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欲しい人材がなかなか採れない企業と、優秀な人材を意図したとおりに採用できている企業には、どのような違いがあるのでしょうか。自社のニーズに合った人材を採用するためには、「採用フローの設計」が大切なポイントです。今回は、人材採用を成功させるために欠かせない、採用フローの概要と設計方法について解説します。
採用フローとは、下記のような「企業が人材を募集してから採用するまで」の一連の流れのことを言います。
0. 前準備
1. 募集(エントリー)
2. 選考
3. 採用
4. 雇用
当たり前のことに思えますが、この段取りがきちんとできていないと、結果的に採用がうまくいかなかった、候補者にも関係者にも不満が残った、といった事態になってしまい、人事の力量を問われかねません。
選考の流れを「可視化」して、関係者(人材紹介会社などを含む)や候補者に選考の流れやスケジュールなどを明瞭に回答できるように準備しておく必要があります。また、選考が予定通りに進捗しているかどうかの指標にもなるため、採用予定人数やスケジュールを明確に作りこむ必要があります。
採用フローを設計する主な目的は以下の2点です。
フローを作成することで、現時点から採用までのリードタイムが見えてきます。これをもとにスケジュールを立て、関係者にも共有して認識を合わせ、採用がスムーズに進むよう調整します。
フローをもとに、「必要な母集団を形成できているか」、「選考の歩留まり(面接の通過率)は想定通りか」など、採用活動の途中段階において「順調に進んでいるかどうか」を明らかにできます。早期の段階で採用が予定通りに進んでいないことが判明した場合は、採用期間中であっても早急に立て直しを図ることが可能になります。
このように、採用フローにより可視化された情報を活用することで、企業は採用活動の精度を高めることができます。
各工程のフロー設計について解説します。
まずは採用担当者を決め、採用計画を立てましょう。
✔ 入社日や人数を決定
✔ 求人の要件を決定
採用計画を立てた後は、母集団(採用候補者の集団)の形成方法や、それぞれの方法でどれくらいの効果を見込むかについて考えます。
✔ 母集団をどのように形成するか
母集団の形成方法について考えます。求人サイトの掲載や人材紹介サービスの活用など、母集団を形成する方法はさまざまです。それぞれの特徴を理解して活用することが重要です。
✔ 各採用チャネルでどれくらいの規模の候補者を見込むか、候補者が集まるまでの期間も考慮
選考通過人数や歩留まりだけでなく、チャネルごとの求職者の特性やスキル、志向などをチェックして、採用手法やチャネルを評価することも重要です。歩留まりとは、選考通過の案内に対して、「承諾をしてくれた求職者の割合」を指します。当然ですが、歩留まりが低いと採用目標の達成が非常に困難になります。歩留まりが目標値を下回っている場合は、その原因を多角的に分析します(選考のスピード感、求人情報の内容、面接官の人選、採用手法など)。
✔ 募集の情報解禁日はいつにするか
長期的に募集をかけていると、「いつも募集をかけているから、人材が定着しない企業なのでは?」、「就労環境が良くないのでは?」といった誤解を招いてしまう可能性があります。採用したいタイミングから逆算して、情報解禁日を設定しましょう。
書類選考から面接、試験のように選考にまつわる一連の流れをただ決めるのではなく、「だれが担当するのか」「各選考の合否連絡までの期間をどれくらいとるか」なども決めます。
✔ 書類審査で提出してもらうものを決定し、審査に当たる担当者も決めておく
✔ 面接の回数や誰が面接を担当するか(出席人数も)、面接場所などを決定しておく(オンライン含め)
✔ アセスメントやスキルチェックが必要か、どのタイミングで受検させるのか
内定の決定や合否の通知ももちろん重要ですが、せっかく内定を出した人材が辞退してしまわないように内定者フォローについても考慮することが重要です。
✔ 内定を決定するのは誰かを把握(複数であることも)
✔ 合否がでるまでのリードタイムも決める
✔ 内定者フォローをどうするか、誰が実施するのかを決定
入社可能日を面談で確認し、入社後についても内定者が不安を抱かないように準備を進めましょう。
✔ 入社日の決定
✔ 迎え入れるための準備(PCや入館証の手配など、システマチックに必要となるものの時間も把握しておく)
✔ 入社後のフォローアップをどのタイミングで誰が行うかを決定
最後に、採用フローを使って「効果的な採用活動」を実現するための3つのコツを紹介します。採用フローは、「ただ設定するだけ」ではあまり意味をなしません。「振り返り」を含めて活用することで効果を発揮します。以下に紹介するコツまでを踏まえて、しっかりとした対策をとることが大切です。
募集職種やポジションによって採用フローを使い分けます。営業、経理、エンジニアなど、募集職種によって必要とするスキルや適性は大きく異なります。また、マネージャー採用なのか、それとも若手採用なのか、といったポジションの違いによっても重視すべきポイントは変化します。
ポイントが違えば、面接の対応者や実施する試験なども変わってきます。面接回数が異なることなどもあるでしょう。それぞれのポジションに合わせた選考過程を検討することが重要です。
同業他社であっても、採用フローやスケジュールは全く違うことがあります。同じ職種の募集であっても、面接回数やリードタイムが異なると、応募から1週間で内定がでることもあれば、1か月くらいかかることもあります。他社と比べて時間を要するフローになっていないか、候補者を待たせすぎて辞退率を上げてしまわないかなど、俯瞰してみることが大切です。
また、面接スケジュールが候補者にとって負担が大きいものになっていないか、なども確認しておきましょう。
採用フローを構築する際は、あらかじめ各工程の歩留まりの目標数値を出しておきましょう。実際の採用活動の結果をきちんと記録し、歩留まり(数値)がわかるような状態にしておきます。リードタイム(例えば、書類審査から合否がでるまで何日かかったかなど)の平均がわかるようにしておくと、採用フローで設計したスケジュールや目標値と比較でき、採用期間中であっても採用活動がうまくいっているかどうかの判断材料になります。また、採用チャネル別(広告媒体や人材紹介会社、ハローワーク、自社HPなど)の数値もだしておくとよいでしょう。
採用の目標を達成するには、採用の途中段階で改善を加えてブラッシュアップしていくのが理想的です。採用活動が終了した後も、この数値を用いて振り返りを行うことで、次の戦略に活かすことができます。
採用フローを作成すると、採用活動の進捗が可視化され、採用の状況や課題を認識できます。もしも採用活動が順調に進んでいなかった場合は、採用フローの振り返りを行うことで、改善のための対策を講じることができます。全体を俯瞰して見られるのは人事担当者ですので、採用フローをしっかり構築し、ハンドリングしながら、可視化・振り返り・改善といったサイクルを適宜回し、採用を成功させていきましょう。