
目次
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が候補者となり得る求職者を探し出し、直接アプローチする手法のことです。ダイレクトリクルーティングの概要、メリット・デメリットを踏まえた効果的な活用法および、他サービスとの比較について解説します。
本コラム要旨
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すでにダイレクトリクルーティングを導入しているが自社運用がうまくいかないという方向けには「ダイレクトリクルーティングの落とし穴|課題と対策をわかりやすく解説」がおすすめです。
ダイレクトリクルーティングとは、SNSや人材バンクを活用して、企業側から求職者に個別にアプローチする採用手法のことを指します。
「求める人材」に対して企業側から直接アプローチできる手法として、近年、ダイレクトリクルーティングは多くの企業から注目を集めています。海外では「ダイレクトソーシング」と呼ばれており、一般的な採用手法として取り入れられています。
外資系企業・グローバル企業を中心に行われていたダイレクトリクルーティングですが、サービスの拡充などの後押しもあり、日本企業においても導入が進んでいます。
求人広告や人材紹介は、応募者の反応待ちでありますが、ダイレクトリクルーティングは、企業側が自ら行動する「攻め」の採用手法です。
ダイレクトリクルーティングが普及している背景として、以下の要因が挙げられます。
人手不足が慢性的になりつつある現代、従来の方法では今までのように採用できなくなっています。
求人サイトには相当数の求人広告が掲載されており、「選んでもらえるか」よりも「広告を見てもらえるか」という状況で、掲載したからといって応募が確約されない状況です。
また、働きながら転職活動している求職者は、仕事を探す時間が限られています。
人材紹介会社に登録している求職者も、求職者の希望に沿ったものが優先的に案内され、募集している全ての仕事が紹介されるわけではありません。そのうえ、経験とスキルが豊富な人材には、多数の好条件の仕事紹介があります。
加えて、求職者の転職活動方法も多様化しており、転職市場にでてくる前にスカウトや知人などから直接声をかけられるなどして次の職場を決定するケースも増えてきました。
つまり、求める人材が転職市場にいたとしても、目に触れてすらないこともあるのです。応募を待っているだけでは、優秀な人材を獲得しにくい状況と言えます。
転職に対する意識は変化しています。「一社で勤め上げる」という考え方は薄れており、若い層を中心に転職に対してポジティブな考えを持つ人は増えてきました。また、フリーランスなど多様な働き方を選択する労働者が増え、従来の採用市場では「求める人材」を確保しづらい状況になっています。
人材の流動化は、常に募集ポジションが発生する状況を生み、企業は常に採用活動の継続を余儀なくされ、採用コストが膨らむ傾向にあります。求人広告を出しても応募がない、採用できなかったというケースは珍しくはないでしょう。
求人広告の件数は増加傾向で、費用対効果の悪化が予想されます。そこで、採用コストを抑えながら人材を確保するための手法として、ダイレクトリクルーティングの活用に注目が集まりました。
ダイレクトリクルーティングは、自ら候補者となる人材を探すことから、サーチする工数の問題が起きます。しかし、さまざまなSNSが普及し、企業が求職者と直接コミュニケーションを取ることができるようになりました。
また、ダイレクトリクルーティングをサポートするサービスやツールも普及し始め、取り組みやすくなったことも、ダイレクトリクルーティングの活用が進む理由のひとつです。
ダイレクトリクルーティングにおける主なメリットは以下の4点です。
求人媒体を利用した場合は広告費が必要であり、人材紹介サービスは、紹介手数料(一般的に年収の35%)がかかります。
「ダイレクトリクルーティングで採用するノウハウ」を蓄積できれば、有料のサービスを利用しなくても人材を採用できます。有料サービスであっても、長期的に考えると採用コストが抑えられる可能性があります。
アプローチする人材を採用担当者が選ぶため、求人要件に近い人材に対してのみ選考を実施することが可能です。また、サーチする範囲も人材データバンクからSNSのような転職潜在層まで幅広いのも特徴です。
求人広告の場合は、条件を満たさない応募も多く、スクリーニングの工数も増えます。人材紹介会社はスクリーニングをした上で紹介してくれますが、登録している人材プールからの推薦ということもあり、なかなか紹介されないこともあります。また、複数の人材紹介会社に依頼した場合、コミュニケーションコストもかかります。
ダイレクトリクルーティングは、求人サイトの運営会社や代理店、人材紹介会社などを通さずに、求職者に直接アプローチする採用手法です。そのため、自社で活躍する社員の要素を分析し、活躍できる人材を採用するために「どのようにアピールしていくべきか」を考え続けなくてはなりません。
その結果、他の採用手法と比較して「採用担当者のリクルーターとしての能力」を高めやすい採用手法となります。
SNSなどを活用することで、転職活動をしていない潜在層に向けてヘッドハンティングのような形で自社にスカウトできます。
求人サイトや人材紹介会社に登録していなくても、「よい会社・条件があれば転職してもいい」「今の会社でずっと働くとは考えられない」と思っている層もいます。先駆けて自社をアピールすることで、母集団を広げることが可能です。
一方、ダイレクトリクルーティングには、以下のようなデメリットがあると考えられます。
まず候補者となる人材のサーチに時間がかかります。メリットでもありますが、範囲が広いことに加え、フィルタリング機能が低い場合、対象者を見つけることに時間を割かなければなりません。
さらに、個人に響く内容のメッセージを作成し、求職者の志望度を高めていくことが求められます。自社を知らない(関心をまだ持っていない)人材へのアプローチであるため、メールに対する反応率が高くないことにストレスを感じることもあります。
ダイレクトメッセージを機械的に送信するだけでは、見つけた人材の関心を高めることはできません。候補者が求めてることを把握し必要な情報を提供する、根気強く自社の魅力的をアピールすることが求められます。
従来型の採用方法と比較して、ダイレクトリクルーティングは長期化しやすい傾向があります。特に、転職潜在層に対してアプローチする場合は、半年~1年程度の時間がかかることもあります。このため、タイムラグにより適材適所の採用が難しくなるケースがあります。
よく利用されている採用手法とダイレクトリクルーティングの違いは、以下の通りです。
ダイレクト リクルーティング |
求人サイト | 人材紹介 | スカウトサービス | |
工数 | △ | 〇 | ◎ | △ |
応募者の質 | ◎ | △ | ◎ | 〇 |
母集団形成 | △ | ◎ | △ | △ |
費用 | ◎ | △ | △ | △ |
従来の採用手法である求人広告など求人サイトに掲載した場合、企業は応募者を「待つ」ことになります。
一方、ダイレクトリクルーティングでは、SNSや人材バンクに登録されている登録者の情報を企業の人事担当者がチェックして、個人に対して自らアプローチします。
ただし、求人サイトを利用する方が工数はかからず、母集団を形成することが比較的容易です。
人材紹介サービスは、企業に代わりエージェントが候補となる人材を見つけてきます。エージェントは、自社に登録のある人材から条件に見合った人物を探し、候補者として紹介してくれます。
候補者を探してもらうという工数が省け、求人サイトに比べると要件に合った人材で母集団を形成できるというメリットがあります。ただし、入社が決定した場合には紹介手数料が発生するのと、候補者には複数の仕事のオファーが届くため、競合が多いという違いがあります。
一方、ダイレクトリクルーティングでは、人事担当者が自らアプローチするため、紹介手数料の支払いは発生しません(ただし、人材データバンクの登録データを利用する場合には、利用料が発生します)。
スカウトサービスは、採用ナビサイトが提供するサービスです。個人に対してアプローチするのではなく、ナビサイトの登録者を年齢や性別、地域など条件を付けた特定の層に対してスカウトメールを送ります。
ダイレクトリクルーティングに比べて多くの人にアプローチできますが、ひとりひとりの求職者に対して訴求できる内容にはしにくいため、反応率で劣る可能性があります。
ヘッドハンティングは、人材紹介サービスの1種です。ヘッドハンターが転職意思を示していない層をもターゲットにし、探してくるという点でダイレクトリクルーティングと似ています。
大きな違いは、経営層や後継者候補、レアな専門性のある人材も探してくることができ、候補者と接触する確率が高いところと言えます。
また、ダイレクトリクルーティングがSNSやタレントプールから探してくることがメインなのに対し、ヘッドハンティングサービスは独自の情報網で候補者を探してきます。
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エグゼクティブ層やキーマンの採用には、ヘッドハンティング会社の独自の情報網を活かしたヘッドハンティングが有効です。ヘッドハンティングを活用した採用事例をご覧いただけます。
ダイレクトリクルーティングにかかる費用は、使用する媒体によって異なります。
無料で利用できます。
代表的なものとして、FacebookやTwitter、LinkedInなどがあります。Wantedlyのようにビジネスに特化したSNSも、基本的な機能は低価格で利用できます。
ただし、転職意思があるかどうかは把握しにくいため、スカウトメールに対する反応率が高いツールとは言えません。
それぞれのプラットフォームやプランごとに費用は異なります。プラン形態としては、月額制、完全報酬型などが用意されています。1回の採用にかかる費用は、利用する採用媒体や採用人数、掲載プランなどにより数十万円~100万円以上になるものまであります。
転職意思がある人材が登録していることが多く、SNSに比べると反応率はよいと言えます。
ダイレクトリクルーティングは、全てのポジション・企業に向いているとは言えません。メリット・デメリットを踏まえると、次の3つのケースで導入が向いていると言えます。
スキルの高いIT系人材やマーケティング、特殊な資格や経験が必要なポジションは、求人広告や人材紹介では見つけにくくあります。人気が高い上に、転職市場には少ないためです。競合も多くなります。
人気のある職種を待ちの手法で採用しようとすると、先に他社に取られてしまった、要件に合わない人の応募しかない、といったことが起きます。
特に知名度が高くない場合、ダイレクトリクルーティングを行うことで、ターゲット層に自社案件をアピールし印象付けることは大切です。
求人広告で訴求できる求人は基本1ポジションです。もちろん、広告内に複数の募集を入れることはできますが、広告枠の関係から内容が薄くなりがちで、求職者の印象に残りにくくなります。
人材紹介の場合、ポジション毎に依頼できますが、その分の人材紹介手数料が発生するため、コスト高になりがちです。また、ひとつの人材紹介会社でまかなうことは難しく、多くのエージェントに依頼するため、コミュニケーションコストもかかります。
このような場合、自社でダイレクトリクルーティングを導入しノウハウを蓄積することで、効率的且つ適正なコストで採用することができます。
ダイレクトリクルーティングは、採用担当者の工数と時間がどうしても必要になります。書類選考や面接調整、面接、内定フォロー以外にも、候補者探しや候補者へのアプローチなどの業務が発生するためです。
これだけかと思われるかもしれませんが、候補者を探すのはスキルが必要であり、候補者探しにはあっという間に時間がたってしまいます。また、見つけた候補者それぞれに響くアプローチを考えなければなりません。
これだけのことをしても、反響率が著しく上がるわけではないため、複数の候補者を見つける必要があります。そのため、採用担当者の人数が不足している、あるいは採用担当者が業務過多の状態での導入は、難しいものがあります。
最後に、ダイレクトリクルーティングを成功させるためのポイントを紹介します。
採用担当者の時間を確保できていないと「期限内に作業を完了させられなかった」「候補者を見つけることができない」「候補者とタイムリーなやりとりができない」などの状況に陥ります。
成果が挙がらないことからストレスがたまり、ダイレクトリクルーティングへの取り組み意欲が下がってしまい、結果「ダイレクトリクルーティングでは採用できない」と結論付け、従来型の手法に戻ってしまいがちです。
ダイレクトリクルーティングは「候補者探し」から始まるため、採用担当者が一定数の時間を確保できる体制づくりが重要です。
ダイレクトリクルーティングの場合も「ターゲットの設定」が重要です。DMを送付する条件として、「必須となるスキル」や「実績」などを設定しておくと、ターゲットをセグメントしやすくなり、選考の効率化と精度向上を図ることができます。
目的に合った採用媒体を選定することも重要な要素です。というのも、SNSや人材データバンクは、サービスごとに利用者層が異なるからです。ITエンジニアや営業職といった「職種別」、若年層やエクゼクティブ・ハイエンド層といった「年齢別」など、求める人材の層に応じて使用するプラットフォームを使い分ける必要があります。
ダイレクトリクルーティングでは、DMの反響率を意識することが大切です。特に重要なのは、メッセージのタイトルと本文の前半部分です。
例えば、「FP資格保有者限定の求人案件」のようにターゲットをタイトルに明記する、本文前半に条件などの「求職者が知りたい情報」を記述する、求職者ごとにダイレクトメッセージの内容をアレンジする工夫をすると、求職者からの反響を高めることができます。
開封や返信されたメール・チャットの内容を研究し、精度の高いタイトル・文面を作成していくことで、反響率が上がっていきます。
さらに、優秀な人材をタレントプールとしてデータベース化しておき、定期的にコミュニケーションを取る、口説き落とすために面接前に面談の場を設けるなど、求職者と接触する機会をなるべく増やす工夫を講じておく必要もあります。
ダイレクトリクルーティングを導入したくても、自社に十分なノウハウがない、これから担当者を育てたいというケースもあるでしょう。
この場合、リクルーターを派遣しダイレクトリクルーティングを行う採用代行サービスか採用コンサルティングを利用する方法も検討してみてください。専門的なノウハウをもっているため、ツールの選定や候補者の探し方、候補者への効果的なアプローチなどをすぐに採用に取り入れることができます。
採用代行サービスを導入する際は、いずれ内製化を考えている旨を伝え、どのようなサポートが受けられるかを確認しておきましょう。費用はかかりますが、ダイレクトリクルーティングの効果が比較的すぐに得られ、専門家のアドバイスももらえるため、検討する価値は十分にあります。
ダイレクトリクルーティングを上手に活用すると、自社にマッチした人材にアプローチできます。ただし、ダイレクトリクルーティングを実践するには、長期的かつ全社的に取り組む姿勢が不可欠です。また、採用部門に大きな負担がかかることも、あらかじめ把握しておく必要があります。
ダイレクトリクルーティングのノウハウが自社にない場合、もしくは人員が足りない場合は、外部のリクルーターを利用するのも効果的な手段です。こういったメリットとデメリットを踏まえたうえで、効果的な採用活動を実現できるように、ダイレクトリクルーティングの活用も検討してみてください。
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