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ITの発展により、さまざまな技術が実用化されていく一方で、「ITエンジニアの不足」が問題視されています。デジタルトランスフォーメーションが求められている今、IT業界のみならず一般企業もITエンジニアを必要としており、問題の深刻化は加速しています。
この記事では、ITエンジニア不足に対応するために、現状を踏まえたうえで「企業が行うべきこと」について解説します。
まずは、ITエンジニアの人材不足について、データを参照しながら「現状」と「将来の予測」について解説します。現在から将来にかけて続く、深刻なITエンジニア不足という課題を把握し、採用・教育戦略を検討・調整するための材料として役立ててください。
2018年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、2020年時点でITエンジニア人材は30万人不足すると試算されています。採用の現場では「エンジニアを思うように確保できない」と実感している企業も少なくなく、すでに現時点において、市場全体で「ITエンジニアの不足」は発生しています。
経済産業省の「IT人材需給の試算結果」によると、2030年時点でのITエンジニアの不足数は16万~79万人と予測されています。予測に幅があるのは、「IT需要の拡大」や「労働生産性の向上率」に応じて、ITエンジニアの不足者数が増減すると試算されているためです。その一方で、年3.54%の労働生産性上昇が実現された場合は、需給のバランスが取れるという試算もあります。
ITエンジニア不足の問題は、どうしても「人数」に注目が集まってしまいますが、「質」について考えることも大切です。というのも、とりわけAIやビッグデータ解析などの「先端IT技術に対応できるエンジニアの不足」が深刻になるとの予測があるからです。ITエンジニアの総数は足りていても、結局は高度な技術を持った先端IT人材が不足していては、課題は解決しません。
民間企業においては、システムやITサービス全体を俯瞰して、エンジニアの指揮系統を司るITエンジニアのマネージャーを担う人材が不足する可能性も懸念されています。
ITエンジニアの不足には、次の3つの理由が考えられます。
1. IT技術の進化が早く、技術を保有している人材が限られる
SaaSを始めとしたクラウドサービス、スマホアプリ、AIなど、IT業界は急速に成長を遂げています。IT技術は専門性が高く、知識を習得するまでに時間かかるため、即戦力として活用できる技術を持ったエンジニアはどうしても不足する傾向にあります。
2. IT人材の流動化
習得したIT技術を活かしてフリーランスや、海外での仕事を探す人が増えてきています。
3. 過酷なイメージがある
IT業界の多重下請け構造による低賃金問題、労働環境の問題などがあり、IT業界は新3K(=きつい、帰れない、給料が安い)というイメージを持たれています。
ITエンジニアの不足による悪影響が、さらなる悪い結果を引き起こし、悪循環に陥ってしまう可能性が指摘されています。続いては、「ITエンジニアが不足すると、どのような影響が生じるのか」について、4つの段階別に解説していきます。
最初の段階では、IT技術のレガシー化が懸念されます。技術者が不足しているため、システムを新しく開発したり、バージョンアップしたりすることができなくなり、結果として古いシステムを使い続けてしまうことになる、という問題です。
古いシステムを使い続けることは、エンジニアの負担増につながるだけでなく、セキュリティ面の脆弱性が高まる、新たなサービスを導入する際の互換性が担保されない、などのデメリットが発生する可能性があります。
業務改善が行われず、非効率なやり方のまま業務を遂行していると、エンジニアの負担が大きくなってしまいます。その結果、エンジニアが離職する事態に陥ってしまうかもしれません。残ったエンジニアには、ますます負担が重くのしかかってしまうことになります。
IT技術は進化が早く、最新のシステムの活用や、新しい技術を身につけることが業務改善につながるケースもあります。しかし、技術のレガシー化や膨大な業務負担によりITエンジニアが日々の業務で手いっぱいになってしまうと、新たな知識を習得する時間を確保できなくなります。その結果、「新しいことには手が回らない」という状況から抜け出せなくなってしまいます。
競合他社が「IT人材の確保」や「技術力の向上」の重要性を理解しているのに、自社は「現状で手いっぱい」という状況では、IT技術に差が生じてしまいます。その結果が経営力や顧客満足度に反映され、他社にリードを許してしまうことになります。
業務負担や残業の増加は、離職を考える理由となり得ます。また、エンジニアとしてキャリアを築こうとしたとき、業務内容に長年変化がない、新しい技術を学ぶ機会がない環境に対して不安を感じるケースもあります。
マンパワーグループでは、意欲のある若年層をITエンジニアに育てる"SODATEC"プログラムを提供しています。プログラム研修後は、派遣社員としてエンジニアのキャリアをスタートさせます。
社員教育にも力を入れたいが余裕がない、業務負荷を軽減させたいなどの悩みがありましたら、ぜひエンジニア派遣の活用をご検討ください。
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先ほど紹介したような悪循環に陥らないために、企業が行うべき対応策について解説します。
ITエンジニア不足を回避するには、新卒・中途にかかわらず、「将来ITエンジニアを担うべき人材」を採用しないことには始まりません。このときに大切なことは、採用基準の作成です。ITエンジニアは現在も将来的にも売り手市場であるため、希望通りの人材を採用できるとはかぎりません。そこで、未経験者や外国人、または在宅勤務や時短勤務の人材の採用など、「従来ターゲットとしていなかった層を採用することで必要な人材を確保する」という考え方にシフトしていく必要があります。
自社採用にこだわるのではなく、外部人材やサービスを活用するのも一つの方法です。例えば、アウトソーシングサービス、派遣サービスなどを活用する方法が考えられます。現在、IT人材は流動化が進んでおり、習得した技術を活かしてフリーランスになる人が増えているため、フリーランスのITエンジニアと契約するという選択肢もあります。人材サービス業の中には、フリーランス人材と企業を仲介するサービスを提供しているケースもあります。複数のフリーランス人材を活用する際に、契約管理などが煩雑になるなどの懸念点がある場合は、そういったサービスを活用するとよいでしょう。
将来のIT人材不足に対処するためには、教育体制の強化が不可欠です。未経験者や技術力の低い求職者にも採用の間口を広げている場合は、教育による技術力の引き上げが必須となります。最新技術に関する知識を体得させることも大切です。教育・研修は、社員一人ひとりの知識や技術、キャリアプランに応じて個別に設定する必要があります。
従来型のIT人材のなかで「先端IT技術に移行できた人」の割合が全体の1%しかいなかった場合、2030年には先端IT技術者が55万人も不足する、というデータがあります。教育により先端IT技術者を内製できるようになれば、自社で人材を確保できることに加え、競合他社との差別化という点でも効果が得られます。
IT業界には「新3K(きつい、厳しい、給料が安い)」というネガティブな印象があります。これをポジティブな印象に変えるために、まず自社の労務環境を改善し、求職者や社員に周知していくことが重要です。具体的には、残業の撤廃(ノー残業デーの設定)、在宅勤務制度の導入など、ワーク・ライフ・バランスに関する施策を推進していくのが効果的です。在宅勤務制度などの「働き方改革」を導入した場合は、それを求人情報に明記するなど、労務環境が良いことを積極的にアピールしていくといいでしょう。
経済産業省の「IT人材需給の試算結果」からも確認できるように、現時点で不足感の生じているITエンジニアは、将来ますます不足していく可能性があります。IT人材不足は、IT技術のレガシー化、業務負担増によるエンジニアの離職などにより「最新技術への対応の遅れ」を招いてしまいます。その結果、経営力で競合他社に劣るという悪循環に陥る危険性があります。IT人材の不足を回避するには、採用・教育・労務環境を整え、ITエンジニア確保の重要性を踏まえた中長期的な人事戦略を考える必要があります。
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