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2018年、有期雇用契約の契約期間に関する法改正の対応が2つ同時に発生しました。これらを総称した企業の「2018年問題」は、報道などでも取り上げられました。
「2018年問題」のひとつは、2013年の改正労働契約法の施行による「有期労働契約の反復更新が通算5年を超えると、本人の申し出により無期雇用転換の権利が発生する」というルールが適用されたことです。
もうひとつは、2015年の改正派遣法の施行による、「有期雇用の派遣社員が同じ派遣先企業の同じ組織(課・グループなど)で働くことができるのは3年まで」 という期間制限のルールが適用されたことです。
企業には、対象となる有期雇用契約の派遣社員のポジションを今後どうするべきかという判断が迫られることになりました。多くの企業では、対象者の現状の把握、各在籍部門へヒアリングなどによって、正社員・無期雇用社員化、契約終了などの処遇を検討し始めました。
処遇を判断する中で、人件費を管理する立場としては「この業務であれば3年で契約満了し、新しい派遣社員を迎えたほうが人件費の適正化が維持できる」と考えていても、現場からは「経験もスキルもある人材を手放したくない。3年ごとの引き継ぎなどの面で負荷が高く、派遣社員を正社員(契約社員)にしてほしい。派遣元で無期雇用化できないか」と、派遣社員の無期転換の希望がでるなど、管理部門の意向と現場の意向に齟齬が生じるケースがあります。
「そのポジションは、本当に派遣社員が適切なのか?」と、今後の在り方を考える際に必要となる判断基準をいま一度確認しましょう。
人材派遣サービスは、必要なときに必要な人材を受け入れることができるサービスです。 しかし、全ての業務が適しているわけではありません。ポジションによっては、派遣法の定める「人で3年」を踏まえた上で、利用すべきかを判断する必要があります。
習得そのものに時間を要する業務、または習熟度がパフォーマンスにダイレクトに影響する業務の場合、3年で人が入れ替わってしまうことが業績や部門に影響がないかの見極めが必要です。
資格が必要な業務や特殊なスキル、経験が求められる業務は、3年後に後任が見つからない場合を想定する必要があります。
但し、期間限定で即戦力がほしい状況であれば人材派遣が向いている場合もあります。プロフェッショナル派遣などを活用することを検討しましょう。
人材派遣の場合、業務内容をしっかりと事前に定めておく必要があります。業務範囲が広い場合、対応できる人材が限られる、またその後任が見つかりにくい状況が訪れる可能性も考慮しましょう。
企業独自の業務である場合、経験者を派遣してもらうのは厳しくなるため、素養のある人材を教育する必要があります。教育コストがかかることを理解した上で、派遣サービスの利用を検討しましょう。
社員の異動が多い部門で時々起こるのは、その部門で一番経歴が長い人材が派遣社員だったというケースです。その場合、派遣社員への依存が高くなりやすく、仮に対象者が退職となった場合、後任者が業務についていけず、早期退職してしまうこともあります。
業務を指示する立場の担当者が忙しく、派遣社員への教育が十分にできないと、派遣社員の定着は悪くなりがちです。スタッフの早期退職が度重なると、業務が滞り、関係する周囲のメンバーのストレスも増大します。そうなる前に、業務のマニュアル化や社内バックアップ体制の整備などの対応が必要です。
また、担当者が複数名いても、エリアで担当を分けているなど、相互にサポートし合えないポジションも似たようなことが起きるため注意しましょう。
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それでは、「対象業務が有期雇用社員には向いていない」と判断された場合、どのような対応を行うべきなのでしょうか。
法令の趣旨に則ると直接雇用が望ましいと考えられます。業務に慣れており、企業の風土にも適していれば、業務に支障がでることなく、部門メンバーの負担もあまりない選択肢と言えます。
受け入れ人数が多く、正社員としての契約が難しい場合は、新たに無期契約社員という雇用形態を新設する方法もありますが、その場合は新たな社内規定の整備などが必要です。
新たな職位やキャリア制度を創設することで、評価制度の複雑化なども想定されます。
無期雇用派遣に切り替わると「人で3年」の制限を受けなくなります。そのため、3年を超えて就業することが可能です。
気を付ける点としては、派遣会社から派遣料金の割増などの依頼や派遣会社によっては無期雇用派遣化を見送る場合もありますので、早めの相談が必要です。
また、派遣社員が派遣会社との無期雇用契約を望まない場合があります。この場合、派遣法の制限により、当該業務を3年以上継続することはできなくなります。
基本的なことではありますが、人材が入れ替わることを想定した体制を整えることも一案としてあります。
特に1名体制や社員の入れ替わりが多い部署など環境的に不安がある場合は、複数名のスタッフを入れリスクヘッジをすることも必要です。
人件費の兼ね合いなどによっては、時短・日数限定勤務のスタッフを検討してもよいかもしれません。
業務委託とは、業務の一部またはすべてを外部の業者に委託するサービスです。変動の多いビジネス環境に柔軟に対応するため、組織を軽くする目的で導入する企業が増えています。
業務そのものが手離れする一方、委託先に直接的な業務指示を行うことはできません。そのため、向き・不向きがあるサービスと言えます。
など、検討のための項目が多く、難易度は高いですが、それらの諸条件がクリアできる場合には、管理工数の削減やコストの適正化などのメリットがあります。
派遣法によりそもそも人材派遣が禁止されている業務もあります。例外もありますが、下記の業務を派遣社員に就かせることはできません。
詳しくは、「派遣禁止業務とは?禁止の理由と例外や罰則を解説」をご覧ください。
派遣法で禁止されていない業務であれば、人材派遣は可能です。しかし、全ての業務で人材派遣が可能かと言われると、依頼はできても派遣社員の紹介がなかなかこない業務もあります。
求人広告を十分に出しているのに応募がないようなレア人材は、人材派遣でも見つけるのは困難です。
上記のような人材は募集を出しても応募が少なく、採用に至らないことも多いため、最後の手段として人材派遣を依頼される場合があります。しかし、転職市場でも人気のある、または該当者が少ない人材は派遣登録でも同様に多くはありません。
ただ、通訳などを専門にしている派遣会社やプロフェッショナルを派遣するサービスを提供している会社もあるので、業務によっては問い合わせてみましょう。早々に見つからないことを前提に早めに問い合わせておくことがポイントです。
派遣契約が終了するポジションや新たに募集するポジションに対して、どういった対応を行っていくにしても、部署ごとの役割・業務分担などを見直し・明確化し、マニュアル化を進めるなどして個人に依存しすぎない体制を整えていくことは重要です。
企業の「2018年問題」は、日本の労働人口が減少する一方で人材の流動性がさらに高まるという、未曽有の人材難の時代を乗り切るために、企業が人材のポートフォリオを見直す時期が来ていることを突きつけています。
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