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採用の母集団形成は大きく分けて、求人広告やホームページでの求人掲載などのプル型(応募者を待つ)とダイレクトリクルーティングやリファラル採用などのプッシュ型(特定の人に企業からアプローチする)の2つがあります。
日本では、求人広告やナビサイト(リクナビ・マイナビなど)を利用するプル型採用を利用する企業が大半を占めていましたが、SNSの普及など、個人へのアプローチがしやすくなった環境も後押しし、プッシュ型採用であるダイレクトリクルーティングに取り組む企業も増えてきました。
しかし、ダイレクトリクルーティングに取り組んだものの成果が思うようにでない、タレントプール系のサービスを契約したものの望んだ結果を得られない、といった声をよく耳にします。
なぜそのような事態がおきるのでしょうか。本記事では、ダイレクトリクルーティングがうまくいかない理由と対策について解説します。
ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
⇒ ダイレクトリクルーティングを導入すべき?メリット・デメリットを解説
根本となる原因は、ダイレクトリクルーティングの専任者がいない、または専任者がノウハウをもっていないことです。
マンパワーグループでは、採用代行の一環としてコンサルティングを行っていますが、ダイレクトリクルーティングを取り入れている企業の話を伺っていると、想定と実際の業務に乖離があり、ダイレクトリクルーティングそのものが機能していないケースが多くあります。
現場でよく起きている問題を3つ取り上げます。
求人広告やホームページへの掲載といったプル型採用の母集団形成において、初期段階で時間を要するのは主に応募者対応でしょう。ターゲット外からも応募があるため、応募者が要件に合っているのかの書類審査や合否連絡、面接調整などに時間を要します。
一方、ダイレクトリクルーティングで一番時間がかかるのは「ターゲットとなる人材を探しだす」ところです。タレントプールツールや求人サイトのスカウト機能、SNSなどの情報をくまなく検索することが求められるため、ターゲットを探し出すことに多くの時間を費やします。
ターゲットを探すのに要する時間を少なく見積もり、ほかの業務と兼務してしまっているケースは、多く見受けられます。
応募者対応や面接設定などゴールと期限が見えている業務と、ターゲットを探すというゴールが見えにくい業務の両方を抱えていた場合、どうしても期限があるものを先に片づけてしまいたいと思いがちです。ターゲットを探す活動は、纏まった時間が必要なのですが、それを作ることができない担当者は多いのではないでしょうか。
応募者対応を中心に担当していた人がダイレクトリクルーティングを行う場合、応募者を見つけるということに心理的なストレスを抱えることがあります。
求人広告・ホームページからの応募と違って、自社に興味を示していない人にオファーを出すわけですから、返信率は当然ながら低いものです。タレントプールツールに登録がある人材であっても、興味がなければお断りか返信がないことは日常的に起こります。SNSなどを経由してアプローチする転職潜在層となると、そもそも転職を希望しているかも不明ですので、返信率はさらに低くなります。
やっと条件に合った人材を見つけて丁寧なメールを送ったのに返事はない、これを繰り返すことを事前に心積もりしていないと、「求人広告からの応募者対応などと同じように候補者を挙げられない」というストレスを感じやすくなります。
そして「ダイレクトリクルーティングは成果がでない」と結論付けて、遠ざかってしまうのです。
どんなにツールの使い勝手が良くても、要件にマッチした人材を探すにはスキルが必要です。
求人サイト等に登録している人材全員が細かく職歴を書いているかというと、そうではありません。書いてある内容が簡潔すぎる人は多く、自身の経験・スキルを棚卸し、人事担当者に伝わりやすく書ける人は意外と少ないのです。登録情報が初期登録時のまま、アップデートをしていない人がいることも留意しておく必要があります。
さらにSNSなどは、求職を目的としているわけではないため、自身のことについて詳しく書いてないことはよくあることでしょう。そのような中から検索するわけですから、想像力を働かせながらあたりをつけ、コンタクトを取りつつ相応しい人材なのかを見極めるという手法も交え、進めていきます。
ターゲットを探しだした後は、関心をもってもらうことがポイントになります。メールの件名や自社のアピール、業務の魅力などの伝え方はもちろん、アプローチする相手がどのような関心を持っているかに合わせて文章を変えていかないと、一方的な伝え方では反応率は上がりません。ダイレクトメールのようなメールを送り続けてしまっては、メールが開封すらされないということも起きてしまいます。
興味をもってもらう、反応が返ってくる文章を書けるようになるためには、試行錯誤していく必要があります。
ここまでの話で、ダイレクトリクルーティングで成果をあげるには本腰を入れて取り組む必要があると、感じられたのではないでしょうか。そして同時に、ノウハウをもった人材もいないし、そもそも人事の人員が足りないので難しい・・やはりプル型だけに戻していいかも、と考えた方もいらっしゃるはずです。
しかし、これから先の人材の確保を考えた場合、ダイレクトリクルーティングは取り組み続けるべきです。
良い人材を獲得しようとした場合、魅力的な経歴を持った人材などは転職サイトや人材紹介会社に登録する前にリクルーターから声がかかります。つまり、ダイレクトリクルーティングによって先に他社の求人情報が伝わり、自社案件の存在を知ることなく転職が決まってしまうケースが考えられます。
たとえ何かしらの人材プールに登録があっても、優秀な人材には、仕事を探す前に企業のほうからオファーがいくつも届きます。特にIT系人材など、不足感の強い職種でスキルのある人材は、数え切れないくらいの案件の紹介をもらうことは珍しくありません。
プル型採用の待ちの姿勢は出遅れやすく、プッシュ型採用は先手を打つことができる、と言えます。
転職市場は経済的な影響を大きく受けるため、波はあるといえども労働人口が大きく減少していることは念頭に置いておく必要があります。特に新卒を含めた若い人材の採用は、困難だと感じている企業は多く、さらに採用が厳しくなると予想されます。
(出典)2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html
ここ1年ほどは、新型コロナウイルスの影響で求人広告は減少傾向ではありましたが、人材不足の傾向が大きく変わることはないでしょう。
コロナ以前の求人広告数は、前年を上回り続けました。求人サイトでは大量の募集が掲載されるわけですが、求職者が目にする数は限りがあります。求職者が検索をかけて、表示される件数が多くなればなるほど、閲覧するのは最初の数ページだけになります。特に働きながら求職者活動をしている人は、見る時間があまりないため、その傾向は強くでます。
そうなった場合、掲載順位を上げるために高い広告プランするか、長期間出し続けるなどの施策を講じなければ、応募がないという事態も起こりえますし、実際に経験したことのある企業も多いのではないでしょうか。さらに、採用広告へのコストは増加しているのに応募が少ないといったケースも想定できることです。
(出典)全国求人情報協会 求人広告掲載件数 2020年12月調査
https://www.zenkyukyo.or.jp/outline/research/
待ちの姿勢の採用業務とダイレクトリクルーティングでは、求められるスキルが異なってきます。ダイレクトリクルーティングは、営業的な側面があります。まず、ターゲットを探す技術(営業でいうところのクライアントやカスタマーの開拓)と、アプローチして興味を持ってもらうスキルが求められます。
関心を持っているかわからない人にアプローチするわけですから、自社がどのようなイメージを持たれているのか、今の求人要件は同業他社と比較してどうか、同じ条件なのに選ばれなかったのはなぜか、など生々しい意見と向き合うことになります。生の声を聞くことで、興味関心を持ってもらえるような自社や求人の見せ方などターゲットへの訴求力が向上し、客観的な自社の評価を知ることで、採用戦略も改善させることが可能です。
このスキルは、ダイレクトリクルーティングだけにとどまらず、求人広告文やホームページの採用ページにも活かすことができます。人材の争奪戦の中で、ターゲットとなる層に自社の魅力を伝えられる、求人要件に興味を持ってもらえるよう発信できるスキルを身に着けることができれば、採用活動の成果につなげられるはずです。
また、ダイレクトリクルーティングを通して市場の動きを肌で感じることができるため、広告代理店や人材紹介会社のアドバイスや説明に対しても鵜呑みで判断することはなくなってきます。自社の求人についても、プル型を利用したほうがよいか、ダイレクトリクルーティングの方が採用につながるのか、経験をもって戦略を立てることができます。
ではダイレクトリクルーティングで成果を出すためには、どのようなテコ入れをすればよいのかを解説します。
現時点で、どのような体制になっているのか、兼任である場合、どのくらいの時間をかけられているのかをチェックしてみましょう。そして、担当者は成果が出せているか、そもそもダイレクトリクルーティングの経験を持っていたのか、社内に教えられる人はいるのかなどを含めて確認しておきます。
これまで説明してきた通り、兼任でダイレクトリクルーティングを用い成果を上げるのは難易度が高くなります。成果を上げて、社内にノウハウを蓄積していくためには、専任者の設置が望ましいです。ポジション数によっては専任者を複数置くことも検討してください。
その次に教育を考えます。社内に教えることができる人材はいるのか、もしくは新たに経験者を採用できるのか、外部の研修などノウハウを得る方法を確認します。社内にノウハウがなければ、最初は外部の人から学ぶことです。学んだことを実践を積み重ねることで、自社に最適な方法が見つかり、独自のノウハウが出来上がっていきます。
早く成果を出したい、専任者を現時点では置くことができない場合、外部のダイレクトリクルーティングサービスを利用する方法もあります。リクルーターを派遣してもらい、自社の採用担当者としてダイレクトリクルーティングを行ってもらいます。
メリットとしては、ノウハウを持っているため成果を出すまでに時間が比較的かからないことです。将来的には、ダイレクトリクルーティングの内製化を見据えながら、プロの技術を学び、スキル高めていくこともできます。
ダイレクトリクルーティングで成果を出せないとき、多くはダイレクトリクルーティング活動に時間をかける体制にないことが原因です。総合人材会社として言えるのは、たとえタレントプールがあったとしても、人を探す、案件に興味をもってもらうにはスキルが必要だということです。
時間をかけて取り組むことが必要となります。
ただ、今後の人材不足や仕事の探し方の多様化を考えると、ダイレクトリクルーティングを取り入れることを諦めないでほしいと思います。優秀な人材が応募してくる仕掛けをつくる、必要な人材を探し出しアプローチする、どちらの採用手法も取れる強い人事を目指してみてはいかがでしょうか。
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