目次
「人材派遣」と「人材紹介」は、いずれも企業の人材確保に活用されている代表的な人材サービスです。しかし、どちらのサービスが自社に適しているのか、判断に迷うという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、人材派遣と人材紹介の違いと特徴を詳しく解説します。
人材派遣と人材紹介は、企業が求める人材を確保するために利用する代表的なサービスですが、ふたつの性質は大きく異なります。
ここでは、人材派遣と人材紹介の違いを以下の8つの項目ごとに詳しく解説します。
人材派遣は必要に応じて柔軟に人材を確保できるサービスです。主に一時的な人員補充を目的として活用されます。雇用契約は派遣会社と派遣社員との間で結ばれるため、派遣社員と派遣先企業は直接の雇用関係にありません。
一方、人材紹介は人材を採用したい企業と求職者をマッチングさせるサービスです。企業が求める人材を探して候補者を紹介し、両者が雇用契約を結ぶまでの選考過程や入社までのサポートを行います。
人材紹介を通して採用された労働者は企業と直接雇用契約を結びます。
目的の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
一時的な人員の補充 | 自社社員の採用であり、長期的に人材確保する |
参考:香川労働局「労働者派遣事業・職業紹介事業の概要」
人材派遣は、派遣会社の雇用している社員(派遣社員)を派遣してもらうサービスです。つまり、派遣社員の雇用主は派遣会社であり、給与の支払いや労働条件の管理、社会保険料の負担などは派遣会社にあります。
一方、人材紹介では企業と求職者のマッチングを行い入社までのサポートをしますが、実際の雇用契約を結ぶのは企業と求職者です。求職者が企業に採用された場合、給与の支払いや労働条件の管理、社会保険料の負担などの雇用主としての責務を企業が負うことになります。
雇用主の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
派遣会社 | 企業 |
人材派遣は、「役務の提供」を受けられるサービスです。業務を遂行するのに適した人材を派遣してもらい、業務を担ってもらいます。例えば、急な退職や産休育休などで職場を離脱した際に、一時的に業務を遂行してもらえます。
一方、人材紹介は「採用の候補者」を紹介してもらえるサービスです。求める人物像をヒアリングし、候補者を選出、紹介します。紹介された求職者が企業に採用されれば、社員として雇用契約を結びます。
サービスの違い
人材派遣 | 人材紹介 |
役務の提供 | 候補者の紹介 |
関連記事:【図解】人材派遣とは?仕組みと注意点をわかりやすく解説
人材派遣の場合、企業が派遣会社に必要な人材の要件を伝え、その後派遣会社がその要件にマッチした派遣社員を選定し、企業へ派遣します。
派遣社員を受け入れる際は、企業側は派遣社員に対して面接などの選考を行うことはできません。これは、労働者派遣法第26条第6項に基づき、雇用関係にない企業が選考を行うことが禁止されているためです。そのため、派遣社員の選考は派遣会社が主導して行います。
一方、人材紹介では企業が募集要項を作成し、それに基づいて人材紹介会社が求職者を募集します。求職者が人材紹介会社に登録をすると、人材紹介会社が企業と求職者のマッチングを行います。企業は紹介された求職者に対して、自社の採用活動と同様に書類選考や面接を実施し、最終的に企業が求職者を採用するかどうかを決定します。
選考フローの違い
人材派遣 | 人材紹介 |
派遣会社が派遣社員を決定 | 企業が候補者の採用可否を決定 |
関連記事:派遣社員の特定行為は禁止!指導例や例外をわかりやすく解説
人材派遣の場合、派遣先の同一事業所で派遣社員を受け入れできる期間は原則として3年までです。この期間制限は、派遣社員が長期間にわたって同じ事業所で勤務することを防ぎ、適切な労働環境を維持するための措置として法律で定められています。
一方、人材紹介の場合は紹介された求職者が企業と直接雇用契約を結ぶため、雇用期間に法的な制限はありません。企業は正社員や契約社員などさまざまな雇用形態を設定することができ、雇用期間は企業と労働者の合意に基づいて決定されます。人材紹介は人材派遣に比べ、長期的に人材を確保するための手段として利用されます。
契約期間の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
原則3年(同一の部署) | 法的な制限なし |
関連記事:【企業向け】派遣法の3年ルール完全ガイド|無期雇用・延長方法・罰則を徹底解説
人材派遣の料金は、時給単価で請求されることが一般的で、派遣社員が働いた時間分を派遣料金として毎月支払います。また、残業などで時間外労働が発生した場合は、1.25倍などの割増率が適用されます。
派遣料金には、派遣社員の給与や社保、有給などの諸経費が含まれます。
<一例>
時給2,000円
1日8時間労働
月平均20日勤務
2,000円 × 8時間 ×20日= 月32万円
一方、人材紹介でかかる費用は、紹介手数料です。紹介された応募者の採用が決定したら、人材紹介会社に紹介手数料を支払います。紹介手数料は通常、採用された人材の年収に基づいて計算されます。
<一例>
想定年収500万円の人材を採用し、年収の35%が紹介手数料だった場合
500万円 ×35% = 175万円
紹介手数料は、成功報酬型が一般的です。
人材派遣とコストを比較する場合は、手数料に加えて、採用した社員の人件費も含める必要があります。
料金の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
時給制で派遣料として毎月支払う | 採用が決定したときに、紹介手数料を支払う |
関連記事:人材派遣の相場はどうやって決定する?影響する項目を解説
人材紹介|手数料の相場は?仕組みや理論年収、返還金について解説
人材派遣は、契約書(個別契約書)に定められた業務以外を行わせることができません。また契約当初に定められた部署以外で勤務することは契約違反と扱われるため、所属部署以外で業務を行うことや部署異動も認められません。
また、以下の業務は業務の特殊性や安全性の観点から法律によって原則派遣が禁止されています。
一方、人材紹介は企業に直接雇用されるため、雇用契約で業務の変更範囲が特定されていない限り業務に制限がありません。就業規則に転勤や人事異動がある旨が定められて入れば、将来的に人事異動で部署や業務の変更も可能です。
業務の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
契約に定めたこと以外は依頼できない。派遣禁止業務あり | 特に制限はない |
関連記事:派遣禁止業務とは?5つの禁止業務と禁止の理由、例外、罰則を解説
派遣社員を受け入れる場合、試用期間を設けることはできません。これは、試用期間が派遣社員を選別する特定行為とみなされ、労働者派遣法違反にあたるためです。
試用期間は本来、採用の際に適性を判断するために設けられるものであり、派遣社員に対して試用期間を設けることは、実質的に派遣先企業による選別行為とみなされます。
なお、労働者派遣契約書に定めがある場合は、適性を欠く等の理由で派遣社員の交代を派遣会社に要請することができます。
一方、人材紹介で採用された社員に対しては、適性を判断するため期間として試用期間を設けることが可能です。一般的に試用期間の長さは3ヶ月から6ヶ月程度が適切とされています。
試用期間の違い
人材派遣 | 人材紹介 |
設けることはできない | 設置OK。3~6か月程度が適切 |
参考:東京都労働相談情報センター「派遣労働者を受け入れるとき」
関連記事:試用期間とは|待遇・保険・解雇など設定の注意点をわかりやすく解説
人材派遣や人材紹介以外にもさまざまな採用手法があります。ここでは人材派遣、人材紹介に類似した採用手法について紹介します。
紹介予定派遣は、人材派遣と人材紹介を組み合わせた採用手法です。
紹介予定派遣では、派遣社員は派遣先の企業に直接雇用されることが前提で派遣されます。そのため企業は、紹介予定派遣で派遣社員を受け入れる際に、面接などの採用試験の実施が認められています(一般的な人材派遣では、面接不可)。
紹介予定派遣での派遣期間は、最大6ヶ月。派遣期間満了後に企業と派遣社員の双方の合意が得られた場合、派遣社員を直接雇用することができます。
つまり、派遣期間を企業と労働者双方の見極め期間と位置付け、採用後のミスマッチを未然に防げるのが紹介予定派遣の大きな特徴です。
なお、直接雇用が決まった際は、派遣会社に対して「紹介手数料」が発生します。
紹介予定派遣との主な違い
人材派遣 | 人材紹介 |
派遣社員の選考はできない、派遣期間は原則3年 | 見極め機関(派遣期間)がない |
関連記事:紹介予定派遣とは?仕組みとルール、料金について解説
ヘッドハンティングとは人材紹介の一種です。ヘッドハンティングは、ニーズに合致した候補者を転職市場以外からも探し出し、スカウトする手法です。
主な対象はエグゼクティブ層と呼ばれる管理職以上の人材です。豊富な実務経験や高度な専門性、経営手腕などを備えた人物を、同業他社や異業種から引き抜くことを目的とします。
人材紹介会社は自社のネットワークやデータベースを活用しながら、企業が求める人材像に見合う候補者を発掘し、企業への移籍を打診します。
ヘッドハンティングのメリットは、自社での公募では見つからない優秀な人材を的確に獲得できる点です。一方、高額な手数料が発生するため、企業は目的や求める人材像に合わせてヘッドハンティングの活用を検討する必要があります。
ダイレクトリクルーティングは、求人媒体や人材紹介会社などを介さず企業が直接求職者にアプローチする採用手法です。企業側からニーズに合致する人材をピンポイントで探し出し、アプローチすることで求める人材を獲得しやすいのが特徴です。
ダイレクトリクルーティングは、SNSなど活用して無料で行う方法と、人材データベースツールを契約する有料の方法があります。
一方で、企業からアプローチする工数と、アプローチ段階では自社に関心がない可能性が高く、採用担当者には一定上の活動量が求められます。他の採用手法と比較をすると、採用にかかる時間を確保しておく必要があるでしょう。
関連記事:ダイレクトリクルーティングとは?他サービスとの違いを比較
リファラル採用とは、社員からの紹介によって新たな人材を採用する手法です。企業は社員のつながりから優秀な人材を効率的に見つけ出すことができます。紹介者である社員は企業文化や価値観をよく理解しているため、ミスマッチのリスクが低いのが特徴です。
また、社員の人脈を活用するため、広告や人材紹介会社の手数料などのコストを抑えることができます。
一方で、候補者の紹介は社員の本業ではないため、いつ紹介されるかがわからない、大量採用には向かない、といったデメリットもあります。ポジションに合わせてリファラル採用の活用を検討しましょう。
なお、リファラル採用を導入している企業の多くは、紹介した社員にインセンティブとして報酬を支払っています。本来であれば、人材紹介により手数料をもらうためには厚生労働大臣の許可を受けなければなりませんが、職業安定法第40条により例外として紹介者に給与でインセンティブを支払うことは認められています。
参考:e-Gov法令検索「職業安定法第40条 」
関連記事:リファラル採用とは?メリット・デメリットと導入のポイントを解説
採用代行とは、企業の採用業務の一部または全部を代行するサービスです。求人広告の作成や求人媒体への出稿、応募者の書類選考、面接の調整・対応など、採用プロセス全般にわたる業務を幅広く代行してくれます。
手間のかかる業務を切り出すことができるため、人員不足やノウハウ不足の場合でも採用活動をスムーズに進めることができます。また、事務業務だけでなく、面接の代行や採用戦略の立案のサポートなど、採用活動の要ともいえる業務についても委託が可能です。
リクルーターにダイレクトリクルーティング業務を委託し、候補者探しを代行する、スカウト代行のサービスを提供している事業者もありますが、採用代行の多くは採用活動のサポートという側面が強く、人材紹介のように「候補者を紹介する」わけではないことは理解しておきましょう。
採用難を背景に、企業はさまざまな採用手法の導入を余儀なくされています。また、導入するだけで必ずしも効果を発揮するわけではなく、効果的な施策のためには、常に現状を把握しつつ即時性をもった調整の実施も必要とされます。
採用担当者の人数が限られているなかで、新しい採用手法の導入を試すのは難しいと感じている担当者は少なくないでしょう。この場合、採用代行を利用してみることをお勧めします。
人材派遣と人材紹介は、企業が必要とする人材を確保するための代表的な手法です。人材派遣は一時的な人材の確保で活用されることが多く、人材紹介は長期勤務を前提とした直接雇用の社員採用の際に活用されます。
現在は、紹介予定派遣やリファラル採用など、採用手法の選択肢が広がっています。各手法の特性を理解した上で、求める人材の確保に最も適した採用手法を選択しましょう。