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必要な人材を必要な時期に必要なだけ獲得するためには、採用活動のベースとなる「採用計画」を立てることが重要です。計画性の無い採用活動は、無駄なコストや人材を獲得できないことによるビジネス機会の損失を生んでしまいます。ここでは、採用計画の立て方とポイントについて解説します。
まずは、採用計画の基礎知識と必要性について解説します。
採用計画とは、経営方針や事業計画に基づき、新しい人材の採用や既存社員の異動・配置の計画を立てることです。事業計画と照らし合わせ、「いつ」「どのような人材を」「どの部門に」「何名」などを具体的に決めていきます。
計画を立てる際は、昨今の経済環境の激しい変化や少子高齢化、労働者の価値観の変化などを踏まえて検討する必要もあります。新規採用だけではなく、人員整理やアウトソーシングなどの外部人材の活用も視野に入れ計画を立てます。
人員の配置・採用は、事業計画の達成に大きく関わる重要なポイントです。粗雑な採用計画では、求める人材を確保できない、ミスマッチによる早期離職などの問題につながりやすいため綿密な採用計画が求められます。
綿密な採用計画を立てる理由は、採用活動の質を上げるためです。質の向上は、採用の成功につながります。
求人要件や採用フロー、評価基準などをクリアにしておくことで、関係者間の認識のズレを防ぎます。採用には人事担当者だけではなく、部門責任者や役員など多くの関係者がいます。認識が違ってしまうと、採用の遅れや採用できないといった問題につながりかねません。計画を立て認識を合わせることで、無駄な作業・コストの発生を防ぎ、効率的な採用活動が実現できます。
採用活動が順調かどうかを見るためには、基準となるものが必要です。 少子高齢化による労働人口の減少もさることながら、働き方の多様化や社会の情勢、求職者の志向など市場の変化は激しいものです。実態と計画に乖離がないかをチェックすることで、採用できない状況を回避します。
計画と実態に乖離があった場合、何かしらの課題があります。 求職者動向の変化により採用チャネルの見直しが必要であったり、同業他社と比べて訴求力が足りない、面接官の評価にばらつきがあるなど、活動の問題が表面化されます。
課題をクリアにし改善することで採用活動の品質向上が期待できます。
続いては、採用計画立案のための手順を説明します。
採用計画は、人材の採用や配置を適切に行うことによって事業の成功を後押しする計画です。根本である経営方針や事業計画について正しく把握することが重要となります。
事業計画と照らし合わせながら、必要な採用人数を割り出していきます。
「売上高」「経済学的付加価値」「損益分岐点」「労働分配率」「人件費率」などから適正人件費を算出し、必要な人数を求める財務的なアプローチによる算出方法です
部署や職種ごとに必要となる人員を現場から報告させ、必要な人数を算出する方法です。多くは、以下のように総業務量から割り出します。
例:総労働時間/ひとりあたりの労働時間=必要人数
必要人数―在籍人数=採用すべき人数
マクロ的算定方法に偏重すると予算重視で現場が回らない恐れがあり、ミクロ的算定に偏重すると予算面の妥当性を逸脱し人件費が大きく積みあがっていく可能性があります。マクロ的算定方法とミクロ的算定方法の両者のバランスを取り、現実的なラインを策定していきましょう。
求人要件は重要なポイントです。現場が求めるスキルや能力、経験などは多くでてきますが、優先順位をつけておくことが大切です。昨今の人材不足を考えると、要件を完璧に満たす人材を採用できる確率は高くはありません。
絶対に必要な条件、尚可な条件(妥協できる、入社後に身につけてもらえば問題ないなど)などをすり合わせておきます。募集要項や採用チャネルの選定、評価基準に関わってくるため、しっかりと確認しておきましょう。
言語化しておきたい項目一例
コンピテンシーとは、「優れた業績を残す人の行動特性」を指します。社内で高いパフォーマンスを発揮している社員の特性を可視化し、求人要件に反映させることでミスマッチの防止や活躍できる人材の獲得につなげることができます。コンピテンシー診断が可能な適性検査などを活用してもよいでしょう。認識のズレが起きないよう、現場責任者と一緒にコンピテンシーモデルを確認することが大切です。
設定したコンピテンシーに合致した人材かどうかを見抜く面接方法については、「コンピテンシー面接とは|質問例や評価基準、やり方を解説」で解説しています。
続いては、評価項目について検討します。まずは、コミュニケーションスキル、主体性、協調性などの評価項目を洗い出し、その項目に対して能力・適正・意欲などの要素と重要度で振り分けを行います。それぞれの評価項目に漏れがないように注意してください。
評価項目の洗い出しが完了したら、具体的な選考方法について検討していきます。選考方法は「非対面選考」と「対面選考」に分けられます。
例えば、非対面選考には「エントリーシート」「学力テスト」「適正検査」「論文審査」などがあり、対面選考には「個人面接」「集団面接」「プレゼンテーション」「グループディスカッション」「ディベート」などがあります。選定した評価項目を見極めるために必要な選考方法を決定しましょう。
選考方法が決定した後は、選考方法の順番を組み立てます。長すぎる選考工程は、面接辞退などが起きやすくなるため、最後に全体感を見直します。
併せて、採用に携わる関係者のリソースやスケジュールも確認し、認識合わせを行います。また、評価基準のバラツキをなくすために、評価シートの準備や面接官トレーニングも実施しましょう。
採用に関わる担当者の体制・組織をクリアにします。採用業務は多岐に渡り、細かい連携が多く発生します。連携の滞りは、採用活動の遅れ、候補者からの辞退、企業としての信用低下につながるため、役割等を確認しておきましょう。
採用に関する予算を決定します。人件費そのものもありますし、採用活動にかかる費用もあります。特に母集団形成をどうするかで必要額は変わってきます。経費が発生するタイミングなども確認しておきましょう。
詳しい母集団形成については、「母集団形成とは 方法の種類と実施のポイントを解説」で解説しています。
採用スケジュールは綿密に立てておきたいところですが、あまり細かく決めてしまうと、今度はスケジュールに縛られてしまいます。状況に応じて柔軟に対応できるように、(例えば面接期間などに)幅をもたせたスケジュールを確保しておくとよいでしょう。
スケジュールを立てた後は、シミュレーションを行い、作成した採用スケジュールが現実的かを判断することが重要です。
求人サイトや人材紹介といった数ある採用方法を「コスト」「人材のスペック」「形成できる母集団数」の3軸を用いて比較し、自社の採用ニーズと合う方法を選びましょう。
▽母集団形成の一例
各採用方法のメリットとデメリットについては「母集団形成とは 方法の種類と実施のポイントを解説」をご覧ください。
内定辞退を防ぐため、内定後のフォロー施策も検討しておきます。
例えば、定期的に連絡を取り状況の確認や入社に対する不安・疑問がないかを確認することも有効です。事前に勉強して欲しいこと、覚えて欲しいことは山のようにあると思いますが、教育は入社後に行うことが基本のため、内定者の義務として押し付けないように注意しましょう。
教育体制は整っているか、研修期間を設ける場合、現場で指導する人員は確保されているか、などを検討します。採用計画は入社がゴールではなく、定着し期待したパフォーマンスを発揮できているかまで網羅しておく必要があります。
人事と現場との連携なども踏まえて、フォローアップの体制・活動内容を決めておきます。
採用を取り巻く環境は毎年のように変化しています。その変化に柔軟に対応し、採用成果を残すためには、ただ計画を立てるのではなく、次のようなポイントを押さえておくことが重要です。
リサーチのポイントは大きく4つです。
人材を募集するときに、競合他社も同じように人材を募集しているかもしれません。求人要件や雇用条件、企業の魅力を伝え方など比較し、違いを把握しておきます。採用方法に特徴があるかどうかも見ておくとよいでしょう。
過去の実績を振り返り、分析することで次の採用計画の質が上がります。スケジュールに問題がなかったか、採用方法は適していたか、辞退者の理由はなんだったのかなど、課題だと感じた点を中心に分析を行います。
▽一例
振り返りについては、採用活動が終了した直後に行うのも良いでしょう。次の採用計画をスムーズに行うことができます。
採用活動を進めていく中で、「時間が足りなくて振り返りを省略する」「採用を取り巻く環境の変化によって、採用活動の見直しが必要になる」など立案した計画通りに進まないケースが生じる場合もあります。
採用計画を最後まで遂行するためには、「途中での見直し」についてもあらかじめ視野に入れておきましょう。
そのためにも、それぞれの行程で「振り返る時間」を採用計画立案時から設けておくと、不要な混乱を回避できます。立案時に設定した目標採用人数に達していないなど計画通りに進んでいない場合は、計画のどこでつまずいているのか、理由は何かを確認し、早期改善につなげます。
また、採用計画だけではなく、事業計画の進捗や変更についても確認を入れておきましょう。事業計画に変更があった場合は、今の採用計画に矛盾がないかをチェックします。
企業の成長フェーズや経営方針、事業計画によって求める人材は変わります。企業のニーズに即した人材を採用するには、社内環境や外部環境を考慮しながら、採用計画を具体的に立てておく必要があります。具体性に欠ける計画は、実現できる可能性が低くなりますし、振り返り分析することも困難です。
また、採用を取り巻く環境は変化が多いため、計画実行後も計画に沿って実行できているかを定期的に振り返り、柔軟に変更・改善を加えることも大切です。
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