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採用活動において、面接官のスキル不足が障壁となることは少なくありません。この記事では効果的な面接を実施するためのスキルや知識を習得する面接官トレーニングの重要性とその効果および、面接官が特に伸ばすべきスキルに焦点を当て、解説します。
マンパワーグループの調査によると、採用が成功している企業の65%が面接官トレーニングを実施しているのに対し、採用に課題を感じる企業の70%以上がこれを実施していないことが明らかとなりました。
これらのデータから、適切な面接スキルを持つ面接官の育成は、求める人材の採用において非常に重要な要素であり、面接官トレーニングの有無が採用の成功を大きく左右することを示唆しています。
調査データ:中途採用の成否を分けるポイントは面接官のトレーニングにあった!採用が順調な企業の実施率は6割以上
面接官トレーニングが重要な理由の一つは、企業の人的資本の強化に寄与することです。優秀な人材を確保するためには、採用プロセスの最適化が不可欠面接官トレーニングにより、候補者の適性を正確に評価し、最適な人材を採用することが可能になります。
面接官は、応募者にとっての会社の顔。面接官の印象が直接企業イメージに影響を及ぼします。SNSの普及により、応募者の体験が即座に共有される今日、面接官の態度や対応が不適切であれば、企業の評判を損なうリスクが高まります。
企業の魅力を伝える重要な要素には、「採用CX(キャンディデイトエクスペリエンス)」も含まれます。採用CX(キャンディデイトエクスペリエンス)とは、応募者が企業とのコミュニケーションを通じて得る印象を指すものですが、この重要性は候補者が入社するか否かのみに作用するものではありません。候補者が入社に至らなくとも、選考の経験が消費者や取引先としての今後の行動に影響を与えることがあります。
面接官の行動や言動が不適切であれば、企業の評判を損なうだけでなく、法的な問題を引き起こすリスクがあります。個人情報に関する質問は、就職差別につながる可能性があるため、面接官トレーニングにより、適切な質問技法とコンプライアンスの遵守を徹底することが重要です。
面接での不適切な質問例
など
【お役立ち資料】面接が初めてでも注意点と流れが一気に理解できる
面接官としてのスキル向上には、単に経験を積むだけでは不十分。面接の理論や背景について学ぶことで、目的や評価基準を正しく理解し、効果的な面接を実施できます。
身内のみでの面接官トレーニングは、特定の偏見やバイアスに気づきにくいという問題があります。外部の視点や専門家の意見を取り入れることで、偏見やバイアスを矯正し、公平で客観的な面接を実施することが可能です。
面接官のスキル不足は、採用プロセス全体に悪影響を及ぼす可能性があります。一貫性のない評価は、適切な人材の採用を妨げ、企業の競争力を低下させます。
評価基準が面接官毎にバラツキがでてしまい、歩留まりが悪化すると面接数が増加。採用担当者の管理工数の増大を招き他の業務に支障をきたす可能性があります。
また、限られた面接時間を有効に使えないことで応募者とのコミュニケーションの質を低下させ、採用の成功率を低下させかねません。
面接官トレーニングにより、さまざまな問題が解消し採用の質が向上、結果的に採用目標の達成やブランディングへとつながるのです。
面接官トレーニングを実施する際に考慮すべき、優れた面接官としての基盤となる、面接官に求められる代表的な3つのスキルについて、解説します。
それぞれ解説します。
質問力は、面接官が応募者の真の価値を見抜くうえで不可欠なスキルです。質問力が不足していると、応募者の潜在能力や適性を正確に把握することができず、最適な人材を採用するチャンスを逃してしまう可能性があります。
自社にとってどんな人材を必要としているのかによって質問は変わります。
まずは自社が求める人材についての要素を出しましょう。
例えば、各項目を評価する質問で、下記のような目的があります。
評価項目 | 質問 | 目的 |
人間性 | 「最も困難だったプロジェクトでの役割とその経験について教えてください」 | 応募者の価値観やチームでの協働力を見る |
主体性 | 「困難な状況をどのようにして乗り越えましたか?」 | 応募者自身の解決策を引き出す |
論理性 | 「この問題をどのように解決しますか?」 | 応募者の論理的思考力をチェック |
適性 | 「このポジションに応募した動機は何ですか?」 | 応募者がポジションに対してどれだけ理解と興味を持っているかを評価 |
このように、重要視する要素に基づいた適切な質問をあらかじめ設計しておくことで、面接官は応募者の多面的な側面から人物を評価し、必要な人材を見極めやすくなります。
見極めの精度を高める質問設計の詳細については、「【質問例あり】コンピテンシー面接とは|基礎知識とやり方を解説」で解説しています。
優秀な人材に、「ここに入りたい!」と感じさせるためには、自社の魅力を明確に応募者へ伝える必要があります。面接官が自社の価値やカルチャーを適切に伝え、ポジティブな印象を与えることができれば、応募者はその企業で働くイメージを持ちやすくなります。
魅力付けが不足していると、転職市場での競争力が低下し、優秀な人材の獲得において不利な状況に置かれる可能性があります。
企業のミッションやビジョンを正確に理解し、それらを候補者に伝えるスキルは、強固な企業ブランドを築く上で不可欠です。以下に、具体的なアプローチの方法を例示します。
なぜ入社したいのかという質問から、候補者の動機などが企業文化や価値観にマッチしているか確認します。また、企業のミッションやビジョンに関連する質問をすることで、応募者がそれらをどれだけ理解しているのか、またそれに共感しているのかを確認することができます。
面接官自身が企業のミッションやビジョンを深く理解し、それを応募者に伝えることで、企業の魅力を効果的に伝えることができます。例えば、実際の成功事例や社員の成長ストーリーなど、ミッションやビジョンに関連する事業内容や各部署の仕事内容、企業の強みなどを面接官も理解しておくことで、より具体的な情報を提供することができます。
面接官としての「引き出し力」は、応募者がリラックスし、本来の自分を表現しやすい環境を作るスキルです。限られた面接時間で応募者の本質を把握するためには、リラックスした状態で本来の自分自身を表現できる環境を提供する必要があるのです。
応募者が高い緊張状態にあると、本来の能力やパーソナリティを表現しにくくなり、コミュニケーションがうまくいかないことがあります。そうなると「実は求めている能力・ヒューマンスキルを持った人材」を見逃してしまう可能性があります。
応募者がリラックスできると、応募者が自分の強みや経験を素直に話すことができるため、応募者を適切に評価しやすくなります。応募者から見ても自身をアピールでき、また自分にフィットした会社なのかを判断しやすくなるため、双方にとって有益です。
面接官トレーニングの取り組みは、企業の採用戦略やビジョンに合わせて柔軟に選択することが肝要です。ここからはその具体的な方法について解説します。
面接官には、基本スキルとして身につけておくべきスキルがあります。特に人事担当者以外の面接官は、法的なルールを知らずに不適切な質問をしてしまう、部下と接するような心持ちで挑み適切な評価が行えない、などの問題を起こしがちです。「面接の基本知識」はしっかりと教育すべきと言えます。
面接官としての基本スキルには以下のようなものがあります。
「建設的なフィードバック」とは、応募者に対して改善すべきスキルや、より適した能力を追求するための具体的なアドバイスを提供するといったものが挙げられます。
仮に採用基準に達していない人材だとしても、応募者の求職の意欲を削ぐのではなく、次につながるような助言をすることで、不合格だった場合の失望や企業への悪印象を緩和することに役立ちます。
面接官としての基本を学び、面接官が公平で正確な評価を行い、同時に企業の魅力を最大限に伝えることができるようになることを目指しましょう。
面接演習は面接官トレーニングとして、とても効果的です。面接演習では、実際の面接シチュエーションを想定し、対応力を高めることがポイントです。採用担当者役と求職者役に分かれ、予め用意されたシナリオや予期せぬ質問に対してどのように答えるか練習します。
演習を繰り返すことで、面接官は求職者の回答に対して的確なフィードバックを行うスキルを向上させることができます。また、求職者役を経験することで、どのような質問がベストで、どのようなフィードバックが建設的であるかを体感し、その経験を面接に活かすことができるのです。
定期的な面接演習を実施した上で、面接官同士のフィードバックセッションを設けると、互いのスキルアップとなり、組織全体の面接の質が向上していきます。
面接官マニュアルを作成し配布することも、採用活動の質を向上させることに役立ちます。特に面接官トレーニングを行う時間の無い経営陣やリーダー層がいる場合、資料や動画を渡せるようにしておくとよいでしょう。
企業の求める人材像を明確に設定。
選考基準を統一し、ポジションごとに適切なコンピテンシー要素も洗い出す
マニュアルはただ配るだけでなく、その目的と使用方法をしっかりと説明する。
可能であれば、マニュアルの説明会や動画などを作成し、理解を促す
トレーニングに配布した面接官マニュアルを利用するのも効果的
面接官からもフィードバックを受け、定期的なマニュアルの更新を行い、質の良いマニュアルになるよう改善する。
面接官トレーニングを実施する前に、まずは現状の把握が不可欠です。具体的には、現行の面接プロセスにおける課題や、面接官がどのような方法で面接を行っているか、候補者からのフィードバックを可視化します。可能であれば、内定辞退者に対してアンケートを実施し、辞退理由を把握しましょう。
面接官のスキルセットも評価していきます。どのように候補者とコミュニケーションをとっているのか、フィードバックが適切か観察しましょう。また、面接官からも意見や悩みを聞き取り、どのような課題に直面しているのか、どのようなサポートを必要としているのかを知ることは大切です。
これらの情報を基に、トレーニングプログラムが実際のニーズに合致しているか確認。現場のニーズと乖離しているトレーニングは、効果がないばかりではなく、関係者の時間も奪ってしまうので要注意です。
面接官トレーニングには、ロールプレイやフィードバックを活用した実践的な研修などさまざまですが、自社で対応が難しいようなら、外部の専門機関が提供する研修を採用することも一つの選択肢です。
面接官トレーニングを一回きりの実施で終わりにするのではなく、社会や求職者のニーズの変化にあわせて、継続的且つ内容のブラッシュアップも行いましょう。
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