
目次
人材派遣は、知っているようで、関連する法律やNG事項を知らないというケースは意外とあります。
派遣を利用する前に概要をつかんでおくと、「派遣は目的にあっているか」を判断することができます。
派遣社員を受け入れる部署の方にも理解してもらえる資料をご用意しています。
企業が求めている人材を、柔軟に受け入れることができる人材派遣。「人材派遣の活用を視野に入れている」「派遣社員の受け入れを考えている」という採用・人事担当者向けに、人材派遣の特徴や3つの形態のメリット・注意点、人材紹介や業務委託との違い、派遣依頼から受入までの流れを解説します。
この記事をざっとまとめると
人材派遣とは、派遣会社と雇用関係にある人材を派遣してもらい、業務に就いてもらうサービスです。つまり、派遣社員は派遣先企業の業務に従事するが、派遣先企業とは雇用関係のない人材ということになります。
人材派遣の特徴は主に5つです。
人材派遣は、労働者派遣法(派遣法)によりさまざまなルールが存在します。
派遣法は、就業先の企業にも講ずべき処置が定められています。人材派遣サービスを利用する場合、派遣法に則した利用が求められます。
派遣先の講ずべき処置については、「派遣先の講ずべき措置とは?10 の指針について解説」という資料で詳しく解説しています。
人材派遣には大きなメリットが3つあります。
期間限定で必要な人材を速やかに確保できることが、人材派遣の大きなメリットです。
契約期間や勤務時間など状況に合わせて設定することが可能です。また、「長期」といったように具体的な期間を定めていない場合、3ヶ月程度の契約を更新しながら進めることができます。
就労規則の問題など、導入が容易ではない時短や週3日勤務なども設定でき、不必要な人件費がかかりません。
ただし、30日以内の日雇い派遣は、一部例外を除き派遣法により禁止されています。こちらについては、後述します。
派遣社員は、派遣会社が雇用主です。そのため、募集・採用、給与の支払い、社会保険手続き、健康診断などは派遣会社が行うため、採用コスト及び労務管理業務の負担が軽減されます。
ただし、業務に関する教育や有給取得への協力など、派遣先にも求められるものがあります。
人員不足や採用の長期化により、ビジネスの機会損失が起きることがあります。既存社員の業務負荷が高くなり、下記のようなビジネスの機会損失が起きている可能性があります。
一例
人材派遣は、派遣会社の幅広いタレントプールから適切な人材を提案してもらえます。派遣会社は登録者の増加に努めているため、新たな人材を見つけるためにゼロから母集団を形成する必要がありません。そのため、比較的迅速に労働力を確保することが可能です。
派遣社員は、派遣契約で定められた業務だけしか従事することができません。契約業務以外の依頼がしにくい、臨機応変な対応が難しいという一面があります。
突発的な残業や休日出勤などは、あらかじめ雇用契約書や就業条件明示書で定めておく必要があります。
人材派遣には、派遣法で定められた2種類の派遣期間に制限があります。
ひとりの派遣社員が派遣先企業の同一部署で働けるのは、原則3年までです。本人が希望しても就業することはできません。いわゆる「人で3年」というルールです。※1
業務に慣れてきたから、パフォーマンスが素晴らしいからといっても、期間制限を超えて派遣社員として働くことはできません。
派遣先企業の同一事業所が派遣社員を受け入れる期間にも制限があります。3年が限度ですが、事業所の労働者代表等に意見聴取を行い、合意を得ることで、延長が可能です。
※1 派遣会社と派遣社員が無期雇用契約を交わしている場合、この制限はなくなります。
経験者を迎え入れたとしても、企業によって処理の手順や、対応方法の微妙な違いはどうしても発生します。特に最初のうちは、業務の流れだけではなく、社内のルールなども案内しておく必要があります。
派遣社員の教育については、「派遣社員の教育は必要?労働者派遣法に対応した導入手順や方法を解説」で詳しく解説しています。
派遣料金は、「派遣社員の稼働時間」に対して請求されるものがほとんどです。そのため、相談・見積もり・派遣社員の紹介までは費用は発生します。
など、気になることがあればお気軽にご連絡ください。
人材派遣を利用する企業の理由はさまざまです。よくある活用シーンをご紹介します。
期間が限定されている仕事での活用は多くあります。
退職ではなく、社員が一定期間離脱する場合のカバーなどで派遣は活用されています。
昨今の採用難で、社員募集をしても人が集まらないことがあります。そのカバーとして人材派遣を依頼するケースも多くなってきました。
繁閑期がはっきりしていて、自社社員だと人件費の調整が難しい場合に活用されています。
新規プロジェクトの開始やビジネスの拡大など、企業の根幹となる業務に社員をアサインする場合、業務負荷がかからないように業務のアロケーションが必要になることがあります。
その際に、派遣社員を迎え入れて調整するケースも見られます。
他の人材サービスと人材派遣の違いについて解説します。
人材派遣 | 人材紹介 | 業務委託 | |
---|---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 自社 | 委託先企業 |
指揮命令 | 直接、指揮命令できる | 直接、指揮命令できる | 指揮命令できない |
費用 | 派遣料 | 紹介手数料 | 委託費 |
就業場所 | 派遣先企業 | 自社の指定場所 | 契約に基づく(委託先事業所か自社内の一部で) |
人材紹介とは、「人材紹介会社が、人材を採用したい企業(求人企業)と求職者を仲介し、就職をあっせんする仕組み」のことです。
人材派遣との大きな違いは、「人材を自社で雇用するかどうか」です。人材紹介は、自社で雇用する人材の紹介を受けるサービスです。一方、人材派遣は、派遣会社と雇用関係のある人材を派遣してもらう、つまり労働力を提供してもらうサービスです。
<費用>
人材派遣:毎月派遣料を支払う
人材紹介:成約時に紹介手数料を支払う
人材紹介の手数料率など、人材紹介についての詳細は「人材紹介とは|基礎知識と手数料、派遣との違いを解説」をご覧ください。
「業務委託(アウトソーシング)」とは、契約に基づいて外部の企業または個人に業務を委託することを言います。
人材派遣は労働力を提供してもらうサービスですが、業務委託は業務そのものを外部の企業・個人に代行してもらうサービスです。
人材派遣 業務の遂行は、自社。人材は外部から提供
業務委託 業務の遂行も携わる人材も外部
業務委託の場合、受託者(委託先企業または個人)と委託者(自社)の間に雇用関係も派遣契約もありません。そのため委託者に指揮命令権がなく、業務について直接指示することはできません。
多くの場合、人材派遣は時給制です。派遣社員が勤務した時間に応じて請求があります。
人材派遣サービスでかかる主な費用は以下の2つです。
派遣料金とはいえ、時間外労働や休日出勤の場合、割り増しがあるので注意してください。
派遣料金の詳しい説明は、「人材派遣の料金・費用|相場のつくられ方と仕組みを解説」で解説しています。
派遣料金の相場は、以下の項目の影響を大きく受けます。
派遣料金は、派遣社員への支払いに関連してきます。相場より下がってしまうと、仕事を受けてくれる派遣社員が見つからないといった問題が起きます。
上記の4つ以外にも雇用条件なども影響をすることがあるため、派遣会社は詳しい条件を確認しないと具体的な料金を伝えにくいのです。
人材派遣を活用する場合に知っておきたいのは、どんな人材が派遣されるか、という点です。ここでは、「職種」と「業務遂行のレベル」の2つの軸で解説します。
人材派遣の特徴にもなりますが、すべての職業において人材派遣サービスを利用できるわけではありません。また、派遣社員が多い職務にも特徴があります。
派遣法の定めにより派遣が禁止されている業務もあります。例外もありますが、下記の業務は原則派遣が禁止されている業務です。
派遣禁止業務については、派遣禁止業務とは?禁止の理由と例外や罰則を解説で詳しく解説しています。
人材派遣で働いている派遣社員の職種には傾向があります。
一般社団法人 日本人材派遣協会が発表した主な職種別派遣稼働者数の2022年10-12月平均値は以下のとおりです。
職種 | 稼働者数 | % |
---|---|---|
一般事務 | 192,750 | 63.6% |
機器操作 | 46,196 | 15.2% |
貿易 | 14,950 | 4.9% |
製造 | 11,503 | 3.8% |
軽作業 | 11,231 | 3.7% |
財務 | 11,231 | 3.6% |
情報処理システム | 8,186 | 2.7% |
営業 | 3,918 | 1.3% |
販売 | 3,359 | 1.1% |
上記は全ての派遣職種の分布を示したものではなく、IT系や介護領域などにおいても人材派遣サービスは活用されています。しかし、厚生労働省による「労働者派遣事業報告書」でも事務系職種の割合が圧倒的に多い傾向にあります。
派遣できる人材のスキルレベルについて、派遣法による制限はありませんが、一般的にはオペレーターレベルの層が多い傾向にあります。社会人経験や業務経験をある程度経験し、一般的なOAスキルなどを身につけている層です。
しかし、労働人口の減少や働き方の多様性が進んでいることを背景に下記のような人材派遣の活用も進んでいます。
一般的に派遣社員は、社会人経験と業務経験がある層ですが、キャリアチェンジをしたいという若年層を派遣するサービスが大手派遣会社を中心に提供されています。
若年層の採用は、企業においても大きな課題のひとつですが、人材派遣業界においても同様です。いくつかの人材派遣会社は、採用試験を行い無期雇用(正社員など)として若年層を雇用し、派遣社員として派遣しています。
管理職や専門性の高いポジションも任せられる人材を派遣するサービスもあります。活用の場面としては、新規プロジェクトのリーダーや休職中の管理職の代行、財務や購買といった専門性を必要とするポジションの一時的なサポート、などです。
派遣される人材は、特定の業務に精通している人材で、フリーランスで活動する人材なども含まれるケースもあります。
順番や内容が派遣会社によって多少異なることもありますが、大まかな流れは以下のとおりです。
条件、必要なスキル、人数、勤務開始日など必要な派遣社員の要件を派遣会社と打ち合わせます。
派遣の依頼については、「派遣会社に人材派遣を依頼する際のポイントを具体的に解説」をご覧ください。
派遣会社と労働者派遣基本契約書および労働者派遣契約書(個別契約)を取り交わし、契約締結します。
派遣会社にてマッチした人材を紹介されます。必要に応じ職場見学などを実施します。
契約内容に基づいて派遣社員が就業します。
派遣社員の受け入れについては、「派遣社員を受け入れるときに知っておきたいポイント」で詳しく解説しています。
派遣元の担当者が定期的に就業に関する相談や派遣社員へのフォローを行います。
人材派遣サービスを活用するにあたり、注意しておきたいポイントを解説します。派遣法に抵触しないためにも確認しておきましょう。
二重派遣とは、受け入れた派遣社員を派遣先がさらにクライアントへ労働力として提供することを指します。二重派遣は、派遣法により禁じられているため、人材派遣サービスを利用する際には気を付けておきたいポイントです。
二重派遣については、「二重派遣とは|基本知識と罰則、防止策を解説」で詳しく解説しています。
いわゆる単発や30日以内の短期間派遣は、2012年の改正労働者派遣法で原則禁止となりました。
但し、例外となる人材と例外となる業務があります。詳しくは、「派遣禁止業務とは?禁止の理由と例外や罰則を解説」をご覧ください。
人材派遣を利用する場合、派遣先企業が責任をもって対応することがあります。一例としては、下記などがあげられます。
これ以外にも派遣法を遵守すべく、派遣先責任者の設置や抵触日等の管理、派遣先管理台帳の作成などがあります。詳しくは、「「派遣社員の管理」派遣先に求められる対応とポイントを解説」をご覧ください。
派遣サービスを利用する場合、受け入れる側の企業にも対処すべきことが派遣法では定められています。派遣先が講ずべき措置として、以下のようなことについて10の指針が出されています。
理解が難しいこの10の指針をわかりやすく解説した資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
⇒「派遣先の講ずべき措置とは? 10の指針について解説」をダウンロードする
派遣会社を選ぶ際のポイントはいくつかあります。複合的になりますが、自社の案件に合いそうであれば、まずはコンタクトを取ってみましょう。
大手の派遣会社は幅広い職種をカバーしています。一方、販売系やIT系、通訳など特定の職種に特化している派遣会社もあります。
就業場所に派遣会社の拠点があるかも選ぶ基準になります。大手の場合は、全国対応していることが多く、また地域特化型の派遣会社もあります。
マッチした人材を紹介してもらうためには、人材派遣の母集団となる登録者数を確認しておきましょう。登録者数は、ホームページなどで公表しています。
自社の業務に就いてもらう場合、社内情報にアクセスする機会も多く、業務内容によってはクライアントやカスタマーの個人情報を取り扱うこともあるでしょう。
プライバシーマークなどをはじめとした個人情報保護やセキュリティ関連の各種認証の取得や派遣社員への教育など情報保護への姿勢は、チェックポイントのひとつです。
はい。派遣社員の残業や休日出勤については派遣元の36協定が適用されるため、派遣元の36協定内容の範囲内であれば対応可能です。個別契約書の記載事項となるので、個別契約締結時に確認することになります。
派遣先責任者とは、派遣元との連絡調整や派遣社員の雇用管理等を行うことを任された派遣先の担当者です。 派遣元が派遣元責任者を選任するのと同様に、派遣先で派遣先責任者を選任する必要があります。
事業所における派遣社員数が1人以上100人以下につき、1人以上の派遣先責任者の選出が必要です。
派遣元責任者の役割に関しては、「派遣先責任者とは|役割と選任基準をわかりやすく解説 」でさらに詳しく解説しています。
派遣会社は派遣社員に対して、派遣先での就業前にその派遣先での就業内容・条件などを記した就業条件明示書を明示しなければならないことが法律で決められています。
そのため、契約内容を変更しない限りは、当初の契約で定めた以外の業務の指示を出すことはできません。契約内容を変更するには、派遣元と協議の上、変更内容を派遣元と派遣社員に合意を得ることが必要です。
契約期間の途中で解除することは基本的にはできません。やむを得ない理由があり、派遣会社の合意を得られれば可能ですが、注意点があります。
派遣契約の変更については、「社労士が解説!派遣契約の変更・更新・終了に関するルール」でさらに詳しく解説しています。
可能です。ただし、派遣就業の場所は、派遣契約書や就業条件明示書に記載しなければならない事項です。
例えば、「派遣労働者の自宅」など、在宅勤務に関する事項を明記する必要があります。契約内容を変更するには、先述の通り派遣元と協議の上、変更内容を派遣元と派遣社員に合意を得なければいけません。
派遣社員の在宅勤務については、「【企業向け】派遣社員の在宅勤務 注意点と管理について解説」でさらに詳しく解説しています。
人材派遣の特徴、人材派遣の3つの形態とメリットや注意点、人材紹介や業務委託との違い、派遣依頼から受入までの流れを見てきました。人材派遣サービスを活用することで、採用の間口が広がり、人材に関する課題解決につながることが期待できます。人事担当者の皆様、人材派遣の活用を視野に入れた採用活動を検討されてみてはいかがでしょうか。
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