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少子化に伴う労働人口の減少、職種の多様化など様々な原因から、優秀な人材の獲得が困難を極めています。採用難は大手企業でも感じていることであり、人材紹介サービスを利用する企業は増えています。
しかし、たくさんの人材紹介会社に声掛けをしているにもかかわらず、人材紹介会社から「この人だ」と思える人材がなかなか紹介されない、または全く紹介がないといった経験はないでしょうか?
この記事では、なぜ人材紹介会社は良い人を紹介してくれないのか、その対策について「人材紹介会社」側の目線で解説いたします。
人材紹介サービスの仕組みなど、人材紹介の基礎知識について知りたい方は、「 人材紹介とは|基礎知識と手数料、派遣との違いを解説」をご覧ください。
人材紹介会社に依頼したのにもかかわらず、人材の紹介がない、紹介があっても要件を満たしていない場合、4つの原因が考えられます。
経験のある若手やIT系の専門スキルを持つ人材を希望する企業は、熾烈な獲得競争に参加している状況です。このような人材は、多くの企業が求めており、その中で競合他社に負けてしまうケースが少なくありません。
狙っているターゲットが転職先に求めているものが自社にあるのかを、冷静に考える必要はあります。
求職者が他社と比較すること
業務内容 | 仕事の魅力や挑戦の機会があるか。責任範囲など |
知名度 | 会社やブランドの認知度 |
年収・待遇 | 給与や福利厚生 |
働き方 | リモートワークやフレックス制度の有無 |
キャリアの将来性 | スキルアップや昇進の見込み |
会社の安定性 | 経営状況や事業展開の安心感 |
社風 | 働きやすさや職場の雰囲気 |
今は売り手市場であり、求職者が強い時代です。例えば、東京都ハローワークが発表している調査において、IT業界の求人倍率2倍以上に達しています。この背景には、デジタル化の進展や専門スキルを持つ人材の需要増加が挙げられます。
大手企業においても獲得が難しいとされる層とバッティングしている場合、求職者に強く訴求できる「自社の強み・魅力」がないと、なかなか選ばれません。
「スケジュールの共有不足で待たせてしまった結果、候補者が辞退してしまった」
「不採用理由が明確でないから、次の候補者を絞りきれない」
「候補者の質問に答えられないことで、応募への動機付けが弱くなってしまい、他案件を希望されてしまった」
上記は、求人企業側の情報量が少ないがために、実際の現場で起こったことの一例です。
このような結果になってしまうと、人材紹介会社の営業担当者もコンサルタントも成果が報酬に直結するため、成約にもっていきにくい企業だという印象を持つようになります。
人材紹介会社の担当者がもつ不満
こうして、意図せずとも彼らの中で「求人企業の順位付け」が行われていき、なかなか良い人材を紹介してもらえない状況に陥ってしまいます。
もしかすると、連携のよく取れる同業他社に優秀な人材が流れてしまっているかもしれません。ただ、見方を変えれば、連携の対応を変えるだけで結果が変わるかもしれないということです。
人材紹介会社にはそれぞれ得意分野や専門性があり、依頼する企業の業界や職種、採用条件によっては、なかなか紹介がない場合があります。
専門性の一例
職種特化型 | ITエンジニア、看護師、介護職、保育士など |
業界特化型 | マスコミ、IT、アパレル、製造など |
地域特化 | 九州地方に強い、特定の県に強いなど |
候補者特化 | 若年層、女性、外国人、ミドルシニアなど |
経験特化 | ハイクラス、管理職、未経験など |
例えば、いつも営業パーソンの紹介を依頼しているから、ITエンジニアも依頼しよう、としても、人材紹介会社が持つタレントプールに対象者が少なく、紹介が進まないのです。
幹部クラスや希少な資格保有者、ニッチな業界で経験を積んだ人材は、転職市場に出てこないことが多く、人材紹介会社に登録していない場合がほとんどです。
人材紹介会社は、広告で登録者を増やしたり、スカウトサイトなどを通じて候補者を集める仕組みを持っていますが、このような希少性の高い人材は、通常の方法では見つかりません。レアなスキルや経験を持つ人材は転職活動の前に声がかかることもあり、また現職の企業もリテンション施策を講じていたりします。
この場合、登録型の紹介では対応が難しいため、ヘッドハンティングなど直接アプローチが必要です。単に紹介会社を利用するのではなく、採用手法そのものを見直し、転職意思のない人材をターゲットにする戦略が求められます。
人材紹介会社が紹介してくれないときにできる対策を5つご紹介します。
まず、「人材紹介会社の担当者も営業担当者」だということを念頭においてみてください。
彼らの立場や状況で考えてみると、人材紹介がどのような心理状態で行われているか理解でき、対応策が見えてきます。
大手の人材紹介会社では、求人企業を担当する営業担当者と、求職者に仕事を紹介するコンサルタントの分業制をとっています。人材紹介会社のビジネスモデルは、求人企業へ求職者を紹介し、求職者の入社が決まること(成約)によって手数料を得ます。
つまり、「成約数」が営業マンとコンサルタントの目標・成果の指標です。営業担当者・コンサルタントは、「今月の売上を上げるにはどうしたらいいか(成約)」ということが常に頭にあるのです。
そのような彼らは、日々「成約」を目指して情報収集に取り組んでいます。求職者とマッチする人材を見つけるためには、案件の詳細情報に加え、スケジュール感、募集背景、職場環境といった多岐にわたる情報が必要です。これらの情報を集めることで、求職者の関心を引き、成約へとつなげる第一歩となるのです。
情報収集には、求人企業の協力が必要不可欠です。これは、求職者のためだけの活動ではありません。ミスマッチを減らし早期退職を防ぐ効果もあります。
人材紹介会社に確認してくる情報は、求職者が知りたい情報そのものであり、紹介の質を大きく左右します。特に優秀な人材ほど多くの仕事の紹介を受けているため、企業から提供される情報が不足していると、他社との比較ができず、候補の選択肢にも入れないことがあります。
また人材紹介会社は、求職者に担当案件の魅力付けを行います。コンサルタントは、求職者が何を転職で重視しているか把握しているため、多くの企業情報の中から何を伝えるかを考えます。
つまり、十分な情報を提供し、紹介会社との信頼関係を築くことで、候補者へのアプローチが強化され、結果として紹介の質や量が向上する可能性が高まるのです。
人材紹介会社を1社に限定せず、さまざまなタイプの会社に依頼することで、採用活動の選択肢が広がります。大手の総合型紹介会社から、特定の職種や業界に特化した専門的な会社まで、依頼先を増やすことで、異なるアプローチからの人材紹介を受けることが可能です。
条件によっては紹介を断られることもありますが、これは紹介会社が自社の強みやスコープを精査した結果であり、むしろ適切な判断と捉えるべきです。
特に中小企業の場合、大手人材紹介会社からは紹介がなかなか得られない、という声もよく耳にします。大手だけに頼らず、さまざまの規模の会社に相談してみましょう。
一方で、複数の紹介会社を利用する場合には、パフォーマンスチェックを数値で行い、定期的に見直すことが重要です。例えば、紹介数は多いものの、要件を満たさない候補者ばかりでは、企業側の工数が増えるだけで採用の成果につながりません。この場合、以下のような改善策が必要です。
このように、紹介会社のバリエーションを増やしながら、選別と改善を重ねることで、採用活動の効率と成果を向上させることができます。
TIPS
人材紹介会社には、求人要件を満たしていなくても紹介してくる、いわば「数だけは多い」という会社もあります。幅広くみたい場合や人事担当者がスクリーニングできる時間があれば問題ありませんが、そうではない場合、紹介数は少ないものの要件を満たした人材を紹介してくる会社を選ぶ方がよいでしょう。
人材紹介会社に紹介が少ない理由を率直に聞き、自社の求人要件が現在の転職市場に合わないと判断した場合、要件の見直しに着手しましょう。人材紹介会社の営業担当者やコンサルタントは市場動向に詳しく、どこがネックになっていて、どう変えればよいのかなど、具体的なアドバイスを提供してくれます。
例えば、20~30代の若手をターゲットにしていた中小企業が、大手企業との競争に勝てず、採用が進まなかったケースがあります。この企業がターゲットを40~50代に変更したところ、即座に適任者が見つかり、採用成功につながった事例もあります。このように、ターゲット層や優先順位を柔軟に見直すことで、新たな可能性が開けます。
一方で、本当にその優先順位が正しいのかを改めて考えることも大切です。
要件緩和の一例
「長く働いてくれる若手がほしい」
獲得が難しい若手ですが、採用できたからといって長く働いてくれるとは限りません。転職への抵抗が少ないですし、キャリアアップなどで離職する可能性も十分にあります。長期的に働きたいと考えるミドルシニアはどうかを検討する価値はあります。
「経験者がほしい」
教育や研修でカバーできるスキルであれば、未経験者や異業種からの採用を視野に入れることで候補者の幅が広がります。
紹介予定派遣を活用すれば、派遣期間中に候補者のスキルや素養を見極めることができ、自社で直接雇用するリスクを軽減しながら採用活動を進めることが可能です。
未経験者については、「未経験者を採用する理由とメリット|採用要件の設定方法を解説」で詳しく説明しています。
このような柔軟な発想と戦略の転換が、採用成功の鍵となります。
人材紹介を主軸に採用活動を進めている場合、採用手法を拡大することで、新たな候補者にアプローチできる可能性が広がります。以下のような方法を取り入れることで、多様なチャネルを活用した採用活動を実現できます。
採用手法の一例
求人広告 | 一般的な媒体を活用して広く候補者を募る |
ダイレクトリクルーティング | スカウト型で、ターゲット人材に直接アプローチする |
オウンドメディアリクルーティング | 自社ブログや採用サイトで企業の魅力を発信し、応募を促進する |
SNS採用 | LinkedInやTwitter、Instagramなどを活用して幅広い層にリーチする |
ヘッドハンティング | 管理職や経験豊富なエンジニアなどの専門職などの採用に有効 |
ただし、人材紹介と比較するとこれらの手法には工数や費用がかかる場合があります。そのため、採用代行サービスを利用して負担を軽減しつつ進めることも一つの選択肢です。
また、採用活動全般がうまく進まない場合は、採用コンサルティングサービスを活用し、専門家からアドバイスを受けることで、課題を特定し、適切な改善策を導入することが可能です。
自社の状況を客観的に分析し、どの対策が有効かを判断してみてください。
関連サービス:中途採用コンサルティングサービス
マンパワーグループの採用代行・コンサルティングサービス
採用代行は、限られた採用担当者で採用活動を効率化し、規模を拡大する際に利用されるサービスです。
「担当者が不足していて手が回らない」
「採用活動が難航しているが、新しい施策に着手できない」
「現場からのプレッシャーが日に日に増している」
こうした悩みは、採用代行サービスを利用することで解決できる可能性があります。マンパワーグループでは、新卒・中途・パート・アルバイトなど、各雇用形態において採用代行・コンサルティングサービスを提供しております。
人材紹介会社の情報連携はうまく取れていますか?下記は、人材紹介サービスを利用している企業であるよくある悩みです。
募集ポジションが多く、とても1社では充足しないなどの理由で、複数の人材紹介会社に依頼をかけることは珍しいことではありません。
複数社への依頼は、母集団拡大のメリットがありますが、各社との情報連携によるコミュニケーションコストや管理工数が増えるというデメリットも発生します。
このような場合、エージェントコントロールの導入を検討してみてください。
エージェントコントロールとは、求人企業が取引する各人材紹介会社(エージェント)との連絡窓口となるコントローラーを置き、人材紹介会社とのあらゆる連絡を一本化するサービスです。
コントローラーが求人情報の連絡や告知の実施、人材紹介フローの簡略化を図りますので、求人企業はコントローラーへ情報提供をするだけでよく、複数の人材紹介会社との煩雑な情報のやりとりが必要なくなります。
また、コントローラーは人材紹介会社に対して求人元企業に成り代わって応募者情報の収集や動機付けを行う以外にも、新たな人材紹介会社の開拓など、求人先企業と人材紹介会社各社との関係がより充実するようサポートをしていきます。
具体的な業務例
ご興味がありましたら、下記の資料をダウンロードください。
50社の窓口対応を集約、50名の採用目標達成
マンパワーグループのエージェントコントロール導入事例をご紹介します。
精密機器メーカーのエージェントコントロールを依頼され、中途採用目標人数約50名、取引人材紹介会社50社の窓口サポートをオフサイトで実施しました。
まず、コントローラーは、各人材紹介会社の担当者と話し合いを持ち、具体的な採用予定数と依頼する人材紹介会社数を明確に人材紹介会社担当者へ伝えます。
そのうえで、今度は人材紹介会社担当者個人の目標を聞いていき、この案件に対する目標決定数を一緒に考えます。つまり、一方的な候補者紹介の依頼ではなく、採用活動を「共に」進めていったのです。
そうなると、人材紹介会社担当者の責任感が強まり、紹介の質の向上・紹介数の増加につながって採用目標を達成することができました。
また、人材紹介会社とのコミュニケーションから解放された求人企業の採用担当者は、採用部門との情報共有を密にする時間が確保できたため、結果的に充分な情報がコントローラーを通して各人材紹介会社へ伝わりました。こうした活動は、決定率を上昇させ、情報不足による早期離職を防ぐ手立てにもなります。
エージェントコントロールのコンセプトは、「人材紹介会社との連携を面倒くさがらず密に」です。関係を密にすることで、早期に優秀な人材を確保することに繋がり、結果として工数削減になります。ぜひお試しください。
人材紹介会社を活用した採用活動は、多くの企業にとって効率的な手法の一つですが、うまく機能しない場合にはさまざまな課題が生じます。これらの課題に対して適切な対策を講じることで、より効果的な採用活動を実現することが可能です。以下に、記事で取り上げたポイントをまとめました。
採用活動がうまく進まない背景には、市場動向や求人要件、紹介会社との連携不足など、複数の要因が絡み合っています。しかし、それぞれの課題に対して柔軟に対応し、新たな手法や戦略を取り入れることで、採用成功の可能性を大きく高めることができます。
採用活動は企業の未来を形作る重要なプロセスです。今回の記事で提案した内容を参考に、状況に応じた改善を積極的に行い、競争の激しい人材市場での成功を目指してください。
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