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早期離職を起こさないため 派遣社員の受け入れ準備
派遣社員を受け入れると決定したのに、受け入れる準備ができずに「勤務初日に仕事がない」「教える人がいなくて、派遣社員が手持ち無沙汰」「準備が整わず待たせてしまった」といったことが起きることがあります。準備不足で受け入れると派遣社員の早期離職を起こしかねません。
また、派遣法において、派遣社員を受け入れにあたり、派遣先が実施すべき事項もあります。スムーズに受け入れるためのチェックシートをご用意しています。Excelファイルなので、加工も簡単に行えます。ぜひご利用ください
2013年、改正労働契約法により、「期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール」が施行、派遣会社と無期雇用で契約する派遣社員が増えるきっかけとなりました。
改正労働者派遣法の「人で3年ルール」の施行もあり、無期雇用派遣社員の数は今後も増加すると予想されます。
本記事では、無期雇用派遣とはどういった雇用契約の派遣社員なのか、メリットとデメリットを企業と求職者別に解説します。
無期雇用派遣は、派遣会社と期限のない雇用契約(無期雇用契約)を結ぶ雇用形態のことをいい、常用型派遣と呼ぶこともあります。
無期雇用派遣 | 有期雇用派遣 | |
派遣期間の制限 (人で3年ルール) |
3年を超えて就業可能 | 同じ派遣先の同一部署では、3年まで |
条件 | 派遣会社が定める就業規則に準ずる | 派遣先が変わるごとに契約するため条件が変わる |
休業手当 | 派遣されていない期間(待機期間)にも休業手当がある | 派遣されていない期間は派遣会社と雇用関係がないので給与支払いがない |
採用・選考 | 採用選考がある(無期転換ルールにより無期雇用派遣になった場合を除く) | 採用選考は基本的にない |
有期雇用派遣とは派遣会社と派遣社員が有期雇用契約を結ぶ雇用形態で、派遣先での業務が終了したら雇用契約も終了になるのが一般的です。
無期雇用派遣との最大の違いは、有期雇用派遣の場合、労働者派遣法によるいわゆる「人で3年ルール」が適用されることです。「人で3年ルール」とは、ひとりの派遣社員が派遣先の同じ部署で就業できる期間は上限3年まで、というルールです。
無期雇用派遣の場合、「人で3年ルール」の対象外となります。
参考記事:派遣法の3年ルールとは?メリット、デメリット、契約を延長する方法
派遣社員と派遣会社は、契約期間を設けた雇用契約を結ぶことが一般的でした。2013年施行の改正労働契約法により、いわゆる「無期転換ルール」が規定され、無期雇用の派遣社員は増加しています。
無期転換ルールとは、同一の企業との間で期限のある雇用契約(有期雇用契約)が更新されて、通算5年を超えたとき、労働者からの申し込みにより無期雇用契約に転換される規定のことです。
求職者が無期雇用派遣社員になるには、このルールによる有期雇用派遣から無期雇用派遣への転換か、最初から無期雇用派遣を前提として採用しているケースの2パターンです。
派遣社員からみると無期雇用派遣は、やや複雑になってきます。
無期雇用派遣の雇用主は、派遣会社です。派遣先の正社員とは雇用主が違うため、給与体系や福利厚生、加入している保険など、雇用条件は同じではありません。
また、派遣先のパート・アルバイト社員とも同じにはなりません。パート・アルバイト社員の雇用主も派遣先企業が雇用主になるためです。
雇用主を同じとする派遣会社の正社員とはどう違うのでしょうか。
福利厚生や加入する保険などは同じですが、派遣会社の正社員との大きな違いは「どこで働くか」という点です。
無期雇用派遣の場合、「派遣されること」が前提になっています。一方、派遣会社の正社員は、派遣会社の仕事(仕事紹介や営業活動など)を行います。
また、就業規則が正社員と分かれていることもあるでしょう。
企業が無期雇用派遣の派遣社員を受け入れる場合の主なメリットは、以下の4つです。
順番に解説します。
無期雇用派遣は3年ルールの適用除外であるため、3年を超えて勤務することが可能です。そのため、長期にわたる業務や専門性が高く習得に時間がかかる業務も依頼しやすくなります。
関連記事:【企業向け】人材派遣に向かない業務・ポジションとは
派遣期間の制限とは?
派遣法では、派遣就業を臨時的・一時的な働き方として位置づけ、2種類の期間制限を設けています。
ひとつは「派遣社員個人」に紐づくもので、いわゆる「人で3年」と呼ばれるものです。もうひとつは、事業所単位の期間制限と呼ばれるもので、原則として同一の事業所が3年を超えて派遣社員を受け入れることができないこと」をいいます。ただし、意見徴収を行い同意を得ることで延長が可能です。
詳しくは、「【企業向け】派遣の抵触日とは?対応方法や注意すべき点も解説」をご覧ください。
有期雇用の派遣社員が就いているポジションの場合、少なくとも3年おきに派遣社員の入れ替えが発生します。
後任が見つからないからと契約を延長することはできません。また、引き継ぎや派遣就業をスタート段階の研修やフォローアップなど一定の工数は発生します。
無期雇用派遣の場合、担当者の変更が頻繫に起こる要素が比較的少なく、引き継ぎの工数だけでなく、仕事の習熟度も上がるため、業務のクオリティが安定しやすいと言えます。
有期雇用の場合、派遣社員側も3年ごとに仕事を探さなければなりません。景気動向による求人案件のアップダウンや希望する仕事が見つかるか、自分の経験とスキルで働ける仕事があるか、など仕事探しは大きな関心事です。
無期雇用契約を選んだ派遣社員は、長期的に働きたいという希望があることから、安定的な就業が期待できます。
派遣会社は、無期雇用で雇用契約を結ぶ際に、採用試験や有期雇用時の働きぶりなど、一定の採用基準を設けて派遣社員を採用しています。
そのため、ポテンシャルの高い人材や他社での稼働評価が高い派遣社員が就業する可能性が高くなります。
無期雇用派遣を受け入れる場合のデメリット・注意点は、主に2つです。
順番に解説します。
有期雇用と違い、派遣会社には無期雇用派遣社員に対して、仕事がない期間(待機期間)にも給与を支払う必要があります。また、昇給制度や賞与制度などが設けられていることもあります。そのため、派遣料金が少し高くなる傾向にあります。
長期稼働を期待して無期雇用派遣を受け入れた場合であっても、諸事情により早期に離職するケースはあります。
派遣社員の無期雇用に関する注意点をいくつかご紹介します。
労働者派遣法第40条の5において「派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知」が定められています。
無期雇用派遣についてはその第1項の規定のみ適用され、自社で継続して1年以上受け入れている派遣社員がいれば、派遣先で正社員を募集する際は、派遣社員に対してもその情報を周知しなければなりません。
派遣先の雇用努力義務については、「派遣先の雇用努力義務を解説。労働契約申込みみなし制度との違いは?」で詳しく解説しています。
法に触れる状態の派遣を受け入れた場合は、派遣先がその派遣社員に労働契約を申し込んだとみなされます。
派遣会社の無期雇用派遣社員であっても適用となり、労働条件は派遣会社が提示した内容と同じとみなされます。
労働契約申込みみなし制度の詳細については、「労働契約申込みみなし制度とは 対策方法や事例を紹介」で解説しています。なお、違法な派遣に該当することを派遣先が知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかった場合は制度の適用はありません。
参照:労働者契約申込みみなし制度の概要)
【違法な派遣について解説しているコラム】
・派遣禁止業務とは?禁止の理由と例外や罰則を解説
・二重派遣とは|基本知識と罰則、防止策を解説
就業している有期雇用の派遣社員が3年を迎える、または派遣会社との雇用契約が通算5年を迎える場合、労働契約法18条の無期転換ルールが適用されるため、無期雇用への転換が検討されるタイミングになります。
この場合、派遣社員の意思や派遣会社の意向(採用選考などを含む)を確認しておきましょう。無期雇用を望まないケースもあり、この場合、就業を継続することができません。
派遣会社と連携し、欠員による業務の滞りが起きないよう対処しましょう。労働契約法の無期転換ルールについては、「【企業向け】労働契約法18条の無期転換ルールで注意すべきポイント」で詳しく解説しています。
20代中心の無期雇用派遣サービス
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無期雇用派遣社員は、どういったメリットを見込んでその働き方を選ぶのでしょうか。無期雇用派遣社員の傾向を理解するため、あわせてデメリットも確認しましょう。
期間制限がないため雇用が安定します。「人で3年ルール」の対象外であるため、3年を超えて同じ職場で働くことが可能です。仮に派遣先での仕事が終了した場合でも、次の仕事が見つかるまで休業手当があり、収入が途切れません。
3年を超えて同じ業務に就くことで経験値を確実に蓄積していくことができ、スキルを磨いていけることもメリットです。また、派遣会社からキャリアについてのアドバイスや研修などが提供されます。
派遣社員として働くメリットとして、自身の都合に合わせて就業条件を決定し、また働く期間を選択することがあげられます。しかし、無期雇用派遣の場合、勤務条件を大きく変えることは難しく、また仕事がない待機期間はなるべく作らないように派遣会社から調整が入ります。そのため、派遣先企業や細かい業務内容を選びにくくなります。
無期雇用派遣で「派遣期間の制限」の対象外となった場合であっても、派遣先の都合で仕事が終了することもあります。その場合、別の派遣先を探し、新しく仕事をスタートさせなければなりません。
求職者向けの無期雇用派遣のメリット・デメリットについては、「無期雇用派遣とは?メリットとデメリットを解説」で詳しく解説しています。
無期雇用派遣の特徴により、向き不向きがでてきます。
派遣の特徴として、さまざまな企業で働けることがあげられます。多くの会社で多彩な経験を積むことにより、スキルが磨かれ、柔軟な対応力が身についていきます。一方で、派遣契約が終了すると収入がなくなる、という不安定さもでてきます。
無期雇用派遣の場合、有期雇用派遣に比べて雇用の安定性が高いため、安定性を求める人には、無期雇用派遣をおすすめできます。
ひとつの職場で腰を据えて長期的に働きたい人にも無期雇用派遣は適しています。必ずしも同じ職場で勤め続けられるわけではありませんが、派遣法の「人で3年」という制限を受けないため、「働き続けたいけど、辞めなければいけない」という状況になりにくくなります。
また、正社員の場合は、異動や転勤などを命じられることがありますが、無期雇用派遣の場合、派遣先から一方的に異動や転勤を命じられることはありません。
一部の派遣会社では、最初から無期雇用派遣で採用し、企業へ派遣するするプログラムを実施しています。業務経験を問わないことが多く、例えば販売職をしていたが、事務職にキャリアチェンジしたい、という場合に派遣会社が後押ししてくれます。
無期雇用派遣の場合、一定の決まった勤務条件になるため自由に働き方を変えることが困難になります。
有期雇用派遣に比べて派遣先や業務内容を細かく選ぶことが難しくなります。仕事の無い待機期間をなるべく短くする必要が派遣会社にはあるため、仕事選択の自由度は低くなりがちです。
無期雇用派遣は、基本は派遣先で働くことになります。そのため、業務は「派遣先が派遣社員にお願いする仕事」に限られやすく、管理職や専門職といったマネジメントや高度な技術を用いた業務については、派遣先の正社員が担うことがほとんどです。
無期雇用派遣の特徴のひとつは、「誰でも無期雇用派遣になれるわけではない」という点です。多くの派遣会社は、無期雇用派遣として雇用する場合に、選考過程を設けています。そのため、無期雇用派遣を募集している派遣会社に応募し、面接を受ける必要があります。
また、有期雇用派遣で働いていて、無期雇用派遣にチェンジしたい場合は、派遣会社の方針などを確認してみるとよいでしょう。
「社員選考」と考え、準備を整えましょう。有期雇用派遣の場合は、最初のステップが「派遣会社に登録」ですので、志望動機やこれまでの職歴を聞かれることはあっても、あくまでもヒアリングであり、選考ではありません。
しかし、無期雇用派遣は登録ではなく社員になるのが前提です。書類審査や面接などを通して、採用の有無が判断されます。また、採用倍率も高いケースも少なくありません。
正社員同様に以下の対策を心がけましょう。
今回は無期雇用派遣について紹介しました。紹介したように派遣社員の雇用形態には、無期雇用派遣と有期雇用派遣の2種類がありますので、両者の違いをしっかり理解し、必要な対策と取りつつ、派遣サービスを利用していきましょう。
派遣社員の受け入れや派遣法に関する資料を下記に纏めていますので、ご活用ください。
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