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現在、多くの企業が人手不足に悩んでおり、特に営業職の人材不足は深刻です。営業部門は企業業績に直結する重要な職種であるため、早急な対応が求められます。この問題をどのように解決できるのでしょうか。
厚生労働省が発表した令和6年6月の「一般職業紹介状況」によると、パートを除いた営業職の有効求人倍率は2.23倍で、全体の有効求人倍率1.16倍を大きく上回っています。つまり、営業職は他の職種と比べても圧倒的な売り手市場であることがわかります。
参照:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和6年6月分)について統計資料 (PDF)
では、なぜ営業職の採用は難しいのでしょうか。複数の要因が考えられますが、営業職に対するネガティブなイメージがその一因となっていることは間違いありません。
営業職は一般的に成果主義が強く、ノルマのプレッシャーや顧客対応のストレス、不規則な労働時間が原因で、離職率が高くなりがちです。そのため、採用後に短期間で退職するケースも少なくありません。
営業職は花形であり、やりがいのある仕事である一方、ストレスがかかるのも特徴です。こうした認識が広まっていることで、さらに採用難を加速させていると考えられます。
次に、営業職としての素質がある程度あると思われる人の中から、さらに優秀な人材を見極め、どのような素質をあった人を採用すればよいかを考えてみましょう。
まず、「自社がどのような層をターゲットにして採用活動を進めるか」を明確に言語化し、定義する必要があります。営業職といっても、業種や企業、職務内容によって求められるスキルや特性は異なります。
例えば、住宅や自動車のようなセールス色の強い営業職もあれば、法人向けのサービス業の営業のように、セールス色が薄く、むしろ顧客のニーズを的確に理解し対応する力が求められる営業職も存在します。
自社が狙うべき層を明確にするには、マーケティングで使われる「ターゲティング」が有効です。
ターゲティングとは、マーケティングの分野で、市場を細分化し、その中から自社の製品やサービスが最も効果的に響く特定の顧客層を選定するプロセスです。
それと同様に、一口に「営業職」と言ってもさまざまであり、細分化した上で、自社の求めるターゲットを決めていく必要があります。
採用におけるターゲティングのメリット
ターゲットを決めるうえでの切り口について、具体例を紹介します。
スキルベースでのターゲティング
特定のスキルや資格を持つ人材をターゲットにする。
例:業界や製品・サービスの知識、特定の資格・免許、ヒューマンスキル(ストレス耐性が高い、丁寧で真摯な対応ができる、調整能力が高いなど)
経験ベースでのターゲティング
営業経験者の有無、業界経験の有無など、経験年数や経歴を基準にターゲットにする。
価値観ベースでのターゲティング
企業文化やビジョンに共感してくれる人材をターゲティングする
例:スタートアップに関心がある、社会貢献に強い興味がある、イノベーションを推進したいと考えている
地域ベースでのターゲティング
特定の地域に住んでいる人材や働きたい人をターゲットにする。
例:故郷で働きたい、特定の地方で働きたい、転勤したくない
働き方に対する価値観でのターゲティング
働き方にこだわりがある人でターゲティングする。
例:在宅勤務、ワークライフバランス、自己成長を重視する、フレックス、幅広い仕事でスキルを高めたい、責任のある仕事に就きたい(または、就きたくない)
上記のような切り口で自社の求める人材を具体的にし、ターゲットとする層を決定していきます。
ターゲットの決定と同じくらい重要なのが、競合調査です。どの企業と競合しているのか、採用競争力があるかを判断するためにも競合の情報は重要です。
まずは採用における競合他社を設定し、自社とその会社との比較を行います。気を付けたいのは、同業他社が採用における競合とは限らない点です。営業経験があれば業界未経験でもOK(またはその逆)となった場合、一気に競合の範囲が拡大する可能性があります。
自社の求める人材像を鑑みて、競合を設定してください。競合調査で把握すべきポイントは、競合と比較した場合の自社の強み・弱み、そして競合他社の強み・弱みです。
競合と比較する上で、有効だとされる3つの方法をご紹介します。
3C分析は、マーケティングの世界で広く用いられているフレームワークですが、人材採用にも応用することができます。特に、競合他社との比較において、自社の強みと弱みを明確にし、より効果的な採用戦略を立てるために役立ちます。
採用における3C分析
3C分析を採用に置き換えると以下の通りとなります。
Customer(顧客):「求職者」に置き換え、求職者が求める条件や企業選びの基準を分析
Competitor(競合): 競合他社の採用活動、特に求人広告、採用ページ、福利厚生などを分析し、自社との違いを明確にする
Company(自社): 自社の企業文化、福利厚生、成長機会などを分析し、競合との差別化ポイントを探る
自社の強み | 競合との違い | 採用戦略 |
フレックス勤務制度 | 競合は残業が多い | フレックス勤務制度をアピールし、ワークライフバランスを重視する求職者をターゲットにする |
社内ベンチャー制度 | 競合は部署異動が難しい | 社内ベンチャー制度をアピールし、チャレンジ精神の高い求職者をターゲットにする |
社会貢献活動 | 競合は利益重視 | 社会貢献活動に力を入れていることをアピールし、社会貢献に関心のある求職者をターゲットにする |
アフターケアに注力 | 競合は効率化優先 | 営業目標に追われるよりもしっかりと顧客のサポートをしたいと考えている人材をターゲットにする |
4Pとは、Philosophy(理念)、People(人・文化)、Profession(事業・業務内容)、Privilege(働き方・待遇)という4つの観点での分析手法です。こちらは企業の魅力を分析する際に用いられます。
採用における4P分析
Philosophy(理念)
企業理念、ビジョン、ミッションを比較し、自社の独自性を明確にする。
People(人・文化)
人員の多様性、チームワーク、働き方、リーダーシップなどを比較し、自社の魅力的な文化を明確にする。
Profession(事業・業務内容)
事業内容、仕事内容、キャリアパスなどを比較し、自社の事業の魅力や成長性を明確にする。
Privilege(働き方・待遇)
給与、福利厚生、働き方、勤務時間などを比較し、自社の競争力のある待遇を明確にする。
要素 | 自社 | 競合A | 競合B | 比較結果 |
Philosophy | 社員一人ひとりの成長を支援 | 大規模なプロジェクトへの貢献 | 社会貢献 | 社員一人ひとりの成長を重視している点で差別化できる |
People | 多様なバックグラウンドを持つ社員 | 若手社員が多い | 女性社員が多い | 多様性のある組織であることをアピールできる |
Profession | 新規事業開発 | 安定した事業展開 | グローバルな事業展開 | 新規事業開発に力を入れていることをアピールできる |
Privilege | フレックス勤務制度、リモートワーク | 長時間労働、残業が多い | 育児支援制度が充実 | ワークライフバランスを重視していることをアピールできる |
SWOTとは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字で、これらを明確にすることにより、自社の現状を客観的に分析し、競合他社との差別化ポイントを見つける手法です。
これも一般的にマーケティングで使われますが、採用活動にも有効です。前述した4P分析を基にSWOT分析を行うことで、自社の強み・弱み、機会・脅威をより深く理解することができます。
採用におけるSWOT分析
SWOT分析を採用に用いた場合の例を挙げてみます。競合と比較してどうか、という視点で考えてみてください。
自社のSWOT分析
要素 | 自社 | A社 | 比較結果 |
Strength(強み) | 充実した研修制度、風通しの良い社風 | 高いブランドイメージ、多様なキャリアパス | 自社の研修制度をアピールし、若手育成に力を入れる。B社のブランド力を参考に、自社もブランドイメージ向上に努める。 |
Weakness(弱み) | 給与水準がやや低い | 給与水準が業界の中でも高め | 職場環境や働き方の柔軟性など、給与以外で重要視される項目をアピール |
Opportunity(機会) | 新規事業の立ち上げ、店舗の拡大 | 独自技術や製品の開発 | 新規事業の責任者のチャンスがある、地元での就職が可能、などをアピール |
Threat(脅威) | 競合他社の採用活動強化、人材不足 | スタートアップ企業との競合、若年層の労働意識の変化 | 競合との差別化、魅力的な福利厚生制度の導入。若年層向けの採用活動強化。 |
これらの手法を活用して、自社の強み・弱みを明確にし、応募者にアピールできるポイントを洗い出しましょう。
ターゲット層と競合他社が明確になった後は、選考フローの見直しを行いましょう。
営業職は他の職種に比べ求人が多く、競合も激しいため、求職者が他社に流れないよう、選考を迅速に進める体制を整えることが重要です。内定辞退に加え、選考辞退の多さに悩む採用担当者も少なくないはずです。
見直すポイント
採用が難しい営業職において、採用基準を緩和することはよくありますが、慎重に対応することが重要です。採用基準の緩和により、ミスマッチによる早期退職のリスクが高まり、結果として採用がうまく進まず悪循環に陥る可能性があります。
どの条件を緩和でき、どの条件が譲れないかを現場担当者と綿密に確認することが重要です。採用基準が厳しすぎても、緩めすぎても問題が生じるため、現場担当者と密に連携しながら調整する必要があります。
緩和した結果、採用となった人材のパフォーマンスはどうか、早期離職していないか、現場では経験・スキル不足を補うための教育はちゃんとできているか、などを確認するようにしましょう。
また、実績や業務経験がすごい人材にはバイアスがかかりやすくなってしまいます。
例えば、営業成績1位などの輝かしい成果をあげつつ、複数の企業を転々としているような応募者の場合、いわゆる「焼畑営業」を繰り返している可能性もあるのです。
焼畑営業とは、目先の契約を取ることだけに努力し、契約後には対応が悪くなる営業のことを言います。契約を取るまでは熱心に通って営業してくるのにもかかわらず、契約後はぱったり連絡もとれなくなり、顧客に対するアフターケアもないような営業のやり方を指します。
そのためこのような営業スタイルの営業担当者は、短期的には大きな成果をあげますが、長期的にみると企業の信頼を損なってしまう可能性が高いと言われています。企業によっては、営業職に対して「焼畑営業禁止」を明確に打ち出している企業もあるほどです。
営業職の中には、この焼畑営業を繰り返して様々な企業を転々としている人もしばしばいるため、適切な質問を準備しておきましょう。
採用プロセスを見直しても成果が出ない場合は、採用手法そのものを見直すことも重要です。
近年、採用手法はますます多様化しています。特に採用が難しい職種において、従来の採用手法に固執すると、優秀な人材を競合に奪われてしまう可能性があります。採用が困難であるからこそ、柔軟な対応とさまざまな取り組みが求められます。
とはいえ、予算や採用担当者の負担も考慮しなければならないため、どの手法を取り入れるべきかは、企業の状況に応じて慎重に検討する必要があります。現在の採用手法のパフォーマンスを一度チェックし、分析を行うか、専門家や第三者からの意見を取り入れることも一つの選択肢です。
営業職における具体的な採用手法については、次章で詳しく解説します。
営業職に応募してくる人材と、実際に営業職に適した人材が必ずしも一致するわけではありません。そのため、あえて営業未経験者を採用することも一つの方法です。
本来ならば、営業職として活躍できるポテンシャルを持ちながら、営業職を敬遠してそのような職種に就きたがらない人材も一定数います。その理由は様々でしょうが、おそらく昔ながらの営業職に対する強いイメージが影響しているのでしょう。
一般に営業職に対しては。押しの強い人間でないと務まらないというイメージを持たれがちです。そのようなスタイルの営業を行っている企業もあるかもしれませんが、近年、企業の営業方法は大きく変わりつつあります。
デジタルツールや新たな営業手法を導入することで、強引なテレアポや飛び込み営業を行う必要がなくなり、押しの強いタイプでなくても営業職が務まるケースもあるでしょう。
営業職に対するネガティブなイメージを払拭し、未経験者の採用を進めることも一つの解決策です。また、新規採用だけではなく、自社内で他部署から営業職を募ることも検討してみましょう。
基本的なことではありますが、改めて求人広告などの募集要項の見直しも行いましょう。求人情報と言うと、給与などの待遇面と職種があれば十分、というわけではありません。応募者は、仕事の内容や働きやすさ、企業風土、人間関係など、さまざまな情報を求めています。
一度応募者の目線に立って、「はたしてこの企業で働きたくなるだろうか」「この求人広告に応募したくなるだろうか」ということを考えてみましょう。特に営業の場合、単純に給与が高ければよいというわけではなく、応募者は優先度の高い条件を複数持っていることが一般的です。
求人サイトなど採用チャネルによっては、情報量に制限がかかる場合もあります。自社の採用サイトの情報やコンテンツを充実させ、誘導するなどの策を打ち出すのも効果的です。
競合他社の求人内容を確認したり、競合でなくても求職者目線で『目を引く』と感じる求人広告を参考にするなど、さまざまな視点から見直しを行いましょう。
営業職採用が売り手市場である状況では、企業側が候補者を選ぶだけでなく、候補者からも選ばれる立場にあることを認識する必要があります。
営業職を募集する企業は多く、優秀な人材を確保するためには他社との差別化が不可欠です。そのため、面接の場で企業の魅力を効果的に伝えることが非常に重要となります。
面接は、企業と候補者の双方にとって相互理解の場。企業側が候補者のスキルや適性を見極める一方で、候補者も企業文化、働き方、将来性などを評価しています。
特に売り手市場の中で、候補者は自分に最適な環境を求めて慎重に企業選びを行うため、面接の際に企業の魅力をしっかり伝えることが採用成功のカギです。
企業の魅力付けを行うためのポイントをいくつかご紹介します。
営業職の候補者は、自分がどのような環境で働くのか、企業のビジョンに共感できるかを重視します。会社の価値観や目指す方向性を明確に伝えることで、候補者の入社意欲を高められます。
企業が提供できる研修プログラムやスキルアップの機会、将来のキャリアパスについて具体的に説明し、候補者が自分の将来像を描けるようにします。
実際に働いている営業職の社員がどのような成果を上げているのか、どのようなサポートを受けているのかを具体的な事例として紹介することで、より鮮明に働くイメージを付けることできます。
営業職はプレッシャーやストレスの多い仕事であるため、働きやすい環境を提供しているかどうかは大きなポイントです。フレックスタイム制度やテレワークの導入、営業活動のサポート体制など、働きやすさをアピールしましょう。
面接の際に、実際の社内の雰囲気や社員同士のコミュニケーションについてポジティブなエピソードを共有することも効果的です。企業の人間関係や職場の雰囲気を伝えられ、入社後の姿を具体的にイメージできるようになります。
最後に、営業職採用が行き詰っている場合に取り入れたい採用手法をご紹介します。営業職採用は、母集団形成の段階から困難になりやすいため、さまざまな手法を試す企業が多くあります。
多くの企業が人材紹介サービスを利用しています。最大のメリットは、入社が決定した場合にのみ発生する成功報酬型が主流であるため、紹介を受ける段階ではコストが発生しないことです。
もし、良い人材を紹介してもらえていない場合、人材紹介会社とのコミュニケーションに問題がある可能性があります。情報が不足していたり、変更点や合否の理由が適切に伝達されていない場合、人材紹介会社は候補者を絞り込むことができません。
また、人材紹介会社のコンサルタントは、成約が評価につながるため、決定率が低い企業には候補者を紹介しなくなるケースもあります。
重要なのは、依頼しっぱなしにしないことです。人材紹介会社が良い人材を紹介してくれるかどうかは、コミュニケーションの質にかかっています。自社の要件を明確に伝え、定期的にフィードバックを行い、人材紹介会社との連携を強化しましょう。
詳しくは「なぜ人材紹介会社は良い人材を紹介してくれないのか?」をご覧ください。
リファラル(referral)採用は、自社の社員など信頼できる人から友人・知人を紹介してもらう採用手法です。採用が前提ではなく、まず候補者を紹介してもらい、その後選考を行います。
メリットとして、採用コストを低く抑えられる点や、業務や企業文化に理解のある人材が応募してくるため、採用しやすく入社後の定着率が高い点が挙げられます。
ただし、大規模な母集団の形成は難しく、いつ紹介があるかを予測することも困難です。営業職のポジションが慢性的に欠員となっている場合は、社内での周知活動や奨励策に力を入れ、通年で社員紹介を受けることを検討してみましょう。
また、リファラル採用と他の採用手法を組み合わせることで、リファラルの弱点を補うことも可能です。
関連記事:リファラル採用とは?メリット・デメリットと導入のポイントを解説
リファラル採用と似た手法で、近年特に注目されているのがアルムナイ採用です。
アルムナイ採用とは、退職した社員を再度迎え入れる採用手法です。退職した社員も、企業に残っている社員と個人的なつながりを保っていることが多く、そういったチャネルを通じてコンタクトを取り、再採用を行う方法です。
かつて多くの日本企業では、転職して他社へ移った社員を「裏切者」と見なし、再度採用することは稀でした。しかし、近年の人材不足を背景に、企業はむしろ自社のことをよく理解する即戦力としてアルムナイを重宝する傾向に変わりつつあります。
この方法のメリットは、ミスマッチが少なく即戦力として活躍しやすい点や、定着率が高い点にあります。また採用単価も低く抑えやすいのもメリットです。
一方、リファラル採用と同様に、大量採用には向いておらず、採用の時期が予測しにくいという難点もあります。
アルムナイ採用を成功させるためには、アルムナイネットワークの構築や、退職者の再雇用を積極的に受け入れる社内文化の醸成が重要です。
関連記事:即戦力がほしい企業は検討すべきアルムナイ採用|導入企業は約3割
近年、注目を集めている手法にダイレクトリクルーティングがあります。この手法は、SNSや社外の勉強会やイベント、専門のツールを用いて、自社の求める人材に対して直接コンタクトを取り、採用する方法です。
特に近年活発になっているのが、SNSを利用した方法です。従来はFacebookなど既存のSNSがよく利用されていましたが、Wantedlyのようなスカウト型リクルーティングサービスも登場し、徐々に浸透してきています。海外ではビジネスパーソン向けSNSであるLinkedInが広く用いられています。
ダイレクトリクルーティングのメリットは、ターゲット層の中で自社を知らない、または関心を持っていない候補者に対して、こちらからアプローチし、応募を促せる点にあります。効果的に取り組めば、採用コストの削減にも貢献できる手法です。
一方、こちらからアプローチするため、反応率が低く、地道な活動が求められます。採用担当者に相当の技量が必要であり、専任者を設置するなど工数がかかるのが難点です。
ターゲット層からの応募が少ない場合には、導入を検討すべき手法と言えるでしょう。ダイレクトリクルーティングを成功させるためには、ターゲット層の明確化や、パーソナライズされたアプローチが重要です。
関連記事:ダイレクトリクルーティングの落とし穴|課題と対策をわかりやすく解説
ヘッドハンティングは、転職意思のない人材も含め、最適な人を探し出して紹介する人材紹介サービスの一種です。
もともとは経営者や特殊技能者など、特殊な人材をスカウトする方法として使われてきました。しかし、近年では部長・課長のような中間管理職を採用する方法としても利用されており、営業職での利用も増えてきています。
優秀な営業職が転職市場に出てくることは少なく、通常の採用活動ではなかなか見つけられません。そのため、営業のマネージャークラスや業績に大きく影響するポジションにおいては、有効な手段と言えます。
また、求める要件が非常にニッチで特殊な場合も、ヘッドハンティングを利用することで、人材を獲得できるチャンスが広がります。
デメリットとして、一般的な人材紹介よりも費用が高額である点や、リサーチに時間がかかりやすい点が挙げられます。
重要なポジションの採用においては、積極的に検討してみる価値があります。
関連記事:ミドルハンティングとは?中間管理職や専門職の採用手法として注目
関連資料:【導入事例】ヘッドハンティングを活用した3つの採用事例
未経験者を採用したい場合、紹介予定派遣を利用する方法があります。
紹介予定派遣は、人材紹介と派遣を組み合わせた手法です。最長6か月という派遣期間を経て、最終的に採用の可否を決定します。派遣期間中は、自社の社員ではなく、派遣会社の社員としての位置付けとなり、その間に候補者の適性や人柄を十分に見極めることができます。
人材紹介企業へ支払う報酬は、派遣料と、雇用が成立した場合に支払う成功報酬である紹介手数料です。
メリットは、正式採用前に候補者の適性を確認できるため、採用ミスマッチのリスクを軽減できることです。
デメリットは、派遣期間中の派遣料は、入社するかどうかに関わらず発生することと、候補者から断られる可能性があることです。
紹介予定派遣を利用する際には、派遣期間中の業務内容や評価基準を明確に設定し、候補者と派遣会社に事前に伝えることが重要です。
関連記事:紹介予定派遣とは?仕組みとルール、料金について解説
関連資料:紹介予定派遣とは?
採用チャネルが複数になると、採用担当者の業務が増え、負担が大きくなることがあります。そのような場合、採用コンサルティングや採用代行といった専門業者に、採用業務の一部を依頼すると良いでしょう。
採用コンサルティングは、企業が人材採用において直面する課題を解決するための戦略を策定し、その実行支援を行うサービスです。採用に関するノウハウやトレンドを把握しており、効果的な人材確保をサポートします。
一方、採用代行は、企業の採用活動の一部またはすべてを委託できるサービスで、採用計画の策定から内定者のアフターフォローまで、幅広い業務の依頼が可能です。これにより、企業の採用担当者の負担を減らし、業務を効率化できます。
さらに、採用コンサルティングサービスを利用することで、自社に適した採用戦略を提案してもらうことも可能です。
採用代行のメリット
関連記事:採用代行の種類と具体的なサービス内容とは?課題別の活用法を解説
関連資料:採用代行とは?「業務の分担」と「自社にフィットした戦略」が採用成功のカギ
営業職の人材不足を解消するには、入社後の離職率を下げることが重要です。そのためには、採用段階で営業職に適した人材を見極める必要があります。しかし、会社ごとに求められるスキルや特性は異なるため、見極めは決して簡単ではありません。
しかし、営業職に明らかに不向きな人材を見極めることは可能です。例えば、第一印象や会話で相手に不快感を与える人は、優れた能力や経歴があっても顧客にも同様の印象を与えるため、採用を避けるべきです。
また、営業職は個人プレーの印象の強い職種ですが、実態は社内の連携が強いチームプレーが必要とされる職種です。ですから、チームプレーができない人間はそもそも不向きな職種でもあるのです。
「今までの営業職としての実績を教えてください」
「今まで苦労したことや頑張ったことを教えてください」
といったよくある質問の合間に、
「前職では、あなたが営業チームのメンバーとしてどのような役割を演じていましたか」
「チームワークの力で何かを成し遂げた経験がありますか」
といったチームワークに関する質問も織り交ぜ、営業職としての自分の仕事がチームワークの結果であるという認識を持っているかを確認するのも一つの方法です。
関連記事:【面接官向け】採用面接ですぐに使える質問集|状況別158の質問
営業職採用の特徴として、選考辞退や内定辞退の多さが挙げられます。せっかく母集団を形成しても、辞退が増えてしまうとこれまでの努力が無駄になってしまいます。ここでは、辞退対策についてご紹介します。
応募者が応募してから面接が決まるまでに日程が開きすぎると、応募者は自分が書類選考に落ちたのではないかと考え、応募自体を諦めてしまう可能性があります。
さらに、動きの遅い企業に対して、応募者は「自分には興味がないのだ」とネガティブなイメージを抱きかねません。最悪の場合、他社に先に採用されてしまい、せっかくの人材が他社に流れてしまう可能性もあります。
面接を担当する現場の担当者も忙しいかもしれませんが、採用活動への協力を再度お願いし、リードタイムの短縮を常に意識することが重要です。
必要書類や面接回数を最適化し、極力減らすように努めましょう。必要書類が多いと、応募者の負担となり、応募意欲を削いでしまう可能性があります。また、書類に目を通す採用担当者の負担も少なくありません。
面接回数も多ければ良いというわけではありません。限られた回数で、応募者の意欲や適性を見抜くことも採用担当者の重要なスキルと言えます。遠方の応募者にとっては、面接回数が多いことが大きな負担となり、応募を躊躇する要因にもなり得ます。
そのようなことを避けるためにも、面接の回数は必要最低限に抑えるよう心がけましょう。
関連記事:【3つのスキル】面接官トレーニングで「採用できる面接官」を育成する
関連資料:面接官のための実践ガイド
必要書類や面接回数を減らす代わりに、社内見学や既存社員への質疑応答の場を設け、応募者と企業が互いをよく知る場を設ける工夫をすることが効果的です。
応募書類や面接では、どうしても互いの「建前」が前面に出てしまい、腹を割って話すことが難しいことがあります。そのため、ざっくばらんに互いを知る場を設けることで、両者の距離を縮める方法も有効です。
社内見学では、実際の職場の雰囲気や社員の働く姿を見せることで、応募者に企業文化や職場環境を理解してもらうことができます。また、既存社員への質疑応答では、事前にテーマや質問を設定し、応募者の疑問に答えることで、企業と応募者の相互理解を深めることができます。
また、人的リソースの都合で直接の対話の場を設けることが難しい場合は、採用ページやSNSなどで、動画や記事などのコンテンツを発信するのも良いでしょう。
関連記事:中途採用向け|6つの内定者フォロー策と内定辞退の理由
冒頭でも述べた通り、人材採用難の中、特に営業職の採用は困難を極めています。しかし、困難=不可能ということではありません。
営業職に限らず、このような状況下でも採用活動で成功を収めている企業は存在します。自社の採用活動がうまくいっていないと感じる営業担当者は、今まで当たり前だと思っていた採用活動の個々の内容を見直し、「自分が求職者なら、どのような企業で働きたいと思うだろう」という求職者の目線になって採用活動を根本から見直してみることが大事です。
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