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今必要とされるデジタル人材 採用・育成のポイントを解説

掲載日2022年8月 9日

最終更新日2024年11月29日

今必要とされるデジタル人材 採用・育成のポイントを解説

目次

米国のGAFAを筆頭とするIT企業が世界経済を牽引する中、日本はデジタル化が十分進んでいるとは言えず、大きく遅れを取っている状況です。また、2020年からの新型コロナウイルス感染症にあわせ、ニューノーマル時代の社会設計が必要となったことで、デジタル化の必要性がさらに増しました。

そして2021年、日本にデジタル庁が設置され、政府や企業のデジタル社会への動きが積極的に感じられるようになった中で、人事・採用分野では「デジタル人材」という言葉がよく聞かれるようになりました。本記事では、デジタル人材の定義や必要性や、採用・育成方法、そして助成金について解説します。

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デジタル人材とは

デジタル人材とは、一般的には最新のデジタル技術を活用して新たな価値を生み出していける人材のことを指す言葉です。近年キーワードとして頻繁に活用されるDX(デジタルトランスフォーメーション)人材なども、このデジタル人材の中に含まれます。

一方で、経済産業省が公表する資料「デジタル人材に関する論点」において「デジタル人材を画一的に定義するのは難しい」と議論がなされています。理由として、デジタル人材に求められるスキルの幅は広く、今後さらに変化していく可能性もあるからです。

この資料の中でも、デジタル人材の例として「新しい技術やコモディティ技術をビジネス活用できる人材、エンジニアやデータサイエンティストを活用し、ビジネス創出を図る人材、ドメイン×デジタル能力を持つ人材、ユーザー企業において自社開発ができる人材」と挙げられており、スキルの幅がかなり広いことがわかります。

また今後も市場・顧客のニーズにあわせて必要なスキルが変化していく可能性があります。

出典:第1回 デジタル時代の人材政策に関する検討会「デジタル人材に関する論点」|経済産業省(PDF) 外部リンク

デジタル人材とは、特定の分野の知見にとどまらず、「新しい技術を活用し新たなビジネスや価値の創造をしていく」人材といえるでしょう。

IT人材とデジタル人材の違いは

これまでたびたび使用されてきた「IT人材」という言葉と「デジタル人材」はどう違うのでしょうか。

中小企業庁公表の「中小企業白書」では、IT人材を「ITの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用する人材」と定義しています。一方で経済産業省公表の「IT人材需給に関する調査」では、IT人材を「従来型IT人材」と「先端IT人材」に分けています。中小企業庁で定義していた企画、推進、運用にかかわる人材を従来型IT人材、AI、IoT、ビッグデータなどの最先端の技術を活用できる人材を「先端IT人材」と定義しています。

ここでいう先端IT人材は、いわゆる「デジタル人材」のことでもあり、実際は「デジタル人材」の中に「IT人材」も含まれて使われることが多くあります。

出典:
中小企業白書2016 IT人材の活用|中小企業庁 外部リンク
IT人材需給に関する調査|経済産業省(PDF) 外部リンク

このように実際のところは、IT人材とデジタル人材は明確な区別がなく使われることも多い状況です。

なぜデジタル人材が必要なのか

近年、デジタル化を通じて世の中の流れが大きく変化を遂げました。IoT(モノのインターネット)や、AI(人工知能)、ビッグデータなどを活用した、新しい価値を持つ商品やサービスがこれまでにないスピード感で生み出されています。例えば、携帯に話しかけるだけでユーザーに合わせた回答をしてくれるサービスや、自動車やバスを自動で運転できる仕組みなどです。

近年話題の「DX化」も、デジタル人材によって加速できます。業務内容のデジタル化だけではなく、従来のビジネスモデルをトランスフォーメーション(変革)し、新たな価値やイノベーションを生み出すことも可能でしょう。このような新たな価値の創造やイノベーションがこれからの社会の発展において必須と考えられています。

そのため、デジタル人材は今後ますますニーズが高まると予測されるのです。

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デジタル人材に必要なスキルとは

デジタル人材を「最新のデジタル技術を活用して新たな価値を生み出していける人材」と考えると、先述のようにデジタル人材に求められるスキルはかなり広範囲におよびます。

例えば、最先端の技術知識やスキルはもとより、デジタル化を通じて実現したい価値を考えるDX企画・DX戦略などのスキルや、事業・ビジネスの方向性を考える事業企画力など、総合的なスキルも求められます。

本章では、具体的に求められるスキルを解説します。

最先端技術の知識・スキル

デジタル人材にはこれまでにないイノベーションを求められています。そのため、従来のITスキルやシステム開発の知見はもとより、最先端技術であるAIやビッグデータ、5Gなどの技術知識とそれを扱うスキルが必要です。さらに、今後新たな技術が生まれた際にそれらを常にキャッチアップしていく力も求められます。

新たな価値の創造・企画スキル

技術力だけではなく、デジタル化を通じた価値の創造も重要です。技術の先にどのような価値を生み出していくのか、事業の戦略をいかに描くのかという、デジタルの活用における「企画力」「ビジネスサイドの戦略力」などの事業企画スキルも求められます。

コミュニケーションスキル

社内のデジタル化はシステム部門で完結するものではありません。開発・製造部門と連携してIoTサービスをどのように進めるかを検討したり、経営企画・事業企画部門と連携して事業の方向性を検討しながら進めたりと、社内で関係する部門も多くなります。

場合によっては他社の技術を組み入れた共同事業を進めたり、ベンダー各社との調整が発生したりと、社外とのやり取りも広範囲に広がる可能性があります。そのため、社内外と関係を構築していくコミュニケーションスキルが求められます。  

デジタル人材を採用するためには

本章では、デジタル人材を採用するためのポイントを説明します。
システムに知見のあるITエンジニアを採用するだけでも困難な現在の採用市場の中で、最先端の技術力だけではなく、ビジネスサイドの企画力やコミュニケーション力も有するようなハイレベル人材を採用するにはどうしたらよいのでしょうか。

攻めの姿勢の採用活動

デジタル人材が採用市場になかなか存在しないにもかかわらずかつてないほど「デジタル化」が加速しているため、企業のデジタル人材のニーズは急速に高まっています。つまり、デジタル人材の求人は需要過多であり、採用募集をかければすぐに応募が来るという状況でありません。

そのため、採用活動においては「応募を待つ」のではなく、「採りに行く」という攻めの姿勢が必要です。デジタル人材は、通常の求人サイトや人材紹介などに登録した時点で複数のオファーが来てもおかしくありません。そのため、さらに前の段階で企業側からアプローチすることは一つのポイントです。

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例えば、SNSを通じて転職潜在層の人材にアプローチしたり、社員紹介のリファラル採用を強化したり、デジタル人材が集まるイベントでネットワークを作るなどの方法があります。手間はかかりますが、今後ますます採用が困難になることが予測されるため、まずは攻めの採用体制を作ることが重要です。

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ワークライフバランス環境の用意

デジタル人材が魅力的に感じる会社の体制や環境の準備も大事なポイントです。
優秀なデジタル人材を獲得するためには、残業時間の改善・リモート制・フレックス制の導入など、働き方の改善や施策の導入が重要です。人材獲得のため、多くの会社がすでにこのような施策を積極的に導入しています。

これらの施策の導入は、自社を有利にするためのものではなく、導入していないことで不利になる状態を避けるために必要といえるでしょう。デジタル人材に自社への応募を検討してもらう土俵に上がるための最低限の施策といっても過言ではありません。

スキルアップのための制度や評価・報酬制度の構築

IT・デジタル関連市場は新しい技術が次々と変化するため、デジタル人材は入社後さらなるスキルアップが求められ、また自身もスキルアップを望むことが多く見られます。最先端技術を常にウォッチして取り入れていく必要があるため、レベルの高い社外の研修や、技術書の購入、資格取得のための学習などが必要です。

そのための社内制度として、研修制度の導入や、技術情報を入手・共有できる仕組み作り、書籍の購入補助、資格取得手当などの制度を整えることも大切です。
企業によってはデジタル・エンジニア人材のための報酬制度を特別に作るなど、魅力的な制度を他職種とは別に用意する企業も増えています。

組織全体でデジタル化の推進

デジタル人材を採用したいのであれば、ペーパーレス化やコミュニケーションツール導入など、社内のシステム・デジタル化は必須といえるでしょう。社内のデジタル化が進んでおらず、FAXや紙書類など非効率的な仕事の進め方をしている状況では、デジタル人材は「この状況では、自分が入社してもデジタル化を加速させていくことは難しいだろう」と判断してしまいかねません。経営層から既存社員までデジタル化にコミットし、効率的な業務のための改善に組織全体が前向きに取り組んでいることが応募者にとっての魅力となります。

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デジタル人材を育成するためには

デジタル人材の採用は難易度が高いため、自社で育成するのも一つの手段です。

例えば、システムの導入や開発をできるエンジニア人材が事業企画などのビジネスサイドの知見を取得したり、ビジネスサイドに強い人材がシステムの知見を習得したりすることで、DXの推進や企画などを担うデジタル人材に成長できる可能性があります。

本章では、デジタル人材を育成する方法について解説します。

研修や学習機会の用意

社内人材をデジタル化人材に育てるために、それぞれにどのようなスキルや知識が必要か、現状の社内人材が持つスキルと必要なスキルを整理しましょう。
必要と判断したスキルは、外部講師を活用としたハイレベルな研修や、イーラーニングなどの学習を通じて習得を図り、当人と相談しながら実際にスキルアップのサポートを行いましょう。

資格取得の支援

ITにかかわる資格取得の支援をすることも必要な取り組みです。例えば、資格に関する書籍費用や試験の受験料など、資格取得にかかわる費用を会社負担にする制度や、資格を取得したら手当を支給するなどの制度を整えることで、人材のスキルアップにつながります。

適切な配置転換

デジタル人材の育成に必要であれば、必要な配置転換を全社で行うことが重要です。IT関連部門以外の部署に所属する既存社員でも、デジタル技術に興味があり意欲のある人材であれば、配置転換とともに育成に踏み切るのも、デジタル人材の確保のためには必要な判断でしょう。社員の意向を確認しながら適切に配置転換を行い、育成にあたりましょう。

学習できる業務環境の整備

常に新しい技術や情報を入れていくために業務環境の整備は必須です。社員が学習にあてる時間を確保できる体制や雰囲気づくり、e-ラーニングをはじめとする学習ツールの整備など、知識スキルを社員自らが高めていける土台を整備することを心がけましょう。

デジタル人材の育成と採用の課題

社内にいるIT系の人材はすでに業務量が多い傾向にあり、日々目まぐるしく変わる技術や法規制への対応もあることから、新しい技術を習得する十分な時間を持てないことも多い状況です。前述の通りIT・デジタルに精通する人材の採用は困難なため、増員が必要な場合は人材派遣サービスなどの利用も視野に入れましょう。

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デジタル人材の育成事例

空調機メーカーのA社は、AI技術を用いて一人ひとりの快適空間を実現するため、2017年にデジタル人材を育成する機関を設立。教育機関や先端研究機関から講師を招いて、デジタル教育を推進しています。新入社員から管理職まで対象としており、特に新入社員については毎年約100人が2年間学びに集中し、その期間は業務を行いません。2020年には2年間の教育を終えた1期生が各部門に配属され、事業創出や業務効率化に取り組み始めています。

電気通信会社のB社は、先端技術の知識を有するとともに、新しいビジネスを生み出す人材を育成するべく、営業や企画部などで活躍していた100人以上の人材を集め「DX本部」を新設。交渉力や数字管理の意識、柔軟な思考力を有することを重視した人材を選出し、DXに必要なデザイン思考やビジネスプランニング、ファイナンス、ITツール活用などの研修を提供しています。

デジタル人材育成・採用に使える助成金や支援制度

本章ではデジタル人材育成・採用に活用できる助成金や支援制度を説明します。

IT導入補助金

IT導入補助金は経済産業省・中小企業庁が管轄している補助金で、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援するために活用できます。

例えば、会計ソフト、受発注システム、決済ソフトなどのソフトウェア、クラウドサービスの導入時や、PC・タブレット、レジなどの導入時も対象です。補助率はソフトウェア費用や初期費用・利用料などでかかった費用の1/2以内の補助、金額は30万〜450万円以下となります。

出典:IT導入補助金2022|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会 外部リンク

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は厚生労働省が管轄する制度です。社員のキャリア形成の目的で職務に関連した専門的な知識や技能を修得させるために職業訓練などを実施した際や、教育訓練休暇制度を適用した際に活用できる助成金です。

本助成金は8コースあり、受給要件や支給額もさまざまです。詳細は厚生労働省のWebページをご確認ください。

出典:人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇等付与コース、特別育成訓練コース、人への投資促進コース)|厚生労働省 外部リンク

社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金

社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金は、東京都が管轄する制度です。都内の中小企業または中小企業の団体を対象にしており、職務に必要となる専門的な技能や知識の習得・向上または専門的な資格の取得を目的とした職業訓練に対する助成金です。

本助成金は「社内型スキルアップ助成金」と「民間派遣型スキルアップ助成金」の2種類があり要件や支給額に違いがあります。詳細は東京都産業労働局のWebサイトをご確認ください。

出典:TOKYOはたらくネット 社内型・民間派遣型スキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)|東京都産業労働局雇用就業部 外部リンク

まとめ

「デジタル化」は事業のイノベーションや業務の効率化などを生み出し、今後の企業成長においてなくてはならないものです。そのため、デジタル人材の採用・育成を重要課題として取り上げる企業も増えてきています。デジタル人材の採用・育成は簡単ではありませんが、国や都からの支援もあるため、助成金を有効活用しながら取り組んでみることをおすすめします。

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著者プロフィール

壷井央子(採用コンサルタント・キャリアコンサルタント)

壷井央子(採用コンサルタント・キャリアコンサルタント)

大学卒業後、人材会社3社で採用コンサル、人材紹介事業、サーベイ事業、新規事業の立上げ経験を積む。独立後は個人の方向けのキャリアカウンセリング、私立大学でのキャリアデザイン講師や女性向けキャリアスクールの立ち上げを手掛ける一方で、企業向けには採用〜育成支援、組織開発・D&I推進なども手掛けてきた。

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