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採用活動において企業には「採用の自由」が認められています。しかし、採用に関するすべてのことを自由にして良いわけではなく、採用活動には求職者の権利を守るための法律が存在します。
採用活動を適切に進めるには、求人から契約締結までの各プロセスにおいて、関係する法的なルールを把握し、法改正を含む最新の動向にも注意しながら実務運用していくことが重要です。
本記事では、採用活動に関連する法律をわかりやすく解説します。

まず、採用担当者が押さえておくべき主要な法律を解説します。
職業安定法では、求人募集をおこなう企業に対して、求職者へ正確な労働条件の明示を義務付けています。(職業安定法第5条の3)
そのため、企業は求人票に業務内容や賃金などの具体的な労働条件を明確に記載しなければなりません。
この法律では求人票の記載内容と実際の労働条件が異なる虚偽の求人が禁止されています。
たとえば、募集要項に実際に配属されない勤務地を、人を集める目的で掲載する行為は虚偽求人とみなされる可能性があるため注意が必要です。
もし、虚偽が発覚した場合、職業安定法違反となり罰則が科される可能性があるため、求人募集の情報には正確な内容を記載しましょう
労働基準法は、従業員の権利を保護し、労働条件の最低基準を定める法律であり、採用段階から適用されます。具体的には同法第15条にて、労働契約の締結時に「労働条件通知書」を交付する義務が定められています。
労働条件通知書には、賃金や労働時間などの「絶対的明示事項」を記載しなければなりません。
絶対的明示事項とは、すべての労働契約で明示しなければならない事柄であり、以下の項目が含まれます。
労働基準法では、労働契約の締結にあたり所定の労働条件を書面または、電子メールなどの電子的方法で明示することが義務付けられています。これを怠った場合、労働基準法違反として罰金が科される可能性があるため注意が必要です。
採用が決まったら速やかに労働条件通知書を準備し、入社前に交付するようにしましょう。
男女雇用機会均等法第5条では、募集・採用の全過程における性別の差別を禁止しています。
たとえば、求人票に「男性歓迎」「女性向け」などの性別を限定する表記は原則として認められません。また、男女で異なる採用基準や選考フローを設けるのもNGです。
さらに「間接差別」も禁止とされています。間接差別とは、一見関係ない条件であっても、実質的に特定の性別に不利益をもたらす基準のことです。
たとえば、合理的な理由なく体格や身体的特徴に関する条件を設けると、実質的に特定の性別が応募しにくくなり、間接差別に該当する可能性があります(例:身長XXX㎝以上など)。
募集要項を作成する際は、業務遂行に本当に必要な条件かを慎重に検討する必要があります。
労働施策総合推進法第9条は、事業主に対して、労働者の募集・採用において年齢制限を設けることを原則として禁止しています。
たとえば、求人票に「35歳まで」や「20代歓迎」などの年齢を限定する表記は、原則として認められていません。
また、履歴書に記載された年齢のみを理由に不採用を決定することも原則として違法です。採用選考では、応募者の適性と能力を基準にした判断が求められます。
ただし、後述するように、長期勤続によるキャリア形成を図る場合など、一定の例外事由が認められるケースもあります。
年齢に関する記載をする場合は、法律で認められた例外事由に該当するかを事前に確認しましょう。
最低賃金法は、労働者の生活の安定を図るため、賃金の最低額を保障する法律です。本法律では、求人情報に賃金を記載する際や、実際に採用した後の給与において、最低賃金を下回ってはならないと定められています。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。
地域別最低賃金は、都道府県ごとに設定されており、当該エリアで働くすべての労働者に適用される賃金の基準です。
特定最低賃金は、一部の産業に設定されている賃金の基準であり、該当する業種ではこちらも遵守する必要があります。
仮に労働者が同意しても、最低賃金を下回る給与で契約することは違法であり、罰則の対象となります。
障害者雇用促進法により、従業員数が一定数以上の企業には、法定雇用率以上の障がい者を雇用する義務があります。
現在は法定雇用率が2.5%であり、従業員40人以上の企業であれば、法定雇用率に即した障がい者の雇用が必要です。さらに2026年7月には2.7%まで段階的に引き上げられる予定のため、37.5人に1人は雇用する義務が生じます。
また、この法律では、採用過程において障がいを理由とする差別を明確に禁止しています。
たとえば、正当な理由なく障がいがあることを理由に書類選考で不採用にする、面接の機会を与えないことは違法です。
さらに、本人が希望した場合には、障がいのない人と同じように働けるよう合理的配慮の提供が義務化されています。
企業は法律を理解して現場の環境を整えることが大切です。
参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省(PDF)

求人票を作成する際には、求職者に誤解を与えないよう、法律に基づいた正しいルールに従って情報を記載しなければなりません。
ここでは、募集や求人票に関する法律・ルールを詳しく解説します。
求人票を作成する際、職業安定法をはじめとする複数の法律により、禁止されている表現や記載方法があります。
具体的に禁止されている項目は以下のとおりです。
| 禁止事項 | 例 |
| 性差別となる表現 | 「男性のみ募集」「女性スタッフ歓迎」などの表記 |
| 年齢による差別表現 | 「30歳以下のみ募集」や「若者を募集」などの表記 |
| 特定の人を差別または優遇する表現 | 「○○県出身者限定」や「労働組合に加入していない人歓迎」などの表記 |
| 曖昧な言い方により誤認するおそれのある表現 | 「月給25万円〜」とだけ記載し、その内訳が基本給なのか各種手当を含むのかが不明確なケース |
| 適性や能力に関係のない事項の制限 | 身長や体重、家族構成など、職務遂行能力に直接関係のない事項を条件とするケース |
| 実態と異なる労働条件 | 「正社員募集」と書きながら実際は契約社員として採用するケース |
さらに、実態と異なる労働条件を記載することは虚偽の求人として禁止されています。
具体的に虚偽につながる可能性がある書き方は以下のとおりです。
これらの記載は、入社後の早期離職や深刻な労使トラブルを引き起こす原因となるため、誰が見ても明確な表現を心がけましょう。
原則として年齢制限は禁止されていますが、一定の合理的な理由がある場合には例外的に認められています。
企業が求人募集で年齢制限をおこなう際は、法律で明確に定められた以下の例外要件のいずれかに該当しているか事前に確認しましょう。
参考:求人募集を検討中の事業所の皆様へ|厚生労働省(PDF)

採用面接は、応募者の能力や適性を見極めることを目的としており、個人のプライバシーや基本的人権に配慮した質問が求められます。
ここでは、面接に関する法律・ルールを解説します。
採用面接においては、本人の能力や適性とは関係がなく、就職差別につながるおそれのある質問は禁止されています。
面接で聞いてはいけない質問には、「本人に責任がない事項」と「本人の自由意志によって決める事項」の二種類が存在します。
本人に責任がない事項
本人の自由意志によって決める事項
採用面接では、業務の都合上どうしても確認したい事項であっても、質問の仕方によっては就職差別とみなされる境界線の事例が存在します。
たとえば、通勤可否の確認が必要な場合でも、家庭環境や住宅状況の把握につながる質問は避けるべきです。面接では「所定の始業時刻に出勤できますか」「転勤・出張の可否」など、業務遂行に必要な範囲で確認しましょう。
なお、履歴書に現住所を記載してもらうこと自体は、連絡先の確保や本人確認などの正当な理由があるため問題ありません。
また、業務上必要とされる健康状態や心身の特徴の質問も、職務を遂行するうえでどうしても不可欠な場合を除き、慎重に扱いましょう。
たとえば、色覚特性を確認したい場合は、漠然と尋ねるのではなく、色の判別が必要な具体的な職務内容を詳細に説明する必要があります。
そのうえで、職務上どうしても色覚が必要などの合理的で客観的な理由がある場合に限り、本人に必要性を説明して了承を得ることが求められます。
応募者の前職での勤務態度や経歴を調査するバックグラウンドチェック・リファレンスチェックは、適切に実施すれば合法です。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを実施する場合は、本人に利用目的・取得する情報の範囲・照会先を説明し、原則として明示的な同意を得る必要があります。
また、採用判断に必要な範囲を超えて、思想・信条、家族、病歴などの情報を収集しないよう注意が必要です。
NG事項

採用面接を経て内定を出した後や、入社直後の試用期間中においても、企業が労働者に対して気をつけるべき法律が存在します。
ここでは、内定・試用期間に関する法律・ルールを解説します。
内定通知を出した時点で、法的には労働契約が成立したとみなされます。そのため、企業側から一方的に内定を取り消すことは、法律上の解雇と同じ扱いです。
労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効となります。
もし、業績の悪化などを理由にして内定を取り消す場合には、通常のリストラと同様に以下の整理解雇の4要件を満たすなど慎重な判断が必要です。
また、入社後の試用期間中の従業員に対して、本採用を拒否する場合にも、労働契約法が適用されます。試用期間中の労働契約は、一般に「解約権留保付労働契約」とされ、本採用拒否は法的には解雇として扱われます。
ただし、試用期間には従業員の適性や能力を見極める趣旨があるため、通常の解雇よりも広く認められる余地はあります。もっとも、自由に本採用を拒否できるわけではなく、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要です。
一方、内定の取り消しが法的に認められるのは、経歴の重大な詐称が発覚した場合や、正常な勤務が不可能なほどの健康状態の悪化などに限られるケースがほとんどです。
内定や試用期間は、すでに労働契約が成立している状態と理解しておきましょう。
労働基準法に基づき、採用時には労働条件通知書を書面、または労働者が同意した電子的方法で交付し、労働条件を明示しなければなりません。
明示が必要な項目は、労働基準法施行規則第5条にて以下のように詳細に定められています。

引用:労働契約等・労働条件の明示|兵庫労働局
これらの項目を明示せずに採用した場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。
従来、労働条件通知書は紙の書面での交付が原則とされていました。しかし、2019年4月からは働き方改革の一環として、電子的方法での交付も認められるようになりました。
注意点として、電子的方法で交付できるのは、労働者本人が希望した場合に限られます。企業側が一方的に電子化し、紙での交付を拒むことは認められません。
現在、電子的方法として認められているものは、以下の3つです。
デジタルツールで明示する場合には、印刷や保存がしやすいよう添付ファイル等で送りましょう。
参考;平成31年4月から、労働条件の明示が FAX・メール・SNS等でもできるようになります|厚生労働省(PDF)

ここでは、採用活動に関する法律に違反した場合にどのような罰則が科されるのかを解説します。
前提として、すべての法律違反が即座に刑事罰につながるわけではありません。多くの場合、まず労働局からの行政指導がおこなわれ、改善が見られない場合に厳しい措置がとられます。
とくに以下の法律は、直接的な罰金刑はないものの労働局からの助言・指導・勧告の対象となる可能性があるため注意が必要です。
もし、勧告に従わない場合は厚生労働省のページにて企業名の公表がおこなわれます。もし、企業名が公表されると採用ブランドや社会的信用に致命的なダメージを与えるリスクにつながるでしょう。
また、労働基準法や職業安定法においても、罰則の前段階として是正勧告や改善命令などの行政処分が存在します。もし、これらを無視し続けると刑事罰の対象となる可能性が高まるため注意が必要です。
採用に関する法律の中には、違反に対して刑事罰が科されるものもあります。具体的な違反内容と罰則は以下のとおりです。
| 該当の法律 | 違反例 | 罰則 |
| 職業安定法違反 | 求人票に実態と異なる「虚偽の労働条件」を記載して募集した | 6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 労働基準法違反 | 採用決定時(労働契約締結の際)に労働条件通知書を交付しない、または必須項目を明示しない | 30万円以下の罰金 |
| 最低賃金法違反 労働基準法違反 |
地域別最低賃金、または特定最低賃金(産業別)を下回った |
|
これらの罰則は企業の利益を損なうだけでなく、コンプライアンス違反として取引先や社会からの信用失墜にも直結するため、法令遵守を心がけましょう。

ここでは、採用に関連する法律でよくある質問への回答をまとめました。
企業には誰を雇うかを決定する自由が認められています。これを「採用の自由」と呼び、企業が自らの経営判断に基づいて人材を選ぶ権利を保障するものです。
たとえば、「この業務にはこの能力が必要だ」「我が社の企業文化に合う人材を採用したい」などの判断は、原則として企業の自由です。
しかし、この自由も無制限ではなく以下のような制約があります。
採用活動において企業の人材選びは、法律や公序良俗に反しない範囲で認められているという点には注意しましょう。
「未経験歓迎」などの表現は、職務経験を問わないといった意味であり、基本的に問題ありません。
一方、「若手活躍中」などの表現は労働施策総合推進法の「年齢制限の禁止」に触れるリスクがあるため注意が必要です。
若手などの表現は、高齢の求職者に対して応募対象外と誤解を与え、実質的な年齢差別とみなされる可能性があるためです。
もし自社の活気ある雰囲気を伝えたいのであれば、「若手活躍中」などの言葉の代わりに、具体的な業務内容や職場のサポート体制を記載しましょう。
たとえば、以下のようにアピールする工夫が効果的です。
応募者が提出した履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があった場合でも、即座に内定取り消しや解雇ができるわけではありません。
経歴詐称を理由とした内定取り消しや解雇が法的に認められるのは、解雇権濫用法理の客観的・合理的な理由を満たす場合に限られるためです。
たとえば、以下のような虚偽があった場合、内定取り消しや解雇が有効と判断される可能性があります。
詐称が発覚した場合は、弁護士などの専門家に相談したうえで、慎重に対応を検討しましょう。
本人の事前同意を得たうえで取得した調査データであれば、選考の判断材料として使用し、結果として不採用と判断することは問題ありません。
たとえば、反社会的勢力とのつながりが調査で判明した場合、コンプライアンスの観点から、不採用とすることは正当化されます。
一方で、内定後に調査結果を理由として内定を取り消す場合は、内定取消しが解雇と同様に厳しく制限される可能性があります。重大な経歴詐称や業務遂行に不可欠な資格の不存在など、客観的に合理的な理由があるかを慎重に確認しましょう。
法律上、不採用理由を個別に開示する一般的義務はありません。
不採用理由の通知は、伝え方の表現や運用に高度な配慮が求められます。一般的には「総合的な判断の結果、今回は見送らせていただくこととなりました」など、定型的な回答にとどめるケースが多く見られます。
回答する場合は、客観的かつ簡潔な説明にとどめることが望ましいでしょう。
はい。採用に関する法律の多くは、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員にも適用されます。
労働基準法では、職業の種類を問わず、事業に使用され、賃金を支払われる者を「労働者」と定義しています。そのため、名称がアルバイトや契約社員であっても、企業の指揮命令を受けて働き、賃金を受け取る場合は、「労働者」として扱うことになります。
雇用形態にかかわらず、たとえば以下のような項目には対応が必要です。
特にパート・アルバイト・契約社員については、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、正社員との不合理な待遇差にも注意が必要です。

採用活動に関連する法律知識の要点を正しく理解できているかを確認するためのテストを用意しました。
以下の10個の設問にそれぞれが「〇(正しい)」か「×(間違っている)」かを考え、理解度を確認してみてください。
答:×
試用期間中であっても、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
「お試し期間だから自由に解雇できる」などの認識は誤りです。
答:〇
男女雇用機会均等法により、性別を限定する募集は原則として違法です。
業務上やむを得ない理由がある場合を除き、性別による制限は認められません。
答:×
個人情報保護法により、本人の同意なく第三者に情報提供を求めることは違法です。
事前に本人の明示的な同意を得る必要があります。
答:×
家族の職業や構成は本人の能力に関係なく、家庭状況で採否を決めることは就職差別につながるおそれがあるため、NGです。
答:〇
内定通知により労働契約が成立するため、企業側からの一方的な取り消しは解雇と同じ扱いになります。
答:×
労働基準法により、労働条件通知書は書面(または本人が同意した電子的方法)での交付が義務付けられています。
答:〇
労働施策総合推進法には例外事由が定められており、定年を上限とする場合は年齢制限が認められます。
答:×
法律上、不採用理由を開示する義務は一切ありません。不採用理由を開示するかは企業の判断に委ねられています。
答:×
最低賃金法により、労働者の同意があっても最低賃金を下回る賃金での契約は違法です。
最低賃金は強行法規であり、労働局長の許可を受けるなどの一部の特例を除き、原則として例外は認められません。
答:〇
障害者雇用促進法により、2024年4月時点で法定雇用率2.5%(従業員40人以上)の障害者雇用義務があります。
なお、2026年7月からは2.7%に引き上げられる予定です。
企業の採用活動は、誰を雇うかなどの「採用の自由」が前提として認められている一方で、応募者の基本的人権や生活を守るための多岐にわたる法律の制約を受けます。
求人票に実態と異なる虚偽の内容を記載する虚偽求人や、面接の場での個人のプライバシーに踏み込んだ不適切な質問は、企業としての信用を失う原因となるため注意が必要です。
また、一度出した内定を合理的な理由なく不当に取り消す、または労働条件を曖昧にしたまま入社させることは、後に重大な法的トラブルを引き起こします。
採用担当者には、すべての求職者に対して誠実で透明性のある適正な採用プロセスの構築が求められます。
本記事の内容を実務に活かし、応募者にとっても企業にとっても納得のいく採用活動を実現しましょう。
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