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労働契約申込みみなし制度とは 対策方法や事例を紹介

掲載日2022年4月12日

最終更新日2022年6月22日

目次

    不透明な経済情勢が続く中、派遣労働者をとりまく環境のさまざまな問題点が指摘されています。その中でも禁止業務への派遣や二重派遣など、違法派遣に関する労使トラブルに対応するため、2015年より「労働契約申込みみなし制度」による派遣労働者の雇用安定措置が実施されています。本記事では、この労働契約申込みみなし制度の概要や対策方法について解説します。

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    労働契約申込みみなし制度とは

    労働契約申込みみなし制度とは、派遣先企業が派遣法などに違反することであることを知りながら派遣労働者を受け入れた場合、その派遣先企業は、派遣労働者に対して労働契約を申込んだものとみなされる制度のことです。ただし、派遣先企業が違法派遣であることを認知しておらず、過失が認められない場合は、みなし制度は適用されません。

    なお、申し込んだとみなされる労働契約の内容は、派遣元企業と派遣労働者が交わしている労働条件と同じ内容になります。つまり、派遣元企業(派遣会社)との契約の内容が正規雇用や無期雇用ではなく、更新型の有期雇用契約であった場合は、派遣先企業と派遣労働者の間に成立する労働契約も「有期雇用」扱いになります。

    前述の派遣先企業から派遣労働者に向けて行われたとみなされた労働契約の申込みに対して、派遣労働者が1年以内に了承の意思表示をした場合は、実際に派遣先企業と派遣労働者の間には直接の労働契約が成立します。
    この「1年」については、「派遣先企業が違法派遣を故意に受け入れた時点から1年以内」という数え方になります。なお、この1年の間に申込んだとみなされた労働契約を撤回することはできません。

    一方、派遣労働者が労働契約の承諾をせず雇用を断った場合は、労働契約は成立しません。派遣労働者が不承諾をしている時点で労働契約に強制力はない点に注意しましょう。この場合は、労働契約が成立しなければ派遣労働者に働いてもらうことはできませんので、違法派遣の状況を改善する必要があります。

    労働契約申込みみなし制度の概要
    出典:労働契約申込みみなし制度の概要|厚生労働省(PDF) を元に一部修正し著者作成

    労働契約申込みみなし制度の対象となる4つの「違法派遣」

    労働契約申込みみなし制度が適用される4つの「違法派遣」には、主に以下の内容があります。

    1. 派遣禁止業務への派遣

    派遣労働者へ行わせることが禁止されている派遣禁止業務(適用除外業務)に従事させるケースを「派遣禁止業務への派遣」と言います。もともとは、派遣労働者に従事させることができる業務は専門性の高い業務に限定されていましたが、法改正により従事可能な業務種が増加し、最終的には現在のとおり、適用禁止業務を限定する内容へ移り変わりました。

    派遣禁止業務には、例として次の業務が挙げられます。

    ・港湾運送業務
    港湾における貨物の運送、荷卸し、清掃等の業務です。以前より繁忙期と閑散期の差が激しい業務と言われていて、低賃金問題が謳われていた業種となるため、派遣労働が禁止されています。

    ・建設業務
    工事現場での建材加工、配管、機器設置、撤去・解体業などが該当しますが、施工管理業務やCADオペレーターなどの業務は該当しません。建設工事業務は複数の請負先が同時に関わるケースが多く、指揮命令系統を統一する観点から、外部の派遣労働者の受け入れを禁止しています。

    ・警備業務
    通常の警備業務に加え、店舗での行列管理、不審者への声かけ、車両誘導業務なども警備業務に含まれる場合があります。警備業務はもともと法律により請負で業務を実施させることが定められているため、派遣労働者の受け入れは認められていません。

    ・医療関連業務
    医療にまつわる業務については、専門性の高さから派遣労働が禁止されていますが、紹介予定派遣や育児・介護休業者の代替要因、医療機関外(デイサービスなど)での業務、医療従事者が著しく不足する地域での派遣業務については例外として認められています。

    2. 無許可事業主からの派遣受け入れ

    労働者派遣を実施する企業は、必ず国の許可を取らなければなりません。許可の単位は事業主ごとになり、新たに派遣業を行う事業所を設置する場合は届け出が必要となります。
    この許可を取っていない、派遣業を行うことが許されていないいわゆる「無許可事業主」から派遣労働者を受け入れた場合、違法派遣と扱われることになります。

    なお、事業主が労働者派遣の許可を取っているか否かは、厚生労働省運営の「人材サービス総合サイト 」で確認できますので、違法派遣を防ぐためにも活用するとよいでしょう。

    3. いわゆる偽装請負等

    請負とは、発注者の指揮命令を受けることなく、仕事の完成を目的とした契約のことで、委託契約とも呼ばれます。
    偽装請負とは、発注者と受託者が「請負契約」を交わしておきながら、その実態は発注者による業務の指示を受ける「労働者派遣」と扱われるような仕事をさせる形態を言います。これは、労働者派遣法や労働基準法などの派遣にまつわる諸法令による規制を免れるために行われる行為ですが、この偽装請負などが発覚した際には、労働契約申込みみなし制度が適用されます。

    4. 派遣受入可能期間制限違反

    派遣労働者の固定化を防ぐため、派遣労働者を受け入れることが可能となる期間は、事業所単位・個人単位でそれぞれ定められています。この受け入れ可能期間を超過して派遣労働者を働かせた場合は、労働契約申込みみなし制度の対象となります。

    具体的な受け入れ可能期間は以下のとおりです。

    ・事業所単位
    同一の事業所での派遣可能期間は原則3年です。派遣先労働者の代表者より意見を聴収した上で、3年を限度とした期間延長が可能となります。

    ・個人単位
    同じ派遣労働者を同一の組織単位(〇〇課など)で派遣できる期間は原則3年です。派遣先労働者の代表者より意見聴収した場合でも、同一組織単位での派遣可能期間は延長できません。

    ただし、上記は派遣元企業と派遣労働者が有期雇用契約を交わしている場合です。期間の定めのない無期雇用契約を交わしている場合については、例外として限度期間(3年間)の対象外として扱われ、継続して同一の組織単位へ派遣を行うことができます。

    労働契約申し込みみなし制度の適用による派遣先企業への影響

    労働契約申込みみなし制度が適用された場合、派遣先企業と派遣労働者には労働契約が成立することになるため、ほかの社員を雇う場合と同じく、直接雇用する義務が発生します。
    直接雇用になると派遣元企業が負担していた派遣労働者の賃金や保険料などを、労働契約申込みみなし制度の適用後は派遣先企業が負担しなければなりません。

    派遣先企業は、通常の雇用契約通りの手順で労働契約を交わす手間や、人件費が増額するといった影響があることを念頭に置き、適用の対象とならないよう配慮する必要があります。

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    労働契約の申込みみなし制度が認められた場合の対応

    労働契約申込みみなし制度が適用された際の派遣先企業側に向けた影響や懸念点について述べてきましたが、ここでは派遣元企業側と派遣労働者側が実施する対応内容について解説します。

    派遣元企業側の対応

    労働契約申込みみなし制度が適用された場合、これまで派遣元企業で雇用されていた派遣労働者は、派遣先の所属となります。
    派遣労働者が派遣先企業と交わす雇用条件は、原則としてこれまで派遣元企業と交わしていた内容が引き継がれることになるため、派遣先企業へ雇用内容を詳細にわたり伝える必要があります。

    派遣労働者側の対応

    違法派遣であることを知りながら締結された派遣契約のもとで働いていた派遣労働者は、労働契約申込みみなし制度が適用された時点で、派遣先企業と直接雇用を行ったものとみなされます。

    ただし、派遣労働者が複数の派遣先企業で働いていて、複数の派遣先企業で違法派遣が行われていた場合については、そのすべての派遣先企業に対して労働契約申込みみなし制度が適用され、労働契約の申込みがあったとみなされることになります。この場合は、派遣労働者は自身が希望する派遣先企業を選択し、労働契約を交わすことが可能です。

    労働契約申し込みみなし制度にまつわる事例

    労働契約申込みみなし制度は、請負契約の受託者が偽装請負として発注者に直接雇用を申し立てる判例が多くみられます。

    労働契約申込みみなし制度が成立した2015年当初は、労働力不足という問題もあり、それほど申し立ての件数は多くありませんでした。しかし昨今の新型コロナウイルスも影響して、いわゆる「派遣切り」のケースが増加し、派遣労働者による申し立てが増加しています。

    この場合、裁判では請負契約を交わしていた受託者に対して、発注者がどの程度の業務指示を出していたのかが焦点となります。「日常的・継続的に偽装請負を続けている」という判断が下された場合は、労働契約申込みみなし制度が適用され、直接雇用の申し立てが認められるケースが報告されています。

    たとえば、日本貨物検数協会事件(名古屋地判令2.7.20)の場合は、請負契約を交わしていた複数の受託者が、発注企業に対して直接雇用を求め、労働契約申込みみなし制度が適用されると判断されました。

    一方、東リ事件(神戸地判令2.3.13)の場合は、偽装請負の可能性があるとして発注企業に対して複数の労働者が直接雇用を求めたところ、受託者らに対する業務遂行指示や労働時間管理、服務規律などから総合的に判断され、偽装請負の事実があるとは認められず、労働契約申込みみなし制度が適用されなかったという判例が報告されています。

    出典:
    『労働判例』2020年11月15日,No.1228,p.33│産労総合研究所
    『労働判例』2020年9月1日,No.1223,p.27│産労総合研究所

    労働契約申込みみなし制度への対策

    個人事業主としてフリーで働く人や副業を行う人が増加する中、業務委託、請負契約に対する注目度が増している影響もあり、今後は労働契約申込みみなし制度が適用されるケースが増加することが予想されています。ここでは、企業側が取るべき、労働契約申込みみなし制度に対する適切な対策の内容について解説します。

    人材確保方法の再検討

    人材派遣には、求めるスキルに応じた人材を、コストを抑えて集められるというメリットがあります。ただし、派遣受入可能期間には限りがあり、たとえ企業に欠かせない優秀な存在であったとしても、有期雇用者として長期間にわたり勤務を続けることは難しい状況です。
    働き方改革関連法で打ち出している「同一労働同一賃金」の影響により、雇用形態ごとに生じている格差が是正される流れが加速化しています。こうした流れからも、企業は今後の人材の確保の方針を再検討していくことが必要でしょう。

    参考:働き方改革 特設サイト 同一労働同一賃金 | 厚生労働省

    契約内容と就労実態の整合化

    前述の事例で述べたように、労働契約申込みみなし制度が適用されるか否かは、職場での実態をもとに判断がなされます。

    したがって、現場による指示が必須となる業務は、偽装請負のリスクを避けるためにも請負契約や業務委託契約で行うのではなく、直接雇用者や派遣元が指揮命令を行う派遣労働者へ割り振るなどの対応が求められています。

    派遣労働者にまつわる諸法令を熟知する

    人材派遣には、労働者派遣法や労働基準法、職業安定法など複数の法律により、ルールが詳細に定められています。実際に派遣労働者を受け入れる際には、どこまでを派遣先企業が対応するのかを明確化し、さまざまな事態に対応できるように派遣元企業と綿密なコミュニケーションを取る必要があります。

    また、派遣労働者をさらに別の企業で働かせるという「二重派遣」をはじめとした違法派遣にならないよう気をつける必要があります。そのため、派遣労働者を受け入れる際の注意点について、事前に理解をしておかなければなりません。厚生労働省では、派遣先企業向けに注意点やポイントをまとめたリーフレットなどを公表していますので、活用してみるのも有効です。

    出典:社員を受け入れるときの主なポイント│厚生労働省(PDF)

    まとめ

    労働契約申込みみなし制度が適用された場合、企業が直接雇用者に求める恒常的な契約を前提とした諸条件(スキルや経験など)が合致しない人とも労働契約を交わさなければならなくなるケースがあります。違法派遣や偽装請負は、このような労働者との契約が増加する可能性が高くなることを意味していて、人材育成面やコスト面の問題が顕在化し、企業側の舵取りに大きな影響を及ぼします。まずは企業側が制度の内容を正しく理解し、違法派遣や偽装請負に関与せず、業務内容や実態に即した人事・採用方針を検討する必要があるでしょう。

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    著者プロフィール

    加藤知美(社会保険労務士)

    愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

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