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ダイレクトリクルーティングを取り組む企業において、以下のような悩みを持つ担当者は少なくありません。
ダイレクトリクルーティングにトライしたが期待した成果がでない、タレントプール系のサービスを契約したものの望んだ結果を得られない、といった声をよく耳にします。
この原因のひとつは、ダイレクトリクルーティングが「プッシュ型」の採用手法であることに起因します。この記事では、ダイレクトリクルーティングの課題とよくある失敗、対策について解説します。
ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
⇒ ダイレクトリクルーティングとは?他サービスとの違いを比較
従来の母集団形成の多くは、求人広告やハローワーク、ホームページ掲載に代表されるような、募集をかけたら応募を待ついわば「プル型」の採用でした。この場合、転職活動をしている層をターゲットにするため、重要なのは「どこに募集情報を出すか」でした。
一方で、ダイレクトリクルーティングは企業自ら採用のオファーをする「プッシュ型」の採用手法です。ターゲットにする層は、潜在層とよばれる転職活動を考えていない人も対象になるため、時間はかかるものの、転職市場にはでてこない優秀な人材を獲得できる点にあります。
この違いがダイレクトリクルーティングでの問題の原因となりやすいのです。商品やサービスを売る営業に例えるとわかりやすいのですが、問い合わせがあった顧客に自社商品を売り込むのか、それとも新規開拓をするのか、といったような違いがあります。
ダイレクトリクルーティングがうまくいかない場合、現場では主に4つの課題が起きています。
それぞれ解説します。
求人広告やホームページへの掲載といったプル型採用の母集団形成において、初期段階で時間を要するのは主に応募者対応でしょう。ターゲット外からも応募があるため、応募者が要件に合っているのかの書類審査や合否連絡、面接調整などに時間を要します。
一方、ダイレクトリクルーティングで一番時間がかかるのは「ターゲットとなる人材を探しだす」ところです。タレントプールツールや求人サイトのスカウト機能、SNSなどの情報をくまなく検索することが求められるため、ターゲットを探し出すことに多くの時間を費やします。
応募者対応や面接設定などゴールと期限が見えている業務と、ターゲットを探すというゴールが見えにくい業務の両方を抱えていた場合、どうしても期限があるものを先に片づけてしまいたいと思いがちです。ターゲットを探す活動は、纏まった時間が必要なのですが、それを作ることができない担当者は多いのではないでしょうか。
ダイレクトリクルーティングで候補者を見つけるのは、時間も必要ですがスキルも求められます。どんなにツールの使い勝手のよいツールを導入したとしても、要件にマッチした人材を探すテクニックが必要です。
タレントプール等に登録している人材全員が細かく職歴を書いているかというと、そうではありません。書いてある内容が簡潔すぎる人は多く、自身の経験・スキルを棚卸し、人事担当者に伝わりやすく書ける人は意外と少ないのです。登録情報が初期登録時のまま、アップデートをしていない人がいることも留意しておく必要があります。
さらにSNSなどは、求職を目的としているわけではないため、自身のことについて詳しく書いてないことはよくあることでしょう。そのような中から検索するわけですから、想像力を働かせながらあたりをつけ、コンタクトを取りつつ相応しい人材なのかを見極めるという手法も交え、進めていきます。
ターゲットを探しだした後は、関心をもってもらうことがポイントになります。メールの件名や自社のアピール、業務の魅力などの伝え方はもちろん、アプローチする相手がどのような関心を持っているかに合わせて文章を変えていかないと、一方的な伝え方では反応率は上がりません。
ダイレクトメールのようなメールを送り続けてしまっては、メールが開封すらされないということも起きてしまいます。 興味をもってもらう、反応が返ってくる文章を書けるようになるためには、試行錯誤していく必要があります。
ダイレクトリクルーティングは、候補者が興味を持つまでに時間を要する採用手法です。自社を知らない、さらには転職意思のない人材にアプローチするわけですから、一回のメールですぐに応募、ということは稀です。
候補者を見つけるのにも時間を要し、見つけたターゲットから興味関心を引き出すにも相応の労力が必要で、以下のようなステップを踏むことになります。
など
このため、入社までの期間が長期化する傾向があります。
応募者対応を中心に担当していた人がダイレクトリクルーティングを行う場合、応募者を見つけるということに心理的なストレスを抱えることがあります。
求人広告・ホームページからの応募と違って、自社に興味を示していない人にオファーを出すわけですから、返信率は当然ながら低いものです。タレントプールツールに登録がある人材であっても、興味がなければお断りか返信がないことは日常的に起こります。SNSなどを経由してアプローチする転職潜在層となると、そもそも転職を希望しているかも不明ですので、返信率はさらに低くなります。
やっと条件に合った人材を見つけて丁寧なメールを送ったのに返事はない、これを繰り返すことを事前に心積もりしていないと、「求人広告からの応募者対応などと同じように候補者を挙げられない」というストレスを感じやすくなります。
そして「ダイレクトリクルーティングは成果がでない」と結論付けて、遠ざかってしまうのです。
ダイレクトリクルーティングは根気がいる採用手法ですが、確実に成果を出している企業も多くあります。一方で、取り組んでみたものの成果を出せないという企業には、失敗する共通点が3つあります。
最も基本的な段階であるターゲットやペルソナの設定。これが甘いと、すべてのリクルーティング活動が無駄になる可能性があります。ターゲットやペルソナの設定が甘いと、必要な候補者を適切に探し出すことが難しくなります。
さらに、ターゲットやペルソナ設定ができていない、理解が不足している場合、訴求すべきポイントがズレてしまい、当然ながら反応率はよくありません。
今一度、ターゲット・ペルソナ設定をしっかりと行い、ターゲットの価値観や情報収集の手段、企業に求めるものを十分に想定することがダイレクトリクルーティングには不可欠です。
ダイレクトリクルーティングの魅力は、個別のアプローチにあります。ところが、いつも同じオファーレターを使ってしまうと、まるでDMのような一般的な手法と変わらなくなります。
DMのような一般的なオファーレターでは、個々の候補者のニーズや関心に応じてカスタマイズされたメッセージが欠けてしまいます。そのため、ダイレクトリクルーティングの真骨頂である、個別性や独自性を活かすことができなくなるのです。
特に知名度が高くない企業の場合、このオファーレター(メールの件名も重要)で自社に興味をもってもらわなければなりません。手間がかかるからとDMのように送ってしまうと、ダイレクトリクルーティングでの母集団形成は難しくなってしまいます。
成功したダイレクトリクルーティングの背後には、常にデータに基づく詳細な分析が存在します。しかし、オファーした人数や属性、使用したチャネルごとの成果などをきちんと数値化するステップが欠けている場合、活動の成果を適切に評価することができません。
このような状態が続くと、次第にPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルの「Check」や「Act」が不十分になり、活動の精度向上のチャンスを逃すこととなります。何をどのように改善すればよいのか、という方向性が見えにくくなってしまうのです。
ダイレクトリクルーティングの成功には、活動を数値化し、定期的にその成果を分析することが重要です。そして、その分析結果を基に次の施策を計画し、さらにその施策の成果を確認する。このサイクルを繰り返すことで、ダイレクトリクルーティングの精度を高める、またはダイレクトリクルーティングによる採用の継続可否の適切な判断ができるのです。
ここまでの話で、ダイレクトリクルーティングで成果をあげるには本腰を入れて取り組む必要があると、感じられたのではないでしょうか。そして同時に、ノウハウをもった人材もいないし、そもそも人事の人員が足りないので難しい・・やはりプル型だけに戻していいかも、と考えた方もいらっしゃるはずです。
しかし、これから先の人材の確保を考えた場合、ダイレクトリクルーティングは取り組み続けるべきです。
良い人材を獲得しようとした場合、魅力的な経歴を持った人材などは転職サイトや人材紹介会社に登録する前にリクルーターから声がかかります。つまり、ダイレクトリクルーティングによって先に他社の求人情報が伝わり、自社案件の存在を知ることなく転職が決まってしまうケースが考えられます。
たとえ何かしらの人材プールに登録があっても、優秀な人材には、仕事を探す前に企業のほうからオファーがいくつも届きます。特にIT系人材など、不足感の強い職種でスキルのある人材は、数え切れないくらいの案件の紹介をもらうことは珍しくありません。
プル型採用の待ちの姿勢は出遅れやすく、プッシュ型採用は先手を打つことができる、と言えます。
転職市場は経済的な影響を大きく受けるため、波はあるといえども労働人口が大きく減少していることは念頭に置いておく必要があります。特に新卒を含めた若い人材の採用は、困難だと感じている企業は多く、さらに採用が厳しくなると予想されます。
(出典)2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html
ここ1年ほどは、新型コロナウイルスの影響で求人広告は減少傾向ではありましたが、人材不足の傾向が大きく変わることはないでしょう。
コロナ以前の求人広告数は、前年を上回り続けました。求人サイトでは大量の募集が掲載されるわけですが、求職者が目にする数は限りがあります。求職者が検索をかけて、表示される件数が多くなればなるほど、閲覧するのは最初の数ページだけになります。特に働きながら求職者活動をしている人は、見る時間があまりないため、その傾向は強くでます。
そうなった場合、掲載順位を上げるために高い広告プランするか、長期間出し続けるなどの施策を講じなければ、応募がないという事態も起こりえますし、実際に経験したことのある企業も多いのではないでしょうか。さらに、採用広告へのコストは増加しているのに応募が少ないといったケースも想定できることです。
(出典)全国求人情報協会 求人広告掲載件数 2020年12月調査
https://www.zenkyukyo.or.jp/outline/research/
待ちの姿勢の採用業務とダイレクトリクルーティングでは、求められるスキルが異なってきます。ダイレクトリクルーティングは、営業的な側面があります。まず、ターゲットを探す技術(営業でいうところのクライアントやカスタマーの開拓)と、アプローチして興味を持ってもらうスキルが求められます。
関心を持っているかわからない人にアプローチするわけですから、自社がどのようなイメージを持たれているのか、今の求人要件は同業他社と比較してどうか、同じ条件なのに選ばれなかったのはなぜか、など生々しい意見と向き合うことになります。生の声を聞くことで、興味関心を持ってもらえるような自社や求人の見せ方などターゲットへの訴求力が向上し、客観的な自社の評価を知ることで、採用戦略も改善させることが可能です。
このスキルは、ダイレクトリクルーティングだけにとどまらず、求人広告文やホームページの採用ページにも活かすことができます。人材の争奪戦の中で、ターゲットとなる層に自社の魅力を伝えられる、求人要件に興味を持ってもらえるよう発信できるスキルを身に着けることができれば、採用活動の成果につなげられるはずです。
また、ダイレクトリクルーティングを通して市場の動きを肌で感じることができるため、広告代理店や人材紹介会社のアドバイスや説明に対しても鵜呑みで判断することはなくなってきます。自社の求人についても、プル型を利用したほうがよいか、ダイレクトリクルーティングの方が採用につながるのか、経験をもって戦略を立てることができます。
ではダイレクトリクルーティングで成果を出すためには、どのようなテコ入れをすればよいのか、4つの施策を解説します。
まず最初に、現状の把握を行います。
携わっている人数や費やしている時間、成果や具体的な活動など、全てを可視化することで、ダイレクトリクルーティングの進行状況や課題が明確になります。管理者が思っているより、担当者はダイレクトリクルーティングに時間をかけることができていない、などの問題も見えてくるはずです。
また、担当者のスキルや悩みなどもヒアリングしておきましょう。何を解決すべきかのヒントになります。
これまで説明してきた通り、兼任でダイレクトリクルーティングを用い成果を上げるのは難易度が高くなります。成果を上げて、社内にノウハウを蓄積していくためには、専任者の設置が望ましいです。募集ポジション数によっては専任者を複数置くことも検討してください。
また、候補者を探し出すためのスキルを磨くことができる環境も整えることも重要です。社内に教えることができる人材はいるのか、もしくは新たに経験者を採用できるのか、外部の研修などノウハウを得る方法を確認します。
社内にノウハウがなければ、最初は外部の人から学ぶことです。学んだことの実践を積み重ねることで、自社に最適な方法が見つかり、独自のノウハウが出来上がっていきます。
ダイレクトリクルーティングは、やみくもに探すのではなく、計画性が必要です。KPIやKGIを具体的にすることで、採用活動の質が上がっていきます。KPI/KGIがあることで、分析しやすく、PDCAサイクルをスムーズに回すことができます。
また、数値が明確になることで他の採用手法と比べることが容易になり、採用コストや工数のアロケーションを検討にも役立ちます。
以下、KPIとKGIの一例です。
KPI | |
---|---|
アプローチ件数 | 一定期間内にどれだけの候補者に直接アプローチしたかの数値 |
反応率 | アプローチした候補者のうち、どれだけの人が返信や反応を示したかの比率 |
初回面接の設定率 | 反応を示した候補者のうち、初回の面接を設定できた比率 |
辞退率 | アプローチから最終的な採用までの各段階で、どれだけの候補者が途中で辞退したかの比率 |
KGI | |
---|---|
採用数 | 一定期間内にダイレクトリクルーティングで採用に成功した候補者の数 |
定着率 | ダイレクトリクルーティングで採用した候補者が入社後、一定期間定着した比率 |
採用コスト | ダイレクトリクルーティングでの採用にかかった総コスト。これを採用数で割ることで、一人当たりの採用コストも算出できる |
採用までの平均日数 | アプローチから最終的な採用までの平均所要日数 |
採用におけるKPIについては、「採用活動におけるKPIとは?設定と運用のポイントを紹介」で詳しく解説しています。
早く成果を出したい、専任者を現時点では置くことができない場合、外部のダイレクトリクルーティングサービスを利用する方法もあります。リクルーターを派遣してもらい、自社の採用担当者としてダイレクトリクルーティングを行ってもらいます。
メリットとしては、ノウハウを持っているため成果を出すまでに時間が比較的かからないことです。将来的には、ダイレクトリクルーティングの内製化を見据えながら、プロの技術を学び、スキル高めていくこともできます。
ダイレクトリクルーティングで成果を出せないとき、多くはダイレクトリクルーティング活動に時間をかける体制にないことが原因です。たとえタレントプールがあったとしても、人を探す、案件に興味をもってもらうにはスキルが必要だということです。時間をかけて取り組むことが必要となります。決して片手間で成果を出せる手法ではありませんので、専任者を設置し、計画的に運用することが成功のポイントです。
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