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【社労士解説】労務管理とは|仕事内容や必要な知識を解説

掲載日2022年11月22日

最終更新日2024年3月26日

【社労士解説】労務管理とは|仕事内容や必要な知識を解説

目次

労務管理とは、従業員が働きやすい職場環境を構築するためにとても重要な業務です。手続きや給与計算などの実務だけでなく、法律的な知識も身につける必要があります。本記事では、会社の労務管理を担当する場合に必要となる知識や仕事内容などについて解説します。

労務管理とは

労務管理とは、一言で表すと「会社で働く従業員のサポートをする仕事」といえます。

縁の下の力持ちとして、従業員が働きやすい環境を作り上げていくために必要とされる仕事です。入退社の手続きから勤怠管理、給与計算など、組織全体を対象とした「ヒト」の管理業務全般を指します。

労務管理と人事との違いとは

同じ「ヒト」に関する仕事として「人事」があります。

明確な定義はありませんが一般的に「人事」とは、採用や人材育成・教育研修などのほか、人事異動や人事評価など、「個々の従業員を対象とした業務」を指します。会社ごとに考え方や方針が異なる部門でもあり、その会社のカラーを表しているともいえます。

労務管理は、勤怠管理や給与計算・社会保険手続きなどの日々の業務のほか、就業規則の整備や安全衛生・ハラスメント対策など、「従業員全体を対象とした業務」を行うことが多くなります。また、労働基準法をはじめとした法律によって定められたものを扱う機会も多々あり、専門的な知識が求められる仕事といえます。

なお、会社によっては「人事部」が労務管理を担当する場合や、「総務部」が人事や労務だけでなく備品管理や会計・経理などを兼ねる場合もあるなど、部門構成は会社の規模や方針によってさまざまです。

労務管理の仕事内容

労務管理の主な仕事内容は下記となります。

対応内容
入退社手続き 労働契約・社会保険・労働保険など
勤怠管理 労働時間・休日・年次有給休暇など
給与計算業務 割増賃金・保険料控除・税控除・賞与・年末調整など
安全衛生管理 健康診断・安全衛生委員会・ストレスチェック・メンタルヘルスなど
就業規則管理 本則・給与規程・育児介護休業規程など
職場環境改善 長時間労働対策・ハラスメント対策・テレワーク対応・副業対策など
労働組合対応 団体交渉・36協定・ほかの労使協定など

労務管理を適切に行うための法定三帳簿とは

労務管理を適切に行うための書類として、いわゆる「法定三帳簿」があります。「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を指し、それぞれ5年間は保存しておく義務(※)があります。

※法改正に伴い保存期間が5年に延長となりましたが、経過措置として当分の間は旧法の3年が適用されます。

いずれの書類も必要事項が記載されていれば様式は問いません。現在はデータでの保管も認められており、労働基準監督署の調査があった場合などにすぐに画面表示や印刷ができる状態であれば問題ありません。

労働者名簿

労働者名簿は、従業員の情報を記載した名簿のことです。以下の項目を記載することが労働基準法に定められています。

(1) 労働者の氏名

(2) 生年月日

(3) 履歴

(4) 性別

(5) 住所

(6) 従事する業務の種類

(7) 雇入れの年月日

(8) 退職の年月日及びその事由(解雇の場合はその理由)

(9) 死亡の年月日及びその原因

なお、従業員30人未満の場合は(6)の記入は不要です。

住所や社内履歴などは、変更があったらすぐに更新しておきましょう。

引用:厚生労働省愛媛労働局「労働者名簿及び賃金台帳の調製と記録の保存(第107条~第109条)」 外部リンク

賃金台帳

賃金台帳とは社員に支払う賃金の支払い状況を記載する書類です。以下の項目を記載することが労働基準法に定められています。

(1) 賃金計算の基礎となる事項

(2) 賃金の額

(3) 氏名

(4) 性別

(5) 賃金計算期間

(6) 労働日数

(7) 労働時間数

(8) 時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数

(9) 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

(10) 労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額

税務上の「源泉徴収簿」とは記載内容が異なるため、別なものと考えておきましょう。

引用:厚生労働省愛媛労働局「労働者名簿及び賃金台帳の調製と記録の保存(第107条~第109条)」 外部リンク

出勤簿

出勤簿は従業員の労働時間を適正に把握するためのものですが、労働基準法において明確な定めはありません。しかし、「その他労働関係に関する重要な書類」として以下の記録の保存が求められています。

  • タイムカードなどの記録
  • 始業・終業時刻を記録したもの
  • 残業命令書及びその報告書
  • 従業員が自ら労働時間を記録した報告書 など

また現在は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が定められており、原則として次のいずれかの方法により始業・終業時刻を確認することとされています。

(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること

(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に保管すること

引用:厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 外部リンク

なお、やむを得ず自己申告に基づき始業・終業時刻を確認する場合は、在社時間と自己申告による労働時間に乖離がないかの実態調査を実施するなど、いくつかの措置が必要になります。

特に2019年4月からは「労働安全衛生法」において「労働時間の状況の把握」が義務づけられていることから、長時間労働の削減のためにもタイムカードなどの客観的な記録で管理することが望ましいといえるでしょう。

派遣社員の管理

派遣社員の場合、法定三帳簿を作成し保存するのは雇用主である「派遣元」です。しかし出勤状況などは派遣元で直接把握するのが難しいため、「派遣先」で確認することになります。

派遣社員を受け入れる場合は「派遣先責任者」が労働時間などを記載した「派遣先管理台帳」を作成しなければならないため、労務管理担当者がその役を担うことになるでしょう。

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労務管理で必要な知識とは

多岐にわたる業務を行う労務管理では、労働法規に関する知識のほか、さまざまな知識が求められます。いわゆる「働き方改革」に関連する話題や、メンタルヘルス・ハラスメント・個人情報保護に関するニュースなどについては、常にアンテナを張っておくと良いでしょう。

法律に関する知識

労務管理で中心となる法律は「労働基準法」です。労働基準法には働く上で大切になる、労働時間・賃金・休日・休業・休暇・年齢などさまざまな最低基準が示されています。

また、そのほかに下記の法律知識も必要とされます。                                                      

法律名 関連事項
労働安全衛生法 健康診断・ストレスチェック・メンタルヘルスなど
労働契約法 労働契約の成立・不利益変更・出向・懲戒・解雇など
最低賃金法 毎年10月に変更
労働組合法 団体交渉・労使協定・不当労働行為など
育児介護休業法 育児休業・介護休業・子の看護休暇・産後パパ育休など
男女雇用機会均等法 性差別の禁止・セクハラ・マタハラなど
パートタイム・有期雇用労働法 短時間労働者・有期雇用・均等均衡待遇など
健康保険法 保険料・健康保険証・標準報酬・被扶養者・傷病手当金など
介護保険法 保険料・対象年齢・要介護状態など
厚生年金保険法 老齢年金・障害年金・遺族年金・保険料免除など
雇用保険法 保険料・育児休業給付・離職票・助成金など
労災保険法 業務災害・通勤災害・第3者行為災害など
パワハラ防止法(労働施策総合推進法) 定義・講ずべき措置・相談窓口など
所得税法 年末調整・源泉徴収・扶養・各種控除など
地方税法 特別徴収・普通徴収・給与支払報告書など
マイナンバー法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用などに関する法律) 基本方針・ガイドライン・情報セキュリティなど
個人情報保護法 基本方針・ガイドライン・情報セキュリティなど
入管法(出入国管理及び難民認定法) 外国人雇用・在留資格など

上記のほかにも関連する法律は数多くあり、法改正なども頻繁に行われます。各種セミナーへの参加やメルマガなどの情報配信サービスの登録のほか、契約している弁護士や税理士・社会保険労務士とコミュニケーションをとるなど、常に新しい情報を得るための仕組み作りも必要になります。

そのほか必要な知識

現在は、「紙」ではなくパソコンなどを使用してサーバーやクラウドなどでデータ管理するケースが多いことから、ある程度のITリテラシーは必要です。またそれと同時に、個人情報についての厳格な管理が求められているため、情報セキュリティに関する知識やシステム操作などのスキルも必要と言えます。

参照:厚生労働省|情報配信サービス・メールマガジン登録 外部リンク

労務管理に関する資格

労務管理担当者になるために必須となる資格はありません。ただし、従業員数などにより必要となる資格や取得することで仕事に役立つ資格もあります。

衛生管理者(国家資格)

業種に限らずすべての事業所において従業員が50人以上となった場合は、従業員数に応じて必要な人数の衛生管理者を選任し、作業場の巡視など健康障害を防止するための措置を講じる必要があります。

安全管理者(国家資格)

製造業・小売業・建設業などの一定の業種においては、従業員が50人以上となった場合は、従業員数や業種により必要な人数の安全管理者を選任し、安全についての教育・訓練や危険防止のための点検・整備などを行う必要があります。

社会保険労務士(国家資格)

社会保険労務士資格の取得は義務ではありませんが、その試験内容は労働基準法をはじめとした労務管理に関連するものです。もし試験に合格できなかったとしても、それまでに勉強した内容は労務管理に役立つでしょう。

産業カウンセラー(民間資格)

産業カウンセラーは、会社で働く従業員が抱える悩みや問題に対して心理学的手法を用いてアドバイスをします。資格取得は義務ではありませんがメンタルヘルス対策などに役立つでしょう。

ハラスメント防止コンサルタント(民間資格)

2022年4月よりパワーハラスメント防止措置がすべての会社に義務化され、相談窓口の設置など会社として講じなければならない措置が定められています。資格取得は義務ではないものの、ハラスメントに関しては労務管理において必要な知識となるため、ぜひ目指して欲しい資格といえます。


上記のほかにも労務管理に関連する資格は多数あります。ぜひ自身の知識やスキルアップのためにチャレンジしてみてください。

近年の労務管理における課題

働き方改革の進展や新型コロナウイルスの影響によるテレワークの急速な浸透など、近年の労務管理を取り巻く環境は大きく変化しています。一方で、その変化に対応できていない会社も少なくなく、解決すべき課題もあります。

働き方の多様化

これまでは「会社に出勤して仕事をする」ことがいわゆる普通の働き方でした。ところがコロナ禍を経て「会社に出勤しなくても仕事ができる」ことが徐々に浸透してきています。また、これまでは「ひとつの会社」で働くことが一般的でしたが、現在は「複数の会社」に所属するケースや、「会社に所属しない」でフリーランスとして働く人も増えてきています。このように、働き方が多様化していることで労務管理は一層複雑化しています。

労務管理担当者としては、「テレワーク」や「副業・兼業」などに対応した「就業規則」を整備し、従業員に会社のルールを周知することが求められます。

労働時間の管理(長時間労働)

働き方の多様化は労働時間の管理を複雑化しました。

例えばテレワークの場合、仕事とプライベートの区別があいまいになりがちです。特に在宅勤務の場合などはどうしてもその区別が難しくなります。また、副業の場合などはさらに管理が複雑です。 原則として副業は労働時間を通算することになりますが、時間外労働に対する割増賃金をどちらの会社が負担すべきかについてはケースバイケースとなります。

労務管理担当者としては、まずはテレワークなどでも適正な労働時間の把握を行えるようにするため、クラウドの「勤怠管理システム」の導入などと同時に「中抜け」などの管理方法を整備することが考えられます。また副業・兼業については、就業規則の整備などと同時に、「副業・兼業に関する届出」や「副業・兼業に関する合意書」を作成するなど、従業員が副業・兼業について会社に伝えることができる仕組み作りも必要になります。

安全衛生管理

従業員の心と体の健康を管理することも、労務管理の大きな仕事のひとつです。そのため、前述の長時間労働に伴うメンタルヘルスの問題などは、常に意識しておく必要があります。

また、パワーハラスメントに代表されるようなハラスメントの対応については、労務管理担当者としては最も頭を悩ませる問題です。ハラスメント相談窓口の設置などにより問題が大きくなる前に対処すべきではありますが、そもそもハラスメントに該当するか否かの線引きが難しく、会社としての方針の明確化に加えて、正しい知識を身につけておく必要もあるでしょう

まとめ

労務管理は会社にとって非常に重要な仕事であり、間違いがあってはならない仕事でもあります。ただ、あまり表に出ない仕事であるがゆえに華やかな仕事とはいえないかもしれません。一方で出産・育児・介護・休業・退職など、従業員がこれまであまり経験したことのない出来事が発生した際には、不安が少なく過ごせるようサポートしてあげることで、同じ会社の従業員から感謝される数少ない仕事でもあります。従業員の「ありがとう」の一言を伝えられたときに、きっと労務管理のやりがいを感じることができるでしょう。

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著者プロフィール

山口剛広(特定社会保険労務士・ハラスメント防止コンサルタント)

山口剛広(特定社会保険労務士・ハラスメント防止コンサルタント)

山口社会保険労務士事務所 代表 2002年山口社会保険労務士事務所を開業。企業のパートナーとして、争いを未然に防ぐための労務相談に力を入れている。公的機関で相談員を務めるなど〝相談ができる社労士″として活躍している。行政や省庁が実施する「労働条件審査」においては数十社に及ぶ審査実績がある。

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