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優秀な人材を逃さないために「通年採用」への移行を検討する企業が増えています。しかし一方で、「年間を通して採用活動が続くと手間が増えるのではないか」といった不安を感じる担当者も少なくありません。本記事では、通年採用の基本的な仕組みや、新卒一括採用・中途採用との違い、導入の手順、さらに運用を成功させるためのポイントをわかりやすく解説します。

通年採用を検討するなら、まず仕組みを理解することが重要です。ここでは制度の概要や一括採用・中途採用との違い、注目が高まる背景を整理します。
通年採用とは、特定の時期を設けず、企業が必要なタイミングで年間を通して採用活動を行う仕組みのことです。
近年では、新卒一括採用のように春入社(4月入社)に限定せず、留学や大学院進学など多様な背景を持つ学生を対象に柔軟に採用を進める企業が増えています。
導入の形もさまざまで、例えば「専門職だけ通年採用を実施する」ケースや、「一括採用と並行して行う」企業もあります。
一方、通年採用を「1年間通じて採用活動をしているだけ」と誤解しているケースも多く、春の一括採用の欠員を補うために行う場当たり的な採用を「通年採用」と呼ぶケースも散見されます。
しかし、戦略的な通年採用のあり方とは、企業側の都合ではなく、学生側の行動に合わせた採用計画を立て、採用人数を春採用・秋採用などで計画的に割り振ることにあります。場当たり的な採用は戦略性を持たない欠員補充であり、本来の通年採用の意義とは区別して考えた方がよいでしょう。
通年採用が注目されている背景には、採用市場の大きな変化と、企業・学生双方のニーズの多様化への対応が不可欠になったという事情があります。
新卒採用の早期化が進む中で、企業は優秀な学生を取り逃さないよう、より柔軟な採用スケジュールを求めるようになりました。内定辞退率の上昇への対応も急務です。こうした背景から、「春に一斉入社」という従来の枠組みを超えた、時期を限定しない採用の必要性が高まっています。
多様な人材の確保という実態的な必要性もあります。例えば、留学や海外大学に在籍するグローバル人材の確保、あるいは留年・休学により卒業時期がずれた学生への対応が挙げられます。企業は、こうした背景を持つ優秀な人材を手放したくないという考えから、時期を限定しない採用へと移行しています。
ただし実態として、導入には企業規模による格差も存在します。大手企業は2022年ごろから通年採用を拡大していますが、特に中小企業などでは、マンパワー不足などから、1年間を通じた採用活動は現実的に難しいと考えているケースも多いという実情があります。
通年採用を検討する際は、一括採用や中途採用との違いを整理しておきましょう。制度上の位置づけや実務の進め方に違いがあります。
| 通年採用 | 一括採用 | |
| 採用期間 | 一年を通して実施 | 解禁日から5カ月程度 |
| 留学生への対応 | 対応しやすい | 対応しにくい |
| 内定辞退者の補完 | 対応しやすい | 辞退の時期によっては対応しにくい |
新卒一括採用は、選考時期と入社時期が毎年決まっており、同期入社を前提にした教育体制や選考活動を整えやすいという特徴があります。
一方、通年採用はその枠を超えて、柔軟に採用活動を行う点が最大の違いです。
ただし法的には、新卒者を通年で採用する場合でも、内定の出し方や取り消しに関する規定は一括採用とルールに違いはありません。
中途採用は、一般的に経験者を対象としますが、通年採用は新卒・既卒・第二新卒などを対象とした活動を指すことが多いです。
実務上は、通年採用の応募者を「新卒扱い」とするか「中途扱い」とするかで評価基準や給与テーブルが変わるため、制度上の線引きが必要です。また、中途採用でも「半年に一度の採用期間を設ける」企業もあります。

ここでは通年採用を導入することで得られるメリットと、注意すべきデメリットを整理します。
通年採用の導入には、企業は従来の採用手法では得られなかったメリットがあります。
通年採用は大きなメリットがある一方で、次のようなデメリット(リスク)があります
通年採用は、すべての企業に適しているわけではありません。
導入を検討する際には、以下の4つのチェックポイントを総合的に評価することが重要です。
採用ニーズの安定性
継続的に採用ニーズがあり、年間を通して採用計画が立てられるか
組織体制と人員
1年間を通して採用活動を回せる人員が確保できるか。また、採用活動に人員や費用を割くことに、会社としての理解があるか
社内文化の受容度
社内文化的に、通年採用による組織体制の変化を受け入れられるか(早期内定者が年次の浅い社員と同等以上の待遇になるなど)
競合他社の動向
競合が通年採用を導入しているか、その手法は自社の戦略に影響を与えるか
研修体制や評価制度を構築できるか
入社時期が異なることもあるため、通年採用に適した研修制度や一括採用の社員との間に不公平感を生じさせない公正な評価制度を構築できるか

ここでは通年採用を導入する際の準備から運用までを段階的に解説します。
通年採用を進めるうえでは、まず「どのポジションを、いつまでに、どれだけ採用するのか」を明確にしておくことが重要です。年間を通じて応募のタイミングが分散するからこそ、採用基準や必要人数があいまいなままでは、判断がぶれやすくなり、受け入れ体制の準備も遅れてしまいます。
事業計画や人員計画と照らし合わせながら、必要なスキルや採用時期、配属先の受け入れ条件を具体化しておくことがポイントです。また、採用目標と評価指標(例:内定承諾率、充足率、内定辞退率など)を設定しておくことで、取り組みの成果を振り返りやすくなり、通年採用の運用改善にもつながります。
採用計画と目標が明確になることで、採用チーム内での意思決定がスムーズになり、応募者への説明やメッセージも一貫性を保つことができます。
通年採用では、一年を通じて応募が発生しますが、学生の動きや採用市場の動向によっては、一括採用の時期に応募が集中することもあります。そのため、「ピーク時の対応負荷」と「年間を通した継続対応」の両方に備えなければいけません。採用活動には現場の協力が不可欠であり、人事と現場の間で長期的な協力体制の構築が必要です。
採用期間が長く続くことで、運用の中でやり方が少しずつ変わってしまったり、判断基準が曖昧になってしまったりするリスクもあります。だからこそ、社内で「誰が・いつ・どの業務を担当するのか」を明確にし、選考フローや評価基準を定め、関係者間で共通認識を持つことが重要です。
また、現場の管理者には、通年採用の背景やメリット・負担感などを丁寧に共有し、協力体制を築くことが不可欠です。人事だけでは運用しきれない場面も多いため、現場との連携がスムーズであれば、選考対応の質を維持しつつ、応募機会を逃さない体制づくりにつながります。
通年採用では、面接官ごとの評価基準のばらつきを防ぐため、マニュアルの作成と面接官教育を徹底しましょう。評価シートやスコアリングを統一することで公平性を確保します。
また、入社後のオンボーディング計画、特に教育負担のコントロールが重要です。
入社時期をバラバラにするのは現場の負担が大きくなるため、「4月入社」と「9月入社」など、パターンを分けて設定するなど、負担を軽減する仕組みを整えましょう。
自社の繁忙期を避けるタイミングで入社させる、などの工夫も考えられます。
入社時期が異なる社員でも一定の教育水準を維持できるよう、個別研修やメンター制度の併用が効果的です。

通年採用は、昨今では多くの企業で導入されており、各企業でさまざまな工夫がされています。その中で特徴的な事例をいくつか挙げてみます。
大手Webサービス企業では、エンジニアを対象としたポジション別採用を通年で行っており、毎月入社可能という柔軟性のある採用活動を実施。イベントなどを適宜開催し、自社への興味関心の喚起と通年採用のアピールを行っています。
また、内定時には職種と配属先を決定させており、キャリアプランをもった学生に訴求できる強みもあります。
この会社の通年採用の特徴は以下の3点です。
企業のタイミングではなく、就職活動の主役を学生とし、学生が主体的に活動を行うことを尊重した考えのもと、通年採用を取り入れています。
また一括採用との併用であるため、一括採用のメリットも享受できる体制をとっています。
この会社の大きな特徴は、新卒採用を廃止し「ポテンシャル採用」として、30歳以下であれば新卒・既卒などの経歴を問わない採用スタイルであることです。
入社時期は、年2回と決められているのが、経験者募集の「キャリア採用」との違いです。
従来では就職活動がしにくかった留学経験者や大学院の博士課程修了者や第二新卒の獲得など、多様な人材の受け入れが可能な取り組みです。
これらの事例には、3つの共通点が見られます。
通年採用を成功させるには、こうした「柔軟性」「多様性の受け皿」「安定した運用体制」の3つが大きなポイントになると言えるでしょう。
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制度導入後は、継続的に成果を出し続けるための体制づくりと改善サイクルが不可欠です。
通年採用者と既存社員とを公平に評価し、処遇を整合させることは重要な課題の一つです。
中途採用者も含め通年採用の社員に対応できる給与規定を設計する必要があります。
また昇給タイミングも調整が必要です。例えば年に1回の昇給(例:4月)を定めている会社で9月入社の社員がいる場合、本人との面談のなかで、翌々年4月など1年ずらしたタイミングでの昇給となることを事前に合意しておく、といった対応が現実的でしょう。
これらの制度設計に加え、現場部門の理解を得るために、通年採用の意義や効果を共有し協力体制を築くことが運用の安定化につながります。
通年採用では、選考基準の均一性と入社後の定着率を重視したKPI設計がポイントです。
例えば、「面接官ごとの内定承諾率」や「四半期ごとの採用リードタイム」などを定期的に可視化し、ばらつきをモニタリングします。
さらに、半年後の定着率や初期パフォーマンスを追跡し、評価制度や教育体制の改善に反映させ、改善し続けることが重要です。
通年採用は工数がかかるため、持続的に運用するためにもITツールを導入し効率化を図る、外部サービスの利用も検討するとよいでしょう。
採用管理システム(ATS)の導入は、応募者管理やスケジュール調整を自動化し、人事担当者がコア業務に集中できる利点があります。
また、採用代行(RPO)の活用は、採用担当者不足に悩む企業にとって非常に有効な手段でしょう。採用に精通している担当者に、採用事務から面接官の代行までを担ってもらえます。
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通年採用は、大手企業を中心に広がるジョブ型雇用との相性が良く、今後さらに普及していくと考えられています。これまで中心だった一括採用に加え、通年採用の重要性が高まっていく可能性があります。
ただし、通年採用を成功させるためには、企業側のタイミングではなく、学生の動きに合わせた採用設計が欠かせません。
導入を検討している新卒採用担当者にとっては、今すぐ大きく方針を変えない場合でも、「自社としてどう取り入れていくか」を考えておくことが、今後の備えになります。新卒採用競争はスピードが重要なキーとなるため、競合の取り組みを把握しつつ、通年採用について理解を深めておくことが、将来の選択肢を広げることにつながるでしょう。
通年採用は、これまで一括採用だけでは出会えなかった人材層にアプローチできる、戦略的な採用手法です。一方で、年間を通じた工数や評価基準の均一化、研修体制の整備といった「運用体力」も求められます。
自社の採用目的と組織体制を見直しながら、慎重に導入可否を判断することが成功の第一歩です。
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