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終戦後の高度成長期における若年労働者を指す「金の卵」という言葉は、当時の流行語にもなりました。集団就職で東京へ向かう……というシチュエーションのドラマなどをご覧になったことのある方もいらっしゃることでしょう。
では、採用市場における「銀の卵」と言う言葉はご存知でしょうか。
「金の卵」が中卒・高卒の若者を指しているのに対し、「銀の卵」はいわゆるミドルシニアである40代~50代以上の方々を指す言葉として2013年ごろに登場した言葉です。
銀の卵世代の採用が注目をあびるきっかけのひとつに、2017年に実施された大阪の老舗医薬品メーカーによる、「第四新卒」と称するシニアを中心とした採用活動があげられます。
当時、2,000名以上の応募があったことがニュースになり、話題になりました。
就職市場の活況は、いまや若年層のみにとどまらず「銀の卵/ミドルシニア」と呼ばれる方々の採用にまで広がっています。
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これまで役員クラスなどの採用に活用されてきたヘッドハンティングを、ミドル層と呼ばれる部長、課長クラスの中間管理職ポジションや専門職の採用に活用する事例も増えてきています。
ミドル層をターゲットにした採用手法「ミドルハンティング」については、こちらのコラムで詳しく説明しています。
リーマンショック期における転職の多くは、リストラ後の再就職先をやむなく探すという側面が強いものでした。
求人が増加している現在の転職市場では、より良い条件や自分にとってのやりがいを追求するための転職活動が活性化している状況です。
管理職の配置転換や新規事業拡大のための経験者採用など、マネージャー職・プロフェッショナル領域の求人が増え、転職希望者の増加もあいまって「転職35歳限界説はすでに過去の話」ともいわれるようになりました。
2007年には2,035万人だった若年労働力人口(15~34歳)は、2023年1~3月期平均では1,692万人となっており、減少に歯止めがかかりません。
対象となる人口自体が少ないこと、価値観や働き方の多様化などにより、企業の若年層採用はさらに熾烈になっています。
参考:総務省 │ 労働力調査
また、バブル崩壊後の就職氷河期に新卒採用を凍結していたツケが今になって現れています。企業内の年齢バランスの崩壊が表面化したという企業も増えており、30代後半から40代前半の層を補充するための中途採用については、長期化する傾向にあります。
対象となる層が新規学卒生として就職活動を行っていた時期が就職氷河期にあたり、キャリアを正社員以外の雇用形態でスタートする方が多く、正社員としての経験を重要視する中途採用市場において正社員経験者の奪い合いが激化しているためです。
年齢バランスの調整を目的とするのであれば、30代後半から40代前半にこだわらざるを得ませんが、対象とするポスト・役割・業務習熟度および緊急度を鑑み、募集の対象年齢を引き上げて母集団を拡大することも必要でしょう。
シニア・ミドルシニアを対象にしたプロフェショナルな領域については、これまでの一般的な中途採用やエージェントの利用とは異なる方法で補完するサービスも目立ってきています。
新規事業・プロジェクト立ち上げのためのアドバイザーが必要なケースでは、コンサルティングファームへの依頼という方法もありますが、アドバイザー/顧問として、主にシニア層を中心とした大手企業の役員・管理職経験者の紹介や派遣を行う人材サービスも活況です。
また、募集が長期化した中途採用ポストの補完や採用決定までの継承スポットとして、ミドルシニアを対象にしたプロフェショナル派遣に声がかかる機会が増えています。
前述のアドバイザー/顧問が企画・助言を主とした役割だとすれば、さらに実行寄りの活動を必要とされるケースが多いのが特徴です。
ミドルシニアのなかには、下の世代が就職氷河期で入社しなかったために、長らく後輩がいないままプレイングマネージャーとしてキャリアを築いてきた方も多くいます。
実行活動の即戦力要員として「アドバイスだけではなく手も動かしてくれるリーダー」を求める企業には、プロフェショナル派遣は適したサービスだといえます。
女性活躍推進法による女性管理職の増加や、育児・介護休業法の改正による男性の育休取得の促進など、管理職世代の休業・休暇を見越して、フォロー体制の構築が必要とされるケースも増えてきました。
ともすれば、休業・休暇期間中の業務を既存社員の兼任・兼務でカバーしようとしてしまいがちですが、兼任・兼務は社員の負担が大きく、予期せぬ長期化で大勢が疲弊してしまうリスクがあります。
経験豊富なプロフェッショナル人材の派遣により対象者や他社員の負荷軽減をはかり、円滑な業務遂行を叶えます。
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実際の休業カバーの成功事例についてはこちらのコラムで紹介しています。
上記属性を中心としたミドルシニアのプロフェショナルスタッフを、各企業のプロジェクトやタスクにおいてタレント不足となっているポストにアサインしています。
最近、上記の2.にあたる「Pro Assign」登録スタッフの方から「正社員としての雇用が決まった」との連絡を受ける機会が増えており、口も手も動かせる「銀の卵」に対する企業の要望の高さが伺えます。
業界 | 年齢 | 業務内容 |
金融 | 50代 | 総務事務シェアードサービスセンター内のプロジェクト実行支援 |
金融 | 50代 | 基幹システム導入・運用プロジェクト実行支援 |
メーカー | 60代 | 購買・調達領域でのコスト・サプライヤー最適化推進プロジェクト支援 |
サービス | 60代 | 人事・給与規定整備及び関連プロジェクトマネージャーの実行支援 |
先述のとおり「Pro Assign」登録スタッフには転職活動中の方も数多くいらっしゃいます。
プロフェッショナル派遣の派遣期間終了後、派遣先企業へそのまま直接雇用が決定するというケースもあり、期間限定のポジション以外でも「Pro Assign」は活用いただけるサービスです。
転職の理由は人それぞれとはいえ、ミドルシニア・シニア層においては「給与」「人間関係」「会社の将来性」などの現状に対する不満といったものだけではなく、故郷の両親の介護により首都圏への通勤が困難になってしまったなどの理由で退職・転職活動を実施されている方々が大勢いらっしゃいます。
日本社会の高齢化は進み、2025年には団塊の世代は全員75歳以上の後期高齢者です。今後、介護離職の社会問題はさらに深刻となるでしょう。
仕事と育児や、仕事と介護を両立しながら働くことができる環境の整備はもちろんのこと、継続雇用年齢の引き上げなど、企業には様々な層の就業機会提供が求められています。
特定の年齢層だけをターゲットとして採用検討するのではなく、幅広い年齢を母集団として捉えることが、今後の企業活動飛躍の「鍵」となるのではないでしょうか。
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