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苦境が続く新卒採用のためにどのような採用手法を取り入れるべきか、このままでいいのかなど母集団形成に課題を持ってはいないでしょうか。
本記事では主に大学・短大を対象とした新卒採用で、学生に自社の採用情報を届けるためにどのような手法があるか、具体的な内容とそのメリット・デメリット、費用の目安、自社で抱える課題別におすすめの手法まで解説します。
新卒採用で用いられる代表的な採用手法について、その特徴やメリット・デメリット、費用の目安について解説します。
マイナビ、リクナビなどの就活サイトは、エリアや学部学科を問わず多くの学生が利用する定番の広報手法です。
政府の「就職・採用活動に関する要請」に基づき、採用広報活動開始時期である卒業・修了年度に入る3月1日にオープンし、翌年3月末まで求人情報を届けることができます。
企業側が自社の情報を掲載し、学生がさまざまな条件でその情報を検索、興味を持った企業に「エントリー」して企業側に個人情報を届ける仕組みです。
上位表示など多彩なオプションがあるのも特徴で、費用も無料で利用できる媒体から数十万円~数百万円以上と幅広く、就活サイトとオプションの組み合わせによって大きく異なります。
多くの学生にアプローチできる定番の手法として企業規模や採用人数を問わず幅広く利用されています。
なお、卒業・終了年度前の主に大学3年生以下の学生向けにインターンシップ情報を届けるインターンシップ情報サイトはその前年の4月1日にオープンします。キャリタス、ワンキャリアなど、卒業年度を限定しない就職情報サイトも登場しています。
メリット | 多くの学生に利用されており、学生管理システムとしても活用できる。 |
デメリット | 多くの企業が利用するため、埋もれてしまう可能性もある。 |
費用 | 無料~数百万と幅が広い |
経験者採用の定番である人材紹介ですが、学生の人材紹介サービスの利用も増えています。
求人条件や求める人物像に合った学生に人材紹介会社がリーチし、面接後内定に至った場合に1人当たり数十万円~の成功報酬を支払う仕組みです。費用は一般的に経験者採用で設定されているものより安価であることが多いですが、理系学部学科など条件によって多少異なります。
新卒向けの人材紹介会社は多数あり、会社によって得意な業種や学部学科が異なるなど、人材紹介会社の選定が重要です。
メリット | 採用面接だけに集中できる。採用できなかった場合は費用発生がない。 |
デメリット | 対象によっては採用が難しい。多数採用の場合は費用負担が大きい。 |
費用 | 成功報酬で数十万円(1名あたり) |
ダイレクトリクルーティングは比較的新しい新卒採用の手法です。就活サイトでも人材紹介でも「情報を公開し、応募や紹介を待つ」というスタイルでしたが、ダイレクトリクルーティングは人材データベースの中から自社に合った人材を探し出し、1人1人にメッセージを送って応募を促す「1本釣り」なスタイルの採用手法になります。
学生の登録した自己PRや学生時代に力を入れて取り組んだことなどの内容を見て、パーソナライズした上でオファーメールを送るのがポイントです。
新卒を対象にしたサービスとしてOffer Box、キミスカなどのスカウト型就活サイトがあります。逆求人型、オファー型などとも呼ばれます。
なお就活サイトのサービスにもある「スカウト」との違いは、対象者の絞り込み方です。スカウトは住所や学部学科などの属性に当てはまる会員に一斉送信するため、個人向けのオファー文面にはなりません。
メリット | 待つだけでは自社に興味を持たなかった層の学生と出会える。 |
デメリット | 業務の工数が多く、必ずしも自社がスカウトしたい層とマッチしないことも。 |
費用 | 成功報酬型で1名につき数十万円、定額型で数十万円~数百万円 |
最も昔からある手法です。合同説明会は大きく分けてリアルイベントとオンラインイベントがあります。リアルイベントは会場に各企業のブースを設置し、学生に自由に立ち寄ってもらい会社説明や質疑応答をするものです。
最近増えてきたオンラインイベントは、zoomなどを活用しタイムテーブルを区切って企業説明を行ったり、グループを作成して座談会を行ったりするものです。
上記就活サイト業者をはじめ、地域の商工会議所やハローワーク、大学キャリアセンターなどさまざまな主催者の合同企業説明会があり、費用は公的機関やキャリアセンター主催であれば無料もしくは実費程度の負担、就活サイト業者主催であれば1イベントにつき数十万〜必要です。また、リアルイベントの場合、配布物やブースの装飾、運営スタッフの手配など、当日の集客のための費用も必要になります。
メリット | 直接交流することで志望度を上げられる機会になる。 |
デメリット | 拘束時間が長く対応する人員が必要。時期や地域が限定される。 |
費用 | 無料~数十万以上 |
採用直結型のインターンシップが2025年度新卒採用より公に認められることになりました。これまでも罰則規定はなく、インターンシップで得た学生の情報を採用活動に利用する企業も少なくありませんでしたが、一律禁止の要請がなくなったことで要請を遵守してきた大手企業も積極的にインターンシップを取り入れるようになっています。
それに応じて学生のインターンシップ参加意欲も年々高まり、企業規模や地域を問わず導入企業が増えています。
インターンシップ応募者を集めるための費用は様々で基準はありませんが、本選考のための手法と比較すれば安価で済むことが多くなります。
メリット | 早期から学生の志望度を醸成できる。囲い込みをしやすい。 |
デメリット | 受け入れの限度がある。採用担当者以外の社内の協力が不可欠。 |
費用 | 募集広告費、開催にかかる費用 |
社内の若手社員のネットワークを活用し、大学時代の部活・ゼミの後輩などに声をかけ、会社の情報提供をするのがリクルーター制度です。いわゆる「リファラル採用」の一種になります。
直接学生とのつながりがあり、リクルーターとして相応しい対応ができる社員がいること、業務時間を割くことに社内の理解が得られることなどの制約がありますが、マッチングがうまくいけば信頼のおける学生を迎えることができます。
面談時の飲食代や交通費についてどのように費用に含めるか、あらかじめ取り決めておきましょう。
メリット | ミスマッチが起こりにくい採用ができる。 |
デメリット | リクルーターとなる社員の本来業務への支障が生じる。 |
費用 | 飲食代や交通費など |
X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなど、若い世代に受け入れられているSNSを活用して自社の採用情報を発信し、応募に繋げる採用手法です。
「バズる」ために必ずしも会社の知名度が最重要ではなく、コンテンツによっては広く拡散する可能性があります。
基本的に企業アカウントを開設するのに費用は必要ではありません。SNSによってはフォロワーとの交流のための仕組みを導入でき、その構築に料金が発生する場合があります。
メリット | 企業規模や知名度に関わらずフォロワーを集められる可能性がある。 |
デメリット | 工数がかかり、必ずしも採用に直結する反応があるとは限らない。 |
費用 | 無料~ |
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自社で持つWebサイトなどの広報媒体を言います。
コーポレートサイトとは別に採用専用サイトを立ち上げたり、学生の役に立つコンテンツを作ったりすることで、自社メディアに直接学生を呼び込む手法です。
費用はオウンドメディアの制作・運用費になるため、0円~数千万円単位まで幅広くなります。
メリット | 情報量が多いため、ミスマッチを減らし志望度を向上させることができる。 |
デメリット | 立ち上げの時間と手間、運用の負担が大きい。短期的に効果が見えにくい。 |
費用 | Web制作費やコンテンツ制作費 |
各大学のキャリアセンターは求人票の受付を行っています。大学指定フォーマットのみ受付の大学も一部ありますが、ほとんどは企業の任意で作成した求人票も受け付けます。また、書類送付の形式ではなくオンライン上での送付も可能です。多くの大学に一括求人票送付ができるサービスもあります。
費用は郵送費や印刷費程度で安価です。
メリット | 費用が掛からず、時期や地域を選んでピンポイントに情報発信できる。 |
デメリット | 必ずしも多数の反応があるとは限らない。 |
費用 | 郵送費など |
新卒採用の代表的な9つの手法について解説しました。しかし、その特徴を自社の新卒採用にどのように取り入れるべきか判断が難しいとお感じになるかもしれません。
新卒採用にあたって多くの企業が抱える課題について、どのように取捨選択すべきか課題別におすすめの手法を紹介します。
最も多くのお悩みといえるのが、採用にかけられる人員不足です。単純に人員数の不足の場合もあれば、採用実務の経験者がいないという場合もあるでしょう。
いずれにせよ、即座に対応することが難しいことが少なくありません。このようなケースでは、SNS採用やダイレクトリクルーティングのような工数が多く、経験から判断する必要の多い手法よりも、ある程度流れがわかりやすい就活サイトや、面接だけに集中できる人材紹介などの手法を選ぶことをおすすめします。
もし採用担当者を増やさずにダイレクトリクルーティングやSNS採用などに取り組みたい場合、外部サービスを利用し人員不足をカバーすることも検討してみてください。詳しくは「採用支援サービスの種類と選び方を徹底解説」で解説しています。
「十分な数のエントリー数は集まっているが、ターゲットからの応募が少ない」というケースでは、そのターゲットに合わせた手法の選択が重要です。
たとえば「本社エリアは十分な採用ができているが、支社で配属予定の採用ができない」というケースや「営業と事務職は問題ないが、技術職、特に機械学科出身の学生が毎年未達である」というケースでは「総合職採用」とは別枠で広告を出し、ターゲットにだけ刺さる訴求を行ってみるのもよいでしょう。
「少数の募集だが採用できない」というケースでは、ダイレクトリクルーティングや人材紹介で採用する方が効率的な場合もあります。
企業規模の大小にかかわらず、ニッチな商品やサービスを取り扱っていて知名度が低い、という企業は少なくありません。
このようなケースでは機会の増大の前に、しっかりと自社の魅力や商品・サービスの優位性を伝達できる媒体を用意することから取り組みましょう。自社HPはもちろん、就活サイト上のコンテンツを充実させることも役に立ちます。
学生が募集情報をナビ上で目にし、企業ページやHPをチェックしにいく、という行動を予測し、HPでもしっかりアピールできるようにしておくことです。
新卒採用の採用手法を見比べたい、社内資料としてほしい方におすすめの資料です。
ぜひご覧ください。
「新卒採用の採用手法 11の手法を解説」をダウンロードする >>
最後に、特にニーズの多い「現状の採用担当者の人員配置をもとに、採用手法を最適化したい」とお考えのケースについての対処法を紹介します。
「新卒採用は年度によって実施しない場合もある。専任で配置することが難しい」
「採用計画における新卒採用の比重は高くない。採用担当者は専任だが、新卒は活動時期が限られることもあり、なんとか現状で乗り切ってほしい」
これらの状況でいかに採用手法を最適化するか、その重要なポイントは3つです。
新卒採用の目標値として「エントリー総数」に重きをおいている企業も少なくありません。就活サイトを中心とした採用手法の場合、全体のエントリー数を増やすことをメインに計画を立てがちです。
しかし、学生の「就活スタイル」も多種多様になっていて、必ずしも就活サイトを中心とした就職活動をしないというパターンも増えている今、全体のエントリー数を追うこと自体がより困難な状況になっています。
エントリーのなかで、本当に自社にとって必要な学生、いわゆる「ターゲット層」がどのくらい含まれているかが重要です。さらに、単なるエントリーではなく実際の選考ステップに参加してもらうための施策が実際の採用数に大きく影響します。
「総エントリー数が減ったとしても、労力をターゲット層集めに集約する」ことを意識するだけで、説明会や面接の工数を軽減し、より採用難度が高い学生とのコミュニケーションに集中できるようになります。
長年実施してきた選考ステップを踏襲している、ネットで見かける「新卒採用の一般的な動き方・ハイシーズンに対応した動き方」に合わせるだけにしていたりしませんか?
エントリーシート、適性検査、グループワークやディスカッション、面接などの選考ステップひとつひとつに、どのような意味があるのか、これらの選考ステップとその時期を見直すことで、応募者の集まり方が変わることはよくあります。
経年変化を追うことが難しくなるため、これまでの選考ステップを変更することに抵抗をお感じになることもあるかもしれません。しかし、新卒採用は変化する学生の情報収集の仕方や仕事選びで優先したいこともキャッチアップしなければなりません。
単純に採用成功のために選考の回数を増やそうとすると、現状の人員配置のままでは学生を待たせてしまったり、多すぎる選考に辞退が増えたりといった弊害もでてきます。自社の現状を鑑みた上で、1から選考ステップや時期の見直しにあたってみてはいかがでしょうか。
採用にはさまざまなステップ、複雑な工程管理が必要です。このオペレーションの代行を引き受けてくれるのがRPO(Recruitment Process Outsourcing)と呼ばれる採用アウトソーシングサービスです。
母集団形成のためのコンテンツ作成から学生対応、面接官のアテンドや合同企業説明会への代理参加のような業務まで、多種多様な採用アウトソーシングがあります。もちろん、すべてを委託する必要はありません。
人手が不足している場合はデータベース管理や電話対応などの事務処理を中心に委託、知見が不足している場合は採用戦略や面接代行を委託するなど、自社のニーズに応じて選択できます。
新卒採用には、就活サイトなど独自の手法もあれば、経験者採用で用いられる手法も取り入れることができます。それぞれの手法ごとにメリット・デメリットがあり、その費用感もさまざまです。
大切なことは自社の持つリソースや必要な人材像をしっかり把握し、それらにあった手法を組み合わせて新卒採用に取り組むことです。
はじめてその選択にチャレンジするためにアドバイスが欲しい、今までの新卒採用を客観的に評価したい人事採用担当者様は、採用支援会社への問い合わせも検討してみてはいかがでしょうか。
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