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有効求人倍率の上昇・売り手市場の継続と、採用の難しさをあちらこちらで耳にすることが多くなっています。このような時流における、少しでも効果を上げるための求人広告作成のコツをご紹介します。
毎年、求人広告掲載件数は過去最大件数を更新しており、世の中はインターネットやフリーペーパーなど媒体種別を問わず求人情報で溢れかえっています。掲載数が増加しているため、たとえ出稿しても数多くの情報の中から自社の広告を見てもらうのは、年々困難になっています。
「どんな求人内容なのか」は仕事を選ぶ際の重要なポイントです。そのため、求人内容の情報が少なすぎたりどんな仕事をするのかイメージがわかなかったりすると、なかなか応募につながりません。
また応募者は、仕事の内容だけではなく職場の雰囲気も大事にすることが多いため、職場の雰囲気が伝わる原稿と、まったく伝わらない無機質な原稿では応募率が変わります。
写真を活用して職場の雰囲気を伝えることや、どんな仲間とともに働くのかを伝えることも大事です。
自社の求めているターゲットにあわせた求人媒体や求人内容ではないことも応募が集まらない理由の一つです。
例えば学生を対象としている場合、勤務時間や休日のとり方が学生に響くように原稿が書かれているかという点や、学生が活用する求人媒体を選んでいるかなどを確認することが重要です。ターゲットにあった媒体・内容になっていないと、広告を出稿しても応募が来ないという事態になってしまいます。
採用市場を踏まえた条件や応募資格(応募要件)になっているかも重要なチェックポイントです。応募要件として相手に求めるものが多すぎたり、応募要件と報酬条件がミスマッチだったりすると応募が集まりません。
またパート・アルバイトの採用では、応募者の検討条件として就業時間なども重要であるため、応募者が集まらない場合はシフト勤務などを柔軟に取り入れるなど、市場感にあった条件に変えていく必要があります。
求人広告の例をもとに「ダメな求人広告」と「よい求人広告」について解説します。
原稿からワクワク感がなく、他の事務案件と比較して目を引くポイントのない原稿になってしまっています。また、冷たい印象を与えてしまっています。
■タイトル:<急募>事務職
■仕事内容・アピールポイント
具体的には下記の点において改善が必要です。
親近感のある文章のタッチで、「自分でもできるかもしれない、馴染みやすそう」という雰囲気が伝わります。
■タイトル:週3日、1日4時間からOK! 服装自由のオフィスワーク!
■仕事内容・アピールポイント
下記の点が訴求力に繋がっています。
ここではよい例とダメな例を紹介しましたが、実際の原稿内の言葉の選び方などの具体的な原稿内容の作り方については、後の章で解説します。
求人広告を作成する前には、ターゲットの明確化や、ターゲットに響くポイントの整理など、事前に準備しておくことがいくつかあります。事前準備をきちんとしておくと、求人原稿を作成する際にターゲットに響く内容をスムーズに作り上げられます。
まずは、持つスキルや属性など、どういう人が今回の求人のターゲットなのかを明確にしましょう。
そのターゲットが「自分もやってみたいな」もしくは「自分にもできるかも!」と思えるような原稿にしていく必要があるため、なるべく具体的に人材のイメージを作るようにすることをおすすめします。
ターゲットが明確になったら、その対象者が仕事を探す際に重要視するポイントを整理します。
一般的に、パート・アルバイトを探す際には「就業時間」「就業場所」「給与」は大事な軸ですが、主婦と学生では希望する就業時間や給与なども違います。仕事内容・勤務地なども含めて、そのターゲットに刺さるポイントを分析して「ターゲットにとっての魅力的なポイント」を織り交ぜた原稿にしていくとよいでしょう。
訴求力のある求人広告を作成するための4つのポイントをご紹介します。
原稿を作る際には、使用する単語選びにもコツがあります。ここでは、応募が伸びる単語の選び方を解説します。
社内や業界内では当たり前の用語も、未経験者にとっては分からないものがたくさんあります。
一例を紹介します。
「ピッキング」とは、工場や流通業界でよく見られる、倉庫から品物を集めてくる仕事です。
とはいえ、未経験者からすると「ピッキングって、鍵を使わないで扉を開けちゃうアレのこと......?!」とまでは思わないものの、具体的な仕事内容を思い浮かべられないものです。伝票や注文書のとおりに、商品や製品を選び出す作業のことですので、「カンタン作業!大募集!」の方が、応募は確実に伸びます。
こちらの職種もよく見かけますが、一般的に知られている用語とは言いにくく、未経験者への訴求が弱くなってしまいます。
グロサリースタッフとは、スーパーマーケットでの生鮮食料品以外の商品補充・値付け・商品管理などを担当するスタッフのことです。こちらのケースも品出しが中心の業務ですので、「未経験OK!店内での品出し業務 」や「カンタンな作業」などと記載すれば、分かりやすく、効果も出やすくなります。
ピッキングの募集を例にあげると、以下のような表記がおすすめです。
このように記載すれば、「カンタンそう!」「自分でも大丈夫そう」「(友達が少ない自分でも)受け入れてもらえそう」などと捉えてもらいやすくなり、応募に繋がる可能性が広がります。
また、未経験者へのメッセージで気をつけていただきたいのが「研修」に関する記載です。研修があるというメッセージは、未経験者に安心感を与えることが出来ますが、そこにも一工夫が必要です。以下の2つの例をご覧ください。
「研修あり!丁寧に指導しますので安心です」
「研修あり!教えてもらえる環境なので安心です」
企業内では、導入時研修やOJTのことを「指導」と表現することも多いですが、最近の応募者にとって「指導」という単語は、「見張られている」「厳しくされる」というネガティブなイメージが強く、 印象が悪い傾向にあります。一方、求職者目線に立った「教えてもらえる」という表現の優しさに魅力を感じる人が増えています。
多くの求人情報の中から選んでもらうためにも、「働く側のメリット」をわかりやすく織り交ぜることが重要です。
また求人のタイトルもしくはキャッチフレーズに、端的にメリットを表現する言葉を入れましょう。読み進めないと内容のわからない本文に書くのではなく、タイトルや冒頭など目につきやすい位置にメリットを入れ込むことがポイントです。
「未経験OK」「土日休み」「週2~OK」「交通費あり」「カンタン」「大手」
など、人気ワードランキングにあがってくるものを必ず入れ込むようにして下さい。人気ワードランキングは、アルバイト情報誌やアルバイト情報のWebサイトなどで調べることができます。
その職場が簡単にイメージ出来ることはもちろんですが、自分がそこにいたら楽しそうと思える写真を選びましょう。
ピッキング作業中の写真を入れるなら、重そうなものではなく、軽いものをピッキングしている写真を選ぶなどの工夫をしてみるのも効果的です。また、女性の笑顔のアップなどは、男女共に明るさと楽しさがイメージされるようで、応募が伸びる傾向があります。
求人広告を作る際、「フルタイムOKな人」「土日も出てくれる人」など、自社が欲しい人物像ばかりを記載してしまう傾向はないでしょうか。もちろん、条件外の方からの応募が増えても意味がないのですが、募集に苦慮しているのであれば、出来るだけ求職者目線に立ち、間口を広くした内容で作成してみましょう。
パート・アルバイトの採用では、学生・主婦・主夫・シニアなど、働きたいけれど時間に制限のある人を、いかに上手に取り込んでいくかが肝となります。学生のように長期休みの際に比較的多くの時間をアルバイトに割ける人や、主婦・主夫のように家庭とのバランスで1日の働く時間に対して制限のある人もいます。
そのため、勤務日数も「週3」や「週2」の組み合わせを可能にしたり、1日の働く時間を短くする「短時間勤務」を可能にしたりなど、柔軟性なシフト勤務を行えるようにできるのが理想的です。求人広告にも、「柔軟な勤務日数」「短時間勤務」が可能である旨を記載し、アピールできるとよいでしょう。
求人広告を書くときの注意点を解説します。
求人募集時には主に下記の4つの法律が関わります。
これらの法律の中には、先述した求人募集時に必ず記載が必要な項目について定めた法律もあれば、求人募集時に記載してはいけない項目に関する法律もあります。
例えば、「年齢~30歳まで」などの求人対象者の年齢を限定する表記(一部例外事由あり)や、「主婦歓迎」などの性別を限定する表記、そのほか「日本人限定」「通勤時間1時間以内の方」などの国籍や地域などを限定する表記は法律で禁止されています。
意図的であるかなしかに関わらず、特定の人たちを排除するような表現になっていないか、多くの人の目に触れるものとして問題ないかどうかを事前に確認した上で応募資格者の表記内容を作成するようにしましょう。
また賃金の設定に関しては、各地域の最低賃金を下回らないように注意が必要です。
求人時に注意しておくべきこととして、「職業安定法」(労働者の募集などに関することを定めた法律)に定められているルールを押さえておく必要があります。
例えば「職業安定法」では求人募集時に「労働条件の明示」が必要とされています。これはアルバイト・パートであっても必要になりますので、求人に記載が必要な項目に抜け漏れがないようにしましょう
※求人広告媒体は、原稿フォーマットに必須項目が最初から網羅されていることがほとんどですが、不安な場合は求人広告会社とも確認しながら進めてください。
上記は記載が求められる一部になります。そのほかの明示が求められる事項とともに詳細は下記を確認ください。
近年の傾向として、応募者は会社の良い部分だけではなく悪い部分も含めたリアルな情報を求めています。会社や求人のポジティブなアピールだけではなく、ネガティブな情報もあえて開示することで信頼感や共感を得られる傾向があります。
ポジティブな情報だけを開示して採用を行い、採用者が実際に働き始めてから実情とまったく違うことが判明すると、早期退職のおそれもあり、企業にも応募者にもマイナスになってしまいます。募集の段階から実際のリアルな情報を開示することをおすすめします。
応募を検討する方の中には「自分にできるのかな?」という不安を抱く方も多いため、「応募資格(求める経験)」の部分はターゲットとなる方が「私でもできそう!」と思えるように具体的に記載するとよいでしょう。
また、歓迎要件として「こんな経験もあれば尚可」と多くをつい記載しがちですが、ハードルが上がり応募を躊躇されてしまうおそれがあるため、歓迎要件であっても多くを書きすぎないように気をつけましょう。
アルバイト・パートでは、応募者の動きに年間で変動があります。例えば、学生の長期休み前の時期や、主婦・主夫であれば子どもの入学・進級などが落ち着いた時期などに応募者の動きが活発になるため、その状況に合わせて原稿内容の変更や媒体の調整をすることが重要です。
また、掲載後も応募者や応募数の変動をウォッチしながら、応募者が集まる原稿内容へと常に改善していくことも必要です。
求人広告の短い原稿の中でいかに自社の魅力や求人の魅力を伝えられるかは、事前の準備や原稿内の言葉選び、情報開示の仕方などの細部に渡る配慮が必要です。まずはどのような人材を求めていて、自社の業務にどのような魅力があるのかを明確にできるよう、自社の客観的な分析から始めてみるとよいでしょう。
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