企業サービス
マンパワーグループがお届けする「人材」に関する専門メディア
マンパワーグループがお届けする「人材」に関する専門メディア

メールマガジンの登録

本メルマガでは、人事・人材にまつわる情報のご提供、イベント/セミナー等のご案内をお届けいたします。
個人情報の取扱いについてご一読のうえご登録ください。
※同業者、個人の方のお申込はお断りさせていただく場合があります。

職業安定法とは?改定により企業が気を付けるべきポイントを解説

掲載日2023年7月20日

最終更新日2024年4月16日

職業安定法とは?改定により企業が気を付けるべきポイントを解説

目次

2022年3月に改正された職業安定法が10月1日より施行されました。
この改正では、求職者が安心して求職活動できるように様々なことがルール化されています。

職業安定法は、ひとびとの働く権利を保障し、経済と社会の発展を支えることを目的とした法律で、人材紹介会社など人材サービスを提供する企業だけではなく、求人をかける一般企業にも深く関係するものです。

そこで今回は、改正点も含めて職業安定法についてわかりやすく解説します。

度重なる法改正対応に、外部のプロの力を活用

採用担当者として法改正に応じた知識のアップデートを行うのはもちろん大切ですが、改正に伴う諸業務については外部委託により負担を軽減することができます。

マンパワーグループでは、これまで培ってきた人材採用のノウハウを活かした「採用代行サービス」を提供しています。

マンパワーグループの採用代行サービスの資料をダウンロードする

職業安定法とは

職業安定法は、労働市場において職業紹介事業等の適正な運営を確保するために必要なルールを定めた法律です。求職者に能力にあった職業の機会を与え、産業に必要な労働力を充足して、経済及び社会の発展に寄与することを目的としています。

法律の目的に則り、職業紹介、労働者募集、労働供給について、定められています。ここでいう労働者募集には一般の企業が求人募集をした場合も含まれますので、多くの企業が理解しておくべき法律だと言えます。

参照:職業安定法 │ 厚生労働省 外部リンク

職業紹介の種類

職業紹介とは、求人および休職の申込を受け、求人者と求職者との間を取り持ち、雇用関係が円滑に成立するなどの世話をする第三者の役割を指します。職業紹介事業には、有料と無料の2種類があります。

有料職業紹介事業は、職業紹介に関連した手数料または報酬を受ける人材紹介会社などが該当します。

無料職業紹介事業は、ハローワークに代表されるような求職者に対して無料で職業紹介サービスを提供する機関などを指します。

参照:職業紹介とは | 東京労働局 外部リンク

労働者募集のルール

労働者を募集する時には、以下の項目を書面または希望があればメールで明示しなければなりません。

業務内容:
一般事務・営業など実際に働く業務

契約期間:
期間の定め有・無(有の場合は、〇月~△月)

試用期間:
試用期間有・無(有の場合は、何カ月か)

就業場所:
本社(〇県●市××)または支店(〇県●市××)

就業時間:
9時~18時

休憩時間:
12時~13時

休日:
土日、祝日

時間外労働の有無および時間:
時間外労働有(有の場合、月平均〇時間)

賃金(臨時に支払われる賃金や賞与などを除く):
月給○○万円

社会保険適用の有無:
健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険

募集者の氏名または名称:
○○株式会社

就業場所における受動喫煙防止措置の状況:
屋内禁止

上記の労働条件を変更した場合は、その都度明示しなければなりません。

労働者供給の禁止

職業安定法で定められている労働者供給とは、労働者を他人の指揮命令のもとで労働に従事させること」を指します 。労働者については派遣に該当するものは含まれません。労働者供給事業は、労働組合等が無料で行う場合を除いては全面的に禁止されています。

労働者供給と人材派遣の違い

労働者供給と人材派遣は、何らかの形で自己の管理下にある労働者を他人の指揮・命令のもとで、他人に使用させるという点では同じものです。しかし、2つの大きな違いがあります。

ひとつは、労働者との関係です。人材派遣では、労働者は派遣元と雇用契約を結び、派遣先で指揮・命令を受けて働きます。
一方、労働者供給においては、労働者は供給元と雇用契約を結んでいるわけではなく、指示された供給先で働きます。つまり、労働者がどこと雇用関係にあるかが明確ではないため、厚生労働大臣の許可を受けた労働組合などを除いて禁止となっているのです。

もうひとつは、営利を目的としているかどうかです。人材派遣事業は厚労省の許可を得て営利事業を行っています。
労働者供給事業は、労働組合などが厚生労働省の許可を得て、無料で行う場合しか認められていません。

2022年に改正された職業安定法

2022年に職業安定法が改正されました。改正の目的は「求職者が安心して求職活動を行える環境の整備」と「マッチング機能の質の向上」です。前記の目的達成のために以下の改正が行われました。

  1. 求人等に関する情報の的確な表示の義務化
  2. 個人情報の取り扱いに関するルールの整備
  3. 求人メディア等に関する届出制の創設

一般企業に関係するのは、1.の「求人等に関する情報の的確な表示の義務」です。
企業は求人募集をかける際、以下の2つを徹底しなければなりません。

  1. 求人などに関する情報について正確かつ最新の内容を保つ
  2. 求人などに関する情報について虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない

具体的には、以下の項目について的確な表示が義務付けられています。

  • 求人情報
  • 求人企業に関する情報
  • 事業の実績に関する情報

その他の主な改正点は、求職者の個人情報を収集する際にその目的を明らかにしなくてはならないこと、新たに求職者に関する情報を収集する募集情報等提供事業者に対して届出制が導入されたことが挙げられます。

職業安定法が改正された背景

ナビサイトなどインターネット上に求人情報を掲載する手法が数多く出現し便利になった一方、人を集めるために求人詐欺のような虚偽の記載をする企業が横行し、正確な求人情報を出している会社には応募者が集まらず、求職者とも求人情報をめぐるトラブルが発生するようになりました。

また、求人情報が変更されているにもかかわらず古い情報を掲載し続け、募集内容と実態が乖離してしまっているというケースも多発しており、求職者が正しい情報に基づいて安心して就職活動ができるよう、法改正が行われたのです。

以下の例は、明らかに虚偽の表示とみなされるものです。

  • 業務内容に「事務職」と記載されていたのに実際には「営業」の仕事も行う
  • 「残業無」と記載されていたのに実際は「残業が多い」
  • 固定残業代を基本給に含めて表示する
  • 有名企業のグループ企業であるかのように表示する

CTA12

職業安定法の改正により追加された募集に関する項目

職業安定法の改正により追加された募集に関する項目について紹介します。

  • 試用期間の有無および期間
  • 募集者氏名の記載
  • 派遣労働者の募集
  • 裁量労働制の場合
  • 固定残業代の明記

試用期間の有無および期間

職業安定法の改正により、試用期間の規定が明確化されました。試用期間とは、新たに雇用された労働者がその職場で働く適性や能力を確認するための期間を指します。本採用になる前に、業務に合った人材か否かを見極めるために試用期間を設けている企業は多いですが、労働者にとって試用期間は解約の恐れがある不安定な雇用状況です。

そこで「試用期間の有無」とともに「試用期間〇カ月」というように期間についても明示すること必要があります。明示によって、不安定な雇用状態がいつまで続くかわからない不安がなくなりますし、〇カ月後には本採用という目標ができ、継続意欲にもつながります。

募集者氏名の記載

職業安定法の改正により、募集者氏名の記載に関する規定が設けられ、求人情報を提供する際の透明性が向上し、労働者がより確実に情報を得られるようになりました。

法律が改正される前は、求人を募集する企業は会社名を公開するかしないかは選択でき、会社名を出さない企業もありました。会社名を公開すれば求職者からの信頼度も上がり応募者も増えるのですが、人気のある事務求人や有名企業では応募者が殺到してしまい対応しきれないというデメリットもあったのです。 ですが、企業側に立つのではなく、求職者のために安心して求職活動ができるように選択制であった会社名の公開を義務化しました。

募集者氏名の記載は、○○株式会社など、社名を記載します。大手企業の傘下など、アピールしたいグループ会社がある場合でも、求人企業とグループ企業が混同されるような表示をしないよう気をつけましょう。

派遣労働者の募集

改正職業安定法では、派遣労働者の募集に関する規定も明確化されています。派遣労働者として雇用する場合は、「派遣労働者として雇用する」旨を記載する必要があります。

労働者が正社員として働いているつもりであるにも関わらず、実際には派遣労働者として働いていたというトラブルを防ぐための明確な表示です。表示することで、求職者は具体的にどの場所で、どの条件で働くことになるのかを明確に理解できます。

以前は、求人票の就業場所に○○株式会社と記載があるから○○株式会社で働きたいと応募したのに、実際には○○会社は派遣先で、雇用主は派遣元の別企業であるという誤解がよく生じていました。このような誤解を避けるためには、明確な表示が重要です。

裁量労働制の場合

職業安定法の改正により、裁量労働制に関する規定も強化されました。裁量労働制とは、「働いた日の実際の労働時間にかかわらず、一定の時間を労働したものとみなす制度」です。

みなし労働時間が法定労働時間である8時間/日以下であれば、現実の労働時間が何時間であろうと、深夜勤務および法定休日の勤務を除き、時間外手当を払う必要はありません。

この規定が明記されていない場合、労働者は残業したのになぜ残業代が支払われないのかと疑問に思い、未払い残業代に関するトラブルに発展します。

このようなトラブルを防ぐためには、裁量労働制の規定を明確に記載する必要があります。裁量労働制では、労働時間が短くても賃金が引かれることはありません。このような制度があること自体を把握していない求職者も少なくありませんので、面接等の機会にきちんと制度の詳細から説明をするとよいでしょう。

固定残業代の明記

職業安定法の改正では、労働者の待遇に関する情報の透明性が一層求められ、「固定残業代」に関する規定が強化されています。固定残業代とは、あらかじめ、決められた時間分の残業代を支払う」制度です。これはみなし残業代とも呼ばれます。

決められた時間分の残業をしなくても支給される一方で、決められた時間の超過分は別途残業代として支払う必要があります。

求人票の賃金を高く見せるために、基本給に固定残業代を上乗せした金額を基本給のように見せる記載が見受けられるようになり問題視されています。求職者は、残業をした場合は別途残業代が支給されると思い請求すると、残業代は本給に含まれていると説明を受け、トラブルのもとになっているのです。

固定残業代を明確にするためには、以下のような記載方法が適しています。

  • 固定残業代と基本給は別々に記載する
  • 固定残業代として支払われる残業時間を明示する(〇時間)
  • 固定残業代の残業時間を超えた場合には、割増賃金を追加で支給する旨を記載する

職業安定法で企業が気を付けるべきポイント

職業安定法において、企業が注意すべきポイントは2つあります。

  1. 最低限掲示しないといけない条件
  2. 労働条件の変更は、速やかに明示する

最低限掲示しないといけない条件

最低限掲示しなければならない労働条件は以下のとおりです。

  • 業務内容
  • 契約期間
  • 試用期間
  • 就業場所
  • 就業時間
  • 休憩時間
  • 休日
  • 時間外労働の有無および時間
  • 賃金(臨時に支払われる賃金や賞与などを除く)
  • 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用の有無
  • 募集者の氏名または名称
  • 就業場所における受動喫煙防止措置の状況

これらの条件は、たとえ他社と比べて劣っているので出したくないと感じる条件であっても、正確に記載する必要があります。

業務内容については、さまざまな仕事を任せる場合は、すべての業務を明記します。就業場所も、一箇所でなく他の場所に移動する可能性がある場合も含め、すべての就業場所を記載しましょう。

また、賃金に関しては基本給を低く設定して各種手当を設定している企業もありますが、基本給表記に手当を含めた額を表示するなど基本給の水増し表示をしないよう注意が必要です。

労働条件の変更は速やかに明示する

労働条件の変更は、微細な変更でも求職者がわかるよう速やかに明示することが大切です。明示を怠ると、変更前の条件を信じた労働者との間で、トラブルが生じてしまいます。また、虚偽の表示や誤解を招く表示は、職業安定法によって禁止されています。

企業が意図していなくても、変更前の条件をそのまま表示していた場合、虚偽の表示と見なされ労働基準監督署の指導を受ける可能性があるため注意しましょう。

求人情報を最新の内容に保つために、定期的に求人情報を確認することが重要です。また、いつの時点の求人情報かを明示しておくと情報がいつのものか求職者は判断しやすくなります。

CTA12

まとめ

多くの企業が求人を活発に行っている今、改めて企業担当者は労働者を募集する際に守らなければならない「職業安定法」について知識を深める必要があります。

法律違反による指導や罰金刑のほか、応募者や従業員とのトラブル回避のためにも、労働条件について法律に沿った記載をしているかどうか、自社の求人情報について再度確認することをおすすめします。

著者プロフィール

マンパワーグループ株式会社

マンパワーグループ株式会社

世界70カ国・地域にオフィスを持ち、ワールドワイドに展開している人材サービスのグローバルカンパニー、ManpowerGroupの100%出資の日本法人。

リクルーティング、評価、研修、人材育成、キャリアマネジメント、アウトソーシング、人材コンサルティングなど、人材に関するあらゆるソリューションを世界的なネットワークで展開する総合人材サービス会社。

SNSでシェアする

  • ツイートする
  • facebookでシェアする
  • LINEで送る
  • LinkedInでシェア
  • はてなブックマーク

SNSでシェアする

  • ツイートする
  • facebookでシェアする
  • LINEで送る
  • LinkedInでシェア
  • はてなブックマーク