目次
新型コロナウイルスによる社会活動の変動は、人材獲得難な状況が長年続いていた求人動向にも影響を及ぼしました。しかし、日本全体で採用意欲が下がったわけではなく、業界や職種によって違いがあるようです。
人材派遣については、2020年に派遣需要の落ち込みは起きたものの回復傾向であり、派遣会社はスタッフ獲得が困難なコロナ前の市況に戻りつつあります。
本記事では、人材派遣の現状と優秀な人材に就業してもらうためのポイントについて解説します。
労働市場におけるコロナ前から現時点までの人材派遣の傾向を見てみましょう。
一般社団法人 日本人材派遣協会が2021年に調査した「労働者派遣事業統計調査」によると、派遣スタッフの稼働人数は、新型コロナウイルスの本格的な国内感染が拡大し始めた2020年の第2四半期より大きく落ち込みました。
主な要因は以下のように考えられます。
感染拡大の初期は、企業側もスタッフ側も就業について模索している状態で、リモートワークの必要性が急に出てきたものの、就業環境の整備、セキュリティ、派遣スタッフのリモートワークが可能なのかという法的な問題などの課題が山積していました。
※派遣スタッフのリモートワークについては、厚生労働省は可能との見解をだしています。
(参照:厚生労働省|派遣社員のテレワークについて(PDF))
その後、先述したような要因により派遣の稼働者数は大きく落ち込んだと考えられます。しかし、2021年に入り大きな増加傾向に転じており、第三四半期についてはコロナ前の2019年より派遣稼働者数は増えています。
参照:日本人材派遣協会|労働者派遣事業統計調査 2021年第3四半期(7⽉〜9⽉)(PDF)
派遣就業を希望するスタッフの新規登録についても触れておきましょう。
コロナ前は、人材派遣業界も人材獲得が困難な時期が続き、派遣会社各社は派遣スタッフの獲得に力を入れていました。ただ、労働人口の減少や正社員を含む求人数の増加などの影響もあり、登録者数は横ばい、もしくはゆるやかな減少傾向にありました。
感染拡大を機に新規登録者数は大きく落ち込んでいます。これは、人材獲得難が原因というよりも、先行き不透明な状況であったため、人材派遣会社がスタッフ獲得に慎重になったこと、スタッフ側も感染を考慮し仕事探しを控えたと考えられます。
しかし、2021年に入ってから新規登録者数は増加に転じ、コロナ前を大きく上回りました。増加の要因としては以下が挙げられます。
コロナ前に比べて新規登録者数は増加したものの、期を追うごとに減少する傾向にあります。後述しますが、原因は求人数の増加(派遣に関わらず)により就業が決定した人が増えたと思われます。
参照:日本人材派遣協会|労働者派遣事業統計調査 2021年第3四半期(7⽉〜9⽉)(PDF)
派遣の求人件数は、2020年第2四半期に大きく減少しました。先述したように、経済活動の変化やコロナの感染状況を見通すのが難しく、派遣依頼を控えた企業が増えたことが理由として挙げられます。
コロナより前、派遣の求人倍率は高止まりしていました。東京都においては、コロナ直前の2019年第4四半期で求人倍率は10倍近くありましたが、2020年第3四半期では2.23倍にまで下がっています。
ただ、派遣の求人件数は復調傾向にあり、コロナ前とまではいきませんが、期を追うごとに求人数は増加しています。それに対して、登録者数は減少傾向です。そのため、派遣の求人倍率は上昇しており、直近では、5.31倍になっています。
▽東京都の派遣依頼案件の推移(2019年第1四半期を100とした場合の、求人件数の増減)
▽東京都の新規登録者に対する求人の割合 推移
参照:
日本人材派遣協会|労働者派遣事業統計調査 2021年第3四半期(7⽉〜9⽉)(PDF)
リクナビ派遣
求人が増加した背景の一例として、下記の要素があげられます。
上記以外にも派遣社員の就業については、コロナの影響が限定的であったことも想定できます。同じ非正規雇用であるパート・アルバイトについては、まだ復調とまでは言えません。
参照:総務省|労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)7~9月期平均結果 第1-1表
これまで見てきたように、派遣就業を希望する人材が潤沢な状況ではありません。但し、細かく見ていくと、職種や地域、業種などによって人材獲得の状況は異なります。
また、経済状況などの外的要因だけではないケースもあります。主なケースを3つご紹介します。
派遣会社へ提示している派遣料金とスタッフへの支払い(時給)は、密接に関連しています。派遣料金が相場とかけ離れている場合、求人に応募がなく、派遣会社がスタッフに仕事を紹介しても受諾してもらえないなどの弊害が生じます。
また、高いスキルや豊富な経験知識を持つ人材には、一般的な登録者に比べて多くの仕事紹介が入ります。仕事を選ぶ条件の中でも時給は優先順位が高いことが多いため、派遣料金が相場から低いと、他社の仕事と比べて見劣りすると受け取られてしまうケースもあります。
料金が相場と変わらない場合であっても、不人気になりやすい案件はあります。
総務省の調査した非正規雇用(派遣以外も)を選ぶ理由では、「自分の都合の良い時間に働きたい」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」といった勤務条件を起因とする理由も上位になっています。
参照:総務省|労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)7~9月期平均結果 第3-1表
派遣会社にはそれぞれ強みがあります。多くは、事務系やIT系、ブルーカラー系、販売職など、得意とする職種があります。または、特定のエリアに強いという地域性を打ち出しているケースもあります。規模の大きな派遣会社になると、全国展開かつ、様々な職種に対応可能と複数の強みをセールスポイントにしている企業もあります。
しかし、どの派遣会社も得意分野ではない職種やエリア、そもそも労働人口が少ないエリアの場合などでは、スタッフの登録自体が少なくなります。付き合いの長い派遣会社であっても、いつもと違う職種やエリアを依頼する場合は、紹介できるかを確認しておきましょう。
派遣スタッフの紹介は、市況や条件などの影響を大きく受けています。人材不足による機会損失や社員の負担増加は避けたいものです。必要な人材を必要な時に迎え入れるためのポイントをご紹介します。
人材派遣を依頼する場合、急な欠員など緊急性を擁するケースもありますが、退職・異動や新しいプロジェクトの発足など前もって人材を探すことが分かっているケースも多く、そういった場合には早めに依頼しておくと良い人材を派遣してもらう可能性が高まります。早めの依頼がよい2つ理由をあげます。
一般的に4月、7月、10月、1月は人材の入れ替わりが多い時期です。契約を満了して次の仕事を探す方、正社員を退職して派遣を選ぶ方など様々な理由で人が動き出します。
紹介可能な人材が増えますが、求人案件も多い時期でもあります。このような時期には、まずは出遅れないことが重要です。業務開始の2か月前でも早すぎるということはありません。さらに経済の回復が進むと、今まで以上に求人数が増えるため、「派遣スタッフが選ぶ」傾向がより強まり、人材獲得の難易度がさらに高まることでしょう。
派遣会社には日々、新しい登録者や稼働しているスタッフの更新状況、久しぶりに派遣で働きたいというスタッフなどの情報が入ってきます。
早めに派遣依頼することで、日々更新されるスタッフ情報を早いタイミングからマッチング開始できます。また、時間的余裕があるため、じっくりと人選を行うことができます。人気求人に匹敵する条件が出せない場合でも、多くの派遣スタッフに声をかけることができるため、派遣スタッフの紹介が来る可能性が高くなります。
派遣料金や勤務条件が相場からかけ離れていないかを確認します。依頼している派遣会社に聞いてみるのが一番早く情報を得られるでしょう。
予算やすでに働いている派遣スタッフとの兼ね合いがあるため、なかなか改善できないかもしれませんが、相場と大きく離れている場合、派遣会社がいくら仕事を紹介しても登録スタッフが承諾しないケースは十分に考えられます。特に経験者が少ない、需要が多い職種だとスタッフ側への仕事紹介数は平均以上になるため、選ばれにくくなります。
派遣会社から紹介がなかなかない場合、派遣料金の見直しも視野に入れてみてください。一例とはなりますが、勤務時間を1時間減らし予算調整するなどの方法もあります。
例:派遣料金を100円あげ、勤務時間を1時間減らした場合
募集ポジションの考え方次第にはなりますが、時給をあげて勤務時間を減らすと月額では派遣料金が安く収まるケースもあります。
派遣料金の見直しが難しい場合、条件緩和を検討しましょう。以下に、緩和することで人材が集まるポイントをご紹介しますが、依頼している派遣会社と相談し、効果がありそうなものを検討してください。
即戦力がほしいところではありますが、職種によってはそもそも経験者が少なかったり、派遣料金が想定より高いケースもあります。
その場合、数カ月先に即戦力になれそうな人材に要件変更してみるものひとつです。
経理ポジションを例にすると、実務経験が少ない人材、あるいは簿記などの資格を保有している未経験人材でも意欲があればOKとする、などです。
「未経験可」は人気のキーワードです。教育の工数はありますが、どのような素養があれば早くひとり立ちできるかを仮定し、募集の幅を広げてみるのもおすすめです。
時給より、時短勤務や週3日以下勤務といった勤務条件を優先するスタッフはいます。スキルや経験は十分にあるが、子育てや介護などが理由でフルタイム勤務ができない層です。
企業によっては、複数の時短勤務者でシフトを構成し対応していることもあります。引き継ぎなどの工数はあるものの、複数名が同じ業務に対応できるため体調不良や突発休などのカバーが容易であり、業務への影響が少ないこともメリットです。
コロナ禍も二年近く続き、新しい社会生活・経済活動の在り方の模索はどんどん進んでいます。一時的に落ち込んでいた企業の採用意欲も復調しており、ふたたび人材獲得難が訪れようとしています。
見通しを立てにくい社会状況ではありますが、人材が必要であることが明確な場合、早めに求人依頼をかけてみてはいかがでしょうか。求人を出すことで求人市場の動向も見えてくることでしょう。余裕を持った対応によって解決することもあり、人材獲得難に即した対応が成果を生みます。
マンパワーグループは、日本で最初の人材派遣会社です。全国60万人以上の登録者から最適な人材を派遣します。
▽人材派遣サービス詳細
https://www.manpowergroup.jp/client/serve/temporary/
<マンパワーグループの特徴>
・日本全国に155支店を展開
・業界平均を上回る高いリクルーティング力
・創業50年以上の実績
人材派遣をご検討の方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
こちらの資料もおすすめです