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近年、新卒採用の現場においてジョブ型採用を取り入れている企業が増えています。
しかし、ジョブ型採用の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解しないまま導入を進めてしまうと、採用のミスマッチや早期離職、組織の分断といった深刻な問題を招くリスクがありま
とくに、新卒採用では、学生が理解できるジョブディスクリプションの作成や育成体制の整備など、中途採用とは異なる配慮が求められます。
本記事では、新卒におけるジョブ型採用の現状から、失敗しない導入手順まで解説します。

新卒採用において、実際にジョブ型を導入している企業はあります。
サイトエンジン株式会社が2024年8月に実施した調査では、新卒採用においてジョブ型を活用していると回答した企業は23.1%に達していることが判明しました。
一方で、学生側の意識変化はさらに進んでおり、株式会社学情の調査では、69.9%もの就活生が「ジョブ型採用に興味がある」と回答しています。
約7割の学生がジョブ型採用という新しい採用形態に関心を寄せており、企業側の導入意欲と学生側のニーズが合致しつつあるといえるでしょう。
従来の日本型雇用システムとは異なる採用手法が、新卒市場においても着実に広がりを見せています。
参考:【2024年8月実施 ジョブ型雇用に関する調査】2022年からの変化と新卒採用での導入状況に関するアンケート結果| サイトエンジン株式会社
2027年卒学生の就職意識調査(キャリア形成とジョブ型採用)2025年5月版|株式会社学情
ジョブ型採用とは、企業が必要とする具体的な職務をあらかじめ明確に定義し、適したスキルや経験を持つ人材を採用する手法です。
従来の「人を見て採用し、後から仕事を割り当てる方法」とは異なり、「仕事を起点にして、当てはまる人を探す」という考え方にもとづいています。
採用時には、以下のような職務の詳細を記した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を提示します。
ジョブディスクリプションにより、応募者は求められている業務を具体的にイメージできるため、入社後のギャップを減らすことが可能です。
ジョブ型採用について以下の記事でも詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
マンパワーグループの新卒採用支援
マンパワーグループでは、新卒採用の事務代行からコンサルティング、内定者フォローなどを提供しています。詳しくは下記の資料をご覧ください。
ジョブ型採用と、日本企業で長く行われてきたメンバーシップ型採用には、採用基準や働き方に明確な違いがあります。
| 項目 | ジョブ型採用 | メンバーシップ型採用 |
| キャリアパス |
|
|
| 配属の決め方 | 採用時に職務と勤務地が決まる | 入社後に適性を見て会社が決定 |
| 給与体系 | 職務の価値や成果にもとづく「職務給」 | 勤続年数や能力向上にもとづく「職能給」 |
| 異動・転勤 | 原則なし(契約範囲内に限定) | あり |
メンバーシップ型は、ジェネラリストタイプの社員や管理職候補を育て上げる点では優れていますが、専門職の育成には時間がかかるという側面があります。
一方、ジョブ型は最初から専門分野に特化できるため、早期の戦力化が見込めますが、会社都合による柔軟な配置転換は難しくなるでしょう。

新卒採用にジョブ型を取り入れることで、企業は専門的なスキルを持つ人材の確保や、教育コストの削減などの効果が見込まれます。
具体的なメリットについて、以下の3つの観点から詳しく解説します。
ジョブ型採用では職務内容を特定して募集するため、大学や大学院での研究活動を通じて専門知識を身につけた学生を、その知識を活かせるポジションで採用しやすくなります。
たとえば、データサイエンティストのポジションで募集をかければ、統計学や機械学習を専攻している学生が応募してくる可能性が高まるでしょう。
さらに、ジョブ型採用は、専門性とポジションがマッチしやすいため、入社後のミスマッチが起こりにくく、採用した人材が早期に活躍することが期待できます。
とくに、エンジニアや研究開発職など、高度な専門性が求められる職種においては、ジョブ型採用の効果が得られやすくなるでしょう。
ジョブ型採用を取り入れることで、新入社員の教育コストを抑えられます。採用段階で、すでに職務に必要な基礎スキルや適性を持つ人材を確保できるためです。
従来のメンバーシップ型採用では、募集時点で職務を厳密に限定していないため、配属後に必要なスキルを一から習得するケースが多く、教育負担が大きくなりがちです。
一方、ジョブ型採用では企業文化への適応といった基本的な教育は必要ですが、職務遂行に直結する専門的なスキルや素養を持ち合わせていることが多く、教育プロセスの削減が可能です。
現場での実務を通じた教育に早期から移行できるため、担当者の負担が軽減され、組織の生産性を落とさずに育成を進められます。
ジョブ型採用を導入することで学生の関心を高められるといったメリットも挙げられます。
Z世代と呼ばれる現在の学生の間では、主体的にキャリアを形成したいと考える傾向が強まっているためです。実際、株式会社学情の2025年の調査では、ジョブ型採用に興味があると回答している学生は69.9%もいることがわかっています。
入社後の配属に不透明さがないため、学生は安心して企業を選択でき、結果として企業の採用活動における訴求力が高まるでしょう。とくに、優秀な専門人材を獲得したい企業にとって、アドバンテージとなります。
参考:2027年卒学生の就職意識調査(キャリア形成とジョブ型採用)2025年5月版|株式会社学情

多くのメリットがある一方で、ジョブ型採用には組織運営上の課題やリスクも存在します。
ここでは、新卒にジョブ型採用を導入するデメリットについて解説します。
ジョブ型採用では、特定の職務に特化したスペシャリストの採用・育成が中心となるため、複数の部署を横断して全体を俯瞰できるゼネラリストが育ちにくいという課題があります。
将来の管理職や経営層の候補となる人材を、多様な部署での経験を通じて長期的に育成していくことが困難になる可能性がある点には注意が必要です。
さらに、ジョブ型採用によって社員が特定の部署に固定されるため、部門間のつながりが希薄になりやすくなります。もし、異なる部署の社員同士が交流する機会が減少すると、情報の共有が滞り、部署間の壁によって組織が分断される恐れがあります。
分断が進むと、部門間の協力体制が弱まり、組織全体としての連携力や機動力が低下するリスクにつながるでしょう。
ジョブ型で採用された社員は、会社への帰属意識よりも、自身の職務スキルや専門性を高めることに重きを置く傾向があります。
もし、自身のスキルがより高く評価される企業や、より良い待遇を提示する企業が現れた場合、転職に対するハードルが低くなる点には注意が必要です。
企業としては、ジョブ型採用で優秀な専門人材を獲得できたとしても、長期的に定着させるための以下のような施策が別途必要になることは理解しておきましょう。
ジョブ型雇用では、契約時に職務内容や勤務地を限定して明示するため、会社の判断だけによる異動や転勤を命じることが難しくなります。
事業の撤退や方針転換で人員配置の見直しが必要になった場合でも、勤務地や職務が限定されていれば、労働条件の変更に該当し、原則として本人の同意が必要です。
再契約の交渉は可能ですが、同意が得られなければ退職につながるリスクもあります。
こうした点で、メンバーシップ型と比べて組織運営の柔軟性に制約が生じやすいことを理解しておきましょう。
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ジョブ型採用はすべての企業に適しているわけではなく、企業の文化や求める人材像によって向き不向きがあります。
新卒採用にジョブ型を導入するのに向いている企業の特徴は、以下のとおりです。
一方で、募集するポジションの職務が定義しにくかったり、ゼネラリストを育成したかったりする場合、ジョブ型採用は不向きといえます。
まずは、自社で採用したいポジションを明確にして上記の条件に当てはまるか確認しましょう。

新卒のジョブ型採用を成功させるには、段階的な準備と適切な制度設計が重要です。
ここでは、新卒にジョブ型採用をする際の導入手順を3ステップで解説します。
最初のステップとして、社内のどの職務にジョブ型採用を適用するのか、範囲を明確に定める作業から始めましょう。
この段階では、現場の管理職や実際にその職務を担当している社員にヒアリングをおこない、リアルな業務実態を把握することが重要です。
具体的には、以下の項目を定義していきます。
条件を定義する際は、曖昧な表現ではなく、「TOEIC800点以上の英語力」など、できる限り具体的で測定可能な要件を設定することがポイントです。
定義した業務内容や要件を基にして、求職者に提示するためのジョブディスクリプションを作成します。
ジョブディスクリプションには、以下のような項目を漏れなく明記しましょう。
新卒採用の場合は、社会人経験のない学生にも伝わるよう、専門用語を多用せず、入社後の動きが具体的にイメージできる言葉選びを心がけることが重要です。
ジョブディスクリプションは、採用活動における求人票の基礎資料となるだけでなく、入社後の業務遂行や評価の基準にも関係してくる重要な文書のため、作成の際は十分に作り込みましょう。
続いて、ジョブディスクリプションにもとづき、新卒採用における選考時の評価基準を整理します。
一般的な採用では、入社後の配属や育成を前提として、ポテンシャルや人柄、組織への適応力を中心に評価するケースが少なくありません。
一方、新卒向けのジョブ型採用では、応募者の実務経験が乏しい点同様ですが、以下のような観点での基準が求められます。
たとえば面接では、大学での専攻や研究テーマ、取り組んできた課題などを通じて、特定分野への関心の深さや思考のプロセスを確認するとよいでしょう。
また、業界動向や関心のあるテーマについて意見を聞くことで、将来的に専門性を伸ばしていけるかどうかを見極められます。
なお、こうした評価基準はあくまで採用・選考時の考え方であり、入社後の人事評価や報酬制度については、職務の役割や難易度に応じた等級設計が別途必要となります。
評価軸を変更する場合には、就業規則や賃金規程の見直しも含めて検討することが重要です。

新卒のジョブ型採用を成功させるには、制度を作るだけでなく、運用面での細やかな配慮が求められます。
ここでは、新卒にジョブ型採用を活用する際の注意点について解説します。
ジョブディスクリプションを作成する際は、社会人経験のない学生でも業務内容を具体的にイメージできるよう、平易な言葉で記載しましょう。
業界特有の専門用語や社内用語を多用すると、学生は自分が職務に適しているか判断できなくなるためです。
また、選考過程においても、入社後のキャリアパスや働き方のビジョンを明確に提示し、ミスマッチを防ぐことが重要です。
たとえば、以下のように具体的なキャリアイメージを伝えることで、学生は安心して入社を決断できるでしょう。
ジョブ型採用で入社した人材に長期的に活躍してもらうためには、採用して終わりではなく、定着を意識した取り組みを計画的に講じていくことが重要です。
専門職としての独立性が高まると、組織への帰属意識が希薄になりやすく転職する可能性が高まるためです。
長期的に働いてもらうためには、以下のようなイベントを意図的に企画しましょう。
組織としての一体感を生み出すための施策を講じることが、組織力の維持につながります。
特定の分野に特化した新入社員を育成するためには、職務の分野に精通し、かつマネジメント能力も兼ね備えたリーダーの存在が必要です。
ジョブ型採用で専門性の高い人材が入社しても、マネジメントできる社員がいなければ、チームとして目標達成するのが難しくなるためです。
専門性の高いリーダーを配置するにあたっては、職務内容やチームの特性に応じて、受け入れ体制をあらかじめ検討しておくことが重要です。たとえば、以下のような方法が考えられます。
あわせて、配属後の育成プログラムが、専門性に対応しているかも確認しましょう。
また、特定の分野に特化した新入社員を育成していくためには、専門分野に関する知識や業務理解だけでなく、キャリア形成や成長の方向性を含めてマネジメントできる体制が重要です。
もし、社内だけで体制を構築するのが難しい場合は、役割を分業したり、外部の研修サービスを委託したりすることも視野に入れて、育成体制を整えましょう。
ジョブ型採用を実施する際は、対象職種は本当に職務内容が固定できるか確認しましょう。
技術革新や市場の変化が激しい現代において、採用時点で定義した職務内容やスキル要件が入社後に変わってしまうリスクがあるためです。
また、業務範囲が広く固定が難しい職種も存在するため、ジョブ型採用を導入する前に、本当にその職種の業務を固定化できるのか慎重に確認する必要があります。
対象の職種が、長期的な観点で業務内容を固定できる性質のものなのか、事前に現場の実態と照らしあわせて確認しましょう。
新卒採用は小さな作業が膨大に発生し、結果的に採用担当者の工数を圧迫しやすい傾向にあります。また、母集団形成が難しく、継続的な改善や新しい手法を取り入れるなどの活動も必要です。
マンパワーグループでは、多くの企業の新卒採用を支援した実績で得たノウハウで、新卒採用をサポートします。下記のようなお悩みの方は、新卒採用コンサルティングや採用代行をご検討ください。
「ナビからの応募が減ってきている気がする」
「なにを伝えれば響くのかわからない」
「事務作業が多すぎて、学生とのコミュニケーションに時間を割けない」
<この資料でわかること>
・ 新卒採用支援サービスの提供内容
・ 採用成功に向けたプロセスとポイント
・ 支援実績や導入事例のご紹介

ここでは、ジョブ型採用の導入を検討する際に、よくある3つの質問について解説します。
ジョブ型採用においてインターンシップは、必須というわけではありません。
しかし、書類や面接だけでは測りきれない実務能力や適性を見極めるために、インターンシップは有効です。
インターンシップを活用することで、以下のように学生側にも企業側にもメリットがあるでしょう。
| 立場 | メリット |
| 学生側 |
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| 企業側 |
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お互いの理解を深め、入社後のミスマッチを未然に防ぐ観点からも、選考プロセスの一環として積極的に活用することをおすすめします。
全社一斉の導入は組織への負荷やリスクが大きいため、まずは職務内容を定義しやすい専門職から部分的に導入するのがおすすめです。
最初は、以下のような職種から段階的に始めましょう。
上記の職種は業務内容や必要なスキルが比較的明確で、成果も可視化しやすいため、スモールスタートの対象として適しています。
新卒向けのジョブディスクリプションは、実務経験者向けと全く同じものを使うのは避けるべきです。
経験者向けのように専門用語ばかりが並んでいると、学生が具体的な業務風景をイメージできず、応募を躊躇してしまう可能性があるためです。
求めるスキルは明確にしつつも、業務の意義や流れをわかりやすく説明し、学生が理解した上で応募できるような内容に書き換えましょう。
新卒のジョブ型採用は、企業の競争力を高め、職務に適したポテンシャルを持つ若手人材とともに未来を創るための戦略的なステップとなります。
一方で、ジョブ型採用の導入には、ゼネラリストの育成が難しくなることや、定着率の低下といった課題も存在します。
まずは「自社の現状」を確認して、どの職種がジョブ型に適しているか、既存の人事制度とどう調和させるかを慎重に検討し、段階的に導入するのがおすすめです。
自社に合った形でジョブ型採用を導入し、優秀な若手人材の獲得と育成につなげていきましょう。