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総合人材サービスのマンパワーグループ
人材派遣
掲載日2022年3月 8日
最終更新日2022年6月24日
目次
労働者派遣法は派遣労働者の保護を目的として1986年に施行され、以後現在に至るまで情勢に合わせて複数回の改正が行われています。派遣先の企業が注意しておきたい労働者派遣法の項目に 、「派遣先の雇用努力義務」と「労働契約申し込みみなし制度」があります。本記事では各制度の意味や両者の違いについて解説します。
派遣先の派遣労働者に対する「雇用努力義務」とは、
上記1から3までの条件がそろった場合、派遣先企業はAを直接雇用する努力をしなければならないというものです。
この制度は、派遣労働者が正社員に比べて身分や労働契約の期間、賃金、福利厚生面などの処遇が不安定な場合が多いという背景から、派遣先の正社員になる機会を得ることでその身分や処遇の安定を図ることを目的に定められました。
「雇用努力義務」はその名前にもあるように、法律における「努力義務規定」にあたります。
「努力義務規定」について、法律の条文では「○○するように努めなければならない」と書かれています。この文をかみ砕くと「目標の数値達成が100%として、100%に近づくように努力してください」といった意味になります。そのため、100%に達しなくても罰則はなく、法的な拘束力もありません。ただし、努力義務規定は将来的に「義務規定」に変更される場合があるため注意が必要です。
「義務規定」の場合、条文では「○○しなくてはならない」「○○してはならない」などと書かれています。つまり、「100%達成」が前提です。そのため、達成しないと法律違反となり、罰則を受ける恐れがあります。
ちなみに、法律における「配慮義務規定」は、条文では「○○に配慮しなければならない」と書かれています。こちらは「100%達成」は義務ではないですが、配慮内容を具体的に実行する必要がある分、努力義務規定より義務規定に近い強制力があるといえます。
「雇用努力義務」と同様の目的で、派遣先は次の条件にあてはまる派遣労働者に対して従業員の募集情報を提供する義務があります。
同一組織単位で継続して3年の就業見込みがある有期雇用の派遣労働者に対して、派遣元から直接雇用の依頼があった場合に限り、従業員の募集情報を周知する義務があります。
募集情報は正社員だけではなく、契約社員、パートタイム労働者などの有期雇用募集の情報も含まれます。
同一の事業所で1年以上就労している派遣労働者がいる場合は、当該事業所において正社員募集を行う際、その派遣労働者に対して正社員の募集情報を周知する義務があります。
この場合は、有期雇用だけではなく、無期雇用の派遣労働者も対象になります。
「労働契約申込みみなし制度」とは、派遣先企業が次の1から4までの項目を違法だと知りながら、派遣労働者の受け入れを行った場合に適用する制度です。
労働契約申込みみなし制度が適用になった場合、違法状態が発生した時点より、派遣先が派遣労働者に対して、直接雇用の申込みをしたものとみなされ、みなされた日から1年以内に派遣労働者が申込みを承諾すれば、派遣先は必ず派遣元の労働条件と同じ条件で雇用する義務が発生します。
これは「派遣労働者の職務スキルなどが自社の条件に合っていないから雇用しない」とか「雇用はするが労働条件を下げたい」という選択肢がないことを意味し、派遣先にとって大きなリスクになります。ただし、この制度はあくまでも「申込みみなし」のため、派遣労働者が申込みを承諾しなかった場合は、雇用義務は発生しません。
派遣労働者がみなし申込みを承諾したのにもかかわらず、派遣先が直接雇用の労働契約を結ばない場合はペナルティが発生する恐れがあります。派遣労働者が行政機関(都道府県労働局や労働基準監督署など)に相談し、行政機関が必要と判断した場合、派遣先に対して助言、指導、勧告を行い、それでも従わない場合はその旨を公表する可能性もあります。
派遣先の派遣労働者に対する「雇用努力義務」は、期間が終了した派遣労働者の後任者を直接雇用する必要がある場合にのみ発生します。一方、「労働契約申込みみなし制度」は、派遣先の事情に関係なく当然に雇用しなくてはならないものであり、余剰人員やミスマッチが発生するケースがあることに留意が必要です。
労働者派遣法は施行時から改正が繰り返されているため、内容が複雑で理解しにくい部分があります。本記事で解説した「派遣労働者に対する派遣先の雇用努力義務」「労働契約申込みみなし制度」もその一例です。派遣労働者を受け入れる企業は、制度の内容をよく理解することにより、派遣労働者を即戦力として活用しつつ、直接雇用により優秀な人材の確保につなげることも可能になるでしょう。
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