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【キャリアアップ助成金】派遣社員の直接雇用も対象となる助成金

掲載日2021年8月17日

最終更新日2021年9月28日

目次

    雇用関係の助成金の中でも利用される機会の多いものにキャリアアップ助成金があります。パートタイマーや契約社員のキャリアアップをイメージしがちですが、派遣社員が派遣先に直接雇用される場合も、キャリアアップのひとつとして対象となります。今回は、派遣社員を対象としてキャリアアップ助成金を受給する場合について解説します。

    キャリアアップ助成金とは?

    キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主(会社)に対して助成金を支給する制度です。次の7つのコースが用意されています。

      1. 正社員化コース
      2. 障害者正社員化コース
      3. 賃金規定等改定コース
      4. 賃金規定等共通化コース
      5. 諸手当制度等共通化コース
      6. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
      7. 短時間労働者労働時間延長コース

    7つのうち、もっとも多く利用されているのが正社員化コースです。正社員化コースは、次の3つのケースにおいて支給対象となります。

    A:有期社員 → 正社員
    B:有期社員 → 無期社員
    C:無期社員 → 正社員

    例えば、派遣元(派遣会社)で1年間の有期契約で派遣されていた派遣社員を、派遣先で正社員として雇い入れる場合はAに当たります。

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    派遣社員直接雇用化に関して派遣先企業に定められている義務や努力義務、派遣期間の制限などについて解説しているガイドです。現在就業中の派遣社員の直接雇用化を検討している企業担当者におすすめです。

    令和3年度(2021年)4月1日からの要件緩和

    キャリアアップ助成金の対象となるにはいくつか要件があります。その中の一つに、正社員化等の際に"賃金を「5%」以上増額する"という要件がありましたが、令和3年4月1日からはこれが「3%」に縮小されました。ただし、以前は「賞与を含めて」増額の判断をすることができましたが、今後は「賞与を含めず」に判断をするよう変更されているため注意が必要です。

    また、これまでも「勤務地限定正社員」または「職務限定正社員」を新たに規定して直接雇用等を行った場合について加算措置がありましたが(1事業所当たり1回のみ)、その加算対象に「短時間正社員」も追加されました(以下、「勤務地限定正社員」「職務限定正社員」「短時間正社員」をまとめて「多様な正社員」といいます)。多様な働き方が求められる時代になっていることを考えると、選択肢が増えるのはよいことと言えるでしょう。

    キャリアップ助成金の支給額

    正社員化コースは、正社員化等を行った人数に応じて、一人当たり下記の助成金が原則として支給されます。

    Figure1.jpg

    特定の条件を満たすことでの加算

    また、下記の条件を満たした場合にはそれぞれ加算措置があります。

    1. 派遣社員を派遣先で正社員または多様な正社員として直接雇用した場合
      →28万5,000円

    2. 母子家庭の母等または父子家庭の父を直接雇用した場合
      →9万5,000円

    3. 勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し、その雇用区分で直接雇用した場合(1事業所当たり1回のみ)
      →9万5,000円

    なお、令和2年(2020年)1月24日以降に新型コロナウイルスの影響により離職して就労経験のない職業に就くことを希望する人が、紹介予定派遣の後に派遣先で正社員として直接雇用された場合は、派遣期間が2カ月以上でも支給対象とする暫定措置が、令和4年(2022年)3月31日まで認められています。

    派遣社員を正社員として自社で直接雇用する場合は1.に該当し、2.3.に該当しなければ、一人当たり下記の助成金が支給されることになります。

    Figure2.jpg

    ※無期雇用として直接雇用する場合は、派遣社員の加算はありません

    「生産性の向上(生産性要件)」による加算

    さらに、生産性要件に該当した場合には加算が行われます。

    生産性要件とは、生産性向上の取り組みを支援するために設けられた制度で、要件に該当すると助成金が割増されます。

    生産性=付加価値÷雇用保険被保険者数

    から計算され、生産性が3年度前に比べて6%以上伸びているか、1%以上伸びていて金融機関から「事業性評価」を得ている場合に割増の対象となります。

    生産性要件の詳細や計算については厚生労働省のこちらのページiconをご確認ください。

    Figure3.jpg

    受給の上限

    正社員化コースは、1年度1事業所当たり20人分まで支給されます。

    生産性要件に該当し、派遣社員を正社員として直接雇用した場合は、最大2,160万円が支給されることになります。(母子家庭等その他の加算措置は別途加算されます)

    正社員化コースの支給対象になる要件

    派遣社員を直接雇用する場合に支給対象となる事業主の主な要件です。

    • ・就業規則等に派遣社員を正社員等として直接雇用する制度が規定されていること
    • ・6カ月以上継続して同一の派遣社員を受け入れていたこと
    • ・直接雇用したのち、6カ月以上継続勤務しその期間分の賃金を支払っていること
    • ・直接雇用後の6カ月の賃金が、直接雇用前の6カ月間の賃金より3%以上増額していること
    • ・直接雇用する日までの6カ月間と、直接雇用した後の6カ月間に、事業主都合の解雇等を行っていないこと
    • ・雇用保険や社会保険に加入していること

    また、対象となる社員にも要件があるので確認しておきましょう。

    • ・6か月以上継続して同一の派遣先の業務に従事していたこと
    • ・過去3年以内に、その派遣先で正規雇用等されていなかったこと
    • ・もともと正規雇用等の予定ではなかったこと

    ここでは主な要件を紹介しましたが、ほかにも必要な要件はあるため詳細はいずれも厚生労働省のHPやパンフレットで確認してください。

    出典:キャリアアップ助成金パンフレット│厚生労働省icon

    支給対象外となるケース

    支給要件を満たしている場合でも、過去に労働保険料の滞納がある場合や、過去1年間に労働関係法令に違反している場合、キャリアアップ助成金は受給できません。例えば、未払いの残業代があったり、違法な長時間労働があったりすると支給されません。

    また、派遣社員の場合は、派遣対象外となる業務への派遣、二重派遣など、違法派遣である場合も支給対象外となりますので注意してください。

    正社員化コースの助成金受給までの流れ

    正社員コースの受給までの大まかな流れは次の通りです。

    Figure4.jpg

    キャリアアップ計画の作成においては、「キャリアアップ管理者」を選任しなければなりません。社長がキャリアアップ管理者になることもできるので、比較的小さな規模の会社でも対応は可能でしょう。

    支給申請の際は多くの書類添付が求められます。出勤簿(タイムカード)や賃金台帳などの法定帳簿のほか、派遣社員の場合は直接雇用前の労働者派遣契約書や派遣先管理台帳などの書類も併せて添付する必要があるので、忘れずに保管しておきましょう。

    不支給にならないための注意点

    助成金は要件にひとつでも該当しないと原則として支給されません。ここでは、助成金が不支給にならないための主な2つの注意点をお伝えします。

    就業規則等の記載は要注意

    直接雇用を行う「前」に、就業規則等に直接雇用制度に関する規定が必要です。改定日なども確認されるため必ずチェックしておきましょう。

    また、直接雇用制度については「手続」「要件」「採用時期」が明示されていて、正社員化した社員がそれに当てはまらないと対象にはならないため注意しましょう。

    賃金3%以上増額の対象に含まれない手当がある

    以下の賃金を除いた総額で比較されるため、あらかじめ把握しておきましょう。

    • 通勤手当・住宅手当・食事手当などの実費補填的な手当
    • 歩合給・休日手当・時間外労働手当などの毎月の状況により変動する手当
    • 賞与などの定期または臨時に支給される手当

    まとめ

    キャリアアップ助成金は、支給額や支給要件の変更を繰り返しながら、長期間にわたって活用されてきました。それだけ支給対象となる会社が多かったと言えるでしょう。添付書類等は多いものの、きちんと法律や制度に従って雇用管理を行えば、決して受給が難しい助成金ではありません。派遣社員を正社員として直接雇用する際にはぜひ活用してみてください。

    ※準備をする際には、必ず厚生労働省のHPやパンフレットをよく確認しましょう。

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    著者プロフィール

    山口 剛広(特定社会保険労務士・ハラスメント防止コンサルタント)

    山口社会保険労務士事務所 代表。2002年山口社会保険労務士事務所を開業。企業のパートナーとして、争いを未然に防ぐための労務相談に力を入れている。行政や省庁が実施する「労働条件審査」において数十社に及ぶ審査実績がある。公的機関などで相談員を務める傍ら、ラジオ出演にて労務相談を担当するなど、〝相談ができる社労士″として活躍している。

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