
目次
「自社の平均年齢は適正なのか」
「組織として健全な状態を保つための、企業の平均年齢の『理想』とは一体何なのか」
採用難易度が上がり、従業員の高齢化が進む昨今、多くの人事担当者がこうした組織バランスの課題に直面しています。
企業の平均年齢や年齢構成に偏りが生じると、管理職候補の枯渇や技術継承の停滞など、将来の事業運営に影響が及ぶ可能性があるでしょう。
実は、多くの人事担当者が企業の平均年齢に悩んでしまう要因は、表面的な平均値だけでは実態を把握しにくい点にあります。
平均年齢は単なる数値ではなく、組織の健全性や将来性を測る基礎指標として扱うことが大切です。
本記事では、代表的な年齢構成パターンの特徴と、偏りを是正するための実務的なアプローチを解説します。

企業の平均年齢に、絶対的な正解は存在しません。
なぜなら、企業が置かれている状況や、属している業界によって適正な年齢構成はまったく異なるからです。
なお、厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査」によると、2023年時点で事業所に雇用される常用労働者の平均年齢は43.9歳となっています。
しかし、この数値はあくまで全体の平均であり、自社の目指すべき基準とは限りません。
重要なのは「若い=良い、高い=悪い」という単純な判断ではなく、自社の企業文化や事業特性、経営方針に適した年齢構成を設計することです。
企業の組織状態を正しく把握するためには、平均年齢だけでなく、年齢構成という視点で見ることが重要です。
たとえば、平均年齢が40歳の企業であっても、「全員が40歳」の場合と、「20代と60代が半々」の場合では、組織の課題や強みがまったく異なります。
組織の年齢構成は、その形状によっていくつかのパターンに分類でき、それぞれに特有のメリットやリスクが存在します。
自社の現状がどのパターンに当てはまるのかを確認しながら、以下の5つの分類を見ていきましょう。

台形型は、若手からベテラン社員までがバランスよく在籍しており、年齢が上がるにつれて人数が緩やかに減少していく構成です。
毎年一定数の新入社員が定期的に入社し、定年退職などでベテラン社員が減っていくサイクルが確立されているため、組織の新陳代謝がスムーズです。
また、特定の年齢層に極端な偏りがないため、技術の継承やノウハウの伝達が、先輩から後輩へと自然におこなわれやすい環境が整っています。
将来のリーダー候補となる人材も各世代に均等に存在するため、組織運営上のリスクが少ない理想的な状態と言えるでしょう。

ピラミッド型は、20代などの若手社員が圧倒的に多く、年齢が上がるにつれて社員数が急激に少なくなっていく構成です。
この形は、創業して間もないスタートアップ、あるいは急成長中の企業によく見られる特徴的な構造です。
組織全体にエネルギーがあり、若手であっても早期から責任あるポジションを任される機会が多いため、個人の成長スピードが速い傾向にあります。新しい技術やトレンドを取り入れる柔軟性も高く、技術革新が生まれやすい環境といえるでしょう。
一方で、経験豊富な管理職や教育担当者が不足しやすいため、組織としての統制が取れなくなるほか、教育体制が追いつかなくなるといった課題が生じやすい側面もあります。

ひし形は、30〜40代が最も多く、新卒採用よりも即戦力採用を重視している企業や、安定企業によく見られる年齢構成です。
業務の中核を担う中堅の人材が十分に確保されているため、組織としての実行力が高く、円滑な事業運営が期待できます。
また、現場のリーダー層の人数が多いため、マネジメントや業務遂行においても安定しやすいのが特徴です。
しかし、中堅層が多くポストが詰まると若手の昇進の機会が限られてしまい、優秀な若手のモチベーション低下や離職につながりやすくなる点には注意が必要です。

ひょうたん型は、若手とベテラン層は一定数いるものの、組織の要となる30代中盤から40代の中堅層が少ない構成です。過去のバブル崩壊後の就職氷河期やリーマンショック時などに、当時の新卒採用を抑制した会社に多く見られます。
ひょうたん型の場合、成果を出せる若手社員にとっては昇進する可能性があるため、モチベーションの向上が見込めます。
一方で、中堅層が薄く、経営層と若手層をつなぐ役割を担う人材が限られるため意思疎通が十分に図れないほか、世代間のギャップによって不満が生じることも少なくありません。
また、若手の離職率が高くなると技術や企業文化が途切れてしまう恐れがある点には注意が必要です。

逆ピラミッド型は、若手社員が極端に少なく、高年齢のベテラン社員が大多数を占めている、高齢化した組織の構成です。
長期間にわたって採用を絞ってきた企業や、業界自体の人気が低迷し若手人材の確保が困難になっている場合によく見られます。
豊富な経験や高度な専門知識を持ったベテランが多いため、既存の業務に関しては安定感があり、ミスも少なくなります。
一方で、新しい技術への適応や市場の変化への対応が遅れやすくなり、組織全体が硬直化してしまうリスクが高くなりやすいでしょう。

実は、企業の平均年齢は事業規模によっても異なります。
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査の概況
」によると、企業規模別の平均年齢は以下のとおりです。
| 企業規模 | 平均年齢 |
| 大企業(常用労働者1,000人以上) | 42.7歳 |
| 中企業(常用労働者100~999人) | 43.5歳 |
| 小企業(常用労働者10~99人) | 45.7歳 |
上記のデータから企業規模が小さくなるにつれて、平均年齢が高くなりやすいとわかります。
この背景には、新卒採用と人材育成環境の違いが影響していると考えられるでしょう。
大企業は毎年計画的に新卒採用を実施し、教育研修制度も充実しているため、常に20代の若手層が組織に補充されます。
一方、小企業は採用予算や育成リソースが限られており、即戦力となる経験豊富な中途人材を採用する傾向が強いため、年齢層が高くなりやすいのです。
さらに、知名度や雇用の安定性という観点から、若手人材が大企業に集中しやすく、小規模企業が若手の確保に苦戦するという労働市場の構造的な課題も影響しています。
平均年齢は企業規模だけでなく、業界によっても異なります。
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」によると、産業別の平均年齢は以下のとおりです。
| 産業分類 | 平均年齢 |
| 鉱業・採石業・砂利採取業 | 47.9歳 |
| 建設業 | 45.2歳 |
| 製造業 | 43.7歳 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 43.6歳 |
| 情報通信業 | 40.6歳 |
| 運輸業・郵便業 | 48.0歳 |
| 卸売業・小売業 | 42.7歳 |
| 金融業・保険業 | 43.7歳 |
| 不動産業・物品賃貸業 | 43.1歳 |
| 学術研究・専門技術サービス業 | 43.0歳 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 43.0歳 |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 42.7歳 |
| 教育・学習支援業 | 44.4歳 |
| 医療・福祉 | 43.5歳 |
| 複合サービス事業 | 44.6歳 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 45.5歳 |
上記のデータからは、情報通信業が40.6歳と最も若く、運輸業や郵便業などの平均年齢が48.0歳と高い傾向が読み取れます。
情報通信業が若い理由は、デジタルネイティブである若手が活躍しやすく、また人材の流動性が高いためだと考えられるでしょう。
一方で、運輸業や建設業では、業務をおこなうための専門的な免許や長年の現場経験が求められる参入障壁の高さに加え、業務環境などの面で若手のキャリア選好と合致しにくい側面もあるため、平均年齢が上がりやすくなります。
このように平均年齢の違いは業界の特性が出ることがあり、自社の平均年齢を評価する際のひとつの基準です。
平均年齢が若い組織には、エネルギッシュで勢いがあるというポジティブな側面がある一方で、リスクも存在します。
ここでは、平均年齢が若い企業の特徴をメリットとリスクに整理して解説します。
平均年齢が若い企業には、以下のようなメリットが挙げられます。
| メリット | 理由 |
| 成長の機会とスピード感がある | 若手社員が早い段階から重要な業務を任される機会が多い |
| 活気と柔軟な発想が得られる | 若手による固定観念に縛られない新しいアイデアが出やすくなる |
| 人件費が抑えられる | 若手中心の組織では給与水準が比較的低く、人件費の総額が抑えられる |
| 若手採用で有利になる | 同世代が活躍している職場は、就職活動中の学生や第2新卒層にとって魅力的に映りやすい |
一方、平均年齢が若い企業には以下のようなリスクが考えられます。
| リスク | 理由 |
| 教育コストが増加しやすい | 業務のノウハウが蓄積されていないため、同じミスを繰り返すなど、教育に多大な時間を割く必要がある |
| キャリアパスが不透明になりやすい | 10年後、20年後の自分の姿を社内に見つけにくく、将来に不安を感じやすくなる |
| 従業員の離職率が高くなりやすい | 若手は転職市場での価値も高いため、より良い条件や環境を求めて短期間で辞めてしまう可能性がある |
| マネジメント層が不足しやすい | 部下を指導・管理できる経験を持った人材が少ないと組織構築に影響が出る可能性がある |
平均年齢が高い企業には、豊富な経験と安定性という強みがある一方で、変化への対応力や人件費の課題も抱えています。
ここでは、平均年齢が高い企業が持つ特徴について、メリットとリスクの両面から解説します。
平均年齢が高い企業には以下のようなメリットがあります。
| メリット | 理由 |
| 豊富な経験と専門知識がある | 長年培ってきた技術や業界知識が資産となり、高い品質を保証できる |
| 組織が安定しやすい | 従業員の定着率が高く、入れ替えも少ないため組織が安定する |
| キャリアパスが制度として整備されている | 昇進や昇格の基準が明確で、長く働くことでどのようなキャリアを歩めるかが可視化されているため従業員が理解しやすい |
| 社外への豊富な人脈がある | 長年築き上げてきた取引先との信頼関係やネットワークにより、ビジネスを安定させやすくなる |
一方、平均年齢が高い企業には以下のようなリスクもあります。
| リスク | 理由 |
| 変化への抵抗と組織の硬直化 | 過去の成功体験に固執しやすく、新しいツールややり方を導入しようとしても、現場からの反発が起きやすくなる |
| 人件費の高騰 | 年功序列型の賃金体系を採用している場合、社員の高齢化に伴って人件費が膨らみやすい |
| 若手社員の離職リスク | 若手社員にとっては、昇進やキャリアアップの機会が限られていると感じやすく、将来性を求めて転職してしまうリスクが高まる |
| 事業承継と技術伝承の課題 | ベテラン社員の退職が近づく中で、次世代のリーダー候補が育っていない場合、事業承継や技術・ノウハウの継承が滞ってしまう |

組織の年齢構成に偏りがあること自体は、必ずしも悪いわけではありませんが、事業戦略を実行する上で障害となっている場合は改善が必要です。
たとえば、年齢構成に偏りがあっても、経営上、適切な状態であれば是正は不要です。一方で偏りの影響により問題点が発生している場合は是正が必要になるでしょう。
大切なのは、年齢構成の偏りだけで判断するのではなく、状況に問題点があるのかを検証することです。
ここからは、具体的な是正が必要であった場合の対策を解説していきます。
対策を打つ前に、まず現状の根本原因を正しく分析する必要があります。
現状を正確に理解して原因を突き止めることで、適切なアプローチがしやすくなるためです。
たとえば、以下のような原因が考えられるでしょう。
現状の年齢構成や会社の歴史、社内ルールをもとに原因の棚卸を実施しましょう。
年齢構成の偏りを是正するには、採用戦略を見直し、不足している年齢層を計画的に採用しましょう。
募集するポジションに対してどのような人材が必要なのかを明確にし、採用媒体や告知方法を工夫することで、ターゲット層に効果的にアプローチできます。
たとえば、管理職としてミドル・シニア層を採用したい場合、年齢ではなく求める経験値や条件を柔軟に調整する必要があるでしょう。
また、若手採用に対しては、自社のビジョンや働く環境の魅力を明確に発信し、求職者に選ばれる企業づくりを進める必要があります。
採用だけでなく、既存社員のキャリア設計や配置の見直しも、年齢構成の偏りを是正するうえで重要な施策です。
たとえば、中堅層が育たない原因として、以下のような要因が考えられます。
こうした場合は、責任ある業務を積極的に任せ、評価制度を明確にすることで、中堅層の成長を促せるでしょう。
また、ベテラン社員が組織に残らない理由として、役割が管理職一択になっており、専門性を活かせるポジションが用意されていないケースがあります。
管理職以外のキャリアパスを整備し、専門職やプロジェクトリーダーといった多様な選択肢を提供することで、ベテラン層の定着率を高められます。
年齢構成がいびつな組織では、若手とベテランの間で価値観の違いによる対立や、コミュニケーション不足が生じ、世代間の断絶につながりやすくなります。
断絶を防ぐためには、意図的に協働できる環境で働ける設計を構築し、世代を超えた交流が生まれる仕組み作りが大切です。
たとえば、協働できる環境で働ける設計として、以下のような方法が考えられるでしょう。
こうした取り組みにより、世代間の壁を取り払い、多様性という強みに変えられます。

ここでは、企業の平均年齢の理想についてよくある質問に回答します。
若手採用に力を入れることで高齢化への対策ができます。
しかし、労働市場全体で若手が不足しており、業界や職種によっては若手人材の確保が難しいケースも少なくありません。
こうした環境では、平均年齢を無理に下げるよりも、シニア層が活躍できる環境の整備を検討しましょう。
具体的には、以下の方法が挙げられます。
同時に、ベテランから若手への技術継承を計画的に進め、知識やノウハウを組織内に残す取り組みも必要です。
中堅社員が離職する理由として、主に以下の内容が挙げられます。
対策としては、今後どのようなキャリアパスがあるのか、将来の展望を明確に提示するが効果的です。
また、成果に対して公平な人事評価制度を構築し、昇給や昇進に反映させることで、社員のモチベーションを維持できます。
さらに、責任ある業務を任せることで、仕事のやりがいを実感できる場をつくり、長期的に働き続けたいと思える環境を構築することが大切です。
可能であれば、自社の平均年齢を公表するのがおすすめです。
平均年齢を公表することで採用活動において、企業と求職者のミスマッチを防ぎ、自社の魅力を効果的に伝えられるためです。
とくに、若い世代は企業の平均年齢をもとに、社風やキャリアパスを判断します。
もし平均年齢が高くても、それを隠すのではなく「ベテランが多く教育体制が手厚い」とポジティブに伝えることで、安定志向の若手を惹きつけられるでしょう。
さらに、情報をオープンにすることで企業は以下のようなメリットも得られるため、発信するのがおすすめです。
M-Shineは、オフィスワーク未経験の若手人材を派遣するサービスです。若手確保の選択肢として、派遣社員としての受け入れから始めてはいかがでしょうか?本資料ではサービスの特長、サポート体制、導入企業のコメント事例などを紹介しています。
<この資料でわかること>
・ M-Shineサービスの詳細
・ M-Shineスタッフの属性・人物像 など
・ 導入企業からの声
・ 正社員登用の実例 など
本記事では、企業の平均年齢の理想や、年齢構成ごとの特徴について解説してきました。
企業の平均年齢は、若ければ良いというわけでも、高ければ悪いというわけでもなく、それぞれの構成にメリットとリスクがあります。
重要なのは、自社の以下のような特徴を正しく理解し、最適な年齢構成を設計することです。
まずは自社の現状をデータで正しく把握し、理想とする姿と原因を明確にしましょう。そして、採用戦略の見直しや、今いる社員が活躍できる制度設計など、戦略的な人事施策をひとつずつ進めていくのがおすすめです。
こちらの資料もおすすめです