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派遣の抵触日とは?基礎知識と対応すべきことをわかりやすく解説

掲載日2022年11月15日

最終更新日2023年12月 6日

派遣の抵触日とは?基礎知識と対応すべきことをわかりやすく解説

目次

労働者派遣法 派遣先の義務とは?

労働者派遣法は、過去に何度も改正が行われています。

派遣社員を受け入れることができる期間にも変更がありました。

抵触日の考え方を含め、派遣の基礎知識をまとめた資料をご用意しています。ぜひご覧ください。

「はじめての派遣スタッフ受け入れガイド <初級編>」はこちら

派遣先企業が人材派遣サービスを利用する場合、自社で直接雇用している従業員と違い、派遣社員の受け入れ可能期間に制限があります。

このコラムでは、抵触日の意味や派遣先企業が抵触日を管理する上での対応方法やその注意点などを解説します。

派遣の抵触日とは?

2015年の労働者派遣法改正により「派遣の受け入れ可能な期間は原則で3年まで」になりました。その制限を受ける日(受け入れ可能期間の最終日の翌日=派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日)のことを「抵触日」といいます。

具体的な日付で例えると、2023年4月1日に最初の契約として派遣社員を受け入れた場合、派遣契約期間制限日は2026年3月31日、抵触日は2026年4月1日です。

派遣に抵触日が設けられている理由

派遣先企業が人材派遣サービスを利用する目的は、ある一定期間のみ業務量が増える、退職した社員の後任者が就業するまでの代替要員が必要などの「臨時的・一時的な事由」などです。

しかし、派遣社員に本来なら従業員が担うべき業務を受け入れ期間の制限なく就業させることを可能にした場合、派遣先企業は派遣社員を従業員に比べて「人件費が安く、雇用調整がしやすい労働力」と考え、従業員を雇用せずに派遣社員に置き換えてしまうかもしれません。

この状況は従業員から見ると雇用の安定が脅かされることになり、派遣社員側にしても従業員への登用などのキャリアアップやスキルアップの機会が阻害されてしまいます。

そこで弱い立場になりやすい従業員や派遣社員を保護するために、法律により派遣の期間制限を設けているのです。

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派遣の抵触日には2種類の期間制限がある

派遣の抵触日には、「個人単位による抵触日」と「事業所単位による抵触日」の2つがあり、両方を理解しておく必要があります。ここではそれぞれの内容について説明します。

個人単位の期間制限

「個人単位による期間制限」とは、「派遣社員個人が事業所の同じ組織単位での就業が可能な期間は原則3年間であること」をいいます。

例えば2023年4月1日からある企業(派遣先)の総務課で受け入れた派遣社員Aさんの場合、2026年4月1日が抵触日になり、この日以降、派遣社員Aさんは総務課で勤務することは原則できません。 

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この場合の「組織単位」の定義は「○○部」「○○課」「○○グループ」などの組織であり、なおかつ部長や課長などの組織長が、組織内の労務管理上における指揮監督権を持っていることなどが判断基準の目安になりますが、実態に即して判断されます。

別の部署や課が異なれば、新たに3年間受け入れることが可能ではありますが、派遣先企業が派遣社員を選ぶ「特定行為」は禁止されています。この点には注意しましょう。

事業所単位の期間制限

「事業所単位による派遣制限」とは、「原則として同一の事業所が3年を超えて派遣社員を受け入れることができないこと」をいいます。

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この「事業所」の定義は、雇用保険の適用事業所の定義と同じ考え方で、以下があてはまるものです。

(1)工場や事務所、店舗などの場所が他の事業所から独立していること

(2)経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること

(3)工場、事務所、店舗などは、一定期間継続する施設であること

上記(1)から(3)の観点から実態に即して判断されます。

先に到来する「抵触日」が優先される

ここで気をつけたいのが「個人単位による抵触日」と「事業所単位による抵触日」は、並行して管理が必要であり、先に到来する抵触日が優先されることです。

例えば、2023年4月1日に総務課で派遣社員Aさんを受け入れた2年後の2025年4月1日に、再び派遣会社からAさんの後任として派遣社員Bさんを受け入れた場合、Bさんの抵触日はBさん受け入れから3年経過後の2028年4月1日ではなく、先に到来する事業所単位による抵触日の2026年4月1日になります。

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派遣期間制限の適用対象外の条件とは

以下のそれぞれに該当する「人」と「業務」は、労働者派遣法上の派遣期間制限の適用対象外となっています。

「人」に関する対象外

  • 派遣元(派遣会社)で無期雇用されている派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者

「業務」に関する対象外

  • 有期プロジェクト業務(事業の開始・転換・拡大・縮小又は廃止のための業務であり、一定期間内に完了するもの)
  • 日数限定業務(1ヶ月間の勤務日数が通常の労働者に比較して半数以下、かつ月10日以下となるもの)
  • 産前産後・育児・介護休業を取得する労働者の業務

派遣制限のクーリング期間とは?

個人単位、事業所単位ともに抵触日から派遣労働者を受け入れていない期間が3カ月超(3カ月と1日)を過ぎると、抵触日がリセットされ再び最大3年間まで派遣社員を受け入れることが可能になります。これをクーリング期間といいます。

個人単位の期間制限の場合、当該派遣労働者が希望しないにもかかわらず、派遣元がクーリング期間経過後に再度同一の組織単位の業務に派遣することは、派遣労働者のキャリアアップの観点から望ましくないとされています。

なお、抵触日の期間制限の対象外である派遣社員の場合、抵触日が発生しないため期間制限のクーリング期間の扱いはありません。

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派遣先企業が行うべき対応とは

派遣の抵触日に関して、派遣先企業に対応の必要がある内容について説明します。

派遣先企業の対応
通知する内容
  1. 事業所名と所在地(就業先の)
  2. 受け入れ開始日
  3. 抵触日
通知の方法 口頭以外
  • メール
  • 書面の送付
  • FAX
通知のタイミング 派遣契約を結ぶ前までに

派遣会社へ抵触日の通知を行う

派遣先企業は、派遣会社に事業所単位の抵触日を通知する必要があります。派遣会社への通知は、文書・メール等で行われなければなりません。口頭では労働者派遣法に定める通知をしたとはみなされませんので注意が必要です。

通知は、事業所単位の抵触日のみを通知することとなりますが、一般的には次の内容を記載します。


① 派遣先事業所の所在地と事業所名

② 派遣受け入れ開始日(開始予定日)

③ 抵触日

通知書は法令に定める様式はありませんが、労働局のウェブサイトに掲載されている様式例を活用して、通知書を作成することもできます。

参考:労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例(参考例5)│厚生労働省 東京労働局 外部リンク

なお後述する事業所単位の派遣可能期間を延長した場合は、速やかに延長後の抵触日を通知する必要があります。(派遣法40条の2第7項)

抵触日通知のタイミングは?

労働者派遣法の定めにより、派遣先企業と派遣会社が派遣契約を結ぶ際、個別契約の都度、派遣先企業が派遣会社に対して、あらかじめ事業所単位の派遣抵触日を通知する義務があり、その通知がないと派遣契約を結ぶことができません。
したがって、抵触日を通知するタイミングは派遣契約を結ぶ前までになります。

また、期間制限を受けない対象者が就業した場合でも、後任者も期間制限を受けない者が選ばれるかどうかは不確定であるため、事業所単位の派遣抵触日通知は必要となります。

さらに、期間制限を受けない業務(有期プロジェクト、日数限定、産前産後・育児・介護休業を取得する労働者の業務)についても同様に、期間変更などの可能性を鑑み事業所単位の派遣抵触日通知は必要です。

なお、派遣契約の対象者を無期派遣労働者や年齢が60歳以上の期間制限を受けない者にあらかじめ限定し、その旨を個別契約書に明記する場合は、必ずしも事業所単位の派遣抵触日を通知する必要はありません。

ただし、対象者限定を明記することにより、何らかの事由で後任者のアサインが必要になった場合、期間制限を受けない対象者以外の派遣社員を後任者として受け入れできないという制限があることに注意する必要があります。

抵触日以降も受け入れを希望する場合は延長手続きを行う

派遣先の同一の事業所において、継続して派遣を受け入れられる期間(派遣可能期間)は、原則3年が限度です。派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合、所定の手続きにより最大3年間の期間延長が可能になります。

事業所単位の期間制限を延長する場合

事業所単位での派遣期間制限を延長する場合には、抵触日の1か月前までに派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を聴く必要があります。当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する従業員に意見を聴きます。

意見聴取にあたり、下記の対応が必要となります。

〇派遣受入可能期間を延長する事業所等、延長しようとする期間を書面により通知

〇意見を述べるための参考となる資料の提供をする

〇意見を聞いた後、次の事項を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保管し、また事業所の労働者に周知しなければならない

・過半数労働組合・労働者代表の氏名

・過半数労働組合等に書面通知した日および事項

・意見を聴いた日及び意見の内容

・意見を聴いて延長する期間を変更した場合はその変更した期間

延長手続きが完了したら、派遣会社に対して速やかに延長後の抵触日を通知します。

延長した抵触日の通知書を作成する際は、前述の①~③に加えて「延長後の事業所単位の抵触日通知書」であることと、「期間延長は労働組合等の意見聴取済み」である旨を記載します。

参考:労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例(参考例18)│厚生労働省 東京労働局 外部リンク

個人の派遣期間制限以降も同じ派遣社員の継続就業を希望する場合

個人単位の派遣期間制限の抵触日以降も、同じ派遣社員の継続就業を希望する場合、派遣先企業が派遣社員に対して直接雇用を申し込み、派遣社員本人が同意すれば、派遣先の従業員として採用し働いてもらうことが可能です。

直接雇用する場合、必ず正社員として雇う義務はなく、契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態でも可能です。労働条件については雇用契約を結ぶ前に当該派遣社員に説明をし、了承してもらいます。

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抵触日について派遣先企業が気を付けたいポイント

派遣の抵触日に関して、派遣先企業が気を付けるポイントは次になります。

抵触日以降の継続について想定しておく

抵触日以降も派遣社員を継続して受け入れたい場合の手続きは「個人単位」「事業所単位」で異なります。

抵触日直前に慌てることがないよう、あらかじめ必要な手続きについて対応可能かを想定しておくとよいでしょう。

<個人単位の抵触日以降、派遣社員を継続して受け入れる場合>

〇 派遣社員を直接雇用する
〇 別の部署で受け入れる

<事業所単位の抵触日以降、派遣社員を継続して受け入れる場合>

〇 派遣期間制限の延長手続きを行う

ただし同じ業務内容にもかかわらず、抵触日を延長する目的のみで派遣社員を別の部署に異動し働かせた場合は、労働者派遣法違反の可能性があることを留意しましょう。

抵触日の管理を徹底する

派遣先企業は、派遣会社に事業所単位の抵触日を通知する義務がありますが、企業内の複数事業所(本店と支店など)でそれぞれ派遣社員を受け入れている場合、事業所ごとに抵触日が違う場合があります

派遣社員の受け入れに関する事務手続きは、派遣先企業の特定部署で(例えば本社の総務など)一括して行うことが可能ですが、抵触日の管理が煩雑化する場合は、システム化することも視野に入れましょう。

特に派遣期間制限を延長するときは、派遣社員の受け入れ期間満了後の1か月前までに所定の手続きを行う必要があるため、抵触日を把握することは重要です。

また、抵触日を迎えるにあたり、派遣社員の後任探しや直接雇用を検討することを考えた場合、派遣社員がいつまで働けるのかを知っておく必要はあるでしょう。

抵触日は、派遣先・派遣元双方で適切に管理し、期間制限違反とならないよう運用する必要があります。個人単位の抵触日については、派遣会社と連携しながら、派遣先管理台帳に項目を入れるなど管理方法を検討してみてください。

なお、派遣先管理台帳の管理項目には「派遣受入期間の制限を受けない業務を行う労働者派遣に関する事項」というものがあります。先に述べた、期間制限を受けない業務に該当する場合には、派遣契約のみならず派遣先管理台帳にも記載する必要があります。

派遣受入期間を過ぎての就業には、派遣先へのペナルティも

派遣先企業が派遣受入期間を過ぎても、派遣社員を就業させていた場合、労働契約申込みみなし制度の対象になります。

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が派遣法違反であることを知りながら派遣労働者を受け入れた場合、派遣労働者に対して労働契約を申込んだものとみなされる制度です。

派遣社員本人から派遣先企業に対して直接雇用希望の申出があれば、雇用する予定がなかったとしても、その申し込みを受けたものとみなされます。

関連記事
詳しくは、「労働契約申込みみなし制度とは対策方法や事例を紹介」で解説していますので、ご覧ください。

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派遣の抵触日におけるケーススタディ

派遣の抵触日については、「個人単位の期間制限」「事業所単位の期間制限」の欄で基本的な事例をもとに説明しましたが、複数の派遣会社と契約した場合、派遣社員が交代した場合の抵触日の考え方について、それぞれ解説します。

ケース1:別の派遣会社と取引を開始した場合、抵触日はどうなるか

派遣先企業であるX社は、初めて派遣サービスを利用するため、2023年4月1日に派遣会社Yと派遣契約を結び、派遣社員Aさんを受け入れました。そして2024年4月1日に派遣会社Zと派遣契約を結び、派遣社員Bさんを受け入れました。Aさんは、2025年3月31日で退職。この場合、Z社の派遣抵触日はいつでしょうか?

事業所単位の抵触日は、最初の派遣社員を受け入れた日から3年経過後の翌日です。複数の派遣会社から派遣社員を受け入れている場合でも、抵触日は変わりません。したがってX社の事業所単位抵触日は、派遣社員Aさんを受け入れた日から数えるので2026年4月1日になります。

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このケースだと、X社と派遣会社Yとは最大3年間まで派遣契約を結べますが、派遣会社Zとは最大2年間までしか派遣契約した結べないことに留意する必要があります。ただし、所定の手続きにて意見聴取を行えば、延長が可能です。

ケース2:派遣社員が後任の派遣社員に交代した場合の抵触日は?

派遣先企業であるX社は、2023年4月1日から派遣会社Yと派遣契約を結び、派遣社員Aさんを受け入れましたが、2025年3月末でAさんがY社を退職したので、後任として2025年4月1日から派遣社員Bさんを受け入れました。X社はBさんの働きぶりを気に入り、継続して働いてほしいと考えています。

このケースでは、次の点を確認します。

・X社の事業所単位の抵触日・・2026年4月1日
・Bさんの個人単位の抵触日・・2028年4月1日

X社は2026年4月1日以後、原則として派遣社員のBさんを受け入れることができません。ただし、派遣社員を受け入れられるよう1ヶ月前までに意見聴取を行えば、事業所単位の抵触日が延長され、最大3年である2028年4月1日まで受入可能となります。

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もし抵触日の延長手続きを実施しなかった場合、その事業所ではそれ以降、派遣労働者を受け入れることは出来ないため、以下のような対応となります。

 Bさんに直接雇用を打診する
② 直接雇用が纏まらない場合、派遣社員の受け入れができないので2028年3月31日で契約終了。

クーリング期間が経過すれば問題ないのでは、と考えるかもしれませんが、過半数労働組合等への意見聴取を回避する目的で、クーリング期間を設けて派遣の受入れを再開するような行為は、法の趣旨に反するとされています

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まとめ

派遣法はこれまでに多くの改正が行われており、2015年の改正で派遣期間のルールの見直しが行われました。そこで、派遣期間が最大3年となり、事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日の2つに整理された経緯があります。

例外もあるため複雑に感じるかもしれませんが、派遣サービスは、派遣法に則した正しい利用が求められます。派遣会社は派遣法に精通したプロですので、連携しながら正しいルールの運用に努めていきましょう。

関連記事
派遣法の改正の流れについては「【早見表】労働者派遣法改正の歴史|2023年の最新情報」で解説しています。

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著者プロフィール

マンパワーグループ株式会社

マンパワーグループ株式会社

世界75カ国・地域に2,200のオフィスを持ち、ワールドワイドに展開している人材サービスのグローバルカンパニー、ManpowerGroupの100%出資の日本法人。 リクルーティング、評価、研修、人材育成、キャリアマネジメント、アウトソーシング、人材コンサルティングなど、人材に関するあらゆるソリューションを世界的なネットワークで展開する総合人材サービス会社。

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