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試用期間とは?基礎知識とよくあるトラブル・対処方法を紹介

掲載日2021年7月13日

最終更新日2021年10月26日

目次

    試用期間中の労働条件は、通常の雇用時と若干の違いがあります。しかし、この違いはあまり正確に知られてはいません。

    今回は「試用期間」の意味から雇用条件の違い、企業と労働者の見解の違いによるトラブルの対処法まで解説します。

    試用期間とは

    試用期間とは、入社した社員が「実際に業務を遂行する能力を持ち、また社風を理解し会社の戦力となり得るか否か」を企業が判断する期間のことを言います。

    また、逆の立場で考えると、企業に採用された労働者が「業務内容や社風が自分の希望に合っており、継続して勤務できるか否か」を判断するための期間だとも言えるでしょう。そして試用期間の終了後、企業と労働者の双方が問題ないと判断すれば、本採用になります。

    試用期間と研修期間の違いとは

    「研修期間」とは、入社後に会社の業務を行うにあたって必要な知識や技術を習得するための期間のことを言います。研修は座学とは限らず、実際の業務を行いながら覚えていく内容のものも含まれます。また、社内で行う場合もあれば、社外(研修機関など)で行う場合もあります。

    本来、研修期間と試用期間の意味は違いますが、企業によっては「試用期間」と同じような意味で捉えていることもあります。

    試用期間を企業が設定するメリット

    企業の多くは、履歴書や職務経歴書での書類審査や面接をしたうえで新人を採用しますが、それだけでは本当に会社の戦力となる人材かわからないのが実情です。試用期間を設けることで、実際に仕事をしている様子を見て業務への適性を判断できます。社風への適応力や協調性なども見極められるので、より自社に合った人材を採用しやすくなるでしょう。

    試用期間を企業が設定するデメリット

    試用期間中は企業側だけでなく、採用された労働者も「この会社でやっていけるのか」ということを業務の中で確認・判断しています。試用期間の終了時に会社側が本採用を希望しても、労働者側が希望せず、本採用に至らない場合もあります。

    また、中途採用の場合、求職者の中には試用期間なしの本採用であることを条件に入れている人もいます。その場合、試用期間があることで求職者から敬遠される可能性があります。
    また採用予定者に複数の企業から内定が出ている場合には、試用期間の有無や長さが辞退につながってしまう恐れもあります。

    試用期間を設定する際の3つの注意点

    入社時に試用期間を設けている企業は多いと思われますが、設定する際には次のことに注意する必要があります。

    契約書に記載すべき情報

    労働者を雇用した際、企業は労働者に対して雇用条件を記載した「労働条件通知書(一般的には契約書を兼ねた「労働条件通知書兼雇入通知書」)」を作成し、交付しなければなりません。(労働基準法第15条)

    試用期間を設ける場合には、その期間・賃金などの処遇について、通知書や契約書など書面への記載と本人への説明が必要です。また、就業規則にも試用期間があることや、試用期間中の身分・労働条件について明記する必要があります。

    試用期間の設定

    試用期間の長さは法律上の決まりはありません。企業が独自で業務ごとの修練の期間を勘案し設定している場合がほとんどで、正社員採用では6カ月未満とする企業が多いようです。

    試用期間中は労働者の身分が不安定な立場にあることを留意する必要がありますので、試用期間を1年超で設定するのは長すぎると言えるでしょう。仮に企業がそのような試用期間を設定した場合、公序良俗違反(民法90条など)に該当すると見なされ、試用期間が認められない場合もあります。

    また、契約社員やパート、アルバイトなど、雇用形態にかかわらず試用期間を設けることは可能ですが、業務の性質を考えると正社員に比べ期間は短い場合が多いでしょう。

    試用期間中の待遇

    試用期間中は、本採用時より賃金が低く設定されているケースがありますが、法律で定められた最低賃金を下回らない範囲であれば問題はありません。労働時間は既存の労働者と同様となり、残業が発生したら残業代の支払いが必要です。

    また労働保険(労災保険、雇用保険)と社会保険(健康保険、厚生年金)などは、本採用後からではなく入社時からの加入が必要です。試用期間中かどうかにかかわらず、被雇用者全員に労災保険の加入が必須であり、そのほかの保険に関しても、未加入でいることが法律違反となるおそれがあるので注意しましょう。

    試用期間中の解雇は可能か?

    労働基準法において、企業が労働者を解雇することについては厳しい制限が設けられています。
    しかし、試用期間中であれば、採用した労働者の業務における職業能力や適性の有無などから判断し、企業側が本採用の可否を決めることが可能です。このことを「解約権留保付労働契約」といい、留保解約権の行使による解雇は通常の解雇に比べて広範囲で認められています。

    労働者側からすると、企業側が不適格と判断すれば労働契約が解除されてしまうので、通常の労働契約と比べて不安定な雇用状態だと言えるでしょう。

    とはいえ、どんな場合でも企業が留保解約権を行使して労働者を解雇できるわけではなく、解雇理由として客観的・合理的・社会通念上やむを得ない理由であることが求められます。企業側で相応の改善策も取らずに、ただ単に「仕事の覚えが悪いから」「雰囲気が社風に合わないから」などの理由で解雇することはできません。

    試用期間に関するよくある質問・トラブルと対処方法

    試用期間中におこる主な疑問・トラブルと対処方法を紹介します。

    試用期間中の労働者を本採用するか判断がつきかねるが、解雇するほどではない。期間を延長したいが、どうすればいい?

    試用期間を当初の設定より延長し、その上で本採用の可否を判断したいと考えるケースは少なくありません。
    例えば、試用期間中に該当の労働者が病気やけがなどの諸事情で長期間会社を休んだ場合、企業側は試用期間内に業務への適性を判断するという目的が達成されません。そのほか、勤務態度に問題があるが解雇するまでには至らず、もう少し様子を見たいということもあるでしょう。

    試用期間の延長は合理的・客観的な理由があれば、本人の合意を得たうえで可能とされています。また就業規則で延長規定を定めている場合は、その理由に該当していれば、問題なく期間延長をすることができます。延長を検討している際には、就業規則を確認のうえ、労働者本人との話し合いを設けるとよいでしょう。

    試用期間中に労働者を解雇したいが、どうすればいい?

    試用期間中または終了時に、下記のような理由から労働者の解雇を検討する企業が見られます。

    • 「業務に対する能力不足」「健康状態がよくない」「経歴詐称」などの一般的事由
    • 遅刻、早退、欠勤が多い
    • 勤務態度が悪い
    • 協調性がなく社内の人間関係になじめない

    しかし、通常時より解雇理由の範囲が拡がるとはいえ、上記のような理由では即刻解雇はできません。解約留保権を行使するためには、下記のような条件が必要になります。

    • 適格性判断の根拠(勤務成績・態度の不良)を具体的に証明し、解雇の妥当性を示せること
    • 企業が採用決定後に調査した結果、または試用期間中の勤務状態などによって、当初知らなかった(または知ることが期待できなかった)事実が判明し、その事柄により労働者を継続して雇用するのが適当でないとする判断に対して、妥当と認められること

    ただし、上記のような条件に当てはまったとしても企業側が自由に解雇できるわけではありません。
    例えば、勤務成績に問題があったとしても、改善策の教示や教育の機会の提供など、企業側にも相応の努力が求められます。
    また、経歴詐称などが判明した場合であっても、社内の秩序や業務に問題がなければ解雇は認められません

    企業側としては労働者の業務、指導内容や勤務態度等について必ず記録を取り、その内容を客観的にチェックしたうえで、問題箇所に対して相応の改善指導や教育を繰り返し行うことが重要です。それでも成果が見られなかった場合に解雇するかどうかを判断することになりますが、解雇する場合は法律で決められたルールに従って行うことになります。

    解雇の理由をめぐっては、雇用者と労働者側の食い違いからトラブルに発展する事例が特に多いので注意が必要です。

    試用期間中の解雇にあたって、解雇予告等をどうすればいい?

    試用期間中に労働者を解雇する際の手続きは、試用期間の開始日から14日以内か、14日を超えるかによって違いがあります。

    労働者を試用期間開始日から14日以内に解雇する場合

    解雇予告なしに当該労働者を解雇することができます(労働基準法第21条)。
    ただしこの規定は、企業側からいかなる理由でも解雇できるものではなく、解雇の理由として「客観的・合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる」ことが条件です。

    労働者を試用期間開始日から14日を超えて解雇する場合

    企業側は通常解雇と同様の手続きを行う必要があります。通常解雇の手続きとは、「少なくとも30日前に当該労働者に対して解雇予告を行う」「30日前に解雇予告しない場合、解雇までの日数に応じた日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う」というものです。

    試用期間中だからといって「もう明日からこなくていいよ」にはなりませんので、注意しましょう。

    試用期間中の労働者が退職したいと言い、突然出社しなくなってしまった。どうすればいい?

    試用期間中の場合でも、会社の労働者として扱われます。そのため、就業規則などで退職の申し出に関する規定があればその指定期日、規定がない場合は原則として退職希望日の2週間前までに退職を申し出ることが必要です(民法第627条)。労働者は「試用期間中だから嫌になったらすぐに会社をやめられる」と思っているかもしれませんが、それは認められないということです。

    対処法としては、「退職の意向を示した直後に出社を辞めることは認められない」ということを伝える必要があります。また、試用期間開始時に「退職したい場合の手続き」について書面などで伝えておくことで、このような状態もある程度避けられるでしょう。

    労働者から、試用期間中の賞与や年次有給休暇を要求された。どうすればいい?

    賞与

    企業で賞与を支給する際に、賞与の査定期間に試用期間を含むか含まないかは、企業で独自に決めることができます。理由は、賃金と違い、法律上は賞与の支給義務は定められていないためです。ただし、賞与制度がある企業であれば、支給基準は就業規則などに記載が必要で、試用期間中の扱いについても明示する必要があります。また、労働条件通知書などの交付時に、労働者本人への説明を行うことも必須です。

    試用期間開始時に説明をしたうえで、労働者の求めに応じ、制度の有無や支給基準に基づいて対処するとよいでしょう。

    年次有給休暇

    年次有給休暇は、6カ月間の継続勤務期間に全労働日の8割以上出勤した場合に付与することになっています(労働基準法第39条)。「6カ月間の継続勤務」には試用期間中も含まれるので、年次有給休暇の基準日(有休を付与する日)は本採用した日からではなく、入社日から数えます。

    該当労働者が試用期間中に6カ月間の継続勤務を迎えた場合は年次有給休暇の付与が必要ですので、忘れず対応しましょう。

    まとめ

    試用期間について、労働者、企業の双方がルールを知らないことでトラブルが発生するおそれがあり、場合によっては訴訟問題へと発展する可能性もあります。それだけ「会社に雇用される」「労働者を雇う」ことは、お互いにとって社会上意味の大きいことなのです。試用期間という制度をよく理解し、労働者や企業にとってプラスになるよう活用していきましょう。

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    著者プロフィール

    木村政美(社会保険労務士・行政書士)

    FP事務所きむらオフィス所長 2004年事務所開業。企業の労務管理全般を得意分野とし、顧問先や各種相談会での相談業務、セミナー講師、執筆活動などを幅広く行っている。2020年度より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

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