、「自由度が下がった」と考える社員が出てくる可能性があるので、直接雇用前と後で雇用形態が大きく異なる社員の場合、疲弊しすぎていないか、悩みがないかなどを確認しながら就労させるようにしましょう。
気をつけなければならないのが、「離職してから1年以内の派遣社員の受入禁止」というルールです。これは、派遣先企業を離職した従業員は、離職後1年が経過するまでは派遣社員として受け入れることが禁止されていることを意味します。
つまり、派遣社員が直接雇用に切り替えられた後、すぐに再び派遣社員へと戻ることはできないことを覚えておきましょう。
直接雇用を実施する際にはキャリアアップ助成金という助成制度を利用できます。派遣社員を直接雇用し、企業の戦力として働いてもらうことは、派遣労働者のキャリアアップを促進させる取り組みにつながるためです。
具体的には、「正社員化コース」がこれに該当します。派遣社員を派遣先企業で正規社員として直接雇用した際には、一定額の助成金を受給できます。
金額は、有期雇用の派遣労働者と無期雇用の派遣労働者のいずれを直接雇用したかで異なります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
派遣社員が派遣会社と結んでいる契約には有期雇用派遣・無期雇用派遣・紹介予定派遣などの種類があります。各種類の派遣社員を直接雇用する方法について解説します。
派遣法における雇入れ努力義務の対象は、有期雇用の派遣社員です。つまり、直接雇用が実施されるケースが最も多いのが、この「有期雇用派遣」であるといえます。
なお、有期雇用の派遣社員を直接雇用する場合、無期雇用での契約でなければならないか否かについて疑問を持つ企業も多くみられますが、直接雇用に関する法律では、雇用期間に関する決まりは盛り込まれていません。
したがって、派遣社員を直接雇用する際は、期間ごとに契約を更新する有期雇用として直接雇用する方法も可能です。
但し、有期の派遣契約から有期の直接雇用になった場合、派遣社員にとってどのようなメリットがあるかは考えておくべきです。
無期雇用の派遣社員は、そもそも派遣会社との間で安定した雇用契約を交わしている労働者になるため、直接雇用の努力義務対象からは外れています。
ただし、直接雇用が不可能ということではなく、派遣先企業と派遣社員の双方が希望することで、直接雇用契約を交わせます。
ただし、派遣社員は派遣会社を退職する手続きを取る必要がでてきます。契約の流れについては、有期雇用派遣のケースと同様の形を取ることになります。
紹介予定派遣とは、派遣先企業でいずれ直接雇用されることを前提に、派遣社員が就労する形式のことです。したがって、紹介予定派遣を行う際には、前もって直接雇用が前提であることを派遣社員に知らせておく必要があります。
また直接雇用を目的としていることから、事前に面接や書類選考などの段階を経てから就労してもらうことが可能です。なお、紹介予定派遣の期間は最大6か月間であり、通常時の原則3年と比較して短いことには留意しておきましょう。
紹介予定派遣は、最初から直接雇用を前提とした派遣就労である点が、他の派遣契約との大きな違いになります。そのため、紹介予定派遣期間中でも双方が合意すれば直接雇用へ切り替えることが可能です。
なお、紹介予定派遣が実施され、正式に直接雇用として採用することが決定した際には、紹介手数料を支払う点についても覚えておきましょう。
関連記事:紹介予定派遣とは?仕組みとルール、料金について解説
関連資料:紹介予定派遣とは
派遣社員を直接雇用することは、企業にとってさまざまなプラス材料があります。なお、キャリアアップ助成金の受給を視野に入れた直接雇用を行う際には、前もってキャリアアップ計画書を作成・提出するなどの準備が必要です。厚生労働省から提供されている資料や書類のチェックリストを活用する方法や、専門家に相談する方法を取ることで、より効率の良い申請ができますので、まずは社内体制を洗い出し、検討してみてはいかがでしょうか。
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