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人材派遣
掲載日2021年3月30日
最終更新日2022年5月 9日
目次
派遣社員を受け入れる際に、派遣先企業ではさまざまな準備が必要となりますが、派遣先責任者の選任もそのひとつです。派遣先責任者の設置は、派遣社員を受け入れる企業の義務として労働者派遣法によって定められています。
派遣先責任者の選任には、対象資格の規定はありませんが、派遣社員の労働に関するトラブル回避の重要なキーパーソンとなるため、適切な人選が求められます。
ここでは派遣先責任者の基本的知識と果たす役割、選任する際のポイントとなる情報に加え、派遣社員受け入れ時に留意すべき点を解説していきます。
派遣先責任者とは、労働者派遣法第41条に基づき選任される役割です。
派遣先責任者は、派遣社員が派遣先企業で業務を円滑に遂行できるように管理を一元的に行う存在です。労働者派遣契約の内容や労基法などの規定に関する周知、派遣受入期間の管理と変更通知、管理台帳の記録と管理、派遣社員からの苦情の対応、安全衛生に関する連絡調整、派遣会社との連絡調整といった役割を果たします。
派遣社員の就業上の安全衛生に配慮しながら、就業環境が整備されているか、契約に沿った働き方ができているかといった点についての管理も派遣先責任者の責務です。派遣先責任者を選任しなかった場合、労働者派遣法に抵触し、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。派遣先責任者の具体的な役割については、あとの「派遣先責任者として留意すべき点」にてさらに詳細を解説します。
派遣先責任者の設置は法律で義務付けられていますが、その選任方法についての指定はありません。また、派遣先責任者が指揮命令者を兼任することについては認められています。
派遣先責任者の資格については特に規定はありませんが、以下に該当する人物であることが求められます。(公益社団法人 労務管理教育センター「派遣先責任者の資格について」から引用)
厚生労働省が指定する機関で実施される「派遣先責任者講習」の受講により、1に該当すると認められます。
派遣社員の就労管理全般を行い、必要に応じて適切な連絡・調整を行うことが前提となるため、派遣社員の身近にいる人物であることが必要です。
派遣先責任者は派遣先企業の社員のなかから、事業所ごとの専属派遣責任者として選任する必要があります。配置人数は、事業所における派遣社員数1人以上100人以下を1単位とし、1単位につき1人以上ずつ選任します。ただし、派遣先企業の社員と派遣社員を合わせた人数が5人以下の場合は、派遣先責任者の選任は必要ありません。
製造業務に関しては、50人を超える派遣社員を受け入れる場合の規定があります。製造業務に従事する派遣労働者100人あたり1人以上、製造業務に従事する派遣労働者専用の派遣先責任者を配置しなければなりません。
なお、派遣先企業の役員を派遣先責任者として選任することはできますが、監査役は選任できません。
労働者派遣法では、派遣先企業に対して「派遣先の講ずべき処置」という定めがあります。そのひとつとして、派遣先責任者や苦情処理担当者などがあげられます。詳しいことを知りたい方は下記の資料をダウンロードください。
派遣先責任者は、法令に従いながら派遣社員が円滑に業務を遂行できるよう常に気を配らなければなりません。受け入れにあたり、留意すべき点を事前に心得ておく必要があります。
直接雇用の社員の場合、入社の際に履歴書を提出、その後は社内で社会保険や厚生年金の処理がなされ、個々の個人情報は担当部署で管理されます。
一方、派遣社員の個人情報の詳細は、派遣社員と雇用関係がないので、派遣先が原則入手できません。就業管理に必要な情報として派遣元から提出される派遣社員の個人情報は、以下の通りです。
上記以外に業務や就業管理に必要な個人情報がある場合は、収集する目的、必要な情報、管理方法などを明示した上で、派遣元を通じて派遣社員の同意を得て取得する必要があります。入手した個人情報は、自社社員の個人情報と同様に、その目的に必要な範囲の人のみ取り扱えるといった厳重な管理が必要です。
派遣先企業による派遣社員の履歴書の取り寄せは禁止されています。人材派遣会社が保有するスキルシートやそれに準ずる書類の取り寄せは違法ではありませんが、使用後はすぐに滅却処分を行い、使用目的以外の流用がないようにしっかりと管理しなければなりません。
二重派遣とは、派遣元から受け入れた派遣社員を、派遣先がさらに第三者の指揮命令の下で働かせる形態を指します。労働者派遣法では派遣先企業が、さらに別の企業へ派遣社員を労働力として提供することを禁止しています。
例えば、出向先の社員が不調を訴えたため、代替要員として派遣社員を向かわせるといった行為は、二重派遣と見なされて違法となります。
人材派遣会社と派遣先企業が交わす契約には、派遣をする旨を定めた基本契約と、業務内容や派遣期間、派遣料金を定めた個別契約があります。
派遣先責任者は、個別契約に記載された業務内容や労働日、就業時間、安全衛生、福利厚生の提供といった項目にのっとり、定期的に派遣社員の就業場所を巡回しながら業務が正しく行われていることを常に確認しなければなりません。派遣の契約内容と実際の派遣社員の働き方に違いが生じている場合には、是正する必要があります。
労働基準法に関する責任の多くは、派遣社員と雇用契約を結ぶ人材派遣会社が負っていますが、派遣社員の労働時間の管理は現場で指示をする派遣先企業の責任です。
派遣先企業では派遣社員に時間外労働を指示することができますが、人材派遣会社で締結された三六協定の範囲内でなければなりません。
人材派遣会社、派遣先企業ともに、派遣社員からの苦情を受け付ける担当者を置くことが定められています。派遣先企業の苦情対応の責任者となるのが、派遣先責任者です。派遣社員から苦情の申し出があった場合、派遣先責任者はすみやかに人材派遣会社に通知。情報を共有しながら、連携して苦情の処理を実施します。
また、苦情を申し出た派遣社員に対して、仕事量を増やす、派遣契約の更新を行わないなどの不利益が生じないようにすることも派遣先の責任です。
派遣先企業には、派遣社員が健全に業務に当たることができる就業環境を提供する義務があります。派遣先責任者は、派遣社員に対するパワハラやセクハラへの対策、派遣社員の健康管理を行います。
定期健康診断に関しては人材派遣会社が義務を負いますが、長時間労働の防止や適度な休憩の促進などの日常的な健康管理については、派遣先責任者が留意しなければなりません。
派遣社員の業務遂行に必要となるスキルの向上については、派遣先企業の社員と同等の教育訓練を受けさせることが義務化されています。派遣社員が自主的に行うスキルアップについても、派遣先企業として可能な限り協力することが求められています。
派遣先責任者は、派遣社員が業務に支障なく当たれているかを把握し、知識に不足がある場合には教育訓練の機会が得られるよう計らいます。
派遣先企業の社員が利用する食堂やロッカー、休憩室、更衣室などについては、派遣社員に対しても同様の福利厚生の提供が求められています。派遣社員の社内生活を快適なものとするために、派遣先責任者はその利便性に配慮し、社員との環境格差が生じないように働きかけていきます。
派遣先責任者を単なる名目上の役職として十分な検討なしに選任することは、派遣社員の円滑な業務遂行の支障となりかねません。派遣先責任者には派遣社員が適正に就業できる環境を整備・確保する義務があります。適正な環境は派遣社員のモチベーション向上につながりますので、派遣先責任者の義務と責任を十分に理解しておきましょう。
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